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クニトリ物語 作者:マサル
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第十九話 合わさる手のひら

第十九話 合わさる手のひら


 エリーナ達兎獣人が来てから三日がたった。

 ここに来た当初から家造りは始まった。切り倒し、置いておいた木を材料に家造りは進む。アリスによって角材がどんどん出来上がり、人手の数も多いので作業は順調に進んでいく。
 ただ、作業をする兎獣人達は終始不思議そうな顔をしていた。

 その日の作業が終わるとクーヤはエリーナ達をログハウスに招いた。

 沸かした風呂にクーヤとアリスが入った後、エリーナ達に勧めるが恐縮していたため、命令として無理やり入らせる。全員が風呂から上がる頃には料理も作り終わっており、暖かい食事を前に兎獣人達は目を白黒させていた。


 食後には兎獣人達から情報を得る事も行われる。
 食べる事の出来る果実について。この森に住む亜人達について。獣人と呼ばれる種族について。

 エリーナいわく、確かに彼女達は亜人だがその中の部類として獣人と呼称されているらしい。亜人とは人の形をしているが人間とは似て非なる者の総称、獣人は亜人の中でも身体の一部に動物の特徴を合わせ持つ者を示すようだ。
 獣人にも様々な種族があり、兎型以外にも犬型、鳥型、狐型と多種類居る事が判明した。

 新たに得た知識にクーヤが頷いていれば、その傍らでアリスが仰天した表情を見せていた。理由を聞いてみると、クーヤに知らない事があったという事実に驚いていたらしい。そんなアリスにクーヤはため息を吐いた。

 ちなみに、クーヤが食したりんごのような果実は附子ぶすの実と呼ばれる猛毒を有した果実である事も判明した。その実を一口飲みこめば、確実に助からないとされるものだ。
 その事実を聞いた時のクーヤの顔は、アリスでも初めて見るような青ざめた表情だった。


 そうして三日目の夜。
 クーヤからの質問が終わったのを見計らい、エリーナは押し留めていた疑問を尋ねてみることにした。

「あの……私達奴隷、ですよね?」
「そうだが?」

 クーヤの返事は簡潔だった。
 聞いていたものとまったく違う待遇に、戸惑いを浮かべた表情はさらに深くなる。

「これは奴隷の扱いではないと思うのですが……」

 エリーナ達が住む家を造り、あまつさえその手伝いをする。食事はきちんとした物が与えられ、身体的な拘束もされていない。
 さらにはエリーナ達が住む場所が出来るまで、このログハウスで寝る事も許可されていた。外の地面で、もしくはどこかに押し込まれて睡眠を取る事を考えていただけに、普通に接してくるクーヤ達への戸惑いは一層激しくなっていた。

「扱い方ね。例えばどんなのだ?」
「鞭を打って、強引に働かせたり……」
「身体を壊す原因になるな。少ない労力をさらに減らせってか?」
「まともな食事を与えなかったり……」
「上に同じだ」
「檻に押し込めたり……」
「そんなのに使う金属があるなら、別のもん作るな」
「首輪をはめたり……」
「それも同じく」

 クーヤの返事はとても単純で、エリーナは呆気に囚われる。クーヤ達の都合ではあったが、それでも彼女達は信じられなかった。

「あの……私達を売ったりしないのですか?」
「残念な事に今は外との繋がりが無い。売る気も無いがな」
「あ、後は……その……よ、夜伽として」
「それは惹かれる内――というのは冗談だ。だからアリス笑ったままこっちを見るんじゃない。笑顔が痛い」

