白道寺 (びゃくどうじ)(31/74)縦書き表示RDF


白道寺 (びゃくどうじ)
作:ジッテル



第31話 法力


摩利支天はザリエルロと全体の一人一人の意識の動きを感じ取って判断を下している

ようだった。 

猪達の動きもそれに呼応していて、兵士によっては徹底的に攻撃されている者もいた。

摩利支天はジッと兵士達が右往左往している中の一点を見つめたかと思うと、

ゆっくりと持っている弓に矢をつがえ、キリキリキリッと引き絞って一気に解き放った。

プシュッ、プシュッ、プシュッ

と光の矢が連続して一直線に飛んで行って、兵士達に埋もれて転がっているアルタミラを

囲うように、

ドドドドドドッ

と光の柱が突き立った。 

摩利支天はアルタミラを守るために光の檻を作ったのだ。 

猪達は摩利支天に協力出来ることを誇りに思い、元気いっぱい暴れまわって

土埃で猪達の姿がよく見えなくなってしまった。

暗黒軍全体が猪の大群に掻き回されて大混乱のまま、兵士達が猪の体当たりで

突き飛ばされて、あちらこちらでポップコーンが弾けたように空中に舞い上がっている。 

猪達の力は摩利支天の法力ほうりきで倍増していて暗黒軍はどうすることも

出来なかった。

指揮官のザリエルロが身動き出来ない状態では暗黒軍の士気も下がり、兵士達の動きも

鈍って、戦意を失ってきていた。 

次元の裂け目がジタバタあがいているザリエルロを、じわじわと飲み込み始めた。 

イシン中隊長が駆け寄ってザリエルロの体を引っ張ると、まわりの者達もいっせいに

駆け寄って引っ張ったが、次元の裂け目はガッチリとザリエルロをくわえたまま

放そうとはしない。

このまま飲み込まれたら、どうなってしまうのだろうか。

ザリエルロも兵士達も不吉な予感に怯えて、いつのまにか戦いは中断してしまっていた。 

遥かかなたまで 倒れた兵士達が累々と横たわっているが、その中で動ける者が

ザリエルロのまわりに次々に集まって来て、口々に言い始めた。

っというか思うことと話すことが同時なのだ。 

「クソー、引っ張ってもダメならどうすればいいんだ。」 

「飲み込まれたらどうなっちゃうんだ。」 

「助からねえんじゃ仕方がねえよ。 俺には関係ねえ。」 

「あいつがいなくなりゃ俺達は自由だ。」 

「あいつにはひどい目にあわされた。あんなやつは飲まれちまえばいいんだ。

ざまあみやがれ。」 

心配している者がいるかと思うと恨みを晴らそうとしている者もいる。 

独裁者として言うことをきかせるためには、力で押さえつけなければならなかったために、

兵士達にもひどいことをしてきていた。 

それを恨みに思っている者も多くいたのだ。 

ズブズブ

とザリエルロがなすすべもなくいちだんと沈んで、コウモリの羽も無惨によじれて、

力なく動かすばかり、誰もどうすることも出来ない。

とうとう首まで沈んで頭が出ているだけになってしまった。 

摩利支天はどうしているのだろうか。 

皆があたりを見回すと摩利支天の姿はいつのまにか忽然と掻き消え、同時に猪の大群も

消え去って、サイボーグ軍団がアルタミラを救急搬送用ボックスに入れ、

それをサイボーグの一台が背負って飛び立つところだった。 

ザリエルロは目を見開いたまま、すでに顔の半分まで沈んで、あっ、というまに

頭が少し出るくらいにまでなってしまった。 

「あー、将軍がー」 

皆が一斉に叫んで懸命に頭を引っ張ったが、ドンドン沈んでいってザリエルロの頭は

スーッと空間の中に跡形もなく消え失せてしまった。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう