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クニトリ物語 作者:マサル
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第一話 鍛冶屋の息子

 単純なのは、進みだす最初の一歩だけ。
 刻一刻と状況は変わっていき、事情が複雑に絡まっていく。
 再び単純になるときは、
 その終わりが見えたとき。


第一話 鍛冶屋の息子


 ガタゴトと荷台に詰まれた物達が音を鳴らす。

「ふ~ん、先生のいた所はもっと道が整ってたんだ。いいなぁ」

 滑車が小石を乗り上げ、ガタンッと一つ荷台を揺らす。

「え?うらやましいかって?そりゃそうだよ。座ってるだけでも何度もお尻打って……赤くなってないかなぁ」

 長い間揺られた馬車は所々痛み、ギシギシと軋んだ音を立てる。

「これから行くところ?……ん~、僕もお父さんに聞いただけだけれど、いままで行ったどの国よりも小さい所って言ってた」

 がさごそと荷物を漁り、取り出した地図を広げてみせる。

「ほらここ。なんでも珍しい石が取れるんだって。……取り寄せればいいって?僕もそう思ったんだけれどね、自分の目で見てみたいって言ってたよ」

 返ってきた言葉に、あははと苦笑を浮かべた。

「だよねぇ、お父さんは自分の仕事を鍛冶屋って言ってたけれど、これじゃ冒険家……ううん、鉱石商人って言ったほうがいいのかな」

 馬車はまだまだ道を走る。太陽がサンサンと降り注ぎ、少年は手のひらを掲げ眩しそうに目を細めた。

「故郷ってなに?……ふぅ~ん、帰りたいと思う所かぁ。長い間一つの国にいた事ないしわからないなぁ」

 吹き抜ける風がそよそよと頬をなでる。風の心地よさに少年は目を閉じた。

「ん~、もう気づいた頃から移動し続けてるしお父さんもいるし……。あ、でも友達ができないのはちょっと寂しいかも」

 ガタガタと鳴る馬車の音に耳を傾けていると、馬車の速度が少しずつ落ちていくのを感じた。

「うん!今度行く町で友達できたらいいなぁ」

「お~い、そろそろ休憩にしようか」

 御者席から少年の父親が顔を向ける。道から少し外れた草むらで馬車は停止し、今から昼食を取ろうということとなった。

「そういえばさっきからなんか話をしていたか?よく聞こえなかったが」

「ううん、独り言」

 草むらに座り込み、二人の親子は少し遅めの昼食を取り始める。二人の影の他には馬が近くの草を食べている姿だけだった。



○エトワール城下町

「やっと着いたな!」

「お父さん……僕もうお尻痛い……」

 門を潜り、少年は目の前に開かれた町の様子を眺める。
 日は沈みかけ、夕日に照らされた町並はどこか寂しげな雰囲気を漂わせている。
 ……夕方という時刻ではあるが、あまり町に活気があるように思えなかった。

「さっさと宿を探さないとな」

「そうだね……でもとりあえずその血をどうにかして欲しい……変なにおいするよ」

 世界の治安はあまりよくない。町と町をつなぐ道中には山賊達が息を潜め、通った獲物を蹂躙する。森の中では魔獣がはびこり、自分のテリトリーに入った者の肉を食らう。
 エトワール城へ続く路中、彼らは何度か野党に襲われていた。
 馬車が護衛も無く移動しているのだ、野党にとってこれ程狙いやすい獲物はない。
 だが、彼らも様々な国を渡り歩いている経験がある。今まで渡り歩いた所でも襲われた事があった。

「おいおい臭いとか言うなよ。これは俺達の命を守った勲章だぞ?」

「どうせ拭いたら落ちる勲章なんて無くてもいいよ……」

 その対処として、彼らはある程度自衛できる力を身につけた。
 護衛を雇うという事はあまり考えていない。金がかかることも確かだろう。父親が作った武器の威力、防具の耐久性を実践をもって経験したいという目的も少々ある。
 自分達の手に負えない場合はただ逃げるだけだ。どうせ馬車の中にはろくなものは入っていない。二人分の食料、数本の武器、少量の鉱石、ただそれだけだ。旅に必要の無いものは極力もたないようにしている。

「もう夜になるし、空いてる宿さっさと取ろうよ」

「よし、それじゃあそこでいいか」

 馬車を宿屋の隣にたてられた宿舎に泊め、部屋借りて寛ぐ親子。
 夕食を食べ終えて、ゆったりと寛ぐ少年に父親から言葉がかけられた。

「そういえば女将さんに聞いたんだがな……」

 ん?と寝床から顔を上げ父の言葉に耳を傾ける。

「この町の外れには魔女がいるから気をつけるように、ということらしい」
「魔女?魔女ってなに?」
「呪われし者、人にとって危険な存在、世界の異端者――呼び名を上げればきりが無いが……異常な生き物といったところか」

 魔女。世間に知られる魔術とは別の力を持つ者達の総称と意味する。魔術を仕様するわけでもなく、理解しがたい摩訶不思議な力を使うもの。この世界にとって異端な存在。
 いわく、その力は呪われた物。

