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八男って、それはないでしょう!  作者:Y.A
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幕間二十五 エルヴィン・フォン・アルニムの従軍日記? 

「(天使だ! 天使がいた!)」

「バウマイスター伯爵様の軍勢ですか。私達は、ここで降伏します」

「(綺麗な人だなぁ……)降伏されるのでしたら、我々は慣習に従った待遇をお約束しましょう」

「承知いたしました。全員に武器を捨てさせます」 

 主君であるヴェルからの命令という事で軍を率いてブロワ辺境伯軍本陣へと赴いた俺は、この日生まれて初めて恋に落ちた。



 長引く紛争で、提示される裁定案に不満を持ったブロワ家は最大の禁じ手に手を出した。
 装備する武器を実戦用に変えて、全軍での夜襲を試みたのだ。

 この夜襲は、俺の親友にして主君であるヴェルの『エリアスタン』によって防がれている。

『大規模魔法で吹き飛ばせばいいじゃないか』

『味方の被害はなるべく防ぎつつ、敵の損害もなるべく少ない方がいいじゃないか』

 ヴェルは、たまに妙な気を使う事が多い。
 既にここまで状況が悪化したのだから、ブロワ家の軍勢を壊滅させても文句は出ないような気がするのだが、危険を犯してまで損害が少なくなる方法を選ぶのだから。

『駄目なら、担いで逃げるからな』

『その辺は、エルに任せる』

 ヴェルと出会ってから、骨竜、老属性竜、ドラゴンゴーレム、貴族とその軍勢ときて、遂に一万人の大軍だ。
 ブランタークさんとカタリーナが手伝ったとはいえ、その貢献比率は三分の一ほど。

 軍事の定義で言えば、七割が戦闘不能になった軍勢など機能しない。
 二人の功績は、ヴェルの勝ちを完勝にするためのオマケみたいな物であろう。

『ブライヒレーダー辺境伯様から、兵を出してくれとの要請が来た。お館様はお休み中ではあるが、この状況で出さないのもな。お館様へは事後承認となるが、こちらも兵を出そうと思う』

 気絶した三人を寝かせると、そこにモーリッツさんが姿を見せる。
 ブロワ家による夜襲は失敗に終わり、わずかに後方で残っていた軍勢はすぐに降伏していた。
 前方にいた味方の大半が、いきなり麻痺して動かなくなったのだ。
 わずかに残った指揮官もいない兵士達が、五千人もの敵と戦って玉砕などするはずもなかった。

『急遽、後方の敵本陣を占領する事になったそうだ』

 魔力を失ったヴェル達は気絶したままであったが、その間にも状況は動く。
 夜襲への懲罰的な意味も込めて、ブライヒレーダー辺境伯様は東部領内への侵入と、本陣や補給物資の集積所などを含めた拠点の占領を決定する。

 俺もモーリッツさんと共に、わずかな兵を率いて敵本陣の占領を目指す。
 応援のブライヒレーダー辺境伯軍と共に本陣に向かうと、そこには碌な戦力が残っていなかった。
 あの夜襲を成功させるために、ブロワ軍はほぼ全軍を投入したようだ。

「我らはブライヒレーダー辺境伯家・バウマイスター伯爵家連合軍である! ブロワ辺境伯軍に告ぐ! 降伏せよ!」

 麻痺しているブロワ軍の捕縛と救助に急がしいとはいえ、一応は五百人ほどはいる味方の軍勢に対し、ブロワ家側は百人ほど。
 まともに戦えば、まずブロワ家側に勝ち目は無い。

「我らが降伏などするか! 明日には援軍が来てまた逆転するわ!」

 ブロワ軍本陣から、責任者であると思われる中年の男性が姿を見せ、絶対に降伏などしないと声を荒げる。
 味方全滅の情報を知っているのかは知らなかったが、敵軍が本陣に攻め寄せているのだ。
 負けは理解しているはずだが、ここで何もしないで降伏などしたら恥の上塗りだと思っているのであろう。

「エルヴィンさん。頼んだぞ」

「わかりました」

 ブライヒレーダー辺境伯軍を率いている家臣が、俺に説得を頼んできた。
 俺にそういうスキルは無いのだが、ヴェルの家臣である俺から、主君が成した事を伝えて降伏を促す計画のようだ。

「(上手く行くのかね?)先に伝えておくが、ブロワ軍は一人残らず全滅したからな」

「嘘を言うな!」

「全滅しなきゃ、数が少ないうちが軍勢を割いてあんた達に降伏を勧告できないじゃないか。ブロワ軍は、バウマイスター伯爵様の魔法で壊滅した」

 あまり言葉を飾り立てても意味が無いから、全て正直に話す事にする。
 俺の言葉を聞いたブロワ家本陣内では、次第に動揺が広がっているようだ。

「早く降伏した方がいいと思う。我が主人の魔力は、少なくとも援軍とやらが来るまでには回復しているだろうからな」

「くっ……。カルラ様と相談する……」

 カルラ様とは、ヴェルが言っていたブロワ軍総大将代理の女性の事であろう。
 完全なお飾りのようで、さすがに夜襲には帯同させなかったようだ。
 もし何かの間違いで戦死でもしたら、それは問題になるであろうし。

