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八男って、それはないでしょう!  作者:Y.A
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第百五十四話 ワタシノトモダチ ヴェンデリン。

「イスラーヴェル会長が死んだ?」

「はい、どんな人ですか?」

「物凄い年寄りで、九十は超えていたはずだ。政治力はあったな。まあ、あの年ならいつ死んでもおかしくはないか……というか、どうして辺境伯様は知らねえんだよ」

「魔道具ギルドはこれまで色々と古代魔法文明時代の遺産を買い取りに来ましたけど、そんな偉い人が直接来るはずないじゃないですか」

「それもそうか。でもなぁ……一回くらい挨拶に来ればいいのに……」

「歴史ある組織だから、腰が重たいのでは?」

「あいつら、無駄にプライドが高いからなぁ……」






 魔族との交易交渉において、魔道具の取り扱いを断固阻止していた魔道具ギルドの会長が急死した。
 ブランタークさんにどんな人なのか聞いてみるが、九十を超えた爺さんだという。

「急死って……ただの老衰じゃないんですか?」

「そうとも言うな。でもよ、あそこの上は、魔導ギルドも真っ青な高齢者の集まりだぞ。世間では『共同墓地』って揶揄されている」

 この世界には老人ホームなどないから、超高齢な老人の集まりイコールいつ埋葬してもおかしくない状態、つまり共同墓地という毒のある比喩表現となるわけだ。

「さすがに魔導ギルドは、魔法が使えないほど老いた奴は引退するからな」

 ところが、魔道具ギルドは魔道具の生産において分業体制を取っている所が多い。
 管理部門が爺さん婆さんだらけでも、下で実務を担当している連中は気にしない。
 むしろ老後はそこに上がれると、不満を持つ者は少ないそうだ。

「そのせいかわからんが、ここ二百年以上魔道具は進歩してねえ」

「それ、本当なんですか?」

 単純に技術開発が大変なのかもしれないし、俺にはよくわからないんだよなぁ……。

「少なくとも、技術が進歩していないのは事実だな。研究は真面目にやっているベッケンバウアーに言わせると、魔道具ギルドの連中は老害だとさ」

 常に需要が絶えない魔道具は、ある程度の生産量が維持できればそれだけで功績になってしまう。
 すでに生産体制が完成しており、一から構築するよりも圧倒的に楽なので、さほどの難事でもないので上が閊えるわけだ。

「会長に今さら魔道具を作れって言う人もいませんか」

「イスラーヴェル会長自身は、それでも魔道具の生産管理で功績のある人だからな」

 彼のおかげで魔道具の生産量は従来の1.3倍になり、品質もまったく落とさなかった。
 功績があり、政治力もあったので、長期政権を維持したわけだ。
 その代わり、人員を生産力向上と品質維持に振り分けすぎて研究部門が手薄だという悪評もある。
 ブランタークさんによると、この点をベッケンバウアー氏は批判しているのだそうだ。

「彼は、魔族が作る魔道具の流入を心配していたらしいからな」

 それは確かに心配であろう。
 下手をすると自分達が失業するだけでなく、この大陸で二度と魔道具が製造されず、魔族に独占されてしまう危険性があったのだから。
 俺は汎用の魔道具なんて作れないから、魔族が作った高性能な品がもっと市場に出回ればいいと思ってしまう。
 ヴェンデリン本人としてはそれでいいのであろうが、為政者バウマイスター辺境伯としては失格なんだろうな。

 バウマイスター辺境伯領で魔道具の製造をしている人は……いたな……アキツシマ島に……彼らはリンガイア大陸よりも技術力が低く、魔道具を作れる者が少ない。
 今は魔王様が持ち込んだ中古魔道具の維持、管理、簡単な修理に、壊れているガラクタも、部品取り用で購入した。
 向こうでは粗大ごみ扱いで、処理するにも金がかかるからほぼ無料だ。
 魔道具の仕組みを勉強するにはちょうどよかった。

 魔道具職人が少ないから、それだけでも彼らは勉強しながら稼げてしまうんだよな。
 勿論、あまり表沙汰にはできないけど。

「葬式に行かないと駄目だな」

「俺達がですか?」

「当たり前じゃねえか。伯爵様……じゃなかった。辺境伯様」

 俺とブランタークさん、導師も魔導ギルドの所属なので、犬猿の仲である魔道具ギルド会長の葬儀に出ていいものか悩んでしまったが、俺はバウマイスター辺境伯、ブランタークさんはブライヒレーダー辺境伯のお供、導師は忘れてしまいそうになるが王宮筆頭魔導師である。

 出席してもおかしくはないというか、出ないと問題になるわけだ。

「顔すら見た事がない人ですけどね。行きますよ」

 そこは大人の対応が必要だよな。

「エリーゼ殿もだぞ」

 エリーゼは俺の正妻だ。 
 こういう場合、夫婦で出ないとおかしな事になってしまう。

「わかりましたよ。ブランタークさんも奥さんと出席したらどうです?」

「残念だが、俺は陪臣だからな。お館様にお供する方だから、お供はいらないのさ。導師は葬式なんて嫌いだから、一人で来て終わりだろうけど」

 奥さんも連れて来いと、彼に直接言えそうな人はいないか。

「わかりました。準備いたしますね」

 王都で所用を終えて大津城に戻ると、エリーゼは葬儀への出席を了承してくれた。
 『瞬間移動』があるからこその夫婦での出席であるが、たまには二人で行くのもいいであろう。

「帰りに、新しい店でケーキでも食べて帰ろうか?」

「はい。いいですね」

 このくらいはいいであろう。
 子供達の誕生に、魔族への対応、アキツシマ島の統一と統治で忙しかった。
 短い時間だけどデートというわけだ。

 エリーゼはあまり表に出ず、この島の領民達に無償で治療を続けてバウマイスター辺境伯家の支持を本物にした。
 アキツシマ島の代官に任じられた涼子以上の治癒魔法使いという事で、バウマイスター辺境伯家の優位が確立されたのだから。

 まったく戦わなかったが、エリーゼの功績はとても大きいのだ。

「あの、お館様」

「どうかしたか? 涼子」

「私もバウマイスター辺境伯家の代官として、葬儀に出席したいのですが……」

「でも、異教徒の葬式だぞ。大丈夫か?」

 涼子は、ミズホと同じく神道に似た宗教のトップでもあった。
 このところ大分衰退して影響力は落ちており、大津の神社に似た神殿ですら廃れている状態だったが、それでも神官長である。
 教会の葬式に出ると、色々と問題があるかもしれないと俺は思ったのだ。

「その辺アキツシマの宗教は寛容ですから。お互いを尊重する事で問題ありません」

 そこまで言われてしまうと、参加を認めないわけにはいかないか。
 せっかくの二人きりのでデートがなくなってしまう事案なので、エリーゼには悪かったが。

「でしたら、普段のアキツシマ風の服装はやめた方がいいですね。葬儀には、教会の人が出ますから」

 そこで異民族風の服装で目立つと、教会にも他宗派や他宗教に寛容ではない人もいるので、思わぬトラブルになってしまうかもしれない。
 エリーゼは、リンガイア大陸風の喪服を着る事を条件とした。

