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SO2シリーズ
作:憂生



ボーマン・ボーマン・1


―ビフォア・ツルー・ラブー  

「  最初にすること。
ゆっくり、心を込めて、どんなに愛しているか。
心を込めて、丁寧に伝えるんだ。
「愛している。レオン」
それだけでいいー 」           
バイ・ボーマン 


その夜、こらえきれず、
とうとう、レオンが自分の気持ちをクロードに告げた。
「あの・・・僕・・・お兄ちゃんのこと・・・好きなんだ」
クロードだって、レオンに特別な感情をもっている。
「本当に?本当。ああ、レオン。待ってたんだ。
君がそういってくれるのを」
コクリと、頷くレオンをクロードが、抱き締めた。
ひどく、嬉しげな顔で、
レオンがクロードの事を、どんなに好きか、話し始めた。
「お兄ちゃん。ずうううと、好きだったんだ。
僕、お兄ちゃんに抱かれる事ばかり考えてた」
クロードはレオンを抱き締めてた腕に、
もう少し力を込めて、レオンをもっと、しっかり抱き締めた。
「もう、抱いてるよ。レオン」
そう、優しく、クロードが言った。
「ううん。そうじゃなくて、女の子にするみたいに僕のこと・・・・」
「えっ(レオンの言ってる、抱くって、あの、もっと、深い意味??)」
意外なレオンの言葉にクロードが聞きなおした。
なにかの聞き間違いだよな。
そう、思いながらも、確かめずにはいられなかった。
「ねっ。レオン。もう、一回、言って」
クロードの言葉にレオンが、
「耳、貸して」
「え」
「だから、僕も、もう、一回、言うの、恥ずかしいもの」
クロードが少し、屈み込むと、レオンがクロードの耳に口を寄せた。
ばつが悪そうにしていたレオンだったが、
先程、クロードに告げた言葉をクロードの耳元で繰り返した。
それを聞くとクロードの方が、すっかり、うろたえた。
「バ、馬鹿。レオン。君、なに言ってんのか、解っていってるの?
あの・・・」
「あ。いけない?」
「冗談じゃないよ。レオン。なに言ってるんだ」
レオンの言葉から間違いなく、セックスの事だと解ると
クロードがびっくりしてレオンから、離れた。
「良く、考え直せよ。そんな事、できないよ」
レオンがじっと俯いている。
多分ヘンな事を言い出した事で気まずくなっているのに違いなかった。
「もう、おやすみ。レオン。・・チョット、そこの所・・あの、驚いたけど・・・
君が好きだよ」
クロードの言葉に顔を上げたレオンの頬にさっとキスをすると、
クロードは
「おやすみ。レオン。あした、又、逢おう」
そう、いって、クロードはレオンの部屋をでていった。

一人になるとレオンは、ずううっと眠れなかった。
頭の中でクロードもレオンを好きでいてくれた嬉しさと、
クロードがレオンの言葉にびっくりした顔とが、交互に重なった。
『僕がおかしいんだろうか?
クロードは僕を抱きたくない?
好きなら、そうなっても・・・男でも女でも一緒じゃないのかな?
一つになりたいって思うよね?』
おんなじ事ばかり、頭の中で答えも出ないまま、
朝まで、ずっと考えて寝れなかったレオンだった。
 
朝、レオンが研究所に入ると、ボーマンがいた。
レオンの顔を見た途端ボーマンが、
「おりょ。寝不足か?レオン。お前でも考え付かない事があるのか?」
と、声をかけてきた。
ボーマンにはレオンが考え事をしていたのがすぐ、判ったみたいだった。
「あ。ボーマン。ん?何で、判るの?」
レオンの問いにボーマンは、笑いながら
「そりゃ。お前の顔見りゃ、判るよ。なんか、悩んでるな?」
レオンが何も答えないと判ると、ボーマンは
「まっ、若いうちはおおいに悩むがいいさ」
と、呟くようにレオンに言う。
レオンはボーマンの言葉をぼんやり聞きながら
頭の中では別のことを考えていた。
ボーマンは両刀使いだった。
レオンはそのことを知っている。
この際、思いきって、ボーマンにきいてみることにした。
「あ、あの。ねえ?」
「ん。なんだ」
「あ、あの。男同士で好きになったら・・・。
その・・・。最後まで望んじゃおかしい事なの?」
レオンをじっと見ていたボーマンだったが、
「お前な。そりゃ、いやみか?
好きになって最後まで望むから俺なんだろ?
望まなきゃ、俺はプラトニック・ラバーだな。
まっ、俺にゃ、プラトニック・ラバーの人生なんて、無理だな。
求め合ってこそ人生は楽しいってもんだ」
「ふうううん」
「まっ、クロードは男同士っていう事より、
お前が、まだ十二歳だって事の方にこだわってんじゃないのか?」
「エッ?エエッ!ボーマンさん!!」
レオンはボーマンが二人の事を知っている事に、あわてた。
「あ、なんで?」
「ばあああか。クロードが来る度、嬉しそうな顔しやがって、
クロードも、なんの用事もねえのに、
十二歳のがきんちょの顔見にきては、ニコニコして。
えっ?はてには、男同士で、したいけど、いいのかな?ときた。
判らない方がどうかしてるぜ」
「あ・・・あ」
可哀相なくらいレオンがまっかっかになってしまった。
「あのなあ。レオン。セックスなんてな、
頭で考えて出きるもんじゃないんだ。
好きだったら、欲しかったら、気がついたら、
いつのまにかクロードの物がお前の中にはいってらあ」
ボーマンの物凄い言い方に流石のレオンも、返事が出来ない。
「・・・・」
「な。だから、いいとか、悪いとか。考えたって無駄だ。
え?お前は、したい。それだけでいいじゃないか?
こんな事、相手に強請したってつまんねえだろう?」
「う・・・・ん」
      

さて、昨日の、クロードである。
やはり、クロードも部屋に戻ったけど眠れるわけがない。
「ふうう」
ベッドに寝転がると大きなためいきをひとつ、ついた。
『ああ・・・。びっくりした。レオン十二だよな。
もう、そんな事、思ったりする年齢なのかな?』
クロードだって、そりゃあ出きればレオンを抱きたい。
男だもの、欲求は当然ある。
でも、そんな事しちゃいけない。
そんな思い、持っちゃいけない。そう考えてきた。
だからこそ、ずうううとレオンには、なにもいわなかったし、いえなかった。レオンがクロードに対して他の人よりは
好意的に接してくれているようで、
ひょっとしたらって、考えるだけで嬉しかった
でも、さっき、ああやって、はっきり、レオンに好意を告げられたら
クロードの気持ちを抑えておくなんてとうてい無理だった。
『やった。レオンも僕を』
嬉しくて、タマンナイ。
そのクロードにレオンが言った、あの言葉。
レオンがそんな事考えたりもしないって、思ってたから、意外すぎた。
おまけにクロードの本心をみぬかれているようで、恥ずかしくて、
レオンに対してそんな事、
考えてる自分がいることを知られたくなかった。
『レオン・・・本当は抱いてみたいよ・・・
でも、君はまだ十二才だよ。無理だよ。
まだ、そんな目にあわしたくないよ。
十二で?やっぱ、ひどいよね。可哀想だよ・・・ね』
「はああ。やっぱ、ごまかしゃよかった」
もう、少し後ならクロードだってレオンと自然に一つになれる。
今だと、レオンにとっては酷いし、
クロードには、そんな欲求を
十二歳の子にぶつけてしまう自分が、恥ずかしい
【我慢できなかったのか?クロード】
そういって皆に笑われてしまいそうなほど
みっともない態度だとクロードは思ってもいる。
『我慢できるかな?・・・?』
クロードにぴったし、ひっついてきた、さっきのレオン。
『辛抱できなくなりそう』
思い出しただけで、クロードの物が妙に変化し始めてる。
「もう、レオンの馬鹿。変なこというから・・・」
ぶつぶつ、独り言を言いながらクロードは
「アーア。どうしてくれるんだよ。レオン」
クロードは、つと、自分の膨らみに手を延ばした。
『駄目だ。なんか・・・気がのらない』
レオンの事を考えると、こんな事をしてる自分が汚く思えてくる。
でも、クロードの心と裏腹に欲求が高まってくる。
「はあああー」
クロードがため息をついた。
へたに触ったのがいけなかった。
クロードの心を無視してますます、元気になってしまっている。
『やっぱ。したい・・・ゴメン・・・レオン。
レオン、あんなこといってたけど
本当はこんな欲求、レオンには、わかんない。
まだ、十二だもの、知るわけない。
ゴメン。レオン。僕はもう、どうしょうもなく大人なんだ』
クロードはじっとしていた手を動かし始めた。
クロードの本音は、やっぱりレオンが欲しい。
自分の物がそう、言っている。
クロードは激しく手を動かしながら、
それでも、まだ、迷っていた。
その迷いが、クロードの手をとめさせた。
が、途端に欲求がうずく。
『駄目だ。マジ、抜いとこう。このままだとレオンのこと、おそっちゃう』
クロードはいいわけがついた事で
そのまま自分が与えた快感にひきずられていった。
クロードのアクション、タイムが終ると、
「ふーーーう。少し、すっきりした」
などと、感想を陳べながら、
クロードの中のもやもやがなくなってくると
『レオンを大切にしなきゃ。
欲望をぶつけるようなことだけはしちゃいけない』
と、改めて心に誓うクロードだった。
それでも、やっぱり、
レオンの一言が気になって仕方ないクロードなのである。
『でも、レオンのあの言葉。欲求からなんだろうか?
本当にしたいのかな?
そう、成りたいみたいな憧れ、期待からなんだろうか?
それとも、レオンも、もう、こんな事してて・・それで、僕の気持ちが判った。だから?
ありえないよな。十二才だぜ』