「(そういえば、ヴェルは綺麗な人だって言ってたな)」

 とはいえ、『ただ綺麗なだけの深窓の令嬢ではな……』と思う。
 成人してから、ブランタークさんに王都のそういう店に連れて行って貰って納得したから。
 綺麗な女性は一定数いるけど、そう人生を共にしようなどと思える女性は少ない。

 ヴェルは立場があるから大変だろうけど、俺は暫く結婚とかは勘弁して欲しいと思っていた。
 もっとも、この紛争が終われば強制的にお見合いがあるんだけど。

 果たして、良い女性なんているのかね?

 そんなしょうもない事を考えていると、ブロワ家側はお飾りだと思っていたカルラ嬢が降伏を受け入れる事を決定していた。
 どうやら、思ったよりも芯がある女性のようだ。

「(ヴェル。本当に、綺麗な女性なのか?)」

 そう思っていると、そのカルラ嬢が姿を見せる。
 さすがは大貴族のご令嬢、ミスリル製の装備に身を包んで後光が差すようである。

「ブロワ軍総大将代理であるカルラ・フォン・ブロワです。降伏いたしますので、兵達には寛大な処置をお願いします。ところで……」

「……」

 その顔を見て、俺は衝撃を受ける。
 本陣から出て姿を見せたカルラ嬢の美しさに、俺は一瞬で恋に落ちたのであった。



「カルラさんだけど、うちで面倒を見る事になったから」

「うちには女性がいるからか?」

「正解だ。はあ……。戦争とか本当に面倒だな」

 カルラ嬢達を後送し、追加でブロワ家側の物資貯蔵所などを占領して戦果を稼いで戻ると、ヴェルが溜息をついていた。
 紛争どころか戦争になった状況で終結への筋道が見えないのと、カルラ嬢を預かる事になって面倒が増えたと思っているようだ。

「(しかし、俺には好都合!)」

 俺はヴェルの護衛でもあるので、彼女と接するのに何の不自然さもないからだ。
 カルラ嬢の面倒は、エリーゼ達が見るはず。
 となれば、ヴェルと接触する機会も増え、ヴェルの護衛でもある俺と接触する機会も増える。

「ヴェル様個人の護衛は私がする。エルは、人手が足りないからエリーゼ様達を含めた奥周りの警護責任者」

「えっ?」

 と思ったら、早速仕事の変更がヴィルマから告げられる。

「うちの兄は、陣地の統括や運営などで急がしい」

「だよなぁ……」

 ブロワ家側がいまだに使者すら寄越さないので、ブライヒレーダー辺境伯は保障占領の枠を広げる決断をしていた。
 追加で援軍も来るが、うちにも多くの仕事が割り振られてモーリッツさんは忙しいようだ。

 俺も、本陣の警護責任者にされていた。

「(いいさ。それでも、カルラさんの傍にいられる。空いた時間にお話とか出来るし)」

「エル。何をにやけているの?」

「別に……」

 ヴィルマは、とにかく勘が鋭い。
 今の時点でカルラさんへの気持ちに気が付かれると困るので、俺はすぐに表情を元に戻して警備の仕事に打ち込み始めるのであった。



「(何だとぉーーー! カルラさんがヴェルの妻にぃーーー!)」

 俺は今まで生きてきて、これほどのショックを受けた事はなかった。



『エルヴィンさんは、弓もお上手なのですね』

『お館様と同じで、地方貴族の嗜みというやつです』

 カルラ嬢がうちに来てから数日、俺は幸せの絶頂にいた。
 警備の仕事はあったが、空いた時間に弓の名手であるカルラさんからその指導を受ける事が出来たからだ。
 彼女と色々な話をしながら、弓を教えて貰う。

 しかも彼女、教えるのも物凄く上手だ。
 弓に矢を番えて構えると、手を添えてアドバイスをしてくれるのだが、とてもフローラルな香りがする。
 少し変態チックな喜びであったが、ヴェルもそれは同じらしい。