「お前も気をつけるんだぞ」
「……うん、わかった」

 父の言葉に頷いてみたものの、少年は何故そんなに恐れているのか?と疑問に思っていた。



 翌日、さっそく父親は珍しい鉱石を探しに行った。
 少年が目覚めた時にはすでに支度が整っていた親の姿に、少し恥ずかしさを覚えた。

(まるで遠足前の子供だなぁ……)

 生暖かいどころか、冷めた視線を親にむけつつその姿を見送る。

「さて、これからどうしようかな……」

 父親はいそいそと宿屋を出て行き、少年はこれからの予定を考える。一人取り残される事に特に不満はない。いつものことなのだ。

 とりあえず町に出てみよう思い、宿屋で出た朝食を腹に収めた後、少年は宿屋から出て行った。
 キョロキョロと町の様子を眺めながら歩く。

「襲ってくる人達も結構いたし、あんまり治安とかよくないのかな・・・・・・」

 町の空気が重い。
 店が立ち並ぶ大通りは実に閑散としていた。いままで巡った国の町では朝から市場を開いている所もあり、その市場の喧騒や賑やかな空気が好きだった少年はこの町の様子を見て落胆する。

(宿屋に帰る?教会に行ってみる?路地裏とかあまり行かないほうがいいし。あ、鍛冶屋があれば見てみようかな?今ある武器とか売ってどの程度お金になるかわからないし。お父さんもそこで働くかもしれないもんね)

 城下町は地理だけ把握することにし、今後どうしようかと思考を巡らす。

「先生はどう思う?」

 考え事をしながら歩いていくと幼い声が少年の耳に入る。視線をそちらに向けてみると、同年代らしき少年達がボールで遊んでいた。

「……友達かぁ。どうせこの町もすぐ移動すると思うけれど……とりあえず声かけてみるよ」

 遊んでいる少年達へと足を向ける。近づいてくる余所者に少年達が気づいた。

「こんにちは」

 この町の少年達が少年に奇異の視線を向けてくる。

「……誰だお前?見かけない奴だな」
「昨日この町に来たばかりだからね。ねぇ、一緒に遊ぼう」
「はっ、嫌だね。余所者と一緒になんていられるか」

 少年達のリーダー格と思わしき少年が、嫌悪感を露に拒否の言葉を吐き出す。周りの少年達もその言葉に賛同した。

「そうそう、田舎者はおとなしく一人で遊んでればいいさ」
「邪魔なだけだ。とっとと帰れよ」
「……もう一人で遊ぶのは飽きたよ」

 少年達が顔を見合わせる。途端、少年達の顔がにやにやと意地の悪い笑顔を浮かべた。その笑顔は気味が悪い。その顔を見た途端、少年は彼等と遊ぶ事を諦めた。

「だったら魔女とでも遊べばいいさ」
「だな、あいつらなら遊んでくれるだろうさ」
「どんな風に遊ばれるかわからないけれどな」

 魔女という言葉。昨日父親から聞いた言葉。父親から近づくなと言われていたが、少年は魔女という者がどんなものか興味を示し始めていた。

「その魔女ってどこにいるの?」
「あはははは、本当に魔女と遊ぶつもりかよ」
「いいさ、教えてやるよ」

 少年達から魔女の居場所を詳しく聞いた後、彼らと遊ぶ事はできないと考えた少年は魔女の棲家へと足を運び出した。

「せいぜい死なないようにするんだな」

 嘲笑の言葉を聞き流しながら、少年はゆっくりとした足取りで城下町から出て行った。

 城下町から出た少年はその足を魔女の元へと進める。
 魔女に対する恐怖はあまりなかった。それは無知からくる余裕なのかもしれない。魔女がどんなものか興味を持っただけかもしれない。
 先ほどの少年達と遊ぶよりも面白い事があるかもしれない、と楽観的な事を考えていた。

 城下町を出て、近くに流れる川沿いをゆったりとした動作で歩いていった。周囲の景色を眺めながら、鼻歌を歌いながら少年はその歩みを進めていく。

 やがて川沿いに佇む一軒の古ぼけた小屋を見つけた。

「ここが魔女の家なのかな」

 ざぁ、と木々達が風に吹かれる。葉の雨が降る中、少年は川辺に佇む二人の少女の姿が目に止まる。

 相手を怖がらせないようゆっくりと進み、少年は彼女達に声をかけた。

「こんにちは」

 笑顔を浮かべる少年に、彼女達の感情のない視線が向けられた。
「最初のくっさい詩みたいなのなに?」
「著者が溜め込んだとある人の名言とか名句。あとは自論とかあるな」
「自分の黒歴史さらけ出してどんな羞恥プレイだ」
「どうしてこんなの入れたの?」
「この話を作るにあたって、色々読み返したら話にあった一文を使いたくなったみたいだ。話に合うものがなければ付けないようだが」
「つまりこれからも続くってことね……よし一発殴ってくる」
「社会的に死ねばいい」
「まぁ、放置しておこう。付き合うのも疲れる……」
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