その夜、やっとクロードが寝ついた時には、
なんだか、雀がチュンチュン鳴き出していた様な気がした。
うとうと、としたのが、どれくらいだったか、判らないまま、
クロードは、起き出すと、レオンのいる研究所にむかった。
クロードがドアを開けると、
「よっ。クロード」
レオンはいなくて替わりにボーマンがいた。
「あっ(と)。ボーマン」
レオンは?と、ききたいとこを抑えて、
何気ない顔をよそおったクロードに
「なんだ?欲求不満って顔してるぞ」
と、ボーマンが声をかけた。
「えっ(ボーマンにまで、判るような顔しているのだろうか?
そんな事ない。あれから、もう、一発抜いといたのに)」
じっとり、考えて黙り込んでいるクロードにボーマンが
「ははは。冗談だよ。なんか思い当たる事でもあったのか?」
と、さらりといってのける。
慌てて、クロードが、
「べ、べつに」
と、いいながらも、どぎまぎして、赤くなってしまっている。
「はああーーん」
「えっ、なに?」
「いや、べつに」
黙ってクロードを見ていたボーマンだったが、
実は、クロードは、ボーマンのかけた、かまに見事にひっかかったのだ。
『やっぱりな。レオンを抱きたいんだろうな。
しかし、あの年齢じゃ、さすがの俺でも躊躇するぜ。
まっ、ちょっと、くらいなら、教えてやってもいいだろうけど、本番は?
無理だろうな。出来ないと、なりゃ欲求不満にも成るか』
クロードをまだ、じっと見ていたボーマンだったが
「ふうう」
と、ため息をつくと
「おい。クロード。女、買いに行こうか?(あ、男でもいいか?)」
「えっ」
「おまえ、それしかいえねえのかよ?」
「えっ」
「それ」
「あ」
「たく。え、か、あ、しか言えないのか?
そんなんで、好きな奴、どうやって、口説くんだよ?
まあ、いいや。それより行こうぜ。クロード。嫌じゃねえよな?」
「・・・・」
「はっきりしろよ。このやろ」
「あ、はい。あの・・・」
クロードに欲求があるのはもちろん、興味はある。
レオンとの事を考えたら、どうしていいか、よく判らないし
勉強しとかなきゃ、レオンとの時に困るだろう。
でも、それがいつになるか、わかんない。
でも、まだまだ、慌てなくったっていい。
それにレオンの気持ちが判って、昨日今日じゃ、
クロードには、そんな事は、レオンへの裏切り行為にも思える。
おまけに、レオンにああ言った手前もある。
そんなクロードの返事に待ちくたびれてボーマンがたたみかけて来た。
「クロード。ちまちま、自分でやるから、自己嫌悪になるんだ。
ま、一度、抱いてみろ。なんてことはないさ。スッキリするぞ。
欲望なんてのはな、おおらかに処理して
一生懸命、母ちゃんをあいする。
愛情と欲望つうのはな、上手に使い分けなきゃ駄目だぜ。
ま、これが、俺のポリシーってとこかな」
「はあ・・・」
クロードは、ボーマンが昨日の夜のことをさっしっているんだと判った。
『レオンの事も気がついているんだろうか?』
「おーーーい?」
「あ、ボーマン。もう、少し・・ウウン。又、今度、誘って。今日はいいよ」
「ふうううん。そうか?うーーん。アシュトンもな、そろそろ・・・
いや。駄目だ。アイツははまっちまうタイプだからな。
もう、ちょっと、こいつも、あとでだな。しかたない。ひとりでいくか」
ボーマンは独り言を呟きながら、部屋からでて行ってしまった。
クロードは頬を押えた。
『はああ。朝からスゴイ話し』
クロードの頬は、やっぱり火照ってひどく熱く感じられた。
「ふーー」
小さなため息をつくとクロードはレオンを探しに行くことにした。
「あら?レオン。」
芝生の上にぼんやり座っている、レオンに
気がついた、レナが声をかけた。
「ああ。レナ」
近づいたレナを見上げるレオンがなんだか、
心もとなさそうに見える。
「どうしたの?レオン。元気ないわね?」
「あ、ああ・・うん」
なにかあったんだとレナにも、判るようなくぐもった返事が返って来た。
「私でよければ、きいてあげるわよ。レオン」
レナがレオンの側に座り込んだ。
「あの・・・レナじゃ・・・」
「嫌ね。 言いもしない内に。どうしたのよ?
ねえ、そんな顔みといて、はい、そうですかって、いえないわよ。
心配で気になってしまうわ。ねっ?どうしたの?いってごらんなさいよ」
レナの優しい言葉に、レオンも迷いながらも、話す気になった。
「怒んないでよ。レナ。あの・・レナ、好きな人の事考えたら・・・。
あの・・抱かれたいって思う?」
レオンがレナに言い渋るだけのことは、ある。
どちらかと言うとレナは潔癖なところがある。
確かにレナにこんな話をしたら、怒るだろう。
それより、レオンの言う事がレナに判るのだろうか?
レナもドキッとしたものの、自分からレオンに聞き出しておいて、
キチンと答えない訳にもいかなくなってしまっていた。
「そりゃあ・・・だきしめてほしいかな?」
まるで友人か誰かの心の内を推理してるような妙な回答だが、
レナにしてみれば上出来な回答だった。
「ああ。やっぱ。そう、取るんだ(クロードと同じ。僕がこんな事言う事自体おかしいのかな?)」
「エ?アラ?そう、取るって?もっと、違う意味?」
「・・・・・」
「言いなさいよ。はっきり言ってくれなきゃ答え様がないわ。
どうしたの?レオンらしくないよ」
全然ピンとも来てないレナに、ずばりと言うしか方法がないようだった。
「あの・・抱くって・・あの、最後の方の・・・」
「え、ええ?そ、れを、私に答え、ろって・・い・・うの?」
先程の頼もしい口調が何処に行ったのか、
レナがしどろもどろになっている。
「やっぱり。レナじゃ相談相手にならないよ」
いくつも年下の子にそこまで言われてレナも、
このまま引下れるわけがない。
「ああ、あ。判った。えーと、そういうことね。そうね。うーん」
レナは心の中でクロードのことを一生懸命考えてみた。
『レナ?ク・・ク・・・クロードとHしたい?』
レナの頭の中がすぐさま否定する。
『ば、ば、ばかいってんじゃないわよ。
第一クロードはそんな人じゃないわ』
しばらく赤くなったり青くなったりして
口の中でごにょごにょ言っていたレナが
「判った。結論。私、思ったことない。
付き合えばそういう事しなきゃなんないのかな?って考えた事あるけど。好きな人とそうなりたいなんてそこまで思ったことない」
「やっぱり!レナ・・・恋した事ないもんね」
レオンの口調に何だか哀れみがこもっている。
「失礼ね。あたしだって恋する相手ぐらいいるわよ。
只、ク・・イエ。相手の人だってそんな変な気おこすひとじゃないもの」
「ふうううん(変な気?変な事なの?やっぱり?僕が変なわけ?)」
突然、レナが気がついた。
「レオン。貴方、誰か好きな人できたんだ」
レオンはそれに答えずに
「ね、レナ。好きな人がそうしたいって言ったら、受けとめる?」
「ア、多分きっと、受けとめたいわ」
レオンはレナの言葉を聞くと、又、少し、考え込んでしまった。
『クロードは、僕の事、受け止める気ないのかな?
好きじゃないのかな?
好きは好きでも友達とか兄弟とか、
そんな感じで、好きなだけなのかな?
僕は抱かれたいって、思うんだから
クロードのこと恋人として好きなんだと思う。
クロードだって友達よりは僕の事好きだって思ってくれてるよね?』
俯いたレオンの顔がやはり寂しそうにみえる。
「ね?その人に、なにか・・あの、そういうこと、いわれたわけ?」
レナは少し不安げにレオンに尋ねた。
レオンの年齢を考えたって、問題があることなのに、
それを、あえて、いって
レオンを、どうにかしちゃおうなんて、考えてるとしたら
年上の、それも、かなり、ろくでもない人間。
そんな人なら絶対レオンの気持ちを諦めさせなきゃならない。
「あ、ううん。そうじゃないよ。レナと、同じ、付き合っていったらさ。
そういう事考えなきゃなんないかなって?」
レオンはこれ以上、
レナに本当のことを話さないほうがいいと考えたので、
適当に話しを誤魔化した。
「レオン。だれか、好きな人って、もう、お付き合いしてるわけなんだ?」
「あ、うん・・・そういうわけでも・・・」
「やだ、誰か、教えてくれないの?」
「あ、もう、少し、はっきりしたらね」
「あ、まだ、片想い?」
「うん。まあ、そう」
「なんだ。じゃ、随分、先の事まで心配しすぎよ。おませなんだ。レオン」
「そういうことかな・・・(確かに、そうかもしれないね)」
レオンはレナににこりと笑ってみせると
「ああ、僕、まだ、朝たべてないいんだ。食べてくるね。
レナ、有り難う。あの、ゴメンね、へんなことたずねちゃって」
「あ、いいのよ。少しはすっきりした?」
「うん。途端にお腹空いたのに、気がつくくらい」
「よかった。じゃあ、早く、食べにいらっしゃい」
「うん」
レオンが小走りにむこうにいくのを、見送りながら、
レナはほううっと、ためいきをついた。
『あたしがおくてなのかな?レオン、まだ、十二歳でしょう?
もう、あんな事、考えちゃうのかな?
でも、やっぱり、おかしい。
相手の人に、片想いなのに、そんな事、考えちゃう?
それとも、そんなこと、考えなくちゃなんないような相手?
レオン、貴方、一体、誰のことを・・・・』
何だか、とてつもない不安をかんじながら、
レナは走り去ったレオンを思っていた。

