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八男って、それはないでしょう!  作者:Y.A
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最終話 そして何気ない日常へ……繰り返す因果?

「バウマイスター辺境伯、いるであるか?」

「はい? ああ、導師でしたか」

「また土木工事であるか?」

「ローデリヒから頼まれているのですよ。いつもの事ですけど……」




 あの事件から一週間後、バウルブルク郊外で魔法による土木工事に勤しむ俺を導師が訪ねてきた。
 王宮からのメッセンジャーのようだが、彼にもっとも適した任務であろう。
 プラッテ伯爵家と魔道具ギルドの始末で中央の貴族と王族は忙しく、暇な導師に出番が回ってきたというわけだ。

「工事は終わったので、屋敷に戻りましょうか?」

「できれば何か食べさせてほしいのである!」

「エリーゼが準備しているはずです」

「それは好都合である!」

 予定の工事を終えた俺が導師と共に『飛翔』で屋敷へと戻ると、中庭では、エリーゼ達が中庭にテーブルと机を並べて昼食の準備をしていた。

「あっ、導師だ」

「美味そうな飯であるな! ルイーゼ嬢よ」

「エリーゼが指揮を執っているからね」

「ルイーゼさん、口を動かす前に手を動かしてくださいな」

「はーーーい」

「ルイーゼ、子供達の教育によくないわよ」

「ううっ……イーナちゃんはすっかり教育ママさんだね」

 ルイーゼも、カタリーナも、イーナも、みんなで昼食の準備をしている。

「大人数だから大変じゃの」

「本当、うちは大人も子供も多いわね」

 テレーゼとアマーリエ義姉さんもテーブルに食器を並べたり、料理の配膳で大忙しだ。

「そう、細く魔力を流す。それだと多すぎ」

「大分、魔力にコントロールが上手くなったな」

 ヴィルマとカチヤは、昼食になるまで先に生まれた子供達に魔法の指導をしていた。

「まだまだですね」

「まったくリサに勝てる気がしないな」

「そうかしら?」

「ルルはまだ魔力が成長しているから、いつかリサを抜くかもしれないが、アキツシマ人の魔力の少ない事よ。まだ成長途中のルルが羨ましい」

「一人前の魔法使いになったら、南の海から海竜サーペントを駆逐して、気軽に漁と航海ができるよう、今のうちに強くなっておくのです」

 リサは、藤子、ルルに集中して魔法を教えていた。

「あっ、導師だ。いらっしゃい」

「エルヴィン……何をしているのである?」

「手伝いですけど」

 導師は、食事の支度を手伝っているエルを見て目を丸くさせた。
 リンガイア大陸の常識では、冒険者の野営以外でまずあり得ないからだ。

「導師様からも仰ってあげてください。恥ずかしいので」

 ハルカは、エルに手伝いをやめるように説得してほしいとお願いした。
 いまだリンガイア大陸の常識では、男性が食事の支度を手伝っていたら、『女性は何をサボっているのだ!』と思われてしまうからだ。
 唯一の例外が、野営中の冒険者なわけだが、屋敷でエルが家事を手伝っているとハルカがいい顔をしない。
 実は、俺も同じであったが。

「魔族は、男性もやっているから。ここはヴェルの言うとおり、男性も手伝える範囲で家事や育児をしてもいいのではないかと」

「何かに影響されたのであるか?」

「それが、昨日モールさん達が来て……」

 昨日、交易の打ち合わせも兼ねて、モール達が奥さんと子供を連れて遊びに来たのだ。
 彼らはエリーの経営する会社で幹部候補として働き、社内で知り合った女性と結婚して子供も産まれている。
 見事なまでの順応力の高さであり、恩師であるアーネストもさすがに驚いていた。

『それで、考古学の方は?』

『時間がないので……』

『先生、考古学では飯が食えないです』

『時間があれば手伝ってもいいかな?』

『我が教え子達は、みんな忙しいのであるな』

『仕事で忙しいですね』

『休みはちゃんとありますけど、その時は家族優先で』

『先生、結婚するって大変なんですよ』

『かぁーーー、恩師への配慮がなってないのであるな』

 とはいいつつ、実は現在のアーネストはバウマイスター辺境伯家がパトロンをしている考古学者、王国のアカデミーから派遣された学者や生徒と組んで王国中の地下遺跡発見と発掘を行っている。

 王国政府は、アーネストには餌(遺跡と考古学調査)があれば大人しくしていると判断したわけだ。
 ああ見えて教え子への面倒見はいいので、今は人間の生徒達に色々と教えたりしている。

 そんなわけで、今はたまにしかバウマイスター辺境伯領に戻って来なかった。
 昨日は教え子とその家族を見に来たわけだ。

「アーネストであるか……」

「導師って、アーネストが苦手ですね」

「そんな事がないのである。エルヴィンよ」

 導師は体育会系で、アーネストは完全な文科系。
 相性が悪いのもあるが、実は自分の好きな事を優先するなど、似ている部分も多い。
 近親憎悪も混じって、二人は相性が悪いのかもしれない。