『私は剣が全く駄目なので、エルヴィンさんが羨ましいです』

『俺は、一芸に秀でたカルラ様が羨ましいですけど』

『エルヴィンさん。様付けは不要です。私はブロワ家の娘ですが、一年前まではただの貧乏貴族の娘だったのですから』

 忘れられた娘であった彼女は、ブロワ辺境伯の一方的な都合で呼ばれていた。
 だから、彼女はブロワ家への愛着が薄い。

 それでも、あの本陣での対応は見事だった。
 ただ綺麗なだけではない。
 そこには、別の美しさも存在していたのだ。

『今日の食事は、私が作りました』

『料理もお上手なんですね』

『王都にある母の実家で居候をしていましたので、最低限の嗜みは』

『いえいえ。とても美味しいですよ』

 カルラさんの作る食事は、とても美味しかった。
 あの飯には五月蝿いヴェルが美味しいと言うのだから、相当な物だと思うのだ。
 エリーゼとは、ほぼ互角なはずであった。

『エルヴィンさん。このお洋服ですけど、解れた部分を直しておきました』

 捕虜とはいえ賓客なのでそんな事はしなくてもいいのに、カルラさんはエリーゼ達と一緒に甲斐甲斐しく働いていた。

『エリーゼさん達とお話をしながら働いている方が楽しいですから』

『(天使だ! マジ天使だ!)』

 きっと、こんな人が奥さんになってくれたら最高なのであろうと思う。
 しかし、今の俺とカルラさんには身分の壁がある。
 俺はヴェルの家臣で、カルラさんはブロワ辺境伯の末娘。

 更に、ようやく再開した裁定交渉の席で、ブロワ家の二人の後継者候補達は共にカルラさんをヴェルの奥さんに押し込もうと画策していた。

 その事実に、俺の心は大きく動揺する。

「なぁ……。ヴェル?」

「受け入れらるか! ブライヒレーダー辺境伯も、ローデリヒ以下の家臣達に聞いても賛成なんて一人もいないわ!」

 未開地の開発で経済的にも潤い、貴族や陪臣の次男以下を新規雇用しているバウマイスター伯爵家という、美味しいパイの分け前を狙っているのが明白であったからだ。

「うちの実家への反乱教唆に、この無駄な出兵。身代金をなるべくふんだくって黒字で戻るのが一番」

 ヴェルは、もう金輪際ブロワ家と係わり合いになりたくないようだ。

「左様にございますな。今出している人数ですら、バウマイスター伯爵領では痛手でしょうから」

「反乱の首謀者が、そう言うくらいだからな」

「いえいえ。ヴェンデリン様。私は、実行責任者というところが妥当で」

 貴族になったヴェルは、個人的な感情ではカルラさんを妻にはしないはず。
 本人もそう言っているし、間違いはないはずだ。

『何のしがらみもなければ、最高の女性だけどね』

 とは評価していて、俺も少し不安ではあるのだが。

 しかし、ヴェルの嫌味を余裕で受け流すあのクラウスという老人は恐ろしい。
 こんな妖怪のようなジジイ、うちの実家にはいなかった。
 きっと彼は、生まれて来る場所を間違ったのだ。

「エルヴィン殿は、何かお悩みでも?」

 しかも、このジジイ。
 俺の、カルラさんへの気持ちに気が付いたらしい。
 早速に探りを入れてくる。

「悩みなんて無いけど」

「そういえば、裁定交渉の進展次第では再びカルラ様をヴェンデリン様が娶るという条件が真実味を……」

「ええっ!」

 クラウスからの突然の暴露に、思わず俺は驚きの声を挙げてしまう。

「お若いですな。エルヴィン殿は、少し感情を隠される事を心がけた方が宜しいかと。こういう物は経験なので、焦る必要もございませんが……」

 やはり、このジジイは妖怪だ。
 どうせバレてしまったし、ヴェルに報告するであろうと、俺は正直に自分の気持ちを話していた。

「身分違いの恋ですか。私は、生憎と経験がございませんで……」

「そういえば、クラウスさんの奥さんの話は聞かないな」

「若くして病死しましてね。私は元は次男で、名主を継げる立場には無かったという話は聞いていると思いますが……」

 そんなクラウスさんにも婚約者がいたそうだ。

「近くの農家の次女でして、幼馴染でした。お互いに、貧しくてもいいからどうにか二人で一家を立ち上げたいと……」

 ところが、父と兄が急死してクラウスさんが名主になる事が確定してしまう。

「そうなると今度は、『名主になったクラウスさんには相応しい妻が必要だ』とか周囲が言うのです。私は、意地でもマルタを諦めませんでした」

 唯一これだけは譲れないと、周囲の反対を押し切ってその幼馴染の女性を妻としたそうだ。

「ただ、彼女には負担をかけてしまいましたね……」

 周囲から『普通の農家の次女程度が、名主の妻など本当に務まるのか?』というプレッシャーを受け、まだ子供達が幼い内に病死してしまったそうだ。

「可哀想な事をしたのかもしれません。ですが、病床でマルタは『幸せだった』と言ってくれました。私に気を使ったのかもしれませんが、その言葉で十分ですよ」

 その後は、周囲の後妻を娶れという勧めにも従わずに、独身を貫いているそうだ。
 普通ならば、名主ともなれば正妻が死ねばすぐに後妻を娶る。
 それをしなかったのは、クラウスさんが自分を貫いたからなのであろう。