レオンが小走りに走って行く先にクロードの姿がちらりと見えた。
「あ、お兄ちゃん」
クロードもレオンに気がついて、レオンのほうに走ってきた。
「ああ、探してたんだ。よかった。みつかった」
「あ、なに?」
「なにって、ばか・・・逢いたかっただけ」
「ク・・うん。僕も。あの、」
「なに?」
「昨日の事、ゴメン。僕ヘンな事いっちゃった」
レオンを見るクロードの目が優しい。
「ううん、ちっとも、変な事じゃないよ。
でも、そんな事考えるのは、レオンには、まだ、早いよ」
「そっか、そうなのか。ねえ、お兄ちゃん、朝御飯食べた?」
「まだ。チョットゆうべ、遅かったし(なにしてたなんていえないよ)
なんか、あんまり食べたくなかったし(自己嫌悪のせい・・)
でも、レオンの顔みたら、なんか、おなかすいてきた」
「僕って、おいしそうなわけ?
あのね、僕もまだ、たべてない。食べにいこう」
「ね、レオン。さっき、僕の事、クロードって、よぼうとしたろ?」
「気がついてたの?」
「うん。レオン。いいからさ。これからは、そう、よんでよ」
「クロードって?よんでいい?」
「うん。そのほうが、嬉しい。
なんか、レオンにお兄ちゃんっていわれると、
ここらへん、ずきってきてたんだ。
お兄ちゃんじゃないって。
僕が、レオンの事、弟なんてこれぽっちも思えなかったのに、
レオンには、兄貴でしかないのかよって」
「僕も。だけど、いつも、心の中では、クロードってよんでた。
ね、クロード。・・・わっ、なんか、てれくさい」
「いいよ、自然に呼んでくれりゃいいんだ。
レオンもそう、思ってたなら、いいよ。どっちでも」
「いこう」
朝から、立ち止まって嬉しげに交わす言葉で
いちゃつきあってたカップルがやっと動き出した。
庭を抜けてむこうに歩いて行くクロードに
気がついたレナが声をかけようとして、やめた。
クロードのむこう側、クロードの体の影に隠れて
はっきりと、みえなかったが、レオンと一緒にいる。
なにかクロードに話しかけたようだなと思ったら、
レオンが嬉しげにクロードの手にしがみついた。
クロードのほうもレオンの手をとると手を繋いで歩き出した。
レオンの手とクロードの手が同じに振れているので、
それは、間違いなかった。
仲のいいのは、いつものことだ。
仲のいい兄弟。兄が弟をかばうように。
「いいなあ。あんなに堂々と・・私も・・クロードと・・・」
ポツリと呟きながらレナはさっきのレオンの話しを、思い出していた。
『レオン?貴方の好きなひとって?
まさか、クロード?
抱かれたいとか、求められたらって?
クロードが求めたってこと?』
無邪気な様子の二人が、レナに気がつかず
むこうにいってしまうのを見ていたレナは首を振った。
『あり得ない。男の子に。
まして、十二歳のあんな小さな子に。
クロードが求めたりするわけない。
私ったら、なに馬鹿なこと考えてるんだろ。
ごめん。クロード。侮辱だよね。
もう、レオンが変なこと言うから・・・』
否定はしてみたものの、レオンの楽しげな顔が頭の中にちらついてくる。
『でも、クロードじゃなけりゃ、誰なんだろ?
それとも、やっぱり、クロード?だったらレオンの言った事・・・』
レナはも一度、首を振った。
『何、馬鹿考えてるの。クロードを信じなきゃ。彼はそんな人じゃない』
レオンとクロードは多分、とおりの角にある、アマンダに
モーニングを食べにいったのだろう。
レナもモット近くでクロードに逢いたくもある。
かといって、声をかけそびれていながら、
すぐ、追いかけるようにアマンダに行くのも気が引けた。
レナは上手い言い分けがないかなと考えていた。
「あーら。レナさん。お一人で何を物思いにふけってらっしゃるの?」
突然声をかけられて、レナが慌てて、振り向いた。
声と独得の喋り方でもう誰だか判っている。
「セリーヌ。おはよう。早いのね」
「レナさん。私の事は、遅くても、早くてもよろしいですわ。
それより、随分浮かない顔をしてましてよ。聞いてさし上げましてよ」
「・・・・」
なんだかさっき同じ様な事を言ってレオンに話しかけたレナが
今度は、逆になってしまっていた。
「・・・・」
「うふふふ。どうせ、レナの事だからクロードのことなんでしょうけど」
「あ、気がついてたの?」
「いつも、あんなにレオンを羨ましそうに見ていたら、
にぶちんのアシュトンでも判りましてよ。
知られたくないのなら、御気をつけあそべ」
「あ、ありがと」
そんなに羨ましそうな顔をしてレオンを見ているのだろうかと
レナは、考え直している。
そうだ、セリーヌならレオンの好きな人をしっているかもしれない。
それさえ判ればこんなもやもやした気持ちもすっきりする。
「ねえ、セリーヌ。レオンの好きな人。誰だか、知ってる?」
「まあ。おませさんですこと。もう、そんな年頃なんですのね」
セリーヌは自分で言った事に自分で答えて、
自分の初恋の事でも考えている様だった
「で、誰ですの?」
セリーヌもしらない。
「あ、わかんないの。だから、ちょっと、きになって」
レオンの恋を探るような真似をしてる自分に
レナも多少なり、後ろめたさを感じている。
「まああ。レオンったら、秘密ですのね!
 クロードなら知っているんじゃございませんこと?」
「やだ。そんな事、クロードにきけないわよ。
それに知ってても彼は、しゃべらないわよ」
「ですわね。野次馬みたいで、恥ずかしくて、きけませんわよね」
セリーヌも自分の好奇心をあからさまにするのは、
さすがにプライドにかかわるようであった
二人で黙りこくって考えていた。
ややすると、セリーヌがポツリと
「ボーマンさん・・・かしら?」
「ええっ?」
意外な名前が出てきたのでレナが素っ頓狂な声をあげた。
「ボッ・・ボーマン?」
「エエ。今日もボーマンさんとレオンで御話しなさってて、
レオンが赤くなってましたもの」
「ボーマン?レオンが赤く?」
「好きだよなんて、囁かれていたんじゃありませんこと?」
「ボーマン・・・・」
レナの中でなんだか、納得ができる。
ボーマンが両刀使いだと言う事は有名な話だし、
遊び人と言うか、プレーボーイと言うか、
とにかくボーマンの側ではいつも恋の花が咲いていた。
そのボーマンならレオンに言い兼ねない。
『ボーマンなら、レオンに「抱きたいな」とか言うかも。
レオンもそう言われて
そう、しなきゃいけないかなって悩んで相談してきたんだ』
そう考えると、レオンの言葉が一つ一つつじつまが合ってくる。
全ての謎がとけた。
『ああ、でも、そんな年齢で
ボーマンのものになっていいって考えてしまうの?
ボーマンのこと、そんなに好きなの?
でも、よりにもよって、ボーマンなんか好きにならなくたって・・・』
「はあああー」
セリーヌもレナも同時に長いため息をついた。
「ですわよね?」
セリーヌもどうやら、レナと同じ意見らしい。
「うん。チョットね。でも、レオンが好きになったのなら、
応援してあげたいし。でもね、ボーマンじゃ、ちょっとね」
「複雑な気持ちですわ」
「うん。ボーマン、本気なのかしら?」
「アラ、ボーマンさんはいつでも、本気でいらしてよ」
「そうよね。ン?セリーヌ、貴方、少し顔赤いわよ」
「あら、レオンの御熱にあてられたのかしら・・・ほほほ」
いつだったか。セリーヌはボーマンに口説かれた事がある。
本当に一生懸命に、まじめに。
その姿に断わるのに、セリーヌのほうが謝ってしまうくらいだった。
それでも、まだ、諦めない情熱振りに、
セリーヌもとうとう、本心を話した。
好きな人がいる。
セリーヌのその言葉を聞くと、ボーマンは引き下がった。
「恋をしてるって訳か?悪かったな」
自分の心にも、正直な人だけど、
人の恋する気持ちも大事に考えてくれる人ではある。
どうせ、すぐ、また、誰かと恋に落ちちゃうくせにと、思いながらも、
一回くらいなら、デートしてあげてもよかったかな?
と、思ったものである。
その事を、思い出して、セリーヌが、赤くなってしまったのである。