 アリスの視線に耐え切れず、クーヤは頭を掻きながらため息を吐いた。そして僅かに口角を上げる。これは行幸だ。

 クーヤ達の亜人に対する、奴隷に対する対応と、兎獣人達に刷り込まれた人間に対するイメージとの落差に彼女達は迷っている。果たして目の前の人間はどちらなのだろうかと。

 一の行動は成った、後は百の言葉を伝えればいい。

「お前達が奴隷をどんな風に考えてるかは分かったが、俺は別に奴隷商人というわけでもない。奴隷の扱い方なんて詳しく知らん」

 だから自分にとって奴隷の扱い方はこれが普通だ。そう伝え、兎獣人達に言い聞かせる。

「お前達に望んでいるのは労力と情報だ。もう一つあるが、それはまた今度だな」
「……憐れみですか?」

 真剣な表情でクーヤに問う。その視線にクーヤも真剣な表情で応えた。

「私達を不憫に思ったからですか?」
「……だとしたらどうする?」

 クーヤに視線を向けられて、身を竦める。その瞳は無感情で、威圧的でもなければ、慈悲を込めているとも言いがたい。ただ興味本位で、エリーナの返答を待っているかのよう。

 質問を返されたエリーナは、侮辱するなと怒鳴るでもなく。それでもいいと縋るでもなく。ただ、一言呟いた。

「……わかりません」

 エリーナは心に感じた事をそのまま伝えた。素直だな、とクーヤは呟く。

「私は夫を人間に殺されました。此処にいる皆も肉親や家族を殺されております」

 エリーナに同調するように、全員が頷きで答えた。その表情は失った時の事を思い出したのか、酷く悲しげだ。

「今でも夫を殺した人間は憎い。でもそれはクーヤ様と関係の無い事だとは分かっております。クーヤ様は私達に普通に接して下さいます。例えそれが憐れみであろうとも……。
それでも人間は憎い、怖い……私は、どうしたらいいかわかりません」

 そう言ってエリーナは顔を覆った。
 クーヤが今までの人間とは違うというのは頭の片隅で理解し始めている。しかし、染み付いた人間への憎しみや恐怖はなかなか拭えないものだ。
 そしてその人間が憐れみという手を差し伸べる。彼女はその手を素直に握る事が出来なかった。

 例えクーヤがどんな風に接しようと、彼が人間で有る以上その感情はいつまでも付きまとう。

「恨みというのは醜いものだ」

 エリーナの話を聞き終え、唐突にクーヤは彼女達に語りかける。俯いていた顔を上げ、クーヤの言葉に耳を澄ます。

「憎しみは負の感情だ。そんなものを抱えて生きても幸せにはなれない。辛いだろうが、その感情を我慢して新しい幸せを探す方が苦しみから解放されるだろう。亡くなった者達もそれを望んでいる――」

 その言葉は納得出来なかった。
 奪われるだけ奪われて、泣き寝入りしろと言っているようなものだ。だが、心の奥底でその言葉に納得してしまいそうな彼女達がいた。

 自分達の種族は弱い。
 立場の弱い者が強い者に生活を脅かされる。どの世界でも当たり前のように存在する自然の摂理。兎獣人達の悲劇など、この世界には石ころの如く、そこらじゅうに転がっているのだから。

 納得したくはない、我慢しなくてはならない。相反する感情にエリーナ達は体を震わせた。

「――と、寝言吐いているヤツは目の前で大切な人を奪われてみればいい。それでも尚、相手を許すと言うならばそいつはもう――聖人と言う名の馬鹿だ」

 いきなり言葉を覆したクーヤに震えていた体が一斉に静まった。皆の目が大きく開かれる。

「憎しみというのは簡単には断ち切れない。断ち切ったら、失った人の思いも失う。だから――忘れろ」

 クーヤの言葉はエリーナ達がすぐに理解する事は出来なかった。忘れる事が、諦める事とどう違うのか分からない。

「許すんじゃなく、諦めるでもなく、忘れろ。憎しみを一時忘れて、悲観に明け暮れていた時間を他の仲間の為に費やせ。お前達の仲間も笑う事が少ないんじゃないか?」

 クーヤは彼女達にそうあって欲しいと伝える。
 仇にもう一度出会えるかもわからない。分からないのにずっと憎しみ続け、仲間に悲しい顔を見せるよりも笑っていろと。

「そして仇を目の前にした時、もう一度思い出せ。自分達が何をされたかを、自分の大切な人を何故失ったかを」

 それが許す事と忘れる事の違い。憎しみを許してしまえば、諦めてしまえばもうそれまで。

「無理……です」

 人間に対する憎しみを忘れてしまえば、夫との思い出も忘れてしまいそうだ。エリーナはそれが怖い。

「確かに難しい事だ。無理に忘れる必要も無い、無理に笑おうとする必要も無い。ただ、隣に居る仲間の手を取るだけでいい。隣に居る仲間を抱きしめるだけでいい。沈んだ顔を笑顔に変えれるよう、些細な事でも一緒に居てやればいい」

