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白道寺 (びゃくどうじ)
作:ジッテル



第26話 女性科学者


その男は暗黒軍を自在に率いるザリエルロだった。

アルタミラは殺されるかも知れない恐怖と異質への違和感で震えと拒絶の想いが止まらなく

なった。 

こんな恐ろしくてけがらわしい嫌なやつがそばにいるだけで身震いがして、自分に汚いのが移

って自分もけがれてしまう、と本気で思っていた。 

少しでも早くこの場から逃げたくて、逃げる方法はないかと考えてみたが何も思い浮かばなか

った。 

なんでこのようなことになってしまったんだろうと、アルタミラは自分の運命を呪いながら、

ふと何かが燃えているような煙りの匂いがして何気なく見回すと、いままで気付かなかった

が、目の前に巨大な山があったのだ。 

見上げるような垂直に見える山の斜面に樹木がびっしりと生えていて、それがズーっと、上に

どこまでも続いている。

そして、その斜面が上に行くほど覆いかぶさるようにせり出していて、どういうわけか樹木

が重力を無視して生えている。 

垂直の壁のところでも真横にまっすぐ生えていて、遥か上空の真上にせり出しているところを

意識で拡大して見ると樹木が逆さになって生えているのだ。

物質の世界ではありえない状態だ。 

そして地球上の植物分布では考えられない高度にも針葉樹が均等に生えている。 

ビッシリと樹木で埋め尽くされたところのあちらこちらから細い煙りが立ち昇っていて、

次々に煙の数が増えていた。 

この山は上に行くほど広がっていて、はるか上空にある雷雲で稲妻がいたるところで光って

いる。 

あまりに巨大なものが、頭上高くに覆いかぶさって、圧迫感に圧倒されていた。 

アルタミラがあの煙りは何なのだろうと思って意識を煙りに向けると、すぐに拡大されて

煙りの根元が目の前に現れた。

よく見ると広大な針葉樹の森林がいたるところで自然発火してくすぶっていたのだ。 

巨大に膨れあがった不調和な波動が自然界に同期して自然破壊を起こさせているのかも

知れない。

「気にいらぬやつだ。」

アルタミラの意識の動きを見ていたザリエルロが言った。 

ザリエルロはアルタミラを頭から駄目なやつだと決め付けてしまっていて、やることなすこと

のすべてが気に入らなかった。 

アルタミラはビクッと我に返ってザリエルロの顔色をうかがった。 

戦闘は先程のイシン隊がバリアにはじき飛ばされたために、ザリエルロが本隊を一時撤退させ

て中断している。

博士達はイシン隊がバリアの破れから入って来たときに素早く地下シェルターに避難して、

シェルターの中から外の状況を観察して指示を出していた。 

「アルタミラ君がいないぞ。タカノマユ君すぐ捜索して下さい。」 

ザリエルロ隊が撤退したのを見計らって、ガリレ博士は細身で髪をアップにして上でまとめて

いる若くて肌が抜けるように白い美形の女性科学者に声をかけた。 

白衣のタカノマユが

「はいっ」

と返事をして、しなやかな身のこなしで部屋の中央の広い空間の前に立つと目を閉じて、両手

を唇につけて合わせた。 

突然目の前に地形の立体映像が現れた。 

タカノマユが立ったところは捜索ロボットと交信するための場所のようだ。

タカノマユが捜索ロボットを操って捜索の範囲を徐々に広げて行く。 

彼女の意識をロボットが読んで作動しているのだろう。 

時々捜索している途中で立体映像が若い男を映し出して、その男が働いている場所が出て来

る。 

タカノマユが仕事をしながら恋人のことを思っていて、それを捜索ロボットが瞬時に探し出す

のだろうと一緒に体験しながら見ている私は好奇心を募らせながら思った。 

博士や他の科学者達は慣れっこになっていて、人の意識を使ってロボットを操作するとどうし

ても雑念が入ってしまうのは仕方がないものだと気にもしていないようだったが、出てくる

雑念映像はおかしくて笑いを必死にこらえながら面白がって楽しんでいた。 

捜索の範囲がドンドン広がって行くと地形の起伏が険しくなってきて、巨大な

大扇山だいおうぎさんの麓のところで映像がピタリと止まった。 

かなり山奥のところだ。 

捜索ロボットが大扇山の麓に大規模な人の波動をキャッチして自動でそこを拡大して立体映像

にすると、そこには後ろ手に縛られたアルタミラがザリエルロに今まさに切りきざまれようと

している哀れな姿がこの目の前にいるように映し出された。 

ガリレ博士はそれを見るとすぐさま

「この位置の情報をただちにサイボーグ隊に送って、アルタミラ君を救出に向かわせなさい。

急いで。」

と命令してけわしい表情になった。 

「はい」 

各部所から返事が返ってきて、サイボーグ隊が一斉に上空へ飛び立っていった。












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