「ねえ、ねえ。何が、ボーマン「はあああ」なわけ?」
突然のアシュトンの声に二人とも驚いてふりむいた。
どうやら、アシュトンに今の話しをきかれていたのかもしれなかった。
「アシュトン。いつからいたの?」
アシュトンも何も悪気もなかったのだろう。
けろっとした顔をして
「さっき。あ、僕、聞いちゃまずかった話しだったの?」
レナとセリーヌが顔をみあわせる。
聞かれていたのならしかたがない。レナが
「あ、いえ、べつに」
と、答えると、アシュトンが目をくるくるさせて
「ふううん。だったら、教えてよ」
と、いう。
結局アシュトンははっきり、判ってるわけではなかったのだ。
なのに、わざわざ尋ねるチャンスを与えてしまったようなものだった。
「あ、えっ、その、あの」
「もう、よろしいじゃございません?
レオンが、うふふ。
ボーマンにラブ、ですのよ」
「えええっ。レオンが?ボーマンに?
へええええ。ん?なんで、判ったの?」
「んふふふふ。内緒」
「ええっ?教えてくれないの?」
「ボーマンにでも聞いてみたら、宜しいじゃありませんこと?」
「うわっ。ってことは、もう、ふたり、できてるってこと?」
「さあ?気になるなら、ご自分で確かめてらっしゃれば。
私からは言えませんわ」
はっきり確認を取った事でもない事を絶対と言いきれない。
そんなつもりでアシュトンに話した事が
しっかりアシュトンに誤解を与える事になるとは、
よもや、セリーヌも思いはしなかった。
「ふううううん。レオンがねえ?ボーマンもねえ?」
ぶつぶつ呟きながらアシュトンが、二人の側を離れて行った。
アシュトンが何処かに行くとレナが
「でも、いいのかな?」
「何がですの?」
「だって、ボーマンの処にアシュトンが本当にききにいったら」
「だいじょうぶですわよ。ボーマンですわよ」
「そうか。そうよね」
「それよりも、レナ、これは願ってもないチャンスでは、ありませんこと?」
「へっ?」
いかにも、間の抜けた返事だったが、
レナには確かにセリーヌの言う事が判らなかった。
「もう、そんなことだから、いつまでたっても、
クロードにふりむいてもらえないのですわ」
「な、なによ」
「よろしいですか?
クロードはレオンの事を本当の弟のように可愛がっていますわよね?
でも、ふたりの仲がはっきりしてきたら、
そのうち、レオンはボーマンの所にべったり。
つまり、いつも、ちょろちょろ、している、御邪魔虫は、ボーマンのそば。
クロードは独り、ぽつん」
「あ、そうなちゃうよね」
「で、ございましょう?
そうしたら、レナがクロードの所に近づくチャンスも増えるわけ。
ああああ、そして、こちらでレオン達。
あちらでレナとクロード。万事、ハッピーですわ」
そう、うまくいくかしらと思いながら
レナもセリーヌの想像にうっとりしてしまっていた。

ところが、レナ達のそばを離れたアシュトンは
なんと本当にボーマンの所に聞きに来ていたのである。
「ねええ、ねええ、ボーマン!ボーマン。いないのお?」
いない奴が返事するわけもない。
「ちえっ。いないのかあ」
だいたい、噂に尾ひれはひれがつくのは、
誰かの想像にさらに大胆な推理が降されるせいであるが、
やはり、ここでも、そうであった
ただし、アシュトンの場合を推理といっていいかどうかは定かではない。むしろ、妄想と言うべきかもしれない。
『どこいったんだろ?
ふうう、でも、レオンとボーマンのこと、
あの二人になんで判ったんだろ?』
どうでもいい事にではあるが、かくも熱心なのは、
きっと、アシュトンのいい所に違いない。
『内緒なんてさ、なんか、ヘンな事してたみたいじゃん。
ヘンな事?あは?ヘンな事って・・・』
よせばいいのに、どんどん、連想を広げてしまうのである。
『うーん。例えば、二人が抱き合ってるとこを見ちゃったとか。
ううん、ブチューってとこ、見ちゃった。
あは。ブチュー、あは、いやらしい。
あっ、そうか。きっと、そうだ。うん。だから、内緒なんだ。
うん。うん。言えないよな。女の子なのにそんなこと。
う――ん。そうかア。なるほど、ブチューか。ブチューだ。うん。うん』
悪いことに思いこんだら信じ込むタイプである。
だから、おっちょこちょいなのであるが、
アシュトンは自分の大胆な推理に我ながら、惚れ惚れとして、
すっかりその推理(妄想)を信じ込んだ。
こうなると、どうか、悪い事になりませんようにと祈るしかない。
疑問が解明された、アシュトンも、やっぱり
『ああ、腹減った。カフエでも行って、モーニング、たーべようっと』
アシュトンまでも、アマンダに行く事になったのである。
波乱を含んだアシュトンが、
レオンとクロードによい結果をもたらすとは、
とても、思えないのであるが、成り行きにまかせるしかない。

アマンダの店の中。
レオンとクロードがいつものメニューで食事を終えた。
クロードの前にはコーヒー。
レオンの前には、キャロットジュースが、運ばれてきた。
「アマンダ。いつも、ありがと。
こんなの僕の為だけに、置いてくれてるみたいなもんだものね」
「レオン、気にしないで。キャロットジュースがなくて
がっかりするレオンの顔見るほうが辛いもの」
「すみません。こいつ、わがままだから・・・」
横からクロードが謝ると
「いいのよ。クロード。レオンの嬉しそうな顔、最高だもの。
我侭なんて思ってもいないわ。クロードも本当はそうでしょ?」
「え」
アマンダがクロードのレオンへの特別な気持ちを察していると判ると、
クロードも少し照れた。
「ごゆっくり」
「あ、ありがと」
そのさりげない一言で
アマンダが、二人の事に声援を送ってくれてるんだと判った。
「あは、なんで、判ったんだろ?
今まで、あんな事いわれたこと無いよね?」
「うーーーん」
「なんか、僕達かわった?」
「わかんないよ」
「判った。クロードの目がハート型になってる」
「ふっ。ばか。それなら、レオンの方だ」
「クロードだよ」
店のドアが開くとアマンダの声がする。
「いらっしゃいませ。いつもので、いい?」
又、誰か常連がきたようだった。
それが、アシュトンだった。
アシュトンが、先にレオン達に気がついていた。
『ありゃ?レオン、ボーマンと一緒じゃないんだ。
まだ、隠してるのかな?
恥ずかしがらなくていいのに。
好きなら堂々としろよな、レオン。
うん。よし、そういってやろ』
早とちりの上、妙に正義感があって、良く言えば、行動的。
悪く言えば、おっせっかい。
「レオン」
側によってレオンを呼んだ。
クロードが挨拶代わりに「よっ」って軽く手をあげていた。
アシュトンに呼ばれてレオンが振り向いた。
「アシュトン、おはよ」
まだ声変わりもしてない子供。
なのに、ボーマンと・・・・。
そんな事を思ってしまったら、知らず知らず内に
アシュトンの目がレオンの唇をみてしまう。
『綺麗に赤くて形のいい唇。
この唇をボーマンが・・・?ぎょえーー』
その、想像がいけなかった。
妙に興奮した口調で、説明もレオンへの配慮もなく、いきなり
「レオン、おまえ、ボーマンのこと、ほうっておいてどうすんだよ」
いきなりのアシュトンの言葉の意味がレオンに判らない。
ボーマンがアシュトンに、なにか、レオンへの用事でも、頼んだのかな?と、思うだけだった。
「ア?ボーマンが、なんか用事?僕、何もきいてないよ。それに・・」
アシュトンがレオンの言葉を遮った。
「レオン。もう、とぼけなくていいよ。
ボーマンとブチューって、キスする仲のくせに。
(レナとセリーヌが)ちゃんと見て知ってんだぞ。もうーー、隠すなよ」
「えッ?僕」
レオンが訳の判らないアシュトンの言葉に、考え込んだ。
なんで、そんなとんでもない作り話をするのか?
だけど、見たって言ってるアシュトンの顔は、
とても、冗談で言ってる様にも見えない。
第一、アシュトンが、人をからかったり、
嘘ついて人を困らせたりする奴じゃないのは、
レオンにも、よく、判っている。
ガタッと、音がするとクロードが黙って立ち上がった。
「あ、クロー」
レオンの声が止まった。
クロードの目がひどく険しい。
そのまま、帰るクロードをレオンは、もうとめなかった。
クロードが、レオンを信じてない。
アシュトンの言葉をまに受けて、あの険しい目。
頓珍漢な嘘でも、信じれば、クロードだって傷ついている。
『でも、なんで僕を信じてくれない?ウウン。違う。
信じてもらえるだけの僕じゃないのが悪いんだ。
アシュトンのせいでも、クロードのせいでもない。僕のせい』
クロードが出て行くと、レオンもひどく、シュンとして、
今にも、涙がこぼれそうにみえる。
「ア、レオン。あの、ごめん。悪気じゃなかったんだ。
あの、内緒だったんだ?」
レオンはただ、黙って首を振る。
「レオン。どうなってるの?ボーマンのこと、好きじゃないの?
本気じゃない?」
「はああああ?」
アシュトンにモーニングを持ってきたアマンダの声だった。
「やーね。クロードが帰ったのはアシュトンのせいだったのね。
レオン、この困った人に本とのこといっていい?」
レオンの瞳からつううと涙が零れ落ちた。
それを見るとわけ判んない、なにいってんのアマンダ?
そんな顔してたアシュトンも俯いてしまった。
「アシュトン。はやくクロードの誤解といて、
レオンのとこに連れてらっしゃい」
アシュトンが「へっ?」と、アマンダをみた。
「全く、何処をどう間違ったら、
レオンの恋人がボーマンになるのか、よく、わかんないけど、
やっと、恋人どうしになった二人を引き裂いたら、
アシュトン!許さないわよ。
食べさせてあげたいけど、それどころじゃないのよ。アシュトン」
「は・・あ?」
「ほら、はやく、とっとといきなさい」
アマンダの声が荒荒しくなってきたので、
まだ、よく、府に落ちないままアシュトンは外にとびだした。
『クロードはどこにいるんだろ』
すきっ腹のまま、取敢えず、アシュトンはクロードの部屋にむかった。