 そんな単純な事。
 今までも隣に居て手を取り合った事があるだろう。だがその手を握るのは悲観に暮れた顔。悲しみを背負い続ける者同士が励ましあっても、傷はなかなか癒えない。

「残った仲間を、家族を……もう一度笑わせてみたくないか?」
「……したい、です。でも……私の中から夫が消えてしまう事が怖い」

 夫の思い出と人間に対する感情は、夫の最期で複雑に絡みついている。それは簡単には解けず、片方を思い出せば強制的にもう片方も着いてくる。

 憎しみ、恐怖、悲しみによる感情の連鎖。彼女達がそれを解くにはまだまだ時間が足りない。

「記憶から失う事が怖いなら、俺が覚えていてやる。だから、今ここでお前達が溜め込んだモノを吐き出せばいい」

 背負うなどという言葉は使わなかった。何も知らない者が他人の悲しみを背負うなど、クーヤは無責任な偽善としか思っていない。
 だから覚えておく。彼女達が本当に忘れてしまわぬよう。彼女達の憎しみを覚えておく、彼女達の大切な人が消えてしまわぬよう。

 その言葉に彼女達は暗く沈んだ想いをクーヤにぶちまけた。涙に濡れる頬を拭いもせず、ただ必死に言葉を吐き出していく。

 エリーナ達の悲しい訴えは長い間続いていた。




 クーヤに不満を吐き出した次の日、エリーナはアリスと共に仲間を3人つれて森の中を進んでいた。エリーナ達が食べる事の出来る実を集め、アリスが使えそうな薬草を摘んでいく。

「アリス様に尋ねたい事があります」

 自身の仕事をこなしながら、エリーナはアリスに尋ねた。それはここに居る誰もが思っていた疑問。クーヤと共に過ごす中で感じた想い。エリーナ達を奴隷だと言いながら、普通の生活を送らせようとしているその真意。

 アリスは私にまで様を付ける必要は無いぞ、と笑った。そんな笑顔に微笑を返しつつ、尋ねる。

「何故クーヤ様は私達に気を使ってくれるのですか?」
「クーヤが聞いたら呆れた顔をしそうだな。気を使っている様子は私からも感じられないぞ」

 憐れみという言葉を、気を使うという表現に変えて聞いてみたが、あっさりと否定された。伝わらなかったかな?と思い改めてもう一度尋ねる。

「そうですか……ですが私達は亜人の中ではとても弱い種族です。人間は元より、他の種族からも私達は蔑まれています。それなのにクーヤ様は私達を守ろうとしている様に感じます」

 兎型の亜人は力が弱い。
 他の亜人よりも優れた聴覚を有し、跳躍力も高い。獣人としての身体能力は確かに人間よりも上だが、戦う力はあまりにも弱かった。

 そんな弱い自分達の種族をあえて傍に置くものなど居るとは考えられなかった。だが、クーヤは自分達を普通に扱おうとしている事は、今のエリーナにとってまったく信じていないわけではない。ただ純粋に疑問に感じた。

「私の力を知っているな?現在の魔術師どもの常識によって、この力を持つ私とラビは魔女と呼ばれている」

 そしていきなり氷柱を放ち、近くの木に突き刺した。詠唱を必要としないその力を見るが、エリーナ達が怯む様子は無い。魔術の常識を彼女達も勿論知っているが、不思議とアリスの力を怖いとは思わなかった。

「魔女も人間に迫害されている。……本当に酷い扱いだった。ひもじい事もあった、凍える事もあった、辛い事も沢山あった。だがどうする事も出来なかった。この世界は人間に支配されている」