「私、持っていないのですが……」

「それはお貸しします」

「ありがとうございます」

 エリーゼは、本当に優しいよな。
 やっぱり、あとでデートの時間を作ろうと思った。
 子供が産まれても、こういう時間が必要だよな。

「それでしたら、私もお供します。涼子様のお世話が必要でしょうから」

「それでしたら、私が!」

「雪さんは副代官としてお忙しいでしょうから、私の方がいいですね」

 涼子のお供として、松永久秀の娘である唯さんも立候補した。
 二人きりでないのなら、ちゃんと形式を整えた方がいいか。
 他の貴族達も多数葬儀に参列するはずだ。
 アキツシマ島の代官と、最低限のお供は必要か。

「なら、俺も行くぞ」

「ルルも行きます」

 五歳児コンビも立候補したが、こうなってくるとただ単に王都観光がしたいだけとも思わなくもなかった。

「服がないから無理だな」

「何とぉ!」

 王都に連れて行ってもらえないとわかった藤子が、少しショックを受けていた。

「葬式だから、あまり大勢でゾロゾロと行ってもな。王都観光は、もう少し暇になったら計画するから。お土産も買ってくるよ」

「それは楽しみだな」

「わーーーい。ありがとうございます、ヴェンデリン様」

 とはいえ、いくら賢くても子供は子供だ。
 あとで埋め合わせはすると言ったらすぐに機嫌を直してくれた。

 実は、これと合わせてアキツシマ島南の海岸で海水浴も計画しているから、それで納得してもらおう。

「では、葬儀は四人で行くか。他のみんなは、悪いけど仕事を頼むね」

「それはわかったけどよ」

「何か疑問でもあるのか? エル」

「お前、辺境伯に陞爵したんだろう? その話題が全然出てないじゃないか」

 と、言われてもなぁ……。
 領地持ち貴族の俺は年金が上がるわけでもないし、南部の統括はブライヒレーダー辺境伯のままで、俺は彼の寄子のまま。
 何も変わっていないのが実情なのだ。

「実感はないと思いますが、伯爵から辺境伯への陞爵です。お祝いは盛大に開かないと……。そうですよね? エリーゼ様」

「何もしないわけにはいきませんね」

「うーーーん」

 よく知りもしない魔道具ギルド会長の葬儀はまだいいが、爵位と階位が上がっただけで大勢の客を呼んでお祝いパーティーか……。
 面倒だなと思ったら、ローデリヒから魔導携帯通信機で連絡が入る。

『お館様、陞爵の件は聞きました。辺境伯ともなれば、お館様は押しも押される大貴族です。このローデリヒ、感動のあまり涙が止まりません!』

「おっ、おう……」

 通信機越しだから確認したわけじゃないが、本当に泣いているみたいだな。
 領地を与えられ伯爵になった時には、彼はここまで感動しなかったと思うのだが、あの時は責任が重くてそれどころではなかったのかもしれない。

『ご安心ください。拙者が、豪華なパーティーの準備をいたします。出席者の選定や招待も滞りなく行いますので、お館様はアキツシマ島の統治に傾注していただきたく願います』

 パーティーの準備での負担はなかったが、出席自体が面倒そうだ。
 誰を呼んで、招待状を書いてとか、面倒な事をしないで済んだのはいいか。
 そんな暇があったら、魔法で開発してろって事なのだろうけど。

「パーティーかぁ……」

「あの、お館様」

「何かな?」

 涼子は、何か聞きたい事があるようだ。

「ローデリヒ様というお方は、ミズホの血を引いておられるのですか?」

「いや、そんな事はないと思うよ」

 ローデリヒは、生粋の王国人だと思う。
 西洋人風で、髪の色も緑だから。

「私、自分を拙者と仰る方、昔のご本以外で初めて聞きました」

「あいつ、ちょっと変わっているから……」

 涼子によると、今のアキツシマ島でも自分を『拙者』という人はいなくなって久しいらしい。
 俺は、彼は有能だけどちょっと変人だからと説明しておくのであった。





「似合うな。涼子は」

「ありがとうございます。エリーゼ様が貸してくださったおかげです」

 魔道具ギルド会長の葬儀に出席するため、俺は普段のローブ姿のままであったが、エリーゼ、涼子、唯の三名は喪服に着替えていた。
 涼子は、エリーゼの予備の喪服を少しサイズ直しをして……主に胸の部分である。
 唯は、リサの喪服をほとんど手直しなしで着ていた。
 彼女は思ったよりも着痩せする性質のようだ。

「綺麗なご婦人は、喪服がよく似合う」

「ブランタークさん、美人は何を着ても似合いますよ」

「そりゃあそうだ。イーナは出席しないのか?」

「やる事がありますし、ヴェルとブランタークさんって、あきらかに招かれざる客じゃないですか?」

「向こうもバカじゃないから、社交辞令に徹すると思うけどな」

 魔導ギルドと魔道具ギルドは、本当に仲が悪い。
 それでも、お互いに大人なのでトップの葬式くらいには出席する。
 気を使って安くない香典まで包んでいるのだから、せめてちょっと嫌味や皮肉を言うくらいで済ませてほしいものだ。

「ボク、行かないでよかった」

「ヴェル様、あとで王都にみんなで遊びに行く」

 ルイーゼは葬儀に参列しないで済んで安堵し、ヴィルマは別の機会に王都に連れて行ってほしいと強請った。

「そうですわね。私も魔道具関連はさっぱりですから、魔導ギルドの所属ですし。リサさんもですわよね?」

「魔道具作りは、魔法使いの中でも特殊な技能ですから。私もさっぱりわかりません」

「あたいも、魔導ギルドの所属だからなぁ……バウマイスター辺境伯家で、魔道具ギルドに所属している奴はないじゃないか」

 確かにそう言われてみると、カタリーナ、リサ、カチヤも魔導ギルドの所属だ。
 俺も含めて、魔道具ギルドに所属している者はいない。

「それは凄いの。妾など、どちらにも所属しておらぬぞ」

「所属しないでも、何も困らないから」

「まあ、妾のような面倒な立場の人間に勧誘などせぬよな」

 元フィリップ公爵で、俺の非公式の愛人。
 確かに、俺が魔導ギルドのトップでも勧誘しないと思う。

「ヴェンデリン、妾はゾーリンテのケーキが土産にほしいの」

「はいはい。買って来ますよ」

 俺達は、奥さん達の見送りを受けてから王都へと『瞬間移動』で飛んだ。
 葬儀会場は事前に教会本部と聞いていたので、場所がわからなくて迷う心配もない。
 少し離れた場所に飛び、少し歩くと教会本部の建物が見えてくる。

「豪華ですね」

 涼子は、教会本部の豪華さに驚きを隠せなかった。
 分裂していたアキツシマ島では逆に宗教の力が弱まっていたので、修繕もされず放置されていた社を改修している最中なのだから。

「教会が豪勢な事はあまり威張れないのですが」

 真面目なエリーゼからすれば、必要以上に豪華な教会に違和感を覚えているのかもしれない。
 やはりホーエンハイム枢機卿の言うとおり、彼女が教会の中枢に入るのは難しいようだ。