 間違いなくそれを勧めたヴェルの親父の面子は潰しているので、あの二人の仲の悪さも納得できるのだが。

「私の経験は、あまり役に立たないかもしれませんね。身分差がある恋。例えば、エルヴィン殿は資産を持っています。ご自分で領地などを開発して貴族になれば……」

 それも考えなくはなかったけど、ヴェルを見ているから余計に思うのだ。
 貴族になるよりは、雇われている方がよほど気が楽だと。

「それに、その間にカルラさんの旦那は他の奴に決まるだろうし」

「そうですよねぇ。ならば、逆を考えるのです」

「逆?」

「カルラさんの価値を落とします」

 カルラさんはブロワ辺境伯家の末娘で、今の立場だと最低でも男爵家以下の貴族家の当主か跡取りに嫁ぐのが普通だ。

「ですが、ヴェンデリン様の正妻というのは不可能ですね。長女や次女ならともかく」

 このままヴェルに嫁ぐと、序列的にはカタリーナの下で四番目であろうと。

「エリーゼ様は言うまでもありません。正妻の地位など求めたらブロワ家に非難が殺到です。教会も敵に回す羽目になるでしょう。二番目もありえません。ヴィルマ様の義父様のご身分を考えますと。カタリーナ様もご自身が名誉爵位持ちなので、いきなり追い抜いたらやはり非難轟々です」

「となると、四番目?」

「それをすると、今度はルイーゼ様とイーナ様を送り込んだブライヒレーダー辺境伯様が怒ります。かと言って、一番序列を下にするなどブロワ家としても容認できない」

「最初から無理がある話なんだな」

「そういう事ですね」

 妻の序列とか面倒な話だけど、当事者同士には深刻な話なわけだ。

「それがわかっていないのなら、ブロワ家はどちらが継いでも未来は暗いですね。暫く低迷状態が続くでしょう」

 クラウスさんは、何気にブロワ家の将来を悲観していた。

「それはわかったけど、ならどうすれば?」

「カルラ様は、現時点でもヴェンデリン様の妻になるのは厳しい。ならば、もっと追い込まれればどうなるか?」

 末娘なので、嫁ぐ先のハードルが下がるはずだと。

「ヴェンデリン様の親友にして、警備まで任されている重臣が独身である。さて、ブロワ家はどう考えるのかと」

 ヴェルの妻には押し込められなくても、俺の妻にならいけるかもしれない。
 しかも、本妻ならば文句も出難いはずだと。

「バウマイスター伯爵家と繋がりも出来ます。それが、どの程度の繋がりかはヴェンデリン様次第ですけど」

 その内に、全く利権を融通しないで再びブロワ家に暴発されても困ると考える人達も出るかもしれない。
 多少の融通をする時に、縁があれば何かと便利であろう。

「エルヴィン殿の妻なら、その辺のコントロールが楽なのです。都合が悪ければ、ヴェンデリン様のお力でその動きを封じられますし」

 『俺の妻じゃないから』で、融通しない選択も可能なわけだ。

「それはわかったけど、これ以上ブロワ家が追い込まれるかな?」

 今でも、無駄な抵抗しているわけだし。
 その内に自暴自棄になって、全軍突撃でもするかもしれない。

「その件でしたら、カタリーナ様から聞いていらっしゃるでしょう?」

「ヘルタニア渓谷だっけ?」

 資源の宝庫ではあるが、繁殖する岩製のゴーレム達に守られて採掘が不可能な魔物の領域。
 ブロワ家側からすれば不良債権なわけだが、ここを貰ってからヴェル達で開放してしまえば、ブロワ家のショックも大きいであろうと。

「多少の和解金の減額など、一瞬で取り戻せるはずです」

 もしそうなれば、ブロワ家は余計に追い込まれる。
 交渉で正式にバウマイスター伯爵家に譲渡し、そこには王都から来た役人も証人として存在しているのだ。
 『開放されたから、あの条件はやっぱり無しで』などと言えば、『ブロワ家は、決められた裁定案も守れないのか?』と非難されてしまうからだ。

「今の時点で、カルラ様の嫁ぎ先は不明です。状況も、そう簡単には動かないでしょう」

「ならば、俺は」

「ヘルタニア渓谷開放に全力を傾ける事です」

 それからすぐに、ヘルタニア渓谷のバウマイスター伯爵家への譲渡が決定する。
 和解金の減額と合わせて、先にバウマイスター伯爵家は裁定交渉を終わらせたのだ。

 随分と呆気なく譲ると思ったけど、ブロワ側は過去に何回もヘルタニア渓谷の開放を目指して損失を増やしたらしい。
 さすがのヴェルでも、開放は不可能だと踏んだのであろう。

