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第22話 脱糞
アルタミラは我慢が出来なくなって建物の中にトイレをさがしに入って行った。

建物の中から素通しで外の様子が見えている。 

「突撃ーっ」

ザリエルロが上げていた手を振りおろしながらひと声号令をかけると、ゴーッというどよめきとともに暗黒軍の全体が怒涛の流れとなって押し寄せて来た。 

「あー」

アルタミラは思わず叫んだ。 

バリアが張ってあるこの中にいれば大丈夫だとわかってはいるが大軍団が一斉に押し寄せて来る迫力に圧倒されてしまっていた。  

しかしトイレがない。 

霊界では肉体を持っていないのだからトイレは必要ないのだが、本人の意識が便意をもよおしてそれがあると信じてしまうと具現化してしまうらしい。 

アルタミラはうろうろと手当たり次第ドアを開けて上の階から下の階まで用をたせるところをさがし歩いていた。 

ザリエルロはさきほどから意識をズームにしていたが、相手の司令塔の中にあたふたと落ち着きなく動きまわっている者が気になってしかたがなかった。 

「間抜けな野郎だ。ああいうやつは許せねえ。」 

何かひねりつぶ潰したい衝動でいらいら感がつのってくる。  

ザリエルロはうろたえたり慌てふためいたりして、弱く劣っていると思われる情けない姿を見ると、急に強い差別心に意識が支配されてきて残忍な想いが湧き上がってしまうのだ。  

アルタミラはいよいよ我慢が出来なくなって、

「何でトイレがないんだ。 ここにトイレがあったらいいのに。」 

と願ったその途端、トイレが浮き出て来た。 

願うと出て来るようだ。 

「あー、助かったー。 トイレがあったじゃないか。 こんな所にあったのか。」 

待望のトイレがすぐ目の前にこれ見よがしに横たわっているのだ。 

こんなにトイレが有難いと思ったことがないほど有難かった。 

ホッとしておなかを抱えながらズボンをおろしかけたと同時に、間に合わず思い切り脱糞してしまった。 
どういう加減でか、思いもよらずお腹に力が入ってしまったらしく、ブリンとすごい勢いで発射されて、一本にのびた糞がクルクルと回転しながら飛んで行って部屋の空間にペタリと貼りついてしまった。 

途端にバチバチバチと火花が飛び散って警報音が全館に鳴り響き渡った。 

「脱糞です。脱糞です。脱糞です。」

情け容赦もない無味乾燥な機械的音声が大音響でいつまでも鳴り続けている。 

アルタミラは何が起こったのか見当もつかなかったが、自分がなにか大変なことをしてしまったらしいことは理解した。 

「大変だ。 えらいことをしてしまった。 おれはどうしてこんなことをしてしまったんだ。取り返しがつかない。 みんなに迷惑をかけてしまった。 なんでおれはいつもこうなんだ。」 

アルタミラは恥ずかしさと情けなさと申し訳なさで頭を抱えて泣きべそをかいていた。 

心が動転してしまって、どうしていいのかまったくわからない状態のまま茫然自失の状態で立ちすくんでしまった。  

何もないと思っていたのに何かがあったのだ。  

見えないように仕掛けがしてあったらしい。 

「博士、バリアに異常が発生しました。 バリアの一部が破けています。 

そこを相手に気付かれたら危険なことになります。」 

バリアを監視していたチンゲンが報告した。 

「博士、大変です。アルタミラ君があんなところで何かしたようです。」  

アルタミラが建物の中にいるのに気付いたアルホンスが叫んだ。 

「一体何をしたんだ。 あそこはバリア発生装置がある部屋だぞ。」 

博士が目をむいて意識を向けると一本棒の糞が配線基盤の一部に貼りついたままショートしていて、アルタミラがオロオロして頭を抱えていた。 

「まったく、何てことをしてくれたんだ。 どうしようもないな。アルホンス君、急いで、あそこの基盤を交換してくれないか。」 

「はい、でも少し時間がかかります。」 

アルホンスが部品倉庫へ一目散に走った。 

戦場は激戦になっていた。 

サイボーグは相手の意識を読んでそれに応じた動きをするように作られている。

相手がフェイントをかけてだまそうとしても本心を読んでしまうのでごまかせない。 

右を打つと見せかけて左を打ってもサイボーグはすでに左に来ることはわかっていて左で待っていた。 

だから暗黒軍の兵士達が武器を操ってもサイボーグ達を倒すことが出来ない。  

右腕は自由自在に様々な武器に変化する。 

相手が剣で攻撃して来るとサイボーグの右腕は剣になって応戦する。 

隙を見つけると突然腕が変化して猫パンチと股打ち電撃棒で兵士達が感電して目の玉が飛び出し、全身の毛が逆立ってバチバチと青い火花を散らして真っ逆さまに地獄へ堕ちて行く。 

剣を振りおろすとサイボーグは左腕にたてを持っていて、剣がその楯には貼りついてしまって取れなくなってしまう。

兵士が剣を手から離すと剣も楯から離れ落ちた。

力で押し倒すとゴロンと倒れながらお尻からウンチ蛭弾が発射されて兵士達が蛭に吸い付かれる。 

戦場のいたるところでビチビチ、ビチビチと弾を装填する音が鳴り響いて来る。 

蛭に吸い付かれて意識を失った兵士達は自分達の住家すみかの地獄に堕ちて行ってしまうのだ。  

暗黒軍はサイボーグ達を倒せない。 

兵士達の意識はことごとく読まれてしまってまたたくま間に地獄に送り返されてしまう。 

ザリエルロは焦っていた。 

ふと、意識をガリレ博士に向けた。 

博士の意識がザリエルロの中に入り込んで来ると、博士がバリアの破損を危惧していることに気づいた。  

「バリアがあの馬鹿のお陰で破けたのか。  サイボーグを倒すことより別動隊を迂回させて司令塔を攻撃したほうがいいな。」 

ザリエルロはイシン中隊長にサイボーグ隊を大きく迂回し、バリアの破けているところを捜し出してそこから司令塔を攻撃するように命じた。  

イシン中隊長は五千人の別動隊を引き連れてサイボーグ隊から大きく迂回するように移動し始めた。