 今は共にほぼ同じ魔力量という点も、お互いを意識させるのかもしれなかった。

「大体、あの男と器合わせをするから、某の魔力は奴と同じところで成長が止まってしまったのである!」

「それは言いがかりのような……」

「俺もそう思う」

 導師、それは完全な言いがかりです。
 もしエリーと器合わせをしても、導師の魔力はアーネストと同量までしか増えなかったのだから。

「話がそれました。モール達は手伝いをしていましたよ」

 実はモール達は共働きであった。
 奥さん達は、出産後に仕事に復帰している。
 そのため、彼らは食事の支度を手伝うなど習慣がついていたのだ。

「この流れが、いつかリンガイア大陸にも入ってくる可能性が高いじゃないですか。先端を行くってのはいいですよ。なあ、ヴェル」

「それはいいけど、エル、お前は絶対に料理を作るな」

 男性が家事を手伝おうと手伝いまいと、それは個人や夫婦間の問題だと思う。
 俺に干渉するつもりはないが、エルが料理をするととんでもなく不味い物が出てくるので、調理だけはやめて欲しかった。

「ええーーーっ、最近ハルカの料理を見て、俺もいけると……」

「いけない」

 和食に似たミズホ料理は、色々と繊細なのだ。
 味覚の許容範囲が広すぎるエルには向いていないと思う。

「食材が勿体ないから駄目」

「ヴェルが酷い……」

 俺は全然酷くない。
 失敗料理なんて食べたくないからだ。
 それに、お母さんから言われなかったか?
 食べ物を無駄にしてはいけないって。

「ヴェンデリン、息災か?」

「バウマイスター辺境伯殿、お邪魔します」

「本当に陛下は、幻の魔法『瞬間移動』が使えるようになったんすね」

 突然、視界にエリー、ライラさん、ルミの三人が現れた。
 オットーの事件で俺と器合わせをしたエリーであったが、彼女はあれからすぐに魔力量の上昇が止まっており、俺とは違って器合わせの恩恵をあまり受けていないように見えた。
 ところが、今まで魔族では滅多に使える者がいなかった『瞬間移動』を習得し、今では各地を自由に移動できるようになっていた。
 今日も、アキツシマ島、バウマイスター辺境伯領西部での視察を終え、ここに姿を見せていた。

「器合わせで使える魔法の種類が増える事はよくあるのであるが、それは魔力量が増えてからというのがこれまでの定説である。不思議である」

「理屈はわからぬが、便利な魔法よな。我が社の拡大と、交通費の削減に多いに貢献しているぞ」

「陛下、利益率の改善も期待できます。自前で『瞬間移動』を持つ事がこれほど便利とは」

「一瞬で取材先まで行ける。便利っすね」

「ブンヤであるか。取材といっても、ただの昼食会である」

「導師さん、ここはバウマイスター辺境伯さんの家族団欒を取材して、世論が好感を持ってくれるように記事を書こうかと思いまして。大スクープのお礼っすね」

 ルミは、オットー一味とオズワルド議員による暗殺未遂事件の詳細を独占でスクープして大金星をあげた。

「会社の上層部の連中は顔を渋くさせていたっすけどね。自分を処罰などできないので、気にしては負けっす」

 現役の議員が王国貴族と魔導具ギルドから暗殺の仲介を請け負い、高額の仲介料を受け取っていたのだ。
 現在、政府与党である民権党は世論と野党から同時に叩かれ、ほぼ機能不全の状態になっていた。
 任期満了前に議会を解散する事を阻止できず、次の選挙では惨敗するとまで新聞で予想されるあり様だった。
 無理やり任期満了まで居座ると、余計に批判が増して選挙に勝てなくなる可能性があり、今はいつ議会を解散するか決めている最中だそうだ。

「オズワルド議員は?」

「政治資金の流用と脱税で起訴されるでしょうが、懲役はつかないと思うっす。バウマイスター辺境伯の暗殺を受け負った件は、実行犯でもないですし、事件は他国の領地で起こっています。起訴できないそうっす」

「そんな事だろうと思った」

 認めてしまうと、王国との交渉の席でその件について責められる事は確実だ。
 交渉で不利になってしまうので、意地でもオズワルド議員を暗殺未遂容疑で逮捕しないであろう。

「実行犯達は、このままゾヌターク共和国に戻って来ない方がいいと思っているっすね」

 戻って来ても、俺の暗殺を試みた容疑では逮捕できない。 
 ゾヌターク共和国国内で起こった事件でないので、法的に逮捕できないのだ。
 かといって、そのまま無視すれば事実は新聞で報道されている。

 『他国とはいえ、大貴族を暗殺しようとして無罪なのは、法治国家としてどうなのか?』という批判が出てくるだろう。

「民権党の議員には弁護士も多いっすからね。法を拡大解釈して逮捕すれば、オットーのような連中からは売国奴だと批判され、逮捕しなければ自分達の支持母体から人権侵害だと批判が出てしまう」