 俺から言わせると、ヴェルに格安で美味しい利権を譲渡したのに等しい行為なんだけど。
 それはヴェルだけじゃ不可能だろうけど、あいつには知己の魔法使いが複数いるからな。

「さあて。導師に連絡だな」

「導師も呼ぶのか?」

「扱いは、冒険者に準ずるだけど」

 貴族として呼ぶと利権の分配が面倒なので、ヴェルは導師を冒険者として呼ぶ事を決定していた。
 ヘルタニア渓谷の開放に成功したら、全て現金で報酬を支払うらしい。

「そんな無茶が可能なのは、ヴェルだからか」

 ヴェルが報酬に渡す白金貨を数えているのを見て、すぐに納得する。

 ヘルタニア渓谷への突入は、ヴェル、導師、ブランタークさん、カタリーナ、ルイーゼで行なう。
 メンバーを見ればわかるが、突入は空から『飛翔』を用いて行なうつもりのようだ。

「地上にいる獣型の岩製ゴーレム達は、最初から相手にしない。陽動部隊に一任する。エルは陽動部隊の先陣を任せるぞ」

「任せてくれ」

 ここで頑張れば、またバウマイスター伯爵家が大きくなって、ブロワ家がカルラさんを嫁がせる条件を下げるかもしれない。

 クラウスさんの言っている事が実現するのかはわからなかったが、今はそれに縋るしかないよな。

 現場であるヘルタニア渓谷へと移動し、早速領域内に入って迎撃してきた岩製のゴーレム達を相手にする。
 強さは、普通の狼よりは少し鈍いが、岩で出来ているから防御力は高いか。

 三匹ほど切り伏せたけど、剣が研ぎなおしになってしまった。
 数で相手の消耗を誘うのが、このゴーレム達の目的なんだろうな。

「エルヴィンさんの剣の腕前は素晴らしいですね」

 そんな事よりも、カルラさんが俺を褒めてくれたんだ。
 彼女に褒められると、真面目に剣の鍛錬をしていて心から良かったと思う。

「エルヴィン。カルラさんも応援してくれているぞ」

 ヘルタニア渓谷の開放作戦が始まって陽動任務に入ると、モーリッツさんが俺にそう告げていた。
 後ろを見ると、カルラさんが手を振ってくれている。

「(ここは、男の見せ所だ!)」

 あのドランゴーレム戦の報酬で買った、二千万セントもしたオリハルコン製の剣でゴーレム達を斬り伏せていく。
 さすがはオリハルコン製、岩のゴーレム達がまるで紙のように切り裂かれていき、俺の評価も上がったというものだ。

「お前。凄い剣を持っているんだな」

「冒険者としての報酬で買いました」

「あれだけゴーレムを斬って刀身に傷一つ無いとか……。主役を任せるからな」

「はいっ!」

 ヴェル達がヘルタニア渓谷のボスであるロックギガントゴーレムを狙っている間に、俺は剣を振るい続ける。
 ここで頑張れば、カルラさんは俺の気持ちに気が付いてくれるはずだ。

「終わったか……」

 多くのゴーレム達を斬り伏せたところで、ヘルタニア渓谷の大地に轟音が響き、地震が発生する。
 どうやら、ヴェル達が目的を達したようだ。

 領域のボスであるロックギガントゴーレムの破壊と共に、操られていたゴーレム達が全てただの岩の塊に戻ってしまった。

「エルヴィンさんは、冒険者としても一流なのですね」

 ゴーレム達が全滅してエリーゼとカルラが陣地を移動するために俺の傍に姿を見せてる。
 カルラさんは、一番先に俺に声をかけてくれた。

「ヴェルのオマケですけどね」

「バウマイスター伯爵様は、かなり特別な方ですから例外ですよ。私は、エルヴィンさんも凄いと思います」

「(やったよ! 俺が凄いって!)」

 ヘルタニア渓谷開放後は、本陣を移動してゴーレムの残骸から魔石や鉱石を回収したり、鉱脈の確認を行なったりと。
 手早くお金になるようにして、同時に横取りを企む不届き者への対策を行なうようになる。

 俺もそれなりに忙しかったが、カルラさんとは良く話をするようになっていた。

「こんな事を言うと怒られるかもしれませんが、私はブロワ家になど本当は居たくないのです」

「気持ちはわかります。俺も、実家とはほぼ絶縁状態ですから」

 カルラさんは、自分の人生を翻弄しかしないブロワ家を嫌っている。
 俺も、実家には言いたい事が山ほどあった。

 冒険者になった時に、親父や兄貴達から半ば勘当・切り捨て扱いされていた。
 わずかな独立支援金だけ渡されて、『もう実家に戻って来なくていいから』と言われていたのだ。

 ヴェルの実家よりは多少マシ程度の騎士爵家なので、五男の俺に居場所などなかった。
 その前に、子供の頃から人が苦労して獲った獲物を横取りして当然という態度とか、人を何だと思っているのであろう。

 独立後を考えての、金を貯める行為にまで親父達は邪魔してくる。
 未成年者から成果を搾取するなど、一体何を考えているのであろうか?