 過去に受けた迫害を思い出すが、今のアリスにとってそれはもう忘れていた想いだ。思い出しかけたその過去を、アリスは頭を振って再び忘れる。

「そんな境遇だった頃に手を差し伸べてくれたのがクーヤだ。私達はクーヤに救われた。自分と同じと思った、その時はそんな些細な理由だったな」

 それと友達を作りたいという幼いクーヤの願いでもあった。それは言葉にせず、アリスはくすりと笑うだけだった。

「クーヤ様に……」
「お前達を普通に扱うのは、別に弱いもの助けるとかそんな善意での行動じゃないぞ。今回も些細な理由だが、今のクーヤは結構打算的だ」
「えっと、つまり」
「クーヤは……まぁ、言い方が悪いがお前達を利用しているだけだ」
「利用……ですか」
「うん。ああ、変な意味で取るんじゃないぞ。私達にとってお前達の知識と労力が必要で、私達はお前達に安全を提供する。今の私達はそういう関係だと思っている」

 異種族がいきなり仲良くなろうというのも無理な話だ。アリス達は兎獣人達を利用して、そちらはこちらを利用すればいい。最初はそんな関係でいいとアリスは考えている。

「そして共に過ごす時間が増えていったら、私達の性格にも目を向けて欲しい。私はお前達を仲間として向き合おうと思っているんだ」

 アリスがエリーナ達の目を真っ直ぐ見て、訴えた。自分の言葉が如何に真実か伝わるよう、目を逸らさず、じっと視線を合わせた。
 エリーナもその視線に向き合い続けたが、やがてアリスに負けて視線を地面へと下げる。

「すぐには出来ないかもしれません」
「そうだな」
「……ですが、目を向けられるように勤めて行きたいと感じました」
「ああ、ゆっくりでいい。そして感じたことを仲間にも伝えて欲しい。悪い評判が広まらないよう、私も努力する」
「はい」

 そうして朗らかに微笑んだ。
 アリスも力強く頷いて返した。中断していた探索を再び開始しようと木々の中に顔を向ける。その時後ろからエリーナの声がかかった。
 話は終わったはずだが、と怪訝に思いながら振り返れば、エリーナ達が背筋を伸ばしこちらを向いて並んでいる。

「これからも私達の種族を、どうぞよろしくお願いします」

 そしてエリーナが深々と頭を下げれば、他の者達も同じように頭を下げた。
 気恥ずかしさがアリスの頬を染めるが、エリーナ達の想いに応えるよう彼女達の前に手を差し出した。

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

 そうして人間と亜人は手を取り合った。




「おかえり」
「ああ、ただいま」
「只今戻りました」

 アリス達に声をかけたクーヤはふと着いていった兎獣人達の表情を見た。
 この前までのぎこちない雰囲気は削がれ、その表情はどこか晴れ渡っているように感じる。

 アリスが上手く話をつけてくれたのだろうと察し、そろそろ次の行動に移るべきかと考えた。

「アリス、骨組みはほぼ完了した。後はまかせていいか?」
「うん、大丈夫だ。屋根と壁に板をつければいいんだろう?」

 拠点の風景が変わってきた。
 帰ってくるまでアリス達が住むログハウス一軒だけだったこの場所に、骨組みが整った家が何件も立ち並んでいる。畑もラビが耕していた所以外にも作られ始めている。段々と変わっていく風景に、アリスの心が躍った。

「さて、それじゃ明日にでも迎えに行くか。うちの腹ペコ姫が痺れを切らしてる頃だろう」




 クーヤが出発してから五日が経った時の事。ラビは森の中で叫び声をあげていた。

「果物飽きたーーー。お肉が食べたい!」

 いきなりの叫び声に周りにいる兎獣人達はビクリと身体を震わせるが、その者達とは対照的にナナはラビに近づいていった。

「ラビ様ごめんなさい。食べられる物が他にもあればよかったんですけど……」
「あ、いいのいいの。気にしないで。ちょっと心の不満が溢れただけだから」

 パタパタと手を左右に払う。
 最初に持ってきた食料はすぐに無くなり、この周囲で採れる果実などで飢えをしのいでいた。クーヤによってナナの知識は正しい物と証明されたため、ラビは安心してその実を口にした。