 リーダーのオットーは死んだが、他の暗殺に参加した九名と、彼らが乗ってきた魔導飛行船の乗組員達はいまだ収監されていた。
 今も拘束用の魔力を吸収するコードをつけられ、そう簡単に脱走できないようになっている。

「トカゲの尻尾切りである!」

「導師さんからそう言われてしまうと反論できないっすね。そんなわけでして、現在、我が国の政治は大混乱っす。民権党政権も儚かったっすねぇ……」

「これは陛下からの情報であるが、現在交渉団は国権党の政治家連中と話し合っているのである。あの連中の方が、手強いながらも交渉はできるだけマシだと陛下は仰っていたのである」

 どうせもうすぐ議会の解散と選挙が行われる予定で、大方の予想では民権党が惨敗するであろう言われていた。
 それならば、早めに次の政権を担う連中と話し合いをした方がいいわけだ。

「交渉団団長のレミー氏が、議会の解散と選挙が近いからという理由で、テラハレス諸島から勝手に持ち場を離れて批判されているっすね」

 選挙に通らなければ、政治家では政治家ではなくなる。
 それでも、団長なのに重要な交渉をサボって選挙準備に入った彼女に対し、魔族達の批判は大きいようだ。

「サルは木から落ちてもサルだけど、政治家は選挙に落ちればただの人だな」

「おおっ! バウマイスター辺境伯さん! それって至言っすね。メモメモ……」

 ルミは、俺の発言をメモし始めた。
 実はこの言葉、嫌々労働組合の命令で選挙応援に行った時、年配の上司から聞いたものだ。
 政治家として綺麗事を言ったり、他人から敬意を払われるため、あいつらは選挙に落ちないよう必死なのだと。

 義務で入った労働組合だったが、組合費は高く、幹部連中がそれを使って豪遊している噂もあったし、そうでなくても残業だらけなのに休日に動員があったり、俺の記憶の中ではあまり役に立った記憶はない。

 そういえば、民権党の支持母体も労働組合だった。
 あの連中にはあまり期待できまい。

「バウマイスター辺境伯さんは、民主主義をよく理解しているっすね」

「そうかね?」

 前世では、民主主義の世界にいたが、もの凄く詳しいかと言われると微妙な線だ。

「国権党の政治家が、王国の貴族は予想以上に民主主義を理解していて交渉がやり難いって言ってたっす」

「陛下は、バウマイスター辺境伯からたまに話を聞いていたのである!」

 『魔族の政治形態についてどう思うか?』と聞かれたので、私見を話しただけだ。
 それなりに参考になったらしい。
 交渉では、上手くそれを利用して交渉を進めているのであろう。

「もう少し時間が経てば、それなりに落ち着くと思うっすよ」

「我々の方は、もっと早く片付いたのである!」

 俺への暗殺未遂事件への関与で、魔導ギルドは解散というか独立した組織としては終焉を迎えた。
 帝国と同じく魔導ギルドの一部門として再スタートする事になり、それに反発する旧上層部と年寄り連中は粗方役職から追われている。
 代わりに若い魔道具職人が幹部に指名され、魔導ギルドと協力して魔導技術の発展を目指す。
 特に最優先なのは、魔族の魔道具技術に追いつく切り札となりそうな『魔法陣板』の量産化と、刻み込む魔法陣のパターン研究であろう。
 日本でいえば、半導体と制御プログラムの開発をするようなものだ。

 成功すれば、魔族の魔道具に十分対抗可能らしい。
 ただ、魔法陣を刻み込むシリコン製と極限鋼製の板は、俺が暫く供給しなければいけない。
 元々極限鋼は俺しか作れないので、俺が供給するしかないのだが。
 勿論、この世界の人間はケイ素なんて元素は知らないので、焼き物の亜種とはいえ、シリコンも提供しなければいけなかった。

「仕事が増えて面倒です。導師」

「我が国のためである。我慢するのである」

 導師、あなたは我慢した事があるのでしょうか?
 俺はないと思っています。

「魔道具ギルドの年寄り共、みんなヒラに降格して魔道具作りに精を出しているのである!」

「クビじゃないんですね」

「魔力とスキルが勿体ないのである!」

 シャーシェウド会長は死んだが、罪人として永遠に不名誉な記録が残る事になった。
 一族に魔法を使えないにも関わらず、高給な役職や、コネで魔道具の工房や関連した商会に職を得ていた者がいたが、彼らは全員クビになる事が確定している。
 殊更陛下が強要したわけではないが、コネで人を雇うのは、この人物のバックから得られる利益に期待しての事だ。
 罪人となったシャーシェウド会長の類縁を雇っても、利益どころか損失しか出ない。
 魔法が遺伝しない以上、彼の一族に魔法が使える者はおらず、彼らのバラ色の人生はいきなりどん底へと叩き落とされたわけだ。
 シャーシェウド会長の権勢で得をしていたのだから、彼の失脚と同時にそれをすべて失っても、そこに同情する余地はあまりなかったが。

「シャーシェウド会長は死んだが、他の元幹部連中は魔道具の生産量向上に死ぬまで貢献してもらうのである! 陛下が言い含めているので、逃げたらシャーシェウド会長と同じ運命だと言っているのである!」