 ただ、その罰は受けている。
 俺がヴェルの親友であり、バウマイスター伯爵家の重臣に確定している事実を知った実家はいきなり手紙を送ってきていた。

『シュトフェルとヴィーラントは、どのくらいの家格の陪臣になれるのだ?』

 この手紙を受け取った時に、俺は最初意味がわからなかった。
 向こうから縁を切ってきた癖に、俺が当主の親友でコネがあると知ると兄達の仕官の世話をして当たり前だと手紙を送ってくる。
 あまりの衝撃に、俺は呆然とするしかなかった。

『呆れるばかりだな』

『このシュトフェルとヴィーランって?』

『三番目と四番目の兄貴』

 五人全員母親は同じであったが、兄弟仲はあまり良くない。
 上の兄が下を虐げて搾取する構図が出来ていたので、一番目と二番目の兄達に搾取されていた三番目と四番目の兄達は、一番下の俺をその対象にしていたからだ。

 冒険者予備校で他の同じような立場の奴から聞いても、うちはかなり酷い部類に入るようだ。

『そういうわけだから、無視でいいですから』

『多少は考慮しないと拙くないですか?』

 ブライヒレーダー辺境伯様が気を使って忠告してくれたが、事情を話すと納得してくれたようだ。

『さすがに少し酷いですね。優遇しろとは言いませんが、せめて邪魔はしないのが常識でしょう』

 独立資金を貯めるのを邪魔をするという事は、外に出てから野垂れ死んでも構わないと思っているからだ。

『野垂れ死んでも構わないと思っていた五男が独立したのです。それで十分だと思いますよ』

『そうですね』

 そんな話の後に、うちの実家への優遇は一切しない事が決まっていた。
 それを伝えるとまた手紙を送って来て、『厳しかったのは、我が子を谷底に突き落とす獅子に倣ったのだ』とか、『お前が優れていたから仕方なく』とか言い訳が書いてあったが、当然無視している。

 更に、この件が西部を統括するホールミア辺境伯家に漏れたそうだ。
 ホールミア辺境伯は、俺との縁で多少の優遇処置を受けられると思っていたらしい。

 ところが、実際には普通の対応しかして貰えなかった。
 東部のように除外されたわけではないが、当てが外れたのは事実で、その事情が知られてから実家は西部で白い目で見られるようになったらしい。 

『母さんが生きていれば、少しは考慮したかも』

『お母様がですか?』

 唯一庇ってくれたのは母だけであったが、俺が十一歳の時に病死してしまっている。
 義理を果たす必要など、もうあの実家には無いのだ。

『そうですか……。私には母がいます。それだけでも、幸せなのかもしれません』

 こんな話をするようになり、俺とカルラさんとの仲は相当に深まったはずだ。

 ヴェルも、開放されたヘルタニア渓谷の開発・防衛計画を急ぎ推進していて、そのあまりのスピードに後継者候補達が裁定交渉の席に縛られているブロワ家は何も対応できていない。

「所属不明の密偵らしき奴らが何人か捕まったな」

「所属不明って、ブロワ家しかあり得ないだろう」

「どこの密偵でも、今のヘルタニア渓谷は準戦時状態だからな」

 可哀想ではあるが、密偵は捕まれば処刑される。
 平和な時代ではあるが、仲が悪い貴族同士は密偵を送り合い、それが捕まれば殺されてしまうのが普通だからだ。

「特に、応援に来ている王軍に捕まったのは駄目だな」

 たまに水面下の交渉で密かに開放されるケースもあるのだが、決まり通りに動く王国軍に捕まればすぐに首を刎ねられる。
 ブロワ家としても、既にバウマイスター伯爵家の物になっているヘルタニア渓谷に勝手に密偵を送っているので苦情を言うわけにもいかず、無駄に訓練された密偵を失ったわけだ。

「トップが不在だから、現場が混乱しているのでしょう」

 カルラさんの言う通りであろう。
 もし情報を得たいのであれば、もっと計画的に密偵を送るべきなのだから。

「やはり、自分の道は自分で切り開くしかないのでしょうね……」

 ヘルタニア渓谷開放から数日後、カルラさんは俺にこう漏らしていた。

「自分で切り開く?」

「はい。私はブロワ家の籍から抜けたいのです。しがらみの無い立場で、自分の力で生きていく」

 弓の腕前から考えると実力的には可能であるが、あの二人の兄達が政略結婚の駒となる彼女を手放す可能性は低い。
 一体、カルラさんはどうやってそれを成すのであろうか?