アシュトンの行った方向とは反対の場所にクロードはいた。
クロードはアマンダの店の裏どおりにある、
小さな公園のベンチにすわっていた。
クロードの心の中は、当然煩悶している。
アシュトンの言葉を聞いた時クロードだって、誤解だと思った。
でも、昨日、あんな事を言っていたレオンのことを、
考えるとどうしても、ふにおちない。
アシュトンのいうとおりボーマンと本当はとても、深い仲になっていて
だから、そんな事、本気で思うようになっていて
僕がレオンを好きなのが判って可哀相になって、
僕も、馬鹿みたいに、心の底じゃ、
レオンのこと抱きたいって思ってるのレオンにも、判ってて
してあげようか、みたいに、同情された?
そんなことが、ふっとわきあがってきて
アシュトンの言葉を否定出来なかった。
とにかく、その場にいたくなかった。
もう一度独りで考え直したかった。
『レオンがそんなわけない。でも、あんなこというレオン・・わかんない』
クロードは立ち上がった。
部屋に帰ろう。
こんなとこじゃ、きっと、ひどい顔してるだろうし、
ボツボツ、子供達が遊びにき始めて、ざわついてきだしていた。
なんだか、重い、足取りでクロードは帰ってきた。
玄関の方から、こちらに来る人影がボーマンだと判ると
クロードは足を早めた。
「よお、レオンはみつかんねえのか?」
ボーマンの側に近づいてきたクロードがいきなり殴りかかってきた。
かろうじてボーマンが除けた。
「おいおい、なんだよ。あぶねえじゃねえかよ」
ふざけているのかと思ったが、クロードの顔付きが違う。
『やべえ。マジだ。』
二発めが来る。ボーマンは後ろに下がった。
『おいおい、いったい、どうなってるんだ』
「にげるのか?」
クロードの声がひどくすさんでいる。
「チョット、待てよ。俺、なんかしたか?」
「うるさい」
クロードがふりかざした拳をなんとか、もう一度よけた。
理由も判らず、クロードを殴り返したくもないし、
といって、ボーマンもいつまでもよけていられるわけもない。
仕方なくボーマンも拳を構えた。
「クロード。いったい、どうしたんだ?俺が何をしたって言うんだ」
「とぼけるな。レオンに何をしたか、お前が一番しってるだろうが」
「はっ、俺が?レオンに何をした?なんだ?そりゃ?」
クロードの拳がボーマンの腹にはいった。
「き・・く・・クロード。俺がレオンになにをしたっていうんだ」
「まだ、とぼけるのか?レオンにキスしただろ?それだけじゃないだろ」
「誰が?」
妙にぬけた返事にクロードがとまどった。
ボーマンの様子がとぼけてる訳でもなさそうにみえた。
「あーん?なんか、勘違いしてねえか?
俺はレオンなんかに手エ出す気ねえぞ」
「じゃ、なんで、キスなんか」
「だから、してねえって。なんでそんな話しになっちまってるんだ?」
「アシュトンが見たって」
「なるほど。何処でどう勘違いしたのか。
どーせ、あの、馬鹿のこった、早とちりして・・・・。
おまえなあ、俺を疑うよりアシュトンを疑ったらどうだよ」
「あ、それは思ったんだけど・・・」
そこへアシュトンが駆けつけてきた。
「ああ。良かった、喧嘩、納まったんだ。
はあ、はあ、むこうから、みえてさ・・はあ」
「アシュトン、息が整わない内にすまないんだがな。
クロード抑えつけといてくれ。一発お返ししなきゃきがすまない」
本当の所は、どういう、いきさつで、こうなったのか、
先にアシュトンを、問い詰めたいところだったが
誤解でボーマンを殴ってしまったクロードである。
レオンへ恋心で嫉妬に狂っての、あげくのざまだ。
それでも、ボーマンは一発、殴らせりゃ、
ちゃらにしてやると言ってるわけだ。
クロードは黙ってじっと立った。
ボーマンがそのクロードを抑えとけとアシュトンに、手を振って合図する。
「あ、あの?僕が?僕がおさえとくの?」
「ああ。殴り返されたら、かなわねえ」
「ああ。そう?クロード。ごめんよ」
アシュトンはクロードの後ろから手を廻した。
「アシュトン。もう、少しこっち。
後ろじゃ、反動でお前もぶっ倒れる。左側から、そう、そう」
まるで写真撮影じゃないか。
でも、この際ボーマンの気に入る様にするしかなさそうだった。
「こう?」
「よし、クロード。行くぞ」
もう少し右に寄れって感じでボーマンが顎をしゃくった。
クロードは少し右に体を傾けた。
興奮して、ボーマンに挑んでいったクロードだったが、
もともと、ボーマンの方が腕は達つ。
すでにボーマンに殴り返されていたっておかしくない。
ぴんしゃこ、突っ立っていられる事自体、有り得ないのだ。
「ああ、ま、いいか。一発はいるな」
ボーマンが言った途端。
すばやく、しなやかな動きでクロードに拳が、とんできた。
「よし」
「あた」
とか、言う声がきこえてアシュトンがぶっ倒れた。
「え?」
クロードには、何がおきたのか、良く、判らない。
ただ、自分の腹に、あるべきはずの
ボーマンから受けた拳の痛み一つなく、
替わりにアシュトンがぶっ倒れている。
「ア、アシュトン」
「クロード、それでいいんだ。そいつを殴ったんだ」
「はあ?」
「どうせ、どっかのデマを拾って、妙な事言い出したんだ。
どーも、男心も女心もわかりゃしない。
なあ、例え俺がレオンとそうであっても、
レオンを好きで仕方のねえお前に、
わざわざ、キスしたのどうのっていう馬鹿がいるか?
お前の気持ち一つ気がつかない鈍ちんなんだから」
「あの」
「なんだよ。ひでえ形相でレオンを返せって殴りにきやがって、
なんで、判るんだ?なんて、ぼけかますなよ」
「あ、はい」
「所で、なんで、アシュトンなんかの言う事を信じたんだ?
お前だってアシュトンのおっちょこちょいを良く判ってるだろ?
判ってて信じるお前の方が俺にゃ解せないのだがな?」
「ア、それ・・あの、レオンが」
クロードはちらりとアシュトンを見た。
結構打たれ強いアシュトンだって事は、クロードも知っている。
アシュトンのことだ、聞こえてきた話しの内容で
ここは、ふんのびた振りをしていた方が得策だと解ったのだろう。
そうなると、ここで当然レオンの話しをすればアシュトンが聞いてしまう。
「相談に載って下さい。後であの、部屋に行きます。
あの、レオンに怒ってしまって、そのままで・・・」
「ああ。いって来い。」
「あの、すみませんでした」
「アシュトンを殴ったので気がすんだよ」
「でも、腹のほうに・・・」
「一発しか、入れなかったな?
手加減なんかしてて、レオンの事が本当だったら取り返せねえぞ。
・・まあ、行け」
クロードはもう一度アシュトンを見た。
なんだか、小さな声でアシュトンに呼ばれたような気がしたからだ。
「クロード。レオン。アマンダ」
アマンダに出入り禁止になるかならないかの瀬戸際ともなると
さすがに、黙ってもいられなかった様である。
クロードはアシュトンの側によると、少し様子を見る振りをしてかがんだ。
「なに?」
「レオン。アマンダにいる。
あの、アマンダにちゃんと僕がクロードに伝えたって言っておいてよ。
お願い」
「はあ?」
「おい。クロード。
そんな、あんぽんたんにかまってないでいいから、早く行け」
「あ、はい」
クロードが駆け出していった。
『頼むよ。クロード。しかし。腹減ったあー』
「アシュトン、いつまでやってるんだ。
きいてたんだろ?え?解ったのかよ?」
アシュトンは起き上がりながら
「うん。解った。ああ、でも、クロードのために、レオンをあきらめるんだ。
ボーマン、いいとこある」
「はああ?」
「だって、そうだろ?キスまでしといて、ボーマン・・・・」
アシュトンの優しい同情の瞳にボーマンは面食らいながら
「ああん?お前、まだ、そんなこといってんのか?
俺、してねえっていってるだろが。
どこのどいつがそんな馬鹿をいいだしたんだよ?」
「ア、レナとセリーヌが・・・」
その名前をきくと、尚更ボーマンは、妙だなと思っている。
「二人して、俺がレオンにキスするのをみたっていってるのかよ?」
「うん。あれ?待てよ。・・・違うな。
確か、ボーマンにきいてみろって。
で、ききにいったらいなくて・・・
あっ・・・あははは」
「ごまかすな。勝手にお前がそう思ったんだろ?」
「あは、なんで、解るの?」
「たああ。やっぱ、おまえのはやとちりか。
ン?でも、レナたち、何を聞いてこいって言ったんだ」
「あ、えっとね。二人ができてるんだってこと」
「二人って、俺とレオンか?」
「うん。きまってんじゃない」
「なんで?あいつらが、俺とレオンができてるなんていいだすんだ?」
「さあ?だから、僕がききにきたのに、いなかったじゃない?」
「てめえ、俺が悪いみてえないいかたすんな。
しかし????なんで・・・」
ボーマンに新たな謎を残して、
レナとセリーヌはいま、なにをしているんだろうか?