 加齢で多少衰えているが、魔道具作りができないわけではない。
 魔道具職人の給金はいいが、死んだシャーシェウド会長と共に魔道具ギルドに損害を与えているので、これからその損失分を罰金として納めなければいけない。
 コネで押し込んでいた一族が全員ニートになるので、彼らの面倒を見ながら生活するとなると、庶民並の生活になってしまうであろう。

 これは、かなり辛辣な罰かもしれない。

「交渉は、国権党とやらの議員達がテラハレス諸島の来ているのである! 連中は、テラハレス諸島の設備をホールミア辺境伯に譲って撤退する意図があるようである!」

 あんな遠方にある孤島群なんて、魔族もいらないのであろう。
 警備隊の駐留経費、あまり役に立たない青年軍属達への手当もあり、維持すればするだけ大赤字になってしまう。
 とっとと元の持ち主だと主張するホールミア辺境伯に返してしまった方がいいと思っているようだ。

 交渉が始まった過程で増築されて建物などは増えていたが、それは残していくらしい。
 解体すると余計に費用がかかるし、公式には言わないがホールミア辺境伯への謝罪を兼ねたお礼というわけだ。
 領有権は主張していたが、今までまったく使用していなかった島にある建造物があっても、ホールミア辺境伯に何の利益があるのかという疑問はあるが。

 テラハレス諸島を交易中継地にするという案も出ていたのだが、やはり場所が不便だという理由で使用されない事になった。
 双方、既にある港で交易に関する続きをした方が早いという事もあり、ホールミア辺境伯が返還されたテラハレス諸島をどうするのかは不明であった。

「うちの領地ではないですからね」

「王国直轄地でもないのである。漁業基地にするという意見が出ているようである」

 実はあの島々、そのくらいしか使い道がなかった。
 農業に適さず、水が不足しやすいので、あまり多くの人が住めないのだ。
 魔道具である海水を真水にろ過する装置を使い、漁船の休憩地にするくらいが一番いいのかもしれない。
 建物が残るので、そんなに経費もかからないはずだ。

「先生、お食事の支度ができましたよ」

「導師様もどうぞ」

「おおっ! すまないのである」

「今日は、私も結構手伝いましたよ」

「ベッティは、兄さんに似て料理が上手だからな」

「お兄ちゃんの唯一の特技ですからね」

 昼食の支度ができたと、アグネス、シンディ、ベッティが呼びにきてくれた。
 この三人も結局俺の妻になり、子供も産まれ、今の生活にも十分に馴染んでいた。
 今日も、エリーゼ達と昼食の支度を手伝っている。

「旦那様、今日はアキツシマ島冲産のサーペントの肉料理がメインです」

「涼子、雪、サーペントって減ったか?」

「アキツシマ島の近くはそれなりにですね」

「他の海域はそうでもないです」

 普段は飾りながらもアキツシマ島の代官である涼子と、実質代官職として働いている雪も今日はこの食事会に呼ばれていた。
 二人の隣には、親父が曲者っぽい名前の唯もいる。

 今日は、まだ結婚していないフィリーネ以外の俺の奥さんが全員揃っていた。

「今の方はいいのであるか?」

「久秀殿に任せています」

 導師の問いに、雪が答えた。
 アキツシマ島の元領主階級の人間からすれば、涼子、雪、唯の三名はできる限り俺の傍にいて沢山子供を産んでくれ。
 その子は、うちに嫁入りなり婿入りさせるからと、今は週の半分以上はバウルブルクの屋敷にいる。
 その間の執務は、唯の父親である久秀が代行している。
 唯が産んだ子供が上級魔法使いになれそうな素質があり、松永家の跡取りとして申し分ないので、彼はウキウキしながら執務を代行してくれた。

 もっとも『唯にもっと子供を産ませて、うちの家に嫁としてくれ』、『跡取りにするから婿にくれ』と希望が殺到して大変なようだ。
 涼子と雪にも『公式の行事以外はバウルブルクですごし、もっと沢山子供を産んでください』と懇願したという事情もあるようだ。

「子孫繁栄である」

「導師も子供が沢山いますよね?」

「バウマイスター辺境伯ほどではないのである」

「そうだな。うちなんて一人娘だからな」

 一人娘を異常に可愛がるブランタークさんも、俺と導師の話に加わってきた。
 前世では考えられない子沢山だが、これもこの世界の定め。
 魔族の国は平成日本に近かったが、他はこの世界なりの常識がある。
 俺はもう完全にこの世界の人間になってしまっていると思っていた。

 魔法が使えても不自然に感じないし、貴族にもなったし、広大な領地もある。
 王族や貴族との柵は面倒だが、今は毎日充実した日々をすごしていると言っても過言ではないであろう。

 唯一の懸念は、果たして向こうの世界の一宮真吾の体はどうなってしまったのか?
 体を乗っ取った形になってしまったヴェンデリンがどうなったのか?