 洞窟前に結界を張り、ナナと動ける者を連れて一緒に食べ物を探しに行きもした。採れる物は果実や木の実ばかりで、ラビが求める食料は姿を見せなかったが。

 魔素汚染は気になったが、長い間食料としてきたナナ達にこれといった症状も出ていないので、果実などの魔素汚染はクーヤが言った通りあまり濃いモノではないと考えた。
 本当に魔素汚染といったモノがあるかどうかは、ラビには窺い知れない事でもあるが。

「で、でも」
「気にしない気にしない。ナナったら私にまで気を使っちゃって、可愛いんだから、もう」

 がばっと抱きかかえたナナを膝の上に乗せ、その頭に頬をうずめる。肌に伝わる柔らかい毛並みを堪能するべく、頬を何度か擦り付けた。腕の中でうろたえるナナの反応を可愛く思いながら頬擦りを続けていく。

「あわ、あわわわわ」
「ん~、もふもふ。癒されるわぁ」
「何してんだ人間。ナナから離れろ!」

 ナナが捕らえられている事に目くじらを立てたシモンが、ラビを睨んで怒気を荒げている。癒しの時間を妨げるその声に、ラビはシモンを半目で睨んだ。

「そんで、あんたは可愛くない」
「うるせぇ!人間に可愛いなんて思われたくねぇ」

 シモンに向けていた視線をナナの目に合わせる。その視線の意味がなんとなくわかっていた。ほんの数日という短い時間であったが、ナナはラビが考えている事を正確に感じ取っていく。

「ナナ、わかってるわね」
「は、はい」
「よし。それじゃGO!」
「はい!」
「あ、こら!ナナ、なにすん――むぐっ」

 シモンをナナが拘束していく。
 じたばたともがくシモンを必死に押さえつけるナナの隣にゆっくりとラビは近づいていく。そしてシモンの首に指をあてがった。

「ナナ駄目よ。行動を抑えたいなら、気を失わせなくちゃ」

 きゅっ、と指に力を入れる。
 もがいていたシモンは急に大人しくなり、カクンと頭を降ろして気を失った。

「こうやって落とせばいいのよ。クーヤに教わった事だけどね。慣れない内はやるなって言われてるから慎重にやるのよ」
「は、はい。わかりました」

 慣れればいいのか、と周囲から言葉に出さない声が聞こえる。その光景を見ていたクーヤは呆れた声を出していた。

「……なにやってんだお前は」
「クーヤお帰り。遅いわよ」
「クーヤ様こんにちは。あ!お母さん」

 クーヤの隣にはエリーナもいる。
 エリーナは他の仲間達を説得するために連れてきた。一番の障害と思われたシモンがラビによって気を失っているのは都合がいい。呆れた言葉とは裏腹に、クーヤはラビに親指を突きたてた。よくわからないが、ラビもクーヤに親指を立てて返す。


 エリーナの説得は考えていたよりも早く終わり、まだ満足に動けない者は荷台に乗せてその場所を離れた。気を失ったシモンもその荷台に積まれている。


 今まで住んでいた場所を離れ、新しく訪れた場所に兎獣人達はただ唖然としてその光景を見入っていた。そこには兎獣人達の住む場所が造られており、広い場所では家を造る過程で余った木材を火元に炊き出しが作られている。

 目を丸くする兎獣人達に、クーヤは言葉を投げかけた。

「ようこそ、俺達の故郷へ」

その言葉は呆然とする兎獣人達にゆっくりと染み渡っていった。


「この話って実は考えられていなかったのよね」
「そうだな。最初はどの様に感情が変わっていったかの説明文だけだったようだ」
「感想で指摘された事をちょっと深く考えてみたらしいな」
「指摘されて、考えを改めたみたいだな。ただの説明文だけでは希薄に感じると」
「ありがたい事だな」

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