第19話 復讐
穴に飛び込んだザリエルロは目に入いるものすべて、手あたり次第に襲って切り捨てながら、
大群を率いて進んで行く。
緑豊かで穏和な環境の中でゆったりと生活していたところに、異様な怪物のような兵士達を
見た人々は恐れをなして逃げ惑った。
「たたっ切れー。 にく憎しみを植え付けろー。 怨みに燃えさせろー。」
と叫びながら、ザリエルロは抵抗出来ないでいる人々を情け容赦なく切り捨てて行く。
兵士達が通り抜けたあとは切られたり八つざ裂きにされた人達が、あちらこちらに転がって
いて木は倒され、田畑は荒らされて、重戦車が通り抜けたように無惨な残骸が残っている
だけだった。
霊の世界では食べ物はいらないはずなのだが、霊界のレベルが低い段階では霊の意識に
肉体意識が残っているために食物を必要とするようだ。
地獄の霊はいつも飢えている。
地獄は食物があまり取れないところで、取れても盗みや強奪によって力のある者しか
食物にありつけない。
小動物や鳥などを見つけると、激しい争奪戦で犠牲者が続出する。
いまザリエルロ達が入り込んだところは天上の世界でもかなり下のほうの段階の世界
ではないかと私は感じた。
そして地獄のすぐ横に天上の世界が隣接していたことに驚いた。
ザリエルロは魂の段階で仕切られている霊界の時空のバリヤーに穴を開ける能力を
そなえていたのだ。
しかし普通は意識のレベルが違うところに入ると、魂の段階が同じところへ引っ張られて
落ちるように、その意識に見合った場所へ戻ってしまうものらしいが、ザリエルロは
時空に、自分も他の存在も浮かせたままにする能力もそなえているようなのだ。
ザリエルロや兵士達は食べる物が豊富にある世界に入って来たために、手当たり次第に
食べ物を強奪して、それを奪い合うようにしてむさぼり食らっていた。
地獄では飢えと渇きで満腹になることはなかったが、ここでは動けなくなるほど食べること
が出来た。
兵士達は羨望とあこがれでザリエルロを誇りに思い、全面的に信頼し命をかけて
ついて行こうと決意していた。
兵士の大群がまたたく間にその時空を荒らし回わって、急速に荒れ野に変わって行く。
大量の地獄の軍勢によって、そこも地獄に一変してしまった。
明るく輝いていた世界から光りが失われて暗くよどんで、その世界の住人はいなくなって
しまった。
地獄の帝王はザリエルロの力を見込んで地獄の領域を広げるように命じていた。
帝王は天上の世界もすべて地獄に変えて、そこに君臨しようと考えていたのだ。
それは自分を地獄の底に沈めた神への反抗であり、そして自分達は地獄に落ちることはなく
正しく生きられるとたかをくくって、地獄の底に落ちている自分をあざ笑って
唾棄するように毛嫌いしているであろう天上の世界の住人への復讐でもあった。
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