 疑問は尽きないが、確認する術がない。

「ヴェル、腹減ったな」

「そうだな。席について飯にするか」

「ほほほっ、余は客人なのでヴェンデリンの隣の席だな」

「エリー様も懲りないね」

「ルイーゼさん、エリー様は交易で我が家に大きな利益をもたらしてくれる重要なお客様ですから。反対側の隣は私が座りますけど」

「エリーゼ、ちゃっかりしてるなぁ……。それはわかっているけどね。エリーゼは正妻だから」

 当主として一番の上座に座り、その両脇にエリーとエリーゼが座った。

「それでは、両家の繁栄を祝って乾杯」

「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」」

 俺の合図で、みんながワインの入ったグラスを掲げて乾杯した。

「それにしても、この未開地には何もなかったのであるが、随分と発展したものである」

「無人の地がこれだからな」

 導師とブランタークさんが、ワインを煽りながら今も拡大を続けるバウルブルクについて話し始める。
 そう言われると不思議な感覚だが、それを俺が成しているという事実も不思議に感じてしまう。

 それでも、俺がこの世界に召喚されたのには、何か意味があったのだと考えられるようになった。
 多分、俺は死ぬまで一宮真吾ではなくヴェンデリンとして生きて死んでいくはず。
 そして俺の死後、バウマイスター辺境伯家はどうなるのであろうか?

 無事に何代か続けばいいなと思いつつ、俺はグラスに入ったワインを飲み干すのであった。








「ヴェンデリン、よく聞きなさい」

「はい」

「私がなぜお前に、それもバウマイスター辺境伯家の八男として生まれたお前に、我らの偉大な初代様の名を授けたのか。わかるな? ヴェンデリン」

「桁違いの魔力があるからかな?」

「そうだ! お前は、初代様に匹敵する魔力の持ち主。いわば先祖帰りのような存在なのだ」

 また、父上からの長い話が始まった。
 それもいつも同じ話ばかり。
 いい加減に聞き飽きたな。

 俺は、ヘルムート王国において広大な領地を持つ大貴族バウマイスター辺境伯家の八男として生まれた。
 母アマーリエは側室だけど、生まれながらの魔法の才能で父上に可愛がられている。
 それはいいのだけど、いつも俺がバウマイスター辺境伯家の新しい希望なのだとか、先祖の偉大な逸話、それも同じ内容のものを何回も話すのには参ってしまう。

 兄上達は……巻き込まれたくないから逃げてしまったようだ。
 側室の子供で魔力量が多いから苛められているとかはないが、兄上達は俺を父上の長いお話の被害担当と思っている節がある。
 俺も逃げてしまうと父が話をする相手がいなくなってしまうので、仕方なしに話を聞いていた。

「初代様より、我が一族は不思議と魔法の才能が子孫に受け継がれるようになった。我が家には、魔族の血も度々入っているからな。初代様は、何と魔族の王も妻にしたそうだ」

 初代様は、随分と大胆な人であったようだ。
 とんでもなく貧しい騎士爵家の生まれながら、魔法の才能を生かして様々な功績をあげて大貴族となった。
 王家とも血の繋がりがあり、今も五大辺境伯家の筆頭、新領土南ヘスティニア大陸都督との連絡役として、王家からの信任も厚い。

 子孫に魔法の才能が遺伝するようになったのは、初代様からだ。
 そのおかげで、バウマイスター辺境伯家はこれまで何十人も王宮筆頭魔導師を輩出している。

 ところが、初代様からの申し送りによると、魔力の遺伝は段々とその効力が落ちてくるらしい。
 実際に、今は昔の中級レベルでも天才扱い。
 上級は数十年に一度の奇跡と言われている。
 大半は初級レベルという状態だ。
 それでも、他の貴族家は魔法の才能が子孫に遺伝しない。
 バウマイスター辺境伯家から嫁なり婿を受け入れても、数代でその効力がなくなってしまう。
 貴族の中には魔族と婚姻を行うという裏技に走る人もいるみたいだけど、魔族は数が少ない。
 それに、数代で魔力の遺伝がなくなるのは同じだ。
 魔力量の減少に悩むのは魔族も同じで、どうして魔族までそうなるのか多くの学者が研究しているが不明であった。
 元々魔族は、最先端の魔導技術を持っていた。
 空気中に微量漂う魔力を収集して魔晶石に蓄え、それを効率よく燃やして動かす魔道具の開発と生産では群を抜く存在である。
 魔族自体に魔力がさほどなくても困らない状態だから、必要がないと本能で理解して衰退したのではないかという説が唱えられていた。

 人間も同じで、初代様の時代に比べれば圧倒的に魔導技術が進歩している。
 少ない魔力で魔道具が動くようになり、魔力が少なくても困るという事はなくなった。
 そのため、人間も必要がなくなったので魔力量が減ってしまったのではないかという説を学者が述べていた。

「しかし! 我がバウマイスター辺境伯家の力の源泉は魔法と魔力にある! 困っていたところにヴェンデリンが産まれた! 陛下も! 多くの貴族達も、お前が希望に見えているのだ!」

「希望ですか……。俺は何をすればいいのですか?」

「実はお前に、王家より王女様が降嫁される事が決まった」

「それって、おかしくないですか?」

 普通、兄上達の方が優先されるはずだけど……。
 その前に、兄上達から苦情は出なかったのであろうか?