「ブロワ家には、継承権第三位の叔父が居ります」

 彼女は、ヴェルに一つの情報を提示していた。
 先に亡くなったブロワ家当主よりも、三十歳近く年下の末の弟。
 この人物にブロワ家を継がせて、紛争の早期決着を目指す方が良いと。

「カルラさんは、彼からブロワ家の籍を抜いて貰うと?」

「それしかありません」

「なるほど。それは良いアイデアですね」

 ブロワ辺境伯家の娘ではなく、母親の実家である貧乏法衣騎士爵家の子女となる。
 これならば、彼女の行動の自由も広がる。

「(家格的に考えても、俺と釣りあう。素晴らしい作戦じゃないか)クラウスさん」

「私も絶対の確信があって言ったわけではないのですが、カルラ様はなかなかに……」

 クラウスさんは、カルラさんが思った以上に知恵が回ると思っているようだ。

「綺麗で賢妻とか。素晴らしいめぐり合わせだな」

「はあ。そうですな……」

 少しクラウスさんの口調が気になるが、今は先に事を成すのが先決だ。
 俺もヴェルの護衛として、ブロワ領へと乗り込む。

 そしてブロワ家は、ヴェルの仕返しによって第三の候補者による当主就任と、裁定案の受け入れを実行する。
 あの夜襲を指導した重臣達は縛り首となって家も改易、他にも減禄で没落した家も多い。

 先代の家族はほぼ全てが王都に押し込まれ、捨扶持代わりの騎士爵家を与えられて力を失ってしまう。

 自業自得とはいえ、ヴェルを怒らせるからこうなるんだ。
 あいつは、自分に害が無ければこんな事はしないのだから。

「ようやく終わりましたね」

「はい」

 紛争終結後、カルラさんは無事にブロワ家の籍から抜ける事に成功していた。
 これからの予定を聞くと、まずは王都に住んでいるお母さんに報告を行いたいそうだ。

「あとは、暫くは共稼ぎでしょうね」

「共稼ぎ?」

「はい。私は結婚します」

「そんな方が居るのですか? どんな方なのです?」

 衝撃の事実に鈍器でぶん殴られたようなショックを受けるが、彼女が続けてその相手の特徴を語り始めると、次第に嬉しさで胸が一杯になってくる。

「一つ年下で、馴れ初めは弓を教えた事です……」

 他の特徴を聞いても、間違いなく俺の事を示しているとしか思えない。

「(つまり、これは……)」

 前に、適当にパラパラとページを捲って見た恋愛物語の一つで、主人公に『結婚します』と言って一旦落としておいてから、実は女性の方から主人公にプロポーズするというパターンに良く似ている。
 いや、全く同じシチュエーションである。

『女って、こういう物語が好きなのな』

『文句ある?』

 本の持ち主であるイーナには悪い事を言ってしまったな。
 今の俺は、そういう物語が大好きになっていた。

「王都の母に許可を貰いたいですし、結婚して落ち着いてから一緒に住みたいとも思っています」

「それが良いでしょうね(勝った! 俺は、勝ったんだ!)」

 昨日ヴェルから、『俺が婚姻を命じた方がいいか?』と聞かれて断ったのだが、それで良かったわけだ。
 せっかく結婚するのだから、相思相愛で主君からの強制は良くない。
 実際に、彼女は俺を選んでいるのだから。

「王都で準備を整えてから、バウルブルクに挨拶に参ります」

「わかりました」

 カルラさんは王都へと戻り、俺は彼女の再訪を心待ちにして普段の生活に戻っていた。

「エルヴィンは、ご機嫌なんだな」

「そうですか?」

 トーマスさんに指摘された通りに、俺は浮かれている。
 それでも仕事はミスしていないので、特に問題はないはずだ。

「大丈夫なのですか?」

「カタリーナが何を心配しているのかわからないが、俺は絶好調だぜ」

 カルラさんから、明日にはバウルブルクに到着すると連絡が入り、俺のテンションは一気に上がる。
 そんな俺にカタリーナが首を傾げながら心配していたが、彼女の見当違いの心配など今の俺には何の影響もない。

 そして翌日、念には念を入れて到着時刻の一時間前から港の前で待っていると、着陸した魔導飛行船からカルラさんが姿を見せていた。
 彼女は、初めて出会った頃のミスリル製の武具や高価な服装ではなく、下級貴族の娘が良く着る質素なワンピース姿であった。

 それでも、彼女の美しさはまるで揺るがない。
 やはり彼女は、俺の天使であった。

「お久しぶりです。エルヴィンさん」

「お久しぶりです。カルラさん」

 待ちに待った再会を果たし、俺の心が歓喜に満ち溢れている。
 彼女は、俺と結婚するためにここまで来てくれた。
 それだけで、人生最大の喜びを迎えたのだ。

「私の婚約者をご紹介しますね」

「(まだ物語が続くのか。カルラさんって、意外とロマンチスト?)」

 その後、その相手が俺だと知れて二人は抱きあったり、キスをしたりするわけだ。
 わずか数秒後の事でも、待ち遠しくて仕方ない。
 それでも、その瞬間までの喜びを俺は余す事なく甘受するのであった。