「それでは行きましょうか」

 受付で香典を渡してから会場に入ると、既にブランタークさんと導師がいた。
 導師は葬儀の準備のために前日王都の屋敷に戻っており、ブランタークさんも昨日所用があるとかで王都のブライヒレーダー辺境伯邸へと魔法で送っていたのだ。

「まあ、享年九十六だ。死因は老衰。こういう葬式の方がいいな」

 下手に若い人や、ましてや子供の葬儀だと、気分的に落ち込んでしまう。
 ここまで老齢なら大往生なので、参列者達も悲しいという事もないであろう。

「むしろ、下の人間が喜んでいるのである」

「「「「「導師っ! シィーーー!」」」」」

 俺達は一斉に導師の口を塞いだ。
 確かに、参列している魔道具ギルドの幹部達は亡くなった会長とそう年が違わないので、自分が死ぬ前に次の会長になれるチャンスがきてよかったと思っているはずだ。
 あまりに老齢なので、ここで倒れて死ぬかもとか不謹慎な事を考えないでもないが、導師はTPOを弁えてほしいと思う。

 きっと、この爺さん連中が魔族との交渉で王国に圧力をかけていたので、陛下の親友である導師からすれば好意を抱けないのは当然か。

「またあの爺さん達の中から会長を?」

「そうだな、幹部なんだから」

 どう見ても、魔道具ギルドの幹部連中に八十以下の人はいないように見える。
 当然彼らも魔法使いなのだが、既に現役の魔道具職人としては引退していた。
 組織の管理ならば、老人でも問題ない。
 むしろ、老練な経営で魔道具ギルドを維持しているというわけだ。

「どうせ、誰がなっても同じだろう」

 ブランタークさんは、次の魔道具ギルド会長になる人にまったく興味がないらしい。
 誰がなっても、このまま王国に魔族の魔道具輸入阻止運動を水面下で続けるものと思われる。
 なまじ財力があるので、彼らの影響力は絶大であった。
 葬儀に参列している他の貴族達も、そそくさと香典を置き、ちょっと棺の前でお祈りして、やはり辺境伯になった俺に声をかけてきた。

「短期間のうちに辺境伯への陞爵とは凄いですな。見つけた島を征服して新たな領地としたとか」

「これは、ブライヒレーダー辺境伯をも上回る南部一の実力者となる日も近いですな」

「いえ、若年の私はブライヒレーダー辺境伯殿に助けられる事が多く、とても頼りにしております」

 人が出世したら、もう足を引っ張り始めたか。
 俺とブライヒレーダー辺境伯との仲を割き、それを自分の利益にしようとしているのであろう。
 この葬儀には多くの貴族が集まり、半ば公式の場のようなものだ。
 ここで、俺はブライヒレーダー辺境伯を頼りにしていると堂々と公言した。

 そう言っておかないと、また余計な事を言う貴族が出てきて面倒だからだ。
 実際に、彼の助けがないと大変な事になるし。

「(エリーゼ、あいつ誰?)」

「(はあ……伯爵様じゃなかった、辺境伯様はいい加減、貴族の名前を覚えろよ)」

「(だから、多すぎですって)」

 ブランタークさんはそう言うけど、ローデリヒは魔法で開発さえしていれば何も言わないからなぁ。
 中央の主だった貴族はエリーゼが知っている事が多いし、紋章官もいるから問題あるまい。

「(ブーロ子爵ですね。プラッテ伯爵と縁戚関係にあります)」

「(納得したよ)」

 俺がわざと、プラッテ伯爵のバカ息子だけを犠牲にリンガイア返還交渉を成立させた事に気がつかないほど、彼はバカではなかった。
 公式の場で俺を怒れない彼は、密かに俺への嫌がらせを始めたのであろう。

「(このくらいなら、問題ないのか?)」

「(あなた、お気をつけください)」

 油断大敵というわけか。
 あとでローデリヒにも報告しておこう。

「ホーエンハイム枢機卿も葬儀で忙しそうだし、ちょっと挨拶してから帰るか……」

 これで義理は果たしたので、もう帰る事にしよう。
 葬儀会場にいたホーエンハイム枢機卿に挨拶をすると、彼は葬儀を主催する立場でとても忙しそうであった。

「おおっ、バウマイスター伯爵じゃなかった辺境伯だったな。昇爵おめでとう、婿殿」

「ありがとうございます」

「ゆっくりと話をしたいところだが、ご覧の有様でな。後日、フリードリヒの顔を見せてくれないか」

 ホーエンハイム枢機卿は、教会側の葬儀責任者としてとても忙しそうであった。

「わかりました。それにしても豪勢な葬儀ですね」

「魔道具ギルドは金があるからな」

 それも、魔族の国製の魔道具が輸入されるようになると、大幅に力を落とす可能性もあるんだよな。
 反発して当然といえば当然か。

「色々と事情はあるようだが、教会としては魔導具ギルドに口を出す権限もないからな」

 俺には、教会が下手に彼らを刺激して敵に回すのが嫌だと言っている風にしか受け取れなかった。

「辺境伯になった祝いのパーティーに来ていただければ、フリードリヒにも会えますよ」

「それを楽しみに、忙しい仕事をこなすか。エリーゼも元気そうでよかった」

「はい、毎日色々とありますけど」

「それは婿殿だから仕方がないな。体に気をつけてな」

 ホーエンハイム枢機卿とエリーゼの話も終わり、俺達は葬儀会場をあとにした。
 これ以上長居しても、俺にすり寄ろうとする貴族達に話しかけられるだけで面倒だ。

「涼子さん、教会の葬儀はいかがでしたか?」

「とても豪華でしたね。三好長慶公の葬儀でも、ここまで豪勢ではなかったそうです」

 島の中央部を押さえた天下人と、リンガイア大陸の半分を支配する国のギルドのボス。
 時に、後者の方が金もあったというわけか。

「どうせ葬儀が豪華でも質素でも、死ねばわからないのである!」

「伯父様、その発言はさすがに……」

 エリーゼが、導師に苦言を呈した。
 それはそうなんだが、できれば心の声にしてほしい。
 まだ会場の外で、若い神官達が客の応対で傍にいるのだから。

「お館様、これからいかがなされますか?」

「そうだなぁ……予定よりも早く終わったから、王都をブラブラして、みんなにお土産を買って帰ろう」

「それがよろしいかと」

 唯さんにそう言われると、心からそれでいいように思えてくるから不思議だな。
 この人、梟雄と同姓同名の人の娘で、まだ要注意の人なんだけど。

「あなた。せっかくですので、これからも入り用になるかもしれませんので、涼子さんと唯さんの服を購入するのはどうでしょうか?」

「それがいいか」

 涼子さんは、名目上だけとはいえアキツシマ島全体の代官である。
 バウマイスター辺境伯領本領と交流する機会も増えるので、リンガイア大陸風の洋服も必要であろう。

「唯の分もだな」

「お館様、涼子様を最優先で、私は雪さんの次でいいですよ」

 唯さんは自分の分を遠慮し、副代官である雪を優先してほしいと言った。
 こういう配慮ができるお姉さんってとてもいいと思ってしまう。

「雪の分も準備するけど、今日は唯が王都にいるし、涼子と付き添う機会が多いから必要だろう」

「私は、涼子様の侍女のような扱いですから」

「そういうわけにはいかないよ」

 唯の父親松永久秀は、アキツシマ島でもトップレベルの魔法使いにして、故三好長慶に重用されていた武人にして、文官にして、教養人でもある。
 彼の娘を侍女扱いでは、後の島の統治に悪影響が出るかもしれない。

