< 一階コンビニ、二階は探偵事務所・下 >
「あんなヤツ、これもんでこうよー」
「えぇ、マジかよ〜、アホだなー」
「あはは、おめーやりすぎだべ〜」
猫田探偵事務所の下に有るコンビニエンスストワーの前。
その入り口のすぐ横で、4人の柄の悪い少年たちが屯していた。
四人とも服装は乱れているが、着ているのは学生服である。
現在の時間帯ならば、学校の有る筈なのだが、四人はさぞ当たり前の様に、こんなところで時間を潰すように授業をサボっていた。
そして彼らの横には、店が設置したゴミ箱が有るのにも関わらず、少年たちは自分達が食べたお菓子などのゴミを散らかし、頭の悪そうな会話に花を咲かせながら地面に座り込んでいた。
「ちょっくらベンジョいってくるわ〜」
「おぅ、だしてら」
そう言って一人の少年がコンビニの中へ入って行った。
仲間の一人がトイレに行ってしばらくすると、彼らの横を男女二人乗りのバイクが通り過ぎた。
彼らは自分達の前を、けたたましいエンジン音を立てて通り過ぎたバイクにイラ付いたのか、三人一斉にバイクを睨みつける。
そのバイクは、コンビニの駐車場でも人目の付きにくい隅に止まると、エンジンを止めた。
バイクから降りた二人は、フルフェイスのヘルメットを取りながら、コンビニの入り口へと向かって歩き始めた。
運転していたのは背の高い青年で、もう一人は金髪の綺麗な白人女性だった。
「おい、あの女、すげー美人の外人だぜ」
カップルの彼女が、白人の美人だと気付いた一人が、仲間の肩を叩きながら二人を指さす。
「おお、ほんどだ。」
「金髪だよ、本物だ、本物」
柄の悪い少年達は、二人の男女に視線を向けたまま立ち上がる。
明らかに二人の男女に対して、因縁を付ける気マンマンであった。
そして彼ら三人は、男女の方へとチンピラのように、肩を左右に揺らしながら歩き出した。
こうなると、たちの悪い野良犬と一緒である。
「おい、にぃちゃんよ、おめーのバイクうっせんだよ」
三人は男女の元まで近寄ると、その内の一人が男性の顔に口付けしそうなぐらいに顔を近寄らせ因縁を付け始めた。
そして男性の方も、まるで受けて立つかのように引くことは無かった。
「おめーよー、人の迷惑考えろよ、おらぁ」
お前らが言える台詞ではない。だが、彼らは自分のことを高く深い棚の上に置くのが得意な人種である。
「なんだ、糞餓鬼ども?」
男性は、負けずに少年を凄み返す。
その気迫にガンを付けている少年が、少し押され冷や汗を密かに流した。
「んん、タケシや、知り合いかえ?」
金髪の女性が妙な日本語で男性に問いかける。
この状況から考えて、知り合いの筈は無いが、彼女はふざけて言った積もりは無かった。
「なんだこの女、頭可笑しいのか?」
女性の口調を笑いながら、柄の悪い少年の一人が、今度は女性にも因縁を付け始める。
「無礼な、身分をわきまえぃ」
女性は、綺麗な顔立ちをむっすりとした表情に変えると、冷めた声で言った。
「うぁ〜……こりゃ本物だわ」
先程まで男性の方にガンをくれていた少年も、金髪女性の可笑しな発言に驚き、彼女に視線を奪われる。
「おーい、オメーら、何してるん?」
五人が揉める中、柄の悪い少年達の仲間が一人、コンビニのトイレから戻ってくる。
「おう、ちょっとこいつらがよー」
後ろから掛けられた仲間の声に受け答えをする為、そう言いながら不良少年の一人が一瞬後ろを振り返る。
そして、前を向きなおした不良少年の目の前に、男の手が有った。
「?」
その手は、中指を親指で押さえる形。
デコピンの形。
不良少年が、後ろを振り返ったのは、ほんの一瞬だった。
前を向き直した時には、そのデコピンは、昔からそこに有ったかのように存在していた。
その自然さに、少年はデコピンの形に驚くことも無かった。
そして放たれるデコピン。
「ふぅおぉぉぉ!」
「!!」
「いてー!、ちょーいてー!。ちぃぃぃぃぃ出てる!!」
デコピンは、不良少年の額を拳銃で打ち抜くように弾き飛ばす。
すると不良少年は、声を上げながら後ろに仰け反り転倒しそうになった。
「こ、この野郎!」
男のそばに居た二人の少年は、仲間が攻撃されたことを確認すると、大きな声を出しながら、男ににじり寄ろうと行動を起こす。
「んっ?」
にじり寄ろうとした不良少年二人の視界に、下からスライドする様に中指を親指で押さえた男の手が現れた。
デコピンの構えをした両手。
そのデコピンに、仲間が一人やられたのにも関わらず、目の前に現れたデコピンに対して、彼らは回避行動を取ることは無かった。
今度は両手で放たれたデコピン。
「うご!」
「どわわぁぁ!」
危険と分かっていながら殺気の無いデコピンの動きに、彼らの思考回路が危険回避をセレクトしなかったのである。
最初に食らった少年同様に、強烈なデコピンを額に喰らい、声を立てよろめく。
「にゃろぉぉぉぉ!」
最初にデコピンを喰らった少年が、ズボンのポケットから光物を取り出す。
たかがデコピン。
それを喰らっただけでナイフを取り出す少年に、男はあきれた表情をわざとらしく作った。
「ぶっ殺してやる」
もしも、ここで少年が、男を刺し殺して警察に捕まったのならば、犯行理由は「デコピンをされたから」ってことになるのだろうか。
もしも、そうなったら情けないニュースでワイドショーの数分が使われて終わりなのかと、男は詰まらない想像をしていた。
「ほー、ナイフか」
男はそれでも怯まない。
刃物による恐怖心、そんなものは感じていない様子だった。
それどころか、くだらない想像をする余裕すらあるのだから。
「おい、やめろょ、オメー死にたいのかよぉ!?」
トイレから戻ってきた少年が、ナイフを構える仲間の肩を掴んで止めた。
「止めんな、殺しはしねーよ、軽く刺してやるだけだ!」
「そうじゃないって、オメーが殺されるって言ってんだよ!」
トイレから戻ってきた少年は、強い口調で仲間を止めた。
その言葉にナイフを構えていた少年が、初めて自分を止める仲間の少年の顔を見て驚く。
「えぇ……?」
その顔は何時ものように、ふざけてヘラヘラした表情ではなく、引きつり、青ざめ、冷や汗を滝のように流していた。
「お前ら、なにやってんだよ、死にていのかよ!」
街中でケンカを売ったり、かつあげをしたり、時には今みたいに光物をちらつかせる事が珍しくなくなっていた仲間が、何故か今回は違っていた。
「死にたいって……?」
他の二人も、引き止める仲間の必死な形相に、怒りを忘れたのか冷静さを取り戻す。
トイレから戻ってきた少年は、怒鳴りながら止める理由を、必死な表情で仲間達に告げ始めた。
「お前ら、レジェンダリータケシに、ケンカ売るバカがいるかよぉっ!」
「「「!!」」」
その名を聴いた三人の不良少年は、おもわず声にならない悲鳴を上げた。
そして、ゆっくり、恐る恐る、そ〜と、男性の顔を伺う。
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