「……(あれれ? どういう事?)」

 のはずだったのに、俺はなぜか一人港の前で佇んでいた。
 なぜだかわからないのだが、カルラさんは後ろにいた俺に雰囲気が良く似ている男性を婚約者だと紹介したのだ。

 しかも彼は、武芸大会の弓の部で優勝した逸材君らしい。
 その腕を見込まれて、ホールミア辺境伯家に弓術指南役として仕官がかない、夫婦で新婚旅行も兼ねて魔の森で狩猟と採集も行なうのだと。

『エルヴィンさんには、大変に良くして貰って』

『おめでとうございます』

 どうにか気力を振り絞っておめでとうの言葉を言うが、これが俺の限界だ。
 それが言えただけでも、俺を褒めて欲しいところだ。

「なあ。エル」

「ヴェル。そっとしておきなさいよ」

「でもさ。イーナ」

「今触れると、エルが瓦解するから」

 何か、ヴェルとイーナが喋っているけど、俺には良く聞こえないや。
 というか、どうしてこうなった?

 俺は、何か悪い事でもしたか?
 カルラさんとは、物凄く上手く行っていた。
 ヴェルが遠慮をして、弓の指導時と仕事以外ではあまり話をしないから、女性陣を除けば俺が一番仲が良かったはず。

「(友人扱い? 友達扱いだったのか!)」

 俺に良く似た男性を婚約者だと紹介して、彼女は去っていく。

「なあ、大お見合い会なんだけど……」

 ヴェルが何を言っているのか、良くわからない。

「エルの坊主。選び放題だな」

 ブランタークさんが何か言っているようだが、これも良くわからない。

「エルヴィン様ですよね? 私、イレーネ・フィリーネ・フェアリーガーと申します」

 何か、女の子らしき人が話しかけてくるけど、良くわからない。

「駄目だな。アレは重傷だな」

「ブランタークさん。今回は諦めた方がいいですかね?」

「若いんだから、一年や二年遅れても大丈夫だろうしな」

「ですねぇ……」

 外野が色々と言っているが、意味がわからないし頭にも入らないのだ。

「(でもなぁ……。せっかくの大お見合い会だ)」

 それだけは、辛うじて認識できる。
 確かに、俺の初恋は終わった。
 完膚なきまでにフラれて終わったのだ。

「(だが、それで全てを諦めるか?)」

 俺はまだ若いんだ。
 きっと他にも、第二のカルラさんがこの世界にはいるかもしれない。
 ヴェルが企画した大お見合い会には、多くの参加者がいる。
 中には、ピンとくる女性だっているかもしれない。

「(立ち上がれ! エルヴィン! 俺は、新しい恋を見つけるんだ!)」

 俺は気力を振り絞り、失恋のショックで呆けていた自分を取り戻す。

「(ヴェルのように、複数の奥さんだって有りなんだ! 目指せ! プチハーレム)」

 失恋を乗り越えた俺には、もうショックなどない。
 きっと、カルラさんを超える素晴らしい女性を奥さんにしてみせるのだ。

「ヴェル。参加者の中で素晴らしい女性は?」

「えっ……。もう大お見合い会は終了だけど……」

 ようやく目覚めた俺に、ヴェルはとんでもない事実を突きつける。

「ほら。もう片づけを始めているだろう」

 屋敷の庭では、テーブルなどの片づけが始まっていた。
 その前に、参加者が一人もいない。

「みんな。相手が決まって町を案内されていたり、もう同居の準備を始めている人もいるし」

「えっ?」

「ゴメンな、エル。今回は、俺がもっと強引にでも手を貸していれば……」

「いや……。それはいいんだ……」

 カルラさんが心に決めていた相手がいるのに、ヴェルが強引に俺と結婚させてしまうのは、俺のプライドが許せないし。
 それよりも、ようやく我に返ったら大お見合い会は終了していた。

 その事こそが、ショックじゃないか。

「その内にでも、またお見合いでも……」

「いや、俺は自分で素晴らしい女性を見つけるんだ!」

 こうなったら、もう意地である。
 絶対に、カルラさんよりも素晴らしい女性を見つけて結婚してやる。
 俺はそう心に誓い、それを宣言するが如くその場で絶叫するのであった。

「そういう夢のような高望みは、独身期間を長くしますわよ」

 カタリーナが、かなり失礼な事を言っている。
 自分だって、ヴェル以外に付き合った男などいない癖に。

「それでも、私にはヴェンデリンさんが居りますわ」

 そして、反論できない自分が少し悔しかったが。
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