「雪の仕事を手伝ってもいるんだ。遠慮しないでくれ」

「お館様のご厚意に甘えさせていただきます。お館様は、懐の大きな男性なのですね」

「そうかな?」

 綺麗な女性に褒められて嬉しくない男はいない。
 例えそれが、彼女の父親の思惑どおりでもだ。

「最初は、公の場で着る服を。次はキャンディーさんの店だな」

 涼子と唯、キャンディーさんを見て驚くかもしれない。
 アキツシマ島にはいそうにないタイプだからなぁ……。

「やあ、ヴェンデリンじゃないか」

 涼子と唯の服を見に行こうとしたところで、突然声をかけられた。
 振り向くと声の主は何とペーターであり、まさか王都にいるとは思わなかったので、俺もエリーゼも驚いてしまう。

「エリーゼ殿、お子さんが産まれたそうでおめでとう」

「ありがとうございます」

「ヴェンデリンも、辺境伯に昇爵か。おめでたいかな?」

 さすがは、ペーター。
 俺が別に昇爵を喜んでいない事に気がついている。
 それにしても、まさか王都にいるとは思わなかった。
 というか、両国の歴史上において初めてアーカート神聖帝国の皇帝が王国を来訪したのだ。
 大騒ぎになるはずなのに、なぜか俺は何も聞いていなかった。

「魔族との交渉に出遅れたから、こっちも交渉団を送り込んだから余計に状況が混乱したでしょう? 公式には謝れないけど、極秘裏に個人的にってやつさ。僕の方が若いから、ヘルムート三十七世陛下に配慮したってわけ」

 ペーターは極秘裏に一部口が堅い家臣のみを連れて王国を来訪、陛下と魔族に対する対応を協議したそうだ。
 そして、魔族の国が信奉する民主主義の混乱に巻き込まれたわけだ。

「うちも王国と似たような状況でね……ここでは何だから、ちょっとお茶でも飲みながらどう?」

「おい、ペーター。なぜ涼子の手を取りながら言うんだ?」

 こいつは為政者としての才能を十分に持つのに、普段は相変わらずアホみたいな事ばかりしている。
 きっと、こういう時だけ素の自分に戻ってストレスを解消しているのであろう。
 ならば俺は、こういう時だけはぺーターを皇帝として扱わない方がいい。

「そこに綺麗な女性がいたからだね。情報通り、ミズホ人と祖先を同じくする人達なんだね。アキツシマ島の住民は」

「よく調べているな」

 俺は、ペーターのというか帝国の諜報力に感心した。

「それにしても、ヴェンデリンも奥さんが増えて大変だね」

「まだ奥さんじゃない」

 将来はと聞かれると、多分そうだ。

「当たり前だね。ヴェンデリンがその島をちゃんと統治するためには、そちらのお嬢さん方を娶り、産まれた子供を代官にしないと」

 そうだな。 
 ペーターの言うとおりだ。
 ここで嫌そうな顔を二人に見せれば失礼になるし、雪も合わせて三人とも綺麗で優しい女性だ。
 ここは光栄と思わないとな。
 やっぱり、日本人風の女性はいいな。
 俺が元日本人だから。

「そういうペーターは、全然そういう噂を聞かないな」

「先に、どこかお店に入ろうか?」

 俺達は久しぶりにペーターと再会し、彼と近況報告も兼ねて一緒にお茶を飲む事にするのであった。




「お久しぶりです。バウマイスター辺境伯様」

「陛下共々、辺境伯への陞爵を心からお祝いします」

 ペーターは適当な喫茶店に入ったように見えたが、その店内は既に貸し切り状態であった。
 昔のように少数の護衛で動くわけにいかず、店内には一般客に化けた多くの護衛達が席に座りお茶を飲みながら見張りをしており、店外にも多くの護衛がいるようだ。

 彼の傍には、近衛隊長に就任した剣豪マルクと、正式に筆頭魔導師に就任したエメラの姿があった。
 彼女は、心なしかふくよかになったような気がするな。

「エメラさん、おめでとうございます」

「わかりますか?」

「ええ」

「エリーゼ、何が?」

「エメラさんは妊娠しているのです」

 それで、少しふくよかになっていたのか。
 でも、まだお腹はそう目立ってしないような……。
 魔法使いはローブを着るからわかりにくくするのは簡単なのだけど。

「ペーター、エメラさんと式を挙げたのか?」

「いや、籍すら入れていない。これからもその予定はない」

 子供ができたのに、側室にもしないのか。
 ちょっと冷たくないか?

「僕は、エメラ以外の女性とそういう事をするつもりはないんだ」

「気持ちはわかるが……」

 一国の皇帝が、実質上の妻が一人だけで済ませられるものなのだろうか?
 俺もそれができたら……俺はそうする必要がないか。

「大丈夫だよ。帝国の皇帝は世襲制じゃないから。次は、他の選帝侯家の子供の誰かが皇帝になるでしょう。皇家はうるさいのがほとんどいなくなってね。どこからか現れた僕の子供が皇家を継げばいいのさ」

 エメラさんが産んだ子供は認知するわけだ。
 そして皇家の跡継ぎにする。
 エメラさんを正式に妻にしないのは、最悪彼女の暗殺を目論まれるからか?
 娘をペーターの妻に押し込み、産まれた子供が皇家の跡取りになるのを期待している貴族連中からすれば、エメラさんは邪魔だよな。

「籍を入れなければ、エメラは優秀な筆頭魔導師だ。バカ共も手を出しにくい。それに……」

「それに?」

「皇家ってのは、代々の婚姻政策でうるさい外戚が増えた。クソ親父は能力にも問題があったけど、何代前に妻を出したからと口を出してくる外戚連中に配慮しすぎてね」

 一度ニュルンベルク公爵のクーデターで軟禁されて、ペーターの父親は大幅に力を落とした。
 再び皇帝の座に無理矢理ついた時、彼が頼りにしたのはそういう連中か。

「クソ親父は縁戚達で与党を組織しようとしたら、逆に力を落としたってわけさ。僕がいなくても、テレーゼ殿の一派に負けていただろうね」

 ペーターは父親の死後、今度はテレーゼの兄達と組もうとしたこういう連中を追い落とし、処罰した。
 おかげで皇家は、ペーターが独裁権を発揮できるわけだ。
 元々皇家は、帝国の予算を捻り出す官僚組織としての面がある。
 皇家で力があるペーターは、皇帝としても力があるというわけだ。

 処罰で皇家が組織していた官僚層にもダメージがあったが、ペーターは昔から従えてた商人、平民、貴族の次男坊以下の有能な連中の抜擢、組織の下位者で有能な者を出世させて皇家を活性化させた。

