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第29話 計画書
アデルコは


何かの動物の皮に


したためられた


テミクシからの


生けにえ提案書を


緊張して恐る恐る


カムシュリ王に


差し出した。


あやまって


逆鱗げきりんれれば


命は無いという暴君だ。


王は提案書に目を通すと、


このことにはついては


何も触れず


「この者達に食事と休息を与えよ。」


側近に命じた。


アデルコ達は


あわててて頭を下げた。


そして


側近に先導されて


部屋を退出した。


王は


おちおち寝ていられないほど


疲労困憊ひろうこんぱいして


いるのだろう。


目が落ちくぼみ、


すさんでいる。


危険この上ない状態だ。


こんなとき、


いつまでも


そばにいれば、


いつ王の怒りに


触れないとも限らない。


長居は無用だと


アデルコはホッと


胸をでおろした。


アデルコ達が


行ってしまった。


すると


柱の陰で


様子をうかがって


いたのだろうか。


独りの男が


少し間を置いて、


入れわりに


王のいる部屋へ


入って行った。


王は提案書を


不機嫌な顔で


見つめたまま


物思いに


ふけっていたが、


入って来た者を


ジロリと


見るなり


「コスカルか。


これについて


意見をべよ。」


カムシュリ王は


言葉少なく言うと


丸めてある


テミクシの提案書を


差し出した。


コスカルは


うやうやしく


頭を下げ、


それを


押しただいてから、


おもむろにそれを開いた。


そして読んだ。


しかし


読み進めて行くにつれ


不安がつのってきた。


そこには


神々の怒りを鎮め、


神々に命を


吹き込むためには


大量の生け贄を


必要としている。


そして


神々の激しい怒りは


社会的地位の低い


奴隷や捕虜だけでは


おさまらない。


神々に


誠意を示すには


高い地位の者も


必要である。


と書かれてあった。


テミクシにしてみれば、


これを王が


認証にんしょうしてしまえば


敵対している一派を


一掃することが出来るのだ。


そうなれば


自分の息子や娘が


生け贄の対象に


されてしまう


恐れもあった。


テミクシは


それを


目論もくろんでいる


のではないか。


疑心暗鬼が


ますます


ふくらんで行く。


コスカルは


読み終えると、


国難に頭を悩ませ


強いストレスで


心が不安定になっている


カムシュリ王を


恐れる気持ちを


ふるい立たせるために


少しの間


呼吸を整え沈黙した。


王が


テミクシの考えを


支持しているとすれば


コスカルの発言は


危険なものに


なってしまう。


しかし、


ここで阻止しなければ


自分どころか


自分の一族までもが


生け贄の対象に


なってしまう。


王が意見を


求めるということは、


多分、


王自身にも


迷いがあるからだろう。


コスカルは


覚悟を決めて


口を開いた。


「恐れながら、


陛下へいか


いかに神々の


激しい怒りを


しずめるためとはいえ、


テミクシ殿の


提案には


同意いたしかねます。


今この時期、


復興には少しでも


人手が必要になっております。


それでありながら、


一度に千人もの


生け贄を捧げるとは、


今、直面されておられる


陛下のご負担を


無視した暴挙に


ございます。


それに


生け贄を集めるためには


兵士が必要ですが、


これも


復興に


たずさわらせております。


今は少しでも早く


都市機能を


回復させることを


第一の政策とする時期かと


存じまする。


しかし


この火急かきゅうのときに、


このように


テミクシ殿が


無謀なことを


提案するということには


何か裏に


意図いと


あってのことではないかと


いう気さえいたしますが。」


コスカルはやんわりと


王の心に


疑惑ぎわくを植えつけようとした。


「裏に意図がか。」


王はジッとコスカルの心を


見透みすかすような目で


凝視ぎょうしした。


ドキッ、


自分が王の心を


操作しようとしていることを


見抜かれているのではないか。


コスカルは恐怖で


心臓がこおりついた。


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