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< スケルトン・10 >
 白い怪人の毒煙で弱った油儀と黒童子を抱えた静香は、油儀の分身が居る封印石を目指して走っていた。

 空中に浮いていた封印石は、油義の集中が途絶えて僅に高度を下げていた。

「静香君、ワシらはガシャドクロを封じるぞ」

 意識がはっきりと取り戻しつつある油儀が、自分の体を抱える秘書にそう言うと、一度だけ後ろを振り返った。

 その油義の視線に入ってきたのは、客間に居る黒緑色の背中と、その向こうに居る白い怪人の姿だった。二人の九十九神が居る部屋からは白い煙が吹き出ていた。

「あの九十九神達は、ほっといて良いのですか?」

 もう一人、静香の髪に抱えられていた黒童子が問う。

「かまわん、九十九神同士で殺しあえば良いさ」

「はい……」 

 冷めた口調で返答した油義。その油義を抱えた静香は、高くジャンプをすると空中に浮かぶ封印石の上に着地した。すると油義は、岩の上の自分にそっくりな分身と体を合わせて同化していく。

「おい、油儀。封印石の注連縄が緩んでるが、何かあったのか?」

 毒煙で未だ顔を顰める油儀に、地上から鍋中が様子を窺うように声を飛ばす。

「何も問題は無い。さて、ガシャドクロを封印するぞ……!」

 地上の鍋中に言葉を返した油儀は、冷めた鋭い眼差しで巨大なガシャドクロを睨みつける。

 そして、油義が再び両手で印を組み呪文を唱え始めると、ガシャドクロを捕らえていた四本の注連縄が紫色の光りを取り戻して、更に力強く巨体を引き始める。

「こんな奴、さっさと封じて春婆怒を……」

 油儀の怨み辛みが溢れる呟きは、後ろに控える静香と黒童子にも聴こえていた。

「この人……、相当、春婆怒を怨んでいるのかな……」

「さあ、良く分かりません……」

 隣に居る静香を見ながら黒童子がそう言うが、静香は乱れた髪を元の形に戻しながら首を傾げた。

 現在は油義の秘書を務めている静香だが、昔の事は静香にも良く分からない。静香が油義の秘書を始めたのも、ここ数年の事である。

「がしゃがしゃがしゃ〜ん!」

 ガシャドクロが、封印石に吸いこまれている自分の左腕を引き抜こうと腰を落として力を込めた。その踏ん張りに地面がまたしても揺れる。

「よし、テメー等!、油義を援護してガシャドクロを封印するぞ!」

 鍋中は、若い連中に激を飛ばすのと同時に、その身を枯葉の竜巻と一緒に高く飛び上がった。

 ジャンプをした鍋中の視線にあるガシャドクロの大きな背中が、攻撃の目標として定められた。そして、トレンチコートの懐に両手をつっこみ何かを探った。

「喰らいやがれ、秘儀三十四手裏剣!」

 トレンチコートから引き剥かれた油義の両手には、十七個ずつの手裏剣が握られていた。

「とうりゃ!」

 鍋中の気合の入った掛け声と共に、三十四個の手裏剣が同時に投げられガシャドクロのジェル状の背中に、ザクザクと音を立てて突き刺さった。

「がしゃがしゃがしゃ〜ん!」

 三十四個の手裏剣が背中に突き刺さったガシャドクロが、背を仰け反らせながら苦痛の声を上げた。

「不死身でも苦痛は感じるのですね」

 地上で見守る龍信がそう言うと、背中に背負っていた忍者刀を鞘から引き抜く。

「おら、テメーらも続け!」

 地上に着地した鍋中が指示を叫ぶと、その声に合わせて他の三人もガシャドクロに攻撃を加えようと行動を起こす。

 しかし、その動きを、封印石の上で見守る静香の表情は、心配そうなものだった。

 猫田龍信の様子を目で追う静香。誰にも聞こえないような小さな声で、彼女は心配そうに呟いた。

「あのバカ、怪我だけはしないでよね……」


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