 彼はエメラとのみ添い遂げようという目標と、皇家の複雑怪奇な縁戚関係をリセットして強固な皇家を作り出したのだ。
 私的な欲望と、公的な欲望を同時に達成してしまう。
 俺にはとても真似できなかった。

「そりゃあ、テレーゼは負けるわ」

「彼女は、あのニュルンベルク公爵も認めていた女傑だけどね。フィリップ公爵家当主の枠組みの中でしか動けない欠点があった。内乱がなければそれで十分なんだけど」

「俺には真似できないよ」

 そこまでして、ペーターはエメラさんだけを愛するわけか。
 皇帝としてはすぎた我侭……その選択に伴うデメリットは、自分の力で何とかしたわけだ。
 こいつは、本当に大した男だ。

「エメラには悪いのだけど……」

「私は気にしていません」

「そこは素直に『ペーターは優しいから好きっ!』とか言ってよ」

「嫌です。恥ずかしいので」

 そう言って、少し顔を赤らめるエメラさん。
 前とは違って、ペーターの言うとおりにデレたな。

「時間は短いけど、プライベートな時間は夫婦そのものだよ。エメラは料理とか作ってくれるから」

 二人は実質夫婦になったわけか。
 それはよかった。

「極秘来訪も、新婚旅行も兼ねてだからね。外国ならうるさい連中もいない。口実もあった」

「魔族か……」

「交渉が進まないのは仕方がないね。今までお互いを認知していなかったのだから、交易をしなくても何も困らないわけだし」

「それでも、人間には欲がある」

 交易で儲けようとする連中は、貴族や政府に圧力をかけてくる。
 逆に、交易で損をしそうな連中もそうだ。

「帝国も、王国と一緒なのさ。魔道具ギルドの横やりが凄くてね。帝国の魔道具ギルドは、魔導ギルドの別部門みたいな存在だけど、逆に組織が一緒だから魔導ギルドも反発している。内乱で世話になったし、犠牲も多くて組織の再建に奔走しているからさ」

 内乱で、帝国の魔法使いは大勢討ち死にした。
 特にニュルンベルク公爵は、在野の魔法使いも硬軟織り交ぜて勧誘し従軍させていたため、俺達に殺されて多くの犠牲を出していたのだ。

「魔道具を作れる魔法使いは前線に出なかったからね。相対的に魔道具ギルドの力が上になっちゃったんだよ」

 新たな魔法使いの探索と育成では、魔道具ギルドが稼ぐ資金を当てにしないといけない。
 魔族と交易が始まって、もし魔道具ギルドが作った魔道具が売れなくなったら。
 王国の魔道具ギルドと同じく、死活問題だろうな。

「帝国も王国と同じか」

「ミズホ公爵もだよ。あそこは、今までリンガイア大陸一の技術力を持っていたんだ」

 それが、魔族のせいで一番じゃなくなった。
 技術力があるから少し高くても売れたミズホ製の魔導具は、この瞬間にとても中途半端な品になったというわけだ。

「そんなわけで、この交渉は長引くよ。交易量の制限、関税の導入まで行くのに何年かかるかなぁ?」

 それはそうだ。
 物語でもあるまいし、突然一夜で双方が納得する条約なんて不可能だ。
 日本やアメリカだって、TPPの交渉を何年もやっているのだから。
 暫く待つしかないよな。

「じゃあ、これで難しい話は終わりだね。ヴェンデリン、どこか遊びに連れて行って。バウマイスター辺境伯領の南の海とかがいいな。帝国は寒いからねぇ。南国っていいよね」

「それはいいんだが……」

 俺は、思わずエメラさんを見てしまう。
 妊婦に『瞬間移動』はよくないからなぁ……。
 となると魔導飛行船になるわけだが、今からだと南の海に到着するのに三日はかかってしまう。
 日程は大丈夫なのかと心配してしまったのだ。

「これがあるから大丈夫だよ。エメラ、ヴェンデリンに見せてあげて」

「はい。これです」

 そう言ってエメラが懐から取り出したのは、明らかに古代魔法文明時代の魔道具であった。
 十字型のアクセサリーに、色とりどりの小さな魔晶石、よくわからない微細な魔法陣や文字がビッシリと書かれている。

「魔道具ですよね? でも、あまり魔力を感じません」

 十字についている魔晶石が小さいため、エリーゼは大した効果がある魔道具には見えないようだ。
 何かを維持するような、ちょっと特殊な魔道具ではないかと俺は思った。

「これを持っていると、何かを防ぐ、状態を維持する魔道具か?」

「さすがは、ブランターク殿。帝国では『振動抑制装置』という名で呼ばれている。旧ニュルンベルク公爵領で最近発掘されたんだ。効果は『瞬間移動』の悪影響から妊婦を守るだね。昔は、人の移動がもっと活発だったようだね」

 妊婦が移動系の魔法陣や『瞬間移動』を使うと、流産や奇形のリスクが増す。
 この魔道具は、それを防ぐ役目があるようだ。

「便利といえば便利か」

 需要はないわけではないが、極端に少ないと思う。
 移動系の魔法陣は研究途上で、『瞬間移動』を使える魔法使いは少ない。
 女性、それも妊婦を移動させる機会はほとんどないからだ。

「今回は役に立ったけどね。極秘来訪だから、船を仕立てるわけにいかなかったのさ」

「なるほど。では、陛下の許可を取ってご案内いたしましょう。明日にでも」

「楽しみだね、エメラ」

「はい」

 その日はみんなで夕食を一緒に取り、その間に王都バウマイスター辺境伯邸に詰めている家臣が陛下に聞きに行ってくれた。

 王都の屋敷とは、俺が王都在住時に購入したものである。
 ところがバウマイスター男爵の頃に入手した屋敷なので、そろそろ大きな屋敷に買い替える必要がありそうだ。
 実はキャパ的には何の問題もないのだが、辺境伯はあんな小さなお屋敷では外聞がよくないらしい。

 これもすぐに買い直さないといけないが、リネンハイムに要相談だな。

「お館様、許可が出ました」

 勝手にペーター一行を接待すると、帝国の皇帝とバウマイスター辺境伯の間で密談が……とか言い始める貴族が出ると思うので、その筆頭は確実にプラッテ伯爵であろう。
 彼はある意味、今バウマイスター辺境伯家で注目の男であった。

 俺は、彼の息子が他国のブタ箱に入れられている最大の要因だからだ。

「同行者がいるそうですが」

「そのくらいなら」

 多少人が増えても、『瞬間移動』でどうとでもなる。
 誰か王国中枢に近い人の監視があった方が、ペーターと俺達も痛くもない腹を探られないで済むというわけだ。

「それで誰が来るんだ?」

「それがわからないのです」

 王城から戻ってきた家臣も、誰が同行するのか聞けなかったようだ。
 申し訳なさそうな表情をしている。

「誰か王族か、暇そうな大臣あたりであろう」

「導師、今の王国に暇な大臣なんていませんよ……」

 本来、一番暇なはずの外務卿ですら大忙しいのだから。
 他の閣僚達も、もし魔族の国から様々な品が輸入されたら蒙るであろう様々な影響に対応しないといけない。
 いくら戦争がなくても、閣僚というのは忙しい存在なのだ。