「レオン・・・ごめん」
なんだか、よく解らないけどクロードがレオンに一生懸命謝っている。
少し、離れた席でレナとセリーヌはその様子をちらちらとうかがっている。
ようやく、さり気無い振りをして、
クロードの後をおってアマンダに、きたのに
レオン、一人、ぽつんといるだけで・・・・。
なんだ、いない、どこですれ違ったのか判らないけど、
居ないなら探しにいってみたらいい。
クロード一人に間違いない。
だって、レオンがここにいるのだから。
セリーヌのそんな言葉に席をたとうとしたとき、
クロードが店の中にはいってきた。
レナ達に気がつきもせず、まっすぐレオンの側に行ったと、思ったら
「ごめん」 
そんな、真剣で切羽詰まった声がきこえてきたのである。
「いいよ。信じてもらえなかった、僕が悪いんだ」
レオンのその言葉はクロードの胸にひどく、応える。
男らしくないと、思いながらクロードもつい、言い分けがましくなる。
「だって、レオンがあんなこというから・・・」
「あんなこと?」
「昨日、いったこと!」
「それが、なんで?」
レオンの声が少し、怒ってる。
やばいかな?と、思いながら
「だから、あんなこと、いうのって、
もしかして、もう、経験あるせいかな?とか」
見ろ!レオンの顔色がかわった。
「ああ、そう。はてにはそういうことまで疑うわけ?」
まっずう・・・・。クロードは内心そう、思いながら、つい、強気に出る。
「あ、当り前だろ!あんな事、いうなんて、普通じゃないよ」
ぴしって感じでレオンの顔がひきつった。
「あ、そう。僕は普通じゃないんだ。
クロードは、普通だから僕のこと・・・・」
「・・・・」
「異常者かなんかみたいに、思ってるんだ?
クロードってそんな事、ひと欠けらも思わないんだ。
御清潔さま。はぁっ、僕のことなんか汚くみえてしかたなかったんだ?」
「あ」
レオンにそうまでいわれると、さすがにクロードも嘘をつけない。
「ごめん。レオン。そんなことない。僕だってレオンのこと、欲しい。
ただ、でも、まだ、はやい」
「判った。ようは、僕の年齢のせいなんだ?」
「ん・・・」
「十二じゃなけりゃ、ボーマンのこと、疑わなかったんだ?
僕があんなこといっても?」
「ごめん。多分。そうだと、思う」
「ん。ねえ、クロード。僕を待っててくれる?
クロードが、自然にそう、僕に思える歳になるまで、
僕を待っててくれる?」
「ぁ、当たり前だろ。レオン。僕が好きなのは、君しかいないのに」
その後、じっと、黙ったままの二人。

その二人をじっと見ていたレナがセリーヌに尋ねた。
「ね?なんか、よく、聞こえてなかったんだけど、セリーヌ聞こえた?」
「あ・・いいえ。はっきりとはきこえていませんことよ。でも・・・」
セリーヌは、黙った。
自分の感じた事をレナにはっきり告げるべきかどうか迷った。
「なによ、セリーヌ」
「私が思うことですのよ。本当のことは、判りませんことよ」
「嫌だ。なんか、判りにくい。はっきりいってよ」
セリーヌが覚悟を決めた。
「そうですわね。レナも、それは聞こえてましてよね?」
「?だから、なんのこと?」
「いいですわ。はっきり言いきれないのですわよ。
でも、あの、私、これでも、好きな男の一人やふたり。
いえ・・ひとりだけですけど、いましてよ」
「はあ?」
取合えずレナもあいずちをうつ。
「それで思うのですけど、あのですね。あの・・・」
ひどく言いにくそうなセリーヌである。
「いいわよ。いってちょうだい。なにをきいても、驚かないから」
レナも、さすがにセリーヌが言い渋る訳がわかってきている。
「レナ。いいですか?私が思います事には。
あのレオンが、クロードの事をおにいちゃんとよばずにですわよ。
クロードと呼んでいたの、きこえましてよね?」
「ええ、ああ。まあ、そういえば、そうね」
「ああ。レナ、それで判りませんこと?」
「?・・・」
「そうですわよね。
レナには、判らないから私が話しているのですものね」
レナがじっとセリーヌを覗き込む。
「ふうう」
セリーヌが哀しいため息をついた。
「レナ。それは、つまりこう、考えられませんこと?」
「どういうこと?」
「つまりですわね。
レオンにとって、クロードはお兄ちゃんじゃなくなったってこと。
判ります?」
「え?それって」
セリーヌもレナ自身の口から言わせるのは、辛かった。
「そうですのよ。
レオンにとってクロードは特別な存在であることを、
クロードも受け入れて、
ひょっとしたら、クロードも望んで、そう、呼ぶようになった」
「嘘?」
レナはちらりとクロードを見た。
クロードがレオンを、ただ、黙ってみている。
その時、レオンのトゥルーがなった。
なにか話していたレオンだったが、やがて席をたとうとする。
どうやら、研究所からの呼び出しのようだった。
「行くね。クロード」
「うん。後で行くよ。部屋で、待ってろよな」
「あら?レオン。仕事?」
アマンダが立ち上がったレオンに気がついて声をかけた。
「うん。アマンダ。いろいろ、ありがとう」
「どういたしまして。なーんて、私、別になにもしてないわよ。
レオン、クロードも貴方の事、
ほんとのに好きで仕方ないから不安になるのよ。
そこのとこ、判ってあげてね。ね、クロード?違う?」
「あ、合ってます」
照れながらも、クロードは素直に答えた。
そんなクロードのどこか嬉しげな言葉はレナにも、聞こえていた。
セリーヌは決定的な結末に、レナを、指の隙間からそっと見た。
「なによ。いくら、私でも、もう、判るわよ。
レオンの好きな人がボーマンじゃなかったって事くらい。
それから、アシュトンに訂正しとかなきゃ。
レオンと出来てるのは、ク、クロードだったわって」
泣き出しそうなレナを連れて、セリーヌは部屋に戻った。
どうやら、今日は悲しい一日で終りそうだった。