「第三王女のイーナ様は、久しぶりに王家から出た天才魔法使いなのでな。お前との婚姻が相応しいと陛下もエーリッヒ達も言っていたぞ」

「えーーーっ! あいつですか?」

「こらっ! イーナ様に向かって何て口を利くのだ!」

 父上、そうは言いますが、あいつは俺を常にライバル視して面倒な奴なんです。
 物心つく頃から顔見知りだけど、いつも魔法勝負を挑まれ、俺が適当にあしらうと、次こそは必ず勝つと捨て台詞を吐かれる。

「父上、いつも勝負する俺の心情を察してください」

 もし怪我でもさせると大変だから、手加減するのも面倒なんです。

「ヴェンデリンよ、お前はまだ若いな。女心がわかっていない。実はイーナ様はお前が大好きなんだが、それを素直に伝えられないのだ。勝負を挑む事でお前と絡もうとする。実に健気ではないか」

「そうだったのですか」

 それは、思わず好きな異性に対し意地悪をしてしまうという、アレなのか?
 でも、全力で『ファイヤーボール』はやりすぎだと思うんだよなぁ……。

「私がそう思っているだけだが」

「父上……」

 事実じゃないのかよ!

「何にしてもだ。お前は子供がいない大伯父上の養子となって、分家の当主になってもらう。エーリッヒは優秀な跡継ぎだが、お前もエーリッヒを支えるのだ。他のヘルムートやパウル達は、みんな他の貴族家に婿養子に行ってしまうからな」

 最近全体的に魔力量が減ったとはいえ、中級ならバウマイスター辺境伯家から産まれた子供の半数がそうだ。
 そのため、バウマイスター辺境伯家には常に多くの子供を作る義務が課せられている。
 嫁入りする娘は当然であり、息子も子供に男子がいない貴族家にはとても人気があった。
 父上も、現時点で息子十三人、娘二十一人がいる。
 まだ足りないと王家から言われているそうで、俺の弟と妹はまだまだ増えそうである。

「そんな状況のため、お前はイーナ様を正室に迎えるのだ」

「それ、エリーゼ達にどう説明するのですか?」

 バウマイスター辺境伯家の子供は、早くに複数の婚約者が決まってしまう。
 俺の正妻も、教会とも縁が深い王都の有力大貴族ホーエンハイム伯爵家の娘エリーゼに決まっていた。
 そういえば、初代様の正妻もホーエンハイム家の出でエリーゼという名前だったそうだ。
 治癒魔法の使い手という部分も似ている。

 他にも複数の婚約者がいるのだが、今さら王家とはいえ俺に正妻として王女様を押し込むと、いらぬ混乱が起こりそうな……。

「そこは王家が何とかするそうだ。それでだ。ヴェンデリンには重要な仕事がある!」

「もしかして……」

「お前がエリーゼ達に説明するのだ」

「父上がやってくださいよ!」

「嫌だよ。怖いもの」

 父上……。
 曲がりなりにもバウマイスター辺境伯が、成人前の小娘数人が怖いって……。

「とにかくだ! 私は色々と忙しいので、あとはヴェンデリンに任せた」

 父上は早々に話を終わらせてしまい、俺は父上の執務室から追い出されてしまった。

「エル、なぜ俺がエリーゼ達に説明しないといけないんだ?」

 執務室から出た俺は、御付きである重臣アルニム家の五男エルヴィンに己に振りかかった理不尽を説明した。

「お館様はお忙しいのだから、そこはヴェルが自前でやらないと」

「エルも手伝えよ」 

「俺の嫁さんじゃないもの」

 エルは、幼少の頃から幼馴染で親友でもある。
 二人きりの時には、かなり砕けた口調で話をした。

「でも、いくら王家でも横入りはないよな」

「本当だぜ。しかも、お相手はイーナ様ときたものだ」

「あの人、本当にお転婆だからなぁ……」

 そんな話をしながら自室に戻ると、そこには俺の婚約者達が待っていた。

「あなた、お茶を淹れますね」

「エリーゼ、俺達はまだ正式に結婚しないから『あなた』はどうかと思う」

 もうすぐ成人する俺達であるが、正式に結婚する前にその関係を深めておこうと十二の頃から一緒に生活していた。
 エリーゼは自分が俺の正室になると疑っていないのに、いきなり王女様の横入りだ。
 これを話すのは辛い……というか、これは父上の仕事じゃないのか?