「明日になればわかるのである!」

 そして翌朝。
 ペーター達はバウマイスター辺境伯邸に泊まり、その庭から南の海へと『瞬間移動』で飛ぶ事になった。
 場所は、ヴィルマと海産物を獲ったあの砂浜の近くだ。
 可能な限りの人達も参加して、みんなで海で泳いだり、釣りや簡単な漁をしたり、バーベキューなどをする予定になっている。

 王城から監視に来る予定の人達を待っていると、時間より少し前にその人物が姿を現した。

「えっ? 王太子殿下?」

「バウマイスター辺境伯、昇爵おめでとう。私も色々と忙しい身なのだが、今日はアーカート神聖帝国の皇帝陛下も参加する重要な席でもある。私が直接出席した方がいいという事になってね」

 ペーターの格を考えて、陛下は無理だが、王太子殿下が出席したというわけだ。

「(バウマイスター辺境伯、殿下はとても楽しみにしていたようである)」

 導師が小声で教えてくれたが、何しろ目立たない殿下の事だ。
 多分、このバカンスに参加してもあまり問題はないはず。
 むしろ、誰が見てもわかるほど嬉しそうな顔をしていた。

 それほど喜んでもらえるのなら光栄だが、それを指摘してしまうと問題がありそうな……。
 ペーターも知っているとは思うが、王太子殿下の存在感がないのを彼の前で堂々と公表してもいい事はないか……。

「殿下、お忙しいなか本日はありがとうございます」

「気にするな。私とバウマイスター辺境伯は、これから親戚同士になるのだから」

 殿下の息子には俺の娘アンナが嫁ぐし、フルードリヒには殿下の娘が嫁ぐ。
 二重の婚姻で、俺と殿下は深い繋がりとなったわけだ。

「ヴェンデリン、君も段々と苦労が増えていくね。でも、僕とヴェンデリンはそういう血縁の関係よりも深い同じ戦場で苦労した戦友であり、親友同士だものね。プライベートな時間では、身分なんて関係ないさ」

 おい、ペーター。
 いきなり殿下を挑発するなよ。
 殿下の顔色が一瞬で変わったぞ。

「ペーター殿、私にとってもヴェンデリンは大切な友人であるのだよ」

 いきなり殿下からそう言われたが、友人なのか?
 そこまで一緒に遊んだり会った事も少ないし、知人よりは濃い関係か?
 将来は親戚になるのだし。

「僕にとってもそうさ。ヴェンデリンが帝国貴族だったらと思うよ。気軽に遊べる機会も増えるし」

「それは残念でしたね。私はこれから子供達の事もあります。親が決めた許嫁同士でありますが、なるべく交友を深めてから結婚させたい。もう少し大きくなったら、定期的に一緒に遊ばせようと思います」

 これは、『パパ友』という奴か?
 ママ友って前世でよく聞いたけどな。
 それにしても、殿下は子供達を定期的に会わせようと計画していたのか。
 あとでローデリヒに相談しないと。
 俺達が王城に出向く時はいいが、逆の時には警備の問題もある。

「ヴェンデリン、こういう席では私の事もヴァルドと呼んでくれて構わない。何しろ、我らは友人同士なのだからね」

 ペーターとヴァルド殿下、二人とも笑顔であったが視線で火花を散らしていた。

「(バウマイスター辺境伯、人気であるな)」

「(そんな人事みたいに……)」

「(人事なのは事実である!)」

「(言い切った!)」

 導師が俺を小声でからかってくる。
 どっちが俺の真の親友かと、くだらない争いを水面下で始める二人。
 自慢じゃないが、十二まで友達がゼロでボッチだった俺を取り合って楽しいのであろうか?

「私が王に即位した暁には、ヴェンデリンが王宮筆頭魔導師として私を支えてくれる予定だ。父もアームストロング導師と親友同士だからね。親子で似るものだね」

「僕とヴェンデリンは、所属する国とか、身分とか、仕事とか関係なく親友同士だからね。僕みたいな身分だと、そういう友人は貴重なのさ」

「私もそうだよ。ペーター殿」

「僕もそうさ。ヴァルド殿下」

 二人はますます火花を散らせ、俺は今日これからどうなるのか、大きな不安を抱いてしまうのであった。






「ペーター殿、帝国内乱の際にはバウマイスター辺境伯と共に戦って戦友だそうだが、彼は渡さない。彼は私の親戚となり、親友にもなるのだ」

 ヘルムート王国王太子にして、次期国王であるこの私ヴァルドは、どういうわけか存在感が薄かった。
 父は私が次の王に相応しい能力があると認めてくれている。
 弟も同じで、彼は後継者争いを避け、既にメッテルニヒ公爵家に婿入りしていた。
 メッテルニヒ公爵として、私を支えてくれるそうだ。

 妻も美しく気立てのいい女性だし、可愛い息子と娘にも恵まれた。
 幸せなはずなのに、私はある事実に気がついてしまった。

 それは、私には友達がいないのだという事実に。
 私は王太子なので、知人は沢山いる。
 目立たないとはいえ、どこかに出かけるのにお供くらいはつく。

 では、彼らは友達かと言われればそうではない。
 父にはアームストロング導師がいるが、私にはそういう存在がいないのだ。

 ならば、私は友達を探そうと決意した。
 候補はバウマイスター伯爵であり、その理由は私と同じような匂いがするから。
 だが、彼には家臣に親友がいてとても羨ましかった。

 更に、帝国内乱で新皇帝となったペーター殿と友好を深めたらしいという情報が入ってくる。
 彼は魔族との交易交渉絡みで極秘来訪していたが、私は聞いてしまった。

『せっかく王国に来たから、ヴェンデリンとどこか遊びにでも行こうかな?』

『陛下、バウマイスター辺境伯様はなかなかにお忙しいそうですが』

『大丈夫だよ。ヴェンデリンは友達だから、一日くらいなら融通してくれるって』

 彼と御付きの家臣の話を聞いて、私は大きく動揺した。
 駄目だ! 
 彼は私の親友になるのだ!
 だってそうだろう?
 これから私の娘は彼の息子に嫁ぐし、私の息子の嫁は彼の娘なのだから。
 私達は深い結びつきがあるのだ。
 他国の皇帝だか何だか知らないが、私こそがバウマイスター辺境伯の真の親友なのだから。
 そもそも、なぜ彼を名前で気安く呼ぶのだ? 
 その資格があるのは私のはずなのに!

