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ちょっと長いと思ったので、三つに分けます。
< 一階コンビニ、二階は探偵事務所・上 >


 とある駅前広場の公園。

 そこは噴水がある小さな公園で、子供が遊ぶ遊具の数よりも、会社をサボってやってきたサラリーマン達が座っているベンチのほうが多い。

 公園の外は車の交通量が多い道路に囲まれ、とても子供のことを考えて作られた公園とは思えない場所であった。

 公園内の平均年齢は明らかに高い。
 
 その駅前公園内に有る噴水の迎えのベンチに、サラリーマン達に混ざってベンチに腰を下ろしている鍋中刑事の姿があった。

 それを相棒の眞鍋は、少し離れた道路に車を止めて、車内から遠目に見ていた。

 現在聞き込みの最中だが、鍋中が人に会う約束があると言って、相棒の眞鍋を車で待たせているのだ。

「おまたせしました、鍋中さん」

 しばらくすると、ぴしっとしたグレイのビジネススーツ姿の男がベンチに座る鍋中の前に現れた。

 年の頃は二十代半ばだろうか、髪型はセンス良くカットされた七三で、銀縁のあっさりしたフレームの眼鏡を掛け、うっすらとした笑みを保っている。

 そのなりから何所にでも居そうな『そこそこ仕事のできる会社員』のイメージが感じられた。

「隣に座っても良いですか?」

「おぅ、まあ座れや」

「はい」
 ビジネススーツの男は、ニコリと営業スマイルを作ると鍋中の座るベンチに腰をおろし、手に持っていたアタッシュケースを横に置いた。

「でぇ、上の耳にもとっくに入っているだろ、何て言ってたんだ」

 どうやら鍋中の待ち人は、このビジネススーツの男らしい。

 鍋中はその男を横目でチラリと見た。

「もちろん報告は上がってますよ、事件の内容が内容ですからね。今回の犯人は、我々の常識から考えれば人ではない可能性のほうが高いですから」

「ふぅっ」 

 ビジネススーツの男は、ニヤケた笑みのままそう話すと、それを鍋中が鼻で笑い飛ばす。

「油儀会長の指示は、何時もどおりでした。鍋中さんは刑事として犯人を捜してくださいとの事です。八尾君が今、掟破りが居ないか当たってるところです。私達の方は、新手の可能性を何時もとおり調べてみます」

「ふぅっ、まあ、何時もどおりだな」

「事件資料は、油儀会長から既にいただいています」

 そう言ってビジネススーツの男は、自分の横にあるアタッシュケースを、軽く拳でノックする。

「流失早いなぁ……まあ、うちだわな。日本の警察のセキュリティーはどうなってやがるんだか」

 自分の所属する組織の情けなさにあきれてた鍋中は、ベンチから立ち上がった。

「あぁ、そうそう、もう一つ面白い情報がありますよ」

「ん?」

 その言葉に立ち上がった鍋中が、再び男の話に耳を傾ける。

「春婆怒村の結界、解けたって噂ですよ」

「なに!」

 今までクールに話しを聴いていた鍋中の表情が驚きに変わった。

 この反応からして、今の話が一番のビックニュースらしい。

「今、弟の虎二がバイクで確認に向かってますがね」

 鍋中はビジネススーツの男の話を聴きながら、またベンチに腰を下ろす。

「その話が本当なら、また騒がしくなるな」

「でしょうね、特に一七五一家は最後まで揉めてましたからね。他の連中も春婆怒に恨みを持つものは多いですし」

 鍋中は、胸ポケットからタバコを取り出すと火を付ける。

「だが、今回の事件とは無関係だろ」

「春婆怒が起こしそうな事件ではないですし。あれは慎重な九十九神ですからね」

 風に煽られ、鍋中のくわえたタバコが早く燃え縮む。

「春婆怒か……、八尾が聴いたらむきになるな」

 今度は胸ポケットから携帯灰皿を取り出した鍋中は、それで吸っていたタバコをキチンと始末する。いかつい顔には似合わずマナーは良い人物のようだ。

 そしてベンチから立ち上がり、今度こそ其の場を立ち去るようだ。

「お前ら兄弟もあんまりはしゃぎすぎるなよ」

「ハハァ……」

 若干の苦笑いを見せるビジネススーツの男に、鍋中は背中を向けると、若い相棒の待つ車の方へ歩いていく。

 鍋中は、車の助手席に乗り込むと運転席の真鍋に指だけで車を出せと指示をだした。

 眞鍋もそれを見て、何もいわずに車を出発させた。

「鍋さん、今のヤツは何者ですか?」

 車を走らせながら眞鍋が質問する。

「ああ、探偵だ」

「探偵ですか……」

「あいつが探偵の事務所を開く前から、何かと面倒を見てやっててな。今じゃ、ちょっとした情報屋として使ってるところだ」

 鍋中は、自分の情け深さを後輩に自慢げに語る。

「さすが鍋さん」

 それを感じた眞鍋が、わざとらしくヨイショする。こんなところだけは、出来た後輩であった。

「まあ、探偵と言っても、普段は迷子のペット探しが専門だがな」



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