第21話 実戦用サイボーグ
けたたましい警報音にみんながいっせいにあたりを見回して、慌てて自分の持ち場に走った。
かなりの距離があるが黒くすすけた大集団が砂ぼこりのようなスモッグを立ちのぼらせ
ながら、こちらに向かって来る。
アルタミラは黒い集団に意識を向けて拡大してみた。
同時に声も拡大されてザワザワした話し声が聞こえてくる。
「皆殺しだ、皆殺しだ、一人も残らず皆殺しだ。」
興奮して嬉々とした声が聞こえて、人殺しが楽しいらしい。
鮫の目をしてツノを生やした兵士達は集団のあちらこちらで喧嘩が始まると、そのまわりも
巻き込まれて、すぐに殺しあいになって大混乱になる。
怒り、憎しみ、殺意がこの集団を動かしているようだ。
化け物より恐ろしい鬼の大軍がこちらに向かって進軍してくるのがわかって肝をつぶした。
「だから言ったじゃない。 あんな間抜けな顔した試作機じゃ太刀打ち出来っこないよ。」
アルタミラは最初から弱腰になってしまってうろたえていた。
「アルタミラ君」
ガリレ博士が横目でにらんでたしなめて言うと、またアルタミラは小さくなって謝った。
ガリレ博士は細い目をより細めて白衣の腕を組んでジッと見ていたが、
「最前列に実験用試作サイボーグを横一列に列べて、その後に実戦用サイボーグを配置する
ように、それから司令塔のまわりにバリアを張ってください。」
と命令した。
試作サイボーグが最前列に五十機、後列に実戦用サイボーグが一千機それぞれが間隔を
開けてならんだ。
迎え撃つ暗黒軍は十万の大軍勢。
芥子粒のように見えていたものが徐々にズーム無しでもハッキリ見えるようになってきた。
間抜けな顔をしたサイボーグ達がどこを見ているのか危機感もない様子でボーッと
つっ立っている。
ザリエルロ達も以前から博士達の様子を意識でズームにして状況を探っていた。
目を大きく開けたびっくり人形のような顔のサイボーグを見ると、ザリエルロは鼻で笑
って、
「なんだあれは、あんなおもちゃみたいたものでおれ達に対抗しようというのか。 一握
りでたたきつぶ潰してくれる。」
と言うと、兵士達もけたたましい野獣のような笑い声を上げて
「首をもぎ取って、手足もバラバラにして二度とおれ達に逆らえないようにしてやろうじゃ
ないか。」
ギラついた目をして顔をゆがませた。
ザリエルロは兵士達を浮かせているパワーを横に拡げた。
またた瞬く間にズラズラーっと広い範囲に兵士達が展開されて、圧倒されるような
大スペクタクルの光景が現れた。
霊に障害物はない。
建物や樹木が在っても素通しだ。
攻撃が始まれば一直線に突進してくるに違いない。
ザリエルロは攻撃にちょうど良い距離まで近付くと全体を止めてじっと攻撃のタイミングを
図っていた。
双方ともは動きが止まったままにらみ合っている。
暗黒軍の兵士達はいまか、いまかと落ち着かずにウズウズしながら攻撃命令を待っている。
サイボーグ達は笑い顔でポケーと、どこを見ているのかわからない様子でまっすぐ前を見て
身動きもしない。
ザリエルロがゆっくり右手を上げた。
「来るぞ。」
博士達の陣営に緊張がはしった。
アルタミラは緊張のあまり逃げ出したいほど体がガチガチで、心臓がのどから
飛び出しそうになってしまっていた。
「おなかが痛い。」
霊に肉体はないはずなのに便意を催して意識がトイレをさがしまわった。
がトイレはどこにも見当たらないのだ。
恐怖と便意によって気がそぞろでうわの空になってしまった。
脂汗が噴出してくる。
肉体を持っていたときの意識がまだ残っていて、危機を感じると肉体感覚の回路が作動する
のかも知れないな、とわき脇で見ている私には感じられた。 |