「イーナ様の件ですか?」

「知っていたのか、エリーゼ」

「はい。お父様から連絡を受けました」

 エリーゼは、携帯魔導通信機でホーエンハイム伯爵からイーナ様の件について聞いたようだ。
 彼は教会の重鎮だから、知っていて当然か。
 元々エリーゼにしても長女であり、いくらバウマイスター辺境伯家とはいえ八男に嫁ぐのはおかしいからな。

「仕方がありません。今の王家は、あまり優秀な魔法使いが出ていないのです」

「そうなのか?」

「はい、陛下の御子の中で中級以上の魔力を持つのは、イーナ様だけですから」

 魔力の量が王家の力と比例するわけでもないが、やはり優れた魔法使いが多いに越した事はない。
 イーナ様と俺との間に生まれた子供の魔力に期待したいというわけだ。

「ヴェル、いまだに魔力が増えているものね」

「まあね」

 もう一人の婚約者にして、バウマイスター辺境伯家分家魔闘流師範役オーフェルヴェーク家の次女ルイーゼも話しかけてきた。
 バウマイスター辺境伯家で産まれた子供は、物心つくころから初代様が作った訓練マニュアルで魔法を習う。
 魔力を増やす訓練も同時に行うのだが、俺は上級を遥かに超えてもいまだに魔力量の限界が訪れなかった。
 このまま行くと、初代様と変わらない魔力量まで成長するのではないかと期待されていたのだ。

「面倒な話だな。魔法対決なら、カタリーナとかが互角くらいじゃないのか?」

「どうやらイーナ様は、私など眼中にもありませんようで……」

 第三の婚約者、バウマイスター辺境伯家の寄子ながら実質分家のような存在であるヴァイゲル子爵家の長女カタリーナも俺の婚約者として幼少の頃から一緒に生活していた。
 成人前にも関わらず、すでに天才だと言われているカタリーナは、俺の見立てではイーナ様と互角か、少し実力が上の魔法使いであった。
 それなのに、昔からイーナ様は俺に執着して勝負を挑み、毎回負けていた。

「ヴェンデリンさん、毎日勝負できますわね」

「俺が嫌なの!」

 時間が勿体ないから、そう思って当然だ。

「そうですわね。第一、ヴェンデリンさんの婚約者は私達だけで固定だと思っておりましたわ」

「名前が関係しているかも。私も初代様の妻と同じ名のヴィルマだから。みんなもそう」

「名前が同じだからって、旦那と結婚して子供が生まれるとみんな上級になるってか? そんなわけないじゃん」

 同じく分家アスガハン家の次女で魔銃使いのヴィルマと、寄子で実質分家のオイレンベルク男爵家の長女カチヤも話に加わってきた。
 この二人も、俺の婚約者であった。

 名前が同じというのは、初代様の妻は公式、非公式を合わせて三十名から五十名以上。
 子供の数は八十名から百四十名以上とも言われており、その妻の中で名前が伝わっている人物と同じ名前の娘が同じく初代様と同じ名前である俺の婚約者に指名されていた。

 同じ名前だから、そう都合よく上級魔法使いが産まれるはずもないと思うが、このところの魔力量の低下は深刻であった。
 きっと、王国上層部ですら藁にも縋る思いなのだと思う。

「冗談のような話じゃが、妾も同じ名前だからという理由でフィリップ公爵家から嫁ぐ予定じゃからの。帝国はもっと優秀な魔法使いの確保に苦労しておる」

 俺の婚約者には、帝国の娘もいた。
 フィリップ公爵家の三女テレーゼ、ラン族出身で褐色の肌が特徴の肉感的な美少女だ。
 数百年前から王国貴族と帝国貴族との婚姻は珍しくなくなっていたが、向こうは選帝侯家なので、よほど俺に期待しての事なのであろう。

「それにしても、いくら王女様とはいえ、この状況で割り込む度胸が凄いですね」

「だよなぁ……」

 同じく分家から来たリサは、俺よりも五つも年上だった。
 彼女も本人が魔法使いなのと、初代様の妻と同じ名前だという理由で俺の婚約者にされている。

「相手が王女様だろうと、ヴェルの方が夫なんだから偉そうにしていれば? 文句言ったら、魔法勝負で負かしてしまえばいいんだよ」

「エル、お前は気楽に言ってくれるな」

「だって、俺の婚約者の話じゃないし」

 エル、お前ちょっとムカつく。

「それで、いつ来るんだ? あのお姫様は」

 実はエルも、会う度にイーナ姫が俺に魔法勝負を挑む現場に何度も居合わせていた。
 そのため、彼女と顔見知りでもあったのだ。

「あの姫様の護衛もするとなると、すぐにあちこち遊びに行かれると面倒だからな。他の連中と護衛任務の打ち合わせをしなきゃいかん」

 俺がただの八男ならエルが一人で護衛すれば済む話だが、先祖返りと言われている魔力のせいで魔族からも注目されているらしい。
 父上は、俺への護衛を強化していた。
 万が一にも、誘拐でもされたら困るのだそうだ。