 こうなれば、私も参加するしかあるまい。
 これはペーター殿がバウマイスター辺境伯の親友だと認めたわけではなく、いくらプライベートでも帝国の皇帝と我が国の偉大な魔法使いにして辺境伯が仲良くしていたら、いらぬ言いがかりをつける貴族が出てくるかもしれない。

 彼の親友たる私は、バウマイスター辺境伯が疑われるのを防がなければいけないのだ。
 私が参加していれば、そういう噂も出ないからな。

 というわけで、私は父に断って今日の行楽に参加している。
 今日は楽しい一日になるであろう。
 何しろ、私はバウマイスター辺境伯の親友同士だからな。





「何? ヴェルを巡って男同士で取り合い?」

「ルイーゼ、そういう周囲に誤解を招く言い方はやめてくれないかな」

「ボク、間違った事は言っていないよ」

 今日はペーター達とヴァルド殿下とその御付きの方々で、バウマイスター辺境伯領南端にあるプライベートビーチにおいて海水浴が行われる事になった。
 俺が『瞬間移動』で参加者を運び、多くの人達が参加している。

 屋敷からエリーゼ達も呼び寄せ、ドミニク以下メイド達は前と同じくバーベキューを含めた飲食物の用意をしている。

 水着はバウマイスター辺境伯家の者達以外がいるので生地が多いものであったが、みんな南国の海を楽しんでいた。

 ペーターとヴァルド殿下は変に張り合っており、ルイーゼが理由を聞いてきたので説明したら、そういう風に言われてしまったのだ。

「そう思われても仕方ないよね」

「あのなぁ……俺にそういう趣味はないからな」

 そういう噂が立つだけでも双方致命傷なので、それはやめてほしかった。

「何てね。冗談冗談。でも、ヴァルド殿下は凄いね。ヴェルも友達少ない方だけど、それを上回るんじゃないかな?」

「それも危険な発言だな」

 俺とルイーゼが話をしている最中にも、ペーターは昔ながらの生地が多い水着を着て海で泳いでいた。
 泳法は導師が教えたバタフライで、その導師だが彼だけは人目も気にせず前に俺から貰った黒のブーメランパンツを履いている。

「導師、すげえ水着だな」

「泳ぎやすいのである!」

「水の抵抗はなさそうだな」

 今まで導師のブーメランパンツ姿を見た事がなかったブランタークさんも驚いていたが、前はエリーゼ達も際どい水着姿だったからなぁ……。
 今は他人の目があるので、彼女達も生地が多い水着を着ている。

「おーーーい、ヴェル。助けてくれぇ……」

「どうかしたか?」

 海水浴に護衛として参加したエルは、ルルと藤子の遊び相手にされ砂に埋められていた。
 砂山から顔だけ出している状態で、体に次々と大量の砂をかけられている。

「エルは子供と遊ぶのが上手だよな」

「そうか?」

「だよねぇ。ただ遊ばれているだけだよ」

「こらぁ! 失礼だぞ! ルイーゼ!」

 ルイーゼからルルと藤子と精神年齢が同じだと言われ、エルは一人怒っていた。

「護衛の仕事があるんだけどなぁ……」

「大丈夫だろう」

 バウマイスター辺境伯家が出している護衛は他にいるし、ペーターはマルクとエメラなどの少数精鋭で、ヴァルド殿下にも護衛はいたので、エルは遊ばれていても問題ないであろう。

「というわけなので、埋められていても問題ないぞ」

「ヴェンデリン様、もっと一杯砂を盛りますね」

「俺も手伝うぞ」

 ルルも藤子も、砂浜での砂遊びを楽しんでいた。
 大人びてはいても、やはり普段は年相応の子供なのだ。

「私も泳ごうかな?」

「なりませぬ! 王太子殿下に万が一の事があったら、陛下に申し訳が立ちませんから!」

「何か、大変だね。僕は普通に泳ぐけど」

 ペーターは、導師から教わったバタフライで南国の海を思う存分泳いでいたが、ヴァルド殿下は御付きの老臣に泳ぐのを止められていた。
 もし殿下が溺れでもしたら、彼らの責任問題になってしまうからであろう。

「ペーター殿は泳いでいるぞ」

「殿下、他所は他所。うちはうちなのです」

 ヴァルド殿下についている老臣は、うちの母親(前世)みたいな事を言うな。
 子供の頃、同級生が夏休み海外旅行に行くので俺も行きたいと言ったら、同じような事を言われてしまったのだ。
 彼らからすれば、もしペーターが溺れ死んでも自分達の責任じゃないと思っているのであろうが。

「融通が利かないなぁ……」

「殿下も大変ですね」

「ヴェンデリン、私の事はヴァルトと呼んでくれ」

「あの……。それも難しいかと……」

 御付きの連中の目と耳があるので、下手にヴァルド殿下を呼び捨てにして不敬だと言われたら堪らないからだ。

「ペーター殿は名前で呼んでいるじゃないか」

「それは、帝国で一番偉い人がそれでいいと言っていますし、御付きの連中もみんな顔見知りなんですよね……」

 内乱時に知り合った連中ばかりだから、彼らは俺がプライベートな時間にペーターを呼び捨てにしても問題視しないのだ。
 ついでに言うと、彼らはみんなペーターが好き勝手活動していた頃からの仲間や家臣だったりする。
 ペーターが海で泳いでも、誰も気にしないのだ。
 溺れたら自分が助けに行けばいい。
 その前に、泳ぎが上手な彼が溺れる可能性はほぼないと思っていた。

「ううっ……。せっかくヴェンデリンと海に来たのに……。砂を盛っておこう」

 景色を見るだけで何もする事がないヴァルド殿下は、エルを埋めた砂山をさらに大きくする作業に没頭し始める。
 何の意味があるのかと思うが、思えば俺も前世で一人の時とかは、ただ黙々とプチプチを潰したりした。

 それと同じなのであろう。

「殿下、楽しいですね」

「そうだな」

「おーーーい、フジコ。そろそろ俺を出してくれ」

「殿下のご要望だ。我慢しろ」

 ルルと藤子もそれにつられ、砂山はさらに大きくなっていく。
 エルは余計に抜け出せなくなった。

「殿下って、一人遊びがよく似合うね」

「ルイーゼ、しぃーーー!」

 その姿に少し哀愁を感じてしまう。
 俺は王太子殿下じゃなくてよかった。

「ヴァルド殿下、そろそろお食事の時間です」

 暫くみんなで泳いだり砂遊びをしたのち、ドミニク達による食事の準備が完了した。

「野外で大胆に魚介を焼いて食べるのもいいね」

「昔、狩猟の成果をみんなで焼いて食べたのを思い出します」

 ペーター達は俺達と一緒に、ドミニク達が用意したバーベキューに舌鼓を打ち、魔の森産の果物を用いたトロピカルジュースなども堪能する。
 御付きの連中も、ペーターと狩りをして小銭を稼いでいたような者達だ。
 網の上で焼ける魚介類に抵抗もなく、美味しそうに食べている。

「美味しそうな料理ではないか」

「殿下はいけません」

「はあ? こういう場所に来て、こういう物を食べないでどうするのだ?」

「ご安心ください。バウマイスター辺境伯様から食材と調理人の提供を受けまして、殿下に相応しいコースを作らせました」

「アームストロング導師は、普通に食べているぞ」

「導師様は大丈夫です」

 普通どころか誰よりも食べているが、導師は何を食べてもお腹は壊さないようなイメージがある。
 御付きの老臣も、導師がお腹を壊しても責任があるわけじゃないからな。
 どうせ注意しても無駄だろうし、止める権限もないから放置しているのであろう。

「殿下はなりません」

 ヴァルド殿下についている老臣が、衛生面や、第三者により毒物が混入されない保障ないという理由でバーベキューは駄目だと言い、俺は調理人にコースメニューを作らせていた。
 ヴァルド殿下だけは、数名の御付きと共にテーブルの上に準備されたコースメニューを食べる羽目になる。
 材料もいいから美味しそうではあるのだが、 ヴァルド殿下はとても不満そうだった。