「さてと」
アマンダをでると、クロードはボーマンのところに行く事にした。
いるのかな?と、思いながら部屋をノックすると
「ああ、待て待て、今、開けてやる」
ボーマンの声がした。
ドアを開けると、クロードをじっと見て言う。
「ふん。レオンは大丈夫だったようだな。ま、入れ」
なんか、この人、顔色一つでみんな、わかっちゃうようだな。
と、クロードは思う。
「ま、適当に座れ。ビールでいいか?」
クーラーを開けながらボーマンはクロードの返事もまたず、
栓をあけると、ビンごとよこしてきた。
「で、相談ってなんだ」
「さっきの・・こと、すみ」
「ああ。いいってことよ。すんだことだ。
もう、いいっこなしにしようぜ。それより、相談?話せよ」
「あの、さっきのレオンをなんで信じなかったんだって事になるんだけど。あの」
「なんだよ。えらく。いいにくそうじゃないか。話しにきたんだろうが?」
「実は、レオンに、してもいいよ、なら、
まだしも、されたいって、いわれちゃって・・・」
「はあはあ。成る程な。そりゃ、男名利じゃねえか。えっ?」
「はあ・・」
「はあって、なんだ?嬉しくないのか?」
「あ、そうですね。うれしいのか・・な?」
「なんだ、そりゃ?」
「だから、相談しにきてるわけで・・・」
「ふん。で?」
「本当に、そう、思うのかなって。
十二歳でそんな事、思うのって、
もしかしたら、もう経験あるから?って思っちゃって・・・で」
「で、俺となんか、あったのかなって?
で、嫉妬に狂ったあげくか。おまえ、けっこう妬くんだな」
「あは。でも、じっさい。あんな年齢でそんな事思うのかな?」
「うーーん。それ、聞くとな、いくつか、思うんだけどな。
一つは、よっぽど、お前の事が好きなんだなって事だな。
ひとつになりたいっていうか。
まあ、そんなとこで、そこまで思うようになったのかなって」
「・・・・」
「もう、ひとつはそれが、本当に、本気かどうか」
「ああ、なんか、好奇心とか、憧れ?とか?」
「いや、お前のいってるのは、ハートの問題。
俺の言うのはハートが本気でも、体が本気かどうかさ。
身体が付いて行かないっていうか。
簡単にいえばレオン自体に欲求があるか、どうかつうこと。
いくら、されたいなんて言われてもさ、
いざ、やってみたら、やだ、なんてことあるんだ。
頭じゃ、判ってても、欲求なんてのは、頭じゃねえからな」
「たしかに・・・・」
「だろ?レオンが本気かどうかなんてさ、確かめてみるしかないだろうな。頭で判っていってるのか?からだの方も判っていってるのか」
「確かめるって?」
「クロード。お前。何年、男やってんだ。
その気になったことないってのは、冗談にもなんないぜ。
ちょっと、さわったら、判るだろうが」
「それでも、まだ、十二歳だよ」
「クロード、おまえ、なに、考えてんだよ?」
「えっ?」
「つまりぃ。お前が、やりたいってことだ」
「な、なんで?なんで、そうなるわけ」
「お前なあ、十二歳じゃ、まだ、早いって頭で考えてるよな?
でも、お前の身体は欲しいって言ってる。だろ?」
「・・・はあ」
「で、レオンの言ってる事が本当なら、してもイイかな?
嘘ならマズイよなって思ってんだよ。
早い。止めとこうって、思うなら、
レオンが本気だろうが嘘だろうが待たしゃいいわけだろうが。
悩む必要ねえじゃんか」
「あの・・・」
「ようは、抱きたいんだろうが?
素直に聞けよ。遠回しに七面倒くさい。
レオンもされたいっていうンだけど、十二歳の子にしてもいいもんかな?ってさ。そういう事だろう?」
「はあ・・・」
「レオンが本気かどうかなんてのは、俺には判んねえよ。
ただ、そんな事言ってるなら、その気にさせる事は出来る。
それも、ま、本気の内だ。
お前が、そうさせたいか、させたくないか、問題はそこで、
本気とか嘘かってのは、レオンの問題だろ?
厭だっていうなら、やめてやりゃいいじゃないか。
ぶつけてみなきゃ判んねーよ。本心なんてな。それだけだ」
『ようは、抱いてしまえって言ってるんだ』
クロードにもそこだけは、はっきりと判る。
「ボーマンなら、どうする?」
「十二、ね。うーん。やっぱ悩むだろうな。
でも、好きなら、本気なら、やるだろうな。止められないって、思うぜ」
「・・・・」
「ま、自分で決めろ。
ただな、レオンが心体、ともにそういってるのか、どうかだけは、
確かめてみろ」
「・・」
「でないと、いつまでも、おまえの結論がでねえぞ」
クロードは黙っている。
ただ、間違いなくレオンが欲しい。
それをクロードがはっきり自覚したこと以外
結局、事態はなんにも、かわっていない。
自分がその思いをどうするか。
やっぱ、ボーマンのいうとおり、
レオンの身体も望んでいるのか、どうか、確かめてみるしかない。
その気もないのを、無理にその気にさせちゃうなんて、のは、
やっぱ、騙してるみたいなものだし、
でも、レオンにそれなりの、反応が、あったら?
・・・・・考えてしまうクロードである。
「考えてたって、わかんないぜ。
その場になって見なきゃ、自分がどう思うかなんて、
色々、行動してみてから、自分がその、瞬間、瞬間に、なにを思うか。それを、見定めて岐路を選んで行くしかないのさ。
つまんねえ思いしか、もたなかったら、
つまんねえ方に歩いてく人生しかねえんだ。
自分の思いが、人生になっちまうんだよ。
だったら、本当の思いで生きてえだろ?
そのためには、一歩でも動いて自分の、思いを、見定めるしかねんだ。頭で、考えるのは、それからだ」
「・・・・」
「ところでよ、俺とレオンができてるなんて言い出したのが、
どうやら、レナとセリーヌらしいんだ」
「レナとセリーヌが?なんで・・・」
「よく、わかんねえんだ。もう、一つ、きくけどよ。
お前、レナの気持ちわかってんのか」
「レナの気持ち?なんか、あるわけ?」
『やれやれ、眼中にもないってことか。きのどくにな。
ま、デイアスがいるか・・・』
「なんか?レオンのことに関係ある?
レオンのことで、なんかおこってるとか?」
「いや。レナは・・・・。しかし、お前、レオン、レオン、そればっかだな」
「あ。」
「ま、いいや。レナはな。お前のことがいいんだよ」
「えっ」
「だけど、お前はレオンがいい。
レナのこったから、なんにも言わずじっとお前を思ってるだろう。
おまえ、それ、つらくねえか?」
「確かに、それが、本当なら・・・」
「うん。だろ?かといってな。
自然に、諦めがつくのを待ってやるしかねえかなって、思うんだけどよ。その為にも、お前がレナにうっかり、
期待持たせるような態度をとっちまうとまずいんだよ」
「気をつけます」
「ああ。レナには酷いようだけど、
生半可な優しさでレナを苦しめてほしくねえんだ」
「判ります」
「例えばな。
噂ひとつでもな、お前の横にちょろちょろしてる奴が
いなくなるってことだけでさ、レナが随分喜んだんじゃねえのかな?
そんな事一つでも、女心にゃ期待なんだよ。
そんなふうにな、期待させてレナに自分の思いをすこしでも、
見定めさせてやるような、手伝いをするな」
「あ。はい」
「ま、おまえは、思いを見定めると。俺は・・! 生温かくなっちまったな」
ボーマンはくいと飲んだビールに文句をいいながら、
クロードのビンを見る。
「たく、おまえは一言、二言、あ、だの、え、だのいって、
のんでられるからいいやな。
俺は、喋りどうしで、プハアッ・・・だめだ、こりゃ」
クーラーに近寄るとボーマンは新しいビールを空けた。
「のむだろ?」
クロードは二本目のビールを受取ると一気にのみ干した。
「ひょォ、忘れてた。お前、強いんだった。ほれ」
ボーマンはさっさと三本目の栓を空けるとクロードに渡す。
ごそごそ、つまみをだしてくるとやっとボーマンも飲み始めた。
「やれやれ、昼酒かよ。それも、色気のねえ奴相手にな」
「御互い様だよ。ボーマン」
「ちがいねえ」
夕方近くまで、ボーマンと飲んでいたクロードだったが、
はっとして時計を見る。
「ア、ボーマン。もう帰るよ」
察しの良いボーマンである。
「オッ、デートか?」
「あは、うん」
クロードは今更、照れる事でもなさそうなのに、ちょっと、はにかんだ。
「お、がんばってこいよ」
何を頑張るのか、意味不明なのだが、この際そんな事はどうでも良い。
クロードは慌てて、部屋の外に飛び出した。
レオンが待ちくたびれてむくれてるかもしれない。
それは、それで、又可愛いんだけど、朝も機嫌をそこねさせてる。
やばいよ。そう思いながら、クロードは急いだ。
ドアをノックしたが、返事がない。
ノブを掴んで開けてみたらドアはすっと開いた。
クロードのためにレオンが鍵をかけずにいてくれたんだと判った。
『なんだ。まだ、帰って来てないのか』
ラッキーではあるが、それは、それで淋しい。
レオンの部屋にはいるとクロードはソフアーに寝転んだ。
寝不足と酒の酔いで少し眠気がさしてくる。
レオンが帰ってくるまで少しうとうとしとこう。
それから、夕食を食べにでようか?
その後、シアターにいって・・・
考えているうちにクロードはいつのまにか寝いってしまった。
どのくらい、眠ってしまっていたのか、
ファサッとかけられたフエザーケットの感触でクロードは目が覚めた。
「あ、起こしちゃった?」
まだ眠たげなクロードは、起きあがるとレオンを見た。
「おかえり」
「うん。ただいま」
「フリータイムでも、呼び出しがかかるんじゃ、たまんないな」
「しかたないよ。ね、クロード、お酒飲んでたの?」
「ああ、ボーマンとね」
「ボーマンと?なんか言ってた?」
「別に、どうして?」
「あ、うん。ボーマンもあの、判ってたみたいだから」
「判ってたって、僕達の事?」
「うん。わかんない方がどうかしてるって」
「アマンダだって、昨日だよ。あの。僕たちがはっきりしたの。
なのになんでわかるんだろ?
うん。アシュトンにはっきりいっていいってきかれてさ。
そしたら・・・あの、やっと、恋人同士になったのに、って」
「僕たちのこと?だよな。
えー。なんで、判るんだろ。ま、いいけど。恋人同士っていってた?」
「うん」
「あは。あはは」
妙な笑いを浮かべるクロードをレオンはじっとみている。
「クロード。なんか、へん」
「だって、ちゃんと恋人同士に見えるんだなって、なんか、嬉しくない?」
「あ。」
そういわれればそのとおりだった。
どう見たって兄弟、そんな感じでしかみられなかった。
嬉しくはあるけど、だけど、だからこそ
今までは、逆に、レオンも、おおっぴらにクロードに甘えたり、
抱きついてみたり、じゃれたりすることができた。
でも、これからは、恋人同士のそれにみえるってことだった。
「ああ、じゃ、きをつけなきゃ、いけないね」
「え?」
「だって、クロード、恥ずかしいんでしょ?」
「そりゃ、チョットは照れくさいよ。でも、別にいいよ」
「ほんとに?」
「うん?・・・あの、レオン?」
ポロッとレオンの瞳から涙の粒がおちている。
「だって、随分年下でさ。どっかで僕の事を好きだなんて、
カッコ悪いって思ってんじゃないのかなって」
「レオン?」
「でしょ?
はたからみたら恋人同士になんか思ってもらえるわけないだろうって
クロードが思ってたから、逆にそんなに嬉しいんだ。
弟みたいにしか見えないような子つれて歩いてるンだって、
ヘンな風に思われないのが、嬉しいんだ」
「バ、馬鹿。いったろ。弟なんて、思った事ないって。思えないって」
「でも、僕の事やっぱり対等にみてない。
十二さいだって、いつも、頭の隅っこにある」
「レオン」
「ごめん。僕が悪かった。ちょっと・・・」
「レオン。おいで」
クロードがレオンを引寄せると膝の上に乗せてしっかり抱き締めて、
クロードの胸の中に埋めたレオンの顔を覗き込んだ。
「レオン。本当に君が好きだよ」
「ん」
「レオンの言いたいこと判ってるんだ。
でも、レオンのいうとおり十二歳なんだよ」
「クロード。わかちゃいないよ。
だって、クロードは僕に何も望まないもの」
「レオン」
「してくれなんて言ってるんじゃないんだ。
そんな風に対等に望んでくれないのが、や・・なんだ」
「レオン。だから、それは、僕だって欲しいって」
「じゃあ、なんでなにもしないの?キス一つしようってしないじゃない?」
「もう、それじゃ、やっぱ、してくれってことじゃないか?」
「違う。そうじゃない」
「・・・・」
「クロードは僕が欲しいんじゃない。
セックスへの欲望があるだけなんだ。だから、僕を望めないんだ。
僕は、それが淋しい」
「欲望?じゃあ、逆に聞くよ。レオン、欲望を、ぶつけられたいわけ?」
「判ってない・・・」
「答えろよ」
「そうだよ。クロード。欲望も何もかも、それごと、全部、君だろ?
欲望だけは、クロードじゃないっていうわけ?」
「確かにね。ああ、僕は汚いよ。
やってみたいよ、してみたいよ。わるい?」
「悪い。」
「はあ?したいのは、悪くて、されたいのは、悪くないのかよ。
レオンも同じだろうが・・・」
「違うよ。クロード。君は、セックスを望んでる。
僕が望んでるのは君だもの」
「何を、わけわかんない事を・・・やることは、同じじゃないか」
「そうだよ」
話している事が堂々めぐりになってくる。
それに、こんなつまらない口論をしたくてここにきたんじゃない。
「レオン。もう、やめよう。けんかなんかしたくないんだ」
「う・・・うん」
「それよか、ね、レオン。夕食たべにいこう」
「もう少し、このままでいちゃ駄目?」
クロードがクスッと笑った。
「レオン。あのさ。
お前から先にキスしてくれなんて、いわれると
僕としてはどうも、命令されてするみたいでさ。
非常に意地張っちゃうんだぞ」
「え?」
見上げたレオンの顔をクロードの手が優しく包み込むと
二人はそのまま、長いキスをかわした。