 当然婚約者達の護衛任務もあり、エルはお転婆で有名なイーナ姫の護衛が大変そうだと溜息をついた。

「ヴェル、お館様から聞いていないのか?」

「何も言わなかったから、父上も知らないのと違うか? エリーゼは知っている?」

「さすがに、いつここに来るかまでは知らないです」

「姫様なんだから、色々と準備に忙しいんじゃないの? 御付きの人とか多そうだし」

 ルイーゼの言うとおり、『一応』お姫様だからな。
 王国としても、その身分に相応しい相応の準備が必要なはずだ。

「という事は、暫く来ないだろうな」

「残念ね! 私はもういるわよ!」

「出たな!」

「何よ! 人をお化けみたいに言わないで!」

 噂をすれば何とかとは違うと思うが、既にイーナ姫はバウルブルクまで来ていた。
 度々顔を会わせた時と同じように、ドレス姿ではなくいつでも狩猟に行けるような恰好をしている。
 その装備の素材や作りは王族に相応しいものであったが、婚約者に挨拶するのに相応しい格好には見えなかった。

「私のライバルであるヴェンデリンが婚約者って、パパも王族に中級魔法使いが生まれにくくなっているから焦っているのね」

「ライバルって……一回もヴェルに勝った事ないじゃん」

「うっ! 今度は勝つからいいのよ!」

 ルイーゼから事実を指摘され、イーナ姫の顔が引きつった。

「イーナ様、あなたはヴェンデリン様に勝負を挑みに来たのですか?」

「当たり前じゃない」

「安心しました。つまり、ヴェンデリン様と結婚する意志がないと。でしたら、私は当初の約束どおり、ヴェンデリン様の正妻となります」

 エリーゼは普段は温和で優しいが、歴史ある大貴族家の令嬢である事には変わりがない。
 堂々とイーナ姫に先制の一打を与えた。

「なんでそうなるのよ?」

「私達はヴェンデリン様の妻になる事を嬉しいと思っていますが、イーナ様はヴェンデリン様と勝負できれば満足なのでしょう? でしたら、無理に妻になる必要はありませんね」

「そんな事はないわよ! 私に勝てない男と結婚するなんて嫌じゃない!」

「(面倒な女だなぁ……)」

 自分よりも強い男じゃないと結婚したくないとか、エルが普段好んで読んでいる物語の内容かよ。

「とにかく、これから勝負よ! 私を妻にしたければ、私を倒してみなさい」

「別に、そこまで無理に妻にしなくてもいいかな?」

「こらっ! 私が勝負してあげるんだから、ここは素直に勝負して私を妻にしなさいよ!」

「うーーーん。イーナ様って実はツンデレ?」

「出たわね! 謎のバウマイスター辺境伯家用語が!」

 俺も詳しい事情は知らないけど、この言葉も初代様が最初に言い始めたそうだ。
 初代様は魔法のみならず、文化、芸術、食、魔導技術の進歩にも貢献した凄い人だからなぁ。

「とにかく勝負しなさい!」

「しょうがないなぁ……」

 一回勝負して負かせば、イーナ様も暫くは大人しくしてくれるであろう。
 それよりも、今日はみんなで魔の森まで狩りに行く予定だから、とっとと終わらせてしまうに限る。

「今日は、ご先祖様が持っていた強力な切り札があるのよ! パパが私の嫁入り道具としてくれたの。様々な属性の魔法の穂先を自在に出せ、しかもそれを飛ばす事もできる。伝説の魔槍『飛穂丸』。初代バウマイスター辺境伯が、娘の嫁入り道具に持たせたそうよ」

 確か、初代様の娘の一人が王家に嫁いだんだよな。
 その娘の母親は槍の名人だったそうで、娘も同じく槍を習っていたそうだ。

「実は私、槍も習っているのよ」

「ふーーーん、前よりも負け時間が二十秒くらい伸びるかもね」

「失礼ね。ルイーゼだっけ?」

「だって、ボク達もそんなものだよ。ねえ? みんな」

 ルイーゼが他の婚約者達に質問すると、全員が首を縦に振った。

「私は、治癒魔法専門なので戦いは無理です」

「魔導武器を使って勝てるくらいなら、誰も苦労しない」

「魔力量に絶望的なまでの差がありますから」

「だよなぁ……。イーナ様、怪我しないようにな」

「ヴェンデリン、夫婦とは最初が肝心じゃぞ。油断して負けて尻に敷かれないようにな」

「油断しても、旦那様が負けるとは思いませんが……」

「あんた達、言いたい放題ね」

 イーナ姫は、エリーゼ、ヴィルマ、カタリーナ、カチヤ、テレーゼ、リサの言いように文句をつけた。

「まあいいわ。実際にやってみればわかるのだから」

 それからすぐ、俺は新たに婚約者となったイーナ姫と勝負をする羽目になった。
 それにしても、魔力が多いだけでこんなに婚約者が増えてしまって。
 初代様も奥さんの数がもの凄かったと記録されているが、俺と同じような目に遭ったのであろうか?

 多少魔法に長けていても、俺は貴族で雁字搦めの柵からは抜けられないようだ。
 それでも、何とかやっていこうと思う。

 きっと、初代様も同じような苦労をして人生をまっとうしたのであろうから。
とりえあず、本編は終わりです。
読者のみなさま、応援ありがとうございました。

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