 確かに、外のレジャーにきて自分だけ高級レストラン風の料理を食べさせられてもな。
 こういう時は、バーベキューの方が美味しいであろう。
 でも、俺には何も言えないんだよなぁ……。

「ペーター殿は、普通に網で焼いた魚介を食べているが……」

「他所は他所。うちはうちでございます。殿下は常に健康でなければならず、どのような危険もあってはならないのです」

「……」

 ヴァルド殿下は諦めてコース料理を食べ始めるが、俺はなぜ彼に友人がいないのか何となくわかってしまった。
 似たような立場のペーターだが、こいつは元々三男で皇帝になれるような立場の人間じゃなかった。
 傍にいる連中も似たような立場の者達ばかりだし、うるさそうな事を言いそうなのは内乱で消し飛んでいる。

 自己責任でもあるが、ペーターは比較的自由に行動できた。

「この大きなエビや貝は美味しいね」

「生きている間に焼かないと駄目だけどな。もしくは締めてすぐに魔法の袋に入れたものをだ」

「いい物を食べさせてもらったよ。エメラも栄養が必要だからね」

「妊婦さんを『瞬間移動』で運べる魔道具か……」

「需要はそれほどでもないけどね」

 昔は知らないが、今だと『瞬間移動』が使える人間が極端に少ない。
 しかも、妊婦が流産しないようにするという、非常に限定された効果しかないのだ。

「発掘品の効果が、短時間でよくわかったな」

 魔道具は定期的に出土するのだが、そう都合よく説明書と一緒に出土するわけでもない。
 現代でもある魔道具の発展形や、過去に出土して使い道がわかっているものならいいが、たまに何に使うのか判明するまで長い時間がかかるものもあった。
 振動抑制装置は、特にわかりにくいと思うのだ。

「帝国の魔道具ギルドもなかなか優秀ではあるんだよ。僕は魔法が使えないからよくわからないんだけど。装置が作動した時の魔力の流れを測定して、他にも色々と調査方法があるみたい」

 無事に振動抑制装置の使い方がわかり、エメラは海水浴に来る事ができたわけだ。

「まだ産まれるまで時間がかかるのかな?」

「そうですね。半年以上は先です」

「楽しみね。男の子かしら? 女の子かしら?」

「無事に産まれてくれればどちらでも」

 女性陣は女性陣で、楽しそうに話をしながら食事をしている。
 話題の中心は妊娠したエメラであった。
 ルイーゼとイーナが、エメラのお腹を撫でている。

「ルルも、将来はヴェンデリン様の子供を産みたいです」

「俺も早く大きくなりたいものだな」

 ルルと藤子もエメラのお腹を触りながら、自分達も早く俺の子供を産みたいと言った。
 凄い事を言う幼女二人だが、ここには貴族や王族しかいない。
 俺以外、誰もその発言をおかしいと思っていないのだ。

「ううっ……ルルちゃんとフジコちゃんの前に、先生の弟子である私達が先です!」

「アグネス、もう成人したからね」

「私も来年成人で、シンディちゃんは再来年成人。夢の新婚生活だね」

「……」

 今の時点でも嫁の数が完全にオーバーフローなわけだが、それを理由に断れる状況ではないようだ。

「ヴェンデリンも大変だね。僕はエメラ一人で精一杯だよ」

「お前は皇帝なんだから、後宮を作れよ」

「皇帝の後宮? それはあくまでもイメージだけだね。物語のお話だよ」

 帝国の皇帝は投票で決まる。
 その子供が次の皇帝になる可能性は限りなく少ないので、妻の数は普通の大物貴族と同じであった。
 在位中は後宮と呼んでいるが、それはあくまでも外部に対する見栄でそう呼んでいるだけだそうだ。

 子供が皇帝位を継がないのに、豪華な後宮があると退位後の後始末で苦労してしまう。
 そのため帝国では、正式な後宮というものは存在しないらしい。

「内乱がなければうるさく言う連中もいただろうね。あっ、内乱がなかったら僕に出番はなかったか」

 それでも正妻を含む複数の妻を娶れと言われるのが常識であったが、ペーターはあくまでも例外を貫くというわけだ。

「そういえば、ヴァルド殿下はどうなの?」

「どうって?」

「奥さんとか。さすがに一人って事はないでしょう?」

「……」

 そういえば俺って、ヴァルド殿下の事をよく知らないんだよな。
 名前と、奥さんと息子と娘がいる。
 王太子殿下だから側室はいるはずだよな?
 全然噂にもなった事がないけど。

「……。これから色々とわかるんだよ」

「これから親戚同士になるってのに、君達は何か微妙だよねぇ……」

「そんな事はないぞ! 私とヴェンデリンは深い友情と絆で結ばれているのだ!」

 いや、殿下。
 そんな大きな声で言われても……。
 何かこう、殿下が物凄く積極的だと、元日本人である俺は逆に引いてしまうというか……。
 今までの付き合いを考えると、そこまで絆は深くないかなと……。

「そうなんだ……」

 ペーターは友人が多い方なので、どうもヴァルド殿下のあまりの必死ぶりに引いてしまったようだ。

「そういえばさ。アルフォンスなんだけど」

「あいつ、忙しいのか?」

「テレーゼ殿よりも力のない当主だからね。家を纏めるのに苦労しているみたい。今日も誘ったんだけどねぇ……」

 アルフォンスは優秀な男だが、元は分家の当主だ。
 テレーゼの兄達が消えたにしても、フィリップ公爵家の掌握で苦労しているようだ。
 元々当主になんてなりたくなかった奴だけど、実は意外と責任感がある男なんだよな。

「じゃあ、今度フィリップ公爵領に一緒に行こうか? こっちのお土産も一杯持って」

「いいねぇ。アルフォンスは僕を支持してくれる貴重な友人だからね。同じく友人であるヴェンデリンと会えたら嬉しいと思うよ」

 奴と俺とは、同じ嗜好を持つ心の友だからな。
 今もストレス発散のため、奥さん達を裸エプロンにして楽しんでいるのであろうか。

「私も行こう!」

「あの……ヴァルド殿下は難しいかと……」

 そう簡単に、王太子殿下を外国に連れてはいけない。
 俺は王族じゃないし、すぐに魔法で逃げられる身軽な存在だから、自由に他国にも行けるのだから。

「そうか……。残念だな。でも、次は子供達を遊ばせたいな!」

 その日は、夕方までみんなで存分に南の海を楽しんだと思う。
 ただ一つだけ、ヴァルド殿下はどうしてあんなに必死なのであろうか?

「いやぁ、ルイーゼの言うとおりだな。ヴァルド殿下は、ヴェルよりも酷いわ」

「俺、結構友人が増えたよ」

 ここは大切なところだから強調しておこう!

「だから、ヴェルよりも酷いと言っている」

 エルは、ヴァルド殿下から十二歳頃の俺と同じ雰囲気を感じたようだ。
 俺と同じ雰囲気……ヴァルド殿下は立場の問題もあると思うが、俺と同じくボッチ体質なんだろうなと、俺は思ったのであった。
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