で、次の日だ。
「で、どうだったんだ。ま、いいか、そんなこと、で、どうするんだ?」
ボーマンがクロードを見つけて側に来た途端、レオンの話しになった。
ボーマンに相談してから、
クロードも何らかの結果報告はしなきゃならないとは思っていた。
「ん・・・あるのは・・・ある」
ボーマンのいうところの、
レオンの体も、本当に望んでるっていえる反応は確かにレオンにある。
「で、それだけか?え?お前そこまで、触っといて、それ?」
「ボ、ボーマン。あの、僕、触ったりなんかしてない」
初めてのレオンとの長いキスのあと
クロードはレオンをゆっくりだきあげて、レオンを立たせた。
「レオン、アマンダにいこう。おなかすいたよ」
クロードのキスに身体をすっかり預けてきていたレオンだったけど、
キスひとつですっかりご機嫌がなおったのか、にこにこして、
「うん。ぼくもすいた」
って、答えた。
レオンって無邪気な奴だよな。クロードはそう思った。
さっきまで、あんなこといっておいて、これだけで、いいんだから。
でも、本当はクロードのほうが、大変だったのである。
レオンの華奢な体がクロードの膝の上にある。
おまけにキス。
胸がどきどきしてたまらないし、
このまま、いつまでも、レオンを離したくない。
ずう〜〜と、そしてモット、レオンに触れてゆきたい。
駄目、理性なくしちゃいそう。
これ以上レオンと二人きりで、
こんな事してたら間違いなく、レオンを、襲っちゃう。
クロードは、えいって感じで、レオンを抱き上げた。
その勢いでレオンをたたせた。
レオンを思いきって離すと、あわててアマンダにいこうってつげた。
レオンが機嫌を直してるのが判ると、やっぱ、それが可愛い。
つい、も一度レオンを引寄せて、しっかり抱き締めた。
その時に判った。
クロードの太腿に堅い感触が伝わってくるレオンの物。
クロードの咽喉がゴクッとなる。
やば、駄目。
クロードも自分のものを意識してしまう。
マズイよ。
慌ててクロードはレオンを離して、その手を引っ張った。
「はやく、いこう。おなかすいた」
そして、肩を抱き寄せ、そのままアマンダにいった。
だから、クロードはボーマンの言ったように、
決して触ったわけじゃなかった。
「はん。わかっちまったってやつか。」
「あ、うん」
「ま。いいや、で、なんで、そのまま、ほっとくんだよ」
「ボーマン。あの、本気でそんなこといってるわけ?」
「あん?お前。レオンとしたいから、確かめたんじゃなかったのか?」
「だから、わざわざ、たしかめたわけじゃ、なくて」
「よく、わかんねえな。したくねえわけか?」
「そりゃ、したいよ。違う・・・そんなこといってんじゃなくて」
「じゃ、なんだよ」
「あ、だから。レオンには::それなりに、反応があって・・だから・・・」
「だから、してもいいよな!?ボーマン?って、ことだあな?」
「違うってば」
「お前、何迷ってんだよ?」
「なんか、ボーマンと話してると自分が、よく、わかんなくなってくる」
「ばかやろ。よく、わかんねえのはお前の方だ」
「・・・・」
黙るしかないクロードである。
「なにに、こだわってんだよ。レオンの年か?
見た目の年齢なんか関係ねえぜ。
ようは、受止められるかどうかだ。
そういう、なんツーかな。精神年齢?肉体年齢?
うーん、セックス年齢って言うのかなあ。
こればっかしは各人いろいろじゃねえかなあ。
レナなんか、堅過ぎるしデイアスも大変だろ。
いい加減待ち草臥れてんじゃねえのかな」
「あの、あの日。レオンとちょっとだけ、喧嘩になっちゃって、
その時にもレオンがやっぱ、なんか、逆に
何でしてくんないのさみたいなこと、言い出して・・・」
「ちゃ・・・やっぱ、いったか。釘刺しといたんだけどな」
「え、なに?レオン、なんか、いってたわけ?」
「あのな、ま、いいや。
おまえにいったことで、悩んでたみたいでな。
男同士でしちゃ、おかしいことかって聞いて来たんだ。
で、俺が、クロードがこだわってんのは男同士ってことじゃなくて、
お前の年齢だろうって」
「はああ、それで、」
「なんだよ?一人で納得すんなよ」
「そういってたんだよ。
僕がレオンにしようとしないのは、年齢のせいだって。
年齢のせいで、対等に扱ってくれないって」
「そのとおりだろうが・・・」
クロードがぐっとつまった。
「だったらさ、する、しないなんて事より、
モット先に、好きになったことから、対等じゃない、っていうならいいよ。
でも、好きな事は、なにもいわなくてさ」
「好きなんだろうが?
それいっちゃ、おたがい、なりたたなくなっちまうだろ?」
「う・・・。
はてには、クロードは,セックスだけへの欲望だ、って怒るし、
と、思ったら、その欲望ぶつけてこないって怒るし、
してくれって言ってんじゃないっていってるそばから
なんで、しないって言うし。
そのくせ、キス一つでなにもかまわないみたいでさ。
で、こっちは、悶々てかんじで理性、保つのに必死だし」
「はああん。なるほど。
お前の言ってることはしっちゃかめっちゃかでよく、わかんねえけど、
俺にはレオンの気持ちがわかるよ」
「え?」
「な、クロード。もう、四の五いってねえでセックスしてみよう。
その方がはやい。見えてくるって」
「だから、ボーマン。僕はその事でレオンといいほど、もめて・・・」
「誰がレオンとしろっていってんだよ」
「え」
「ああああ、いくぞ。女、かいに行く。よし、アシュトンもよんでこい」
「え、え、え、えええ」

仕方なくアシュトンを呼びに行ったクロードの後ろから
「え、なに、なに、なに?」
アシュトンが何だか嬉しげにボーマンに尋ねていた。
「オ.アシュトン、いくぞ」
「いくぞって?どこに?」
ボーマンがクロードを軽くにらむ。
「なんだ、いってねえのか?」
「だって・・・・」
「おし。アシュトン。女買いに行くぞ」
「ええ、嘘ぉ。なに?僕、いや・・かな?いやじゃないけど。
やっぱ、きゅうに、そんな。
ああ、どうしょう・・・どうしていいか、わかんない」
「だから、いこうぜ。
クロードお前も、やりかたわかってんのか?
レオンを、ちゃんと、だけるのかよ?」
「レ・・・レ、レ、レオンって?
あの、えええ!するきでいるわけ?レオンに?ク・ク・クロードが?」
「やった事ねえと、舞い上がるぜ。そいつみたいにナ。
大事に抱いてやりたかったら、練習しておくことだ。俺もそうした」
「ボ、ボーマンも?」
尋ねるクロードの迷いなんかアシュトンは気にしちゃいない。
「わお、ボーマン。それって、僕にプリシスとしろってことなのーー?
にかああーどうしょう?」
アシュトンの舞い上がりなんか、構ってられやしない。
「もう少し血が昇らないようにしろって事さ。
あんまり、深く考えるな。なっ、クロード」
確かにクロードはどうしていいか、判ってるつもりではいたけど、
自信がない。
それが本音だ。
「でも・・初めては、レオンと・・」
焦りまくっているクロードは、ついつい本音を白状してしまう。
「はあ、で、最後までレオンで、終っても知らねぇぞ。
あん時、してみときゃよかったって思うぞ。
な、クロード。女にしとけ。いいのがいるんだ」
「・・・・・」
「よう。ほんとにいい・・・。
あ、変な意味じゃなくて、色々聞いたら教えてくれる。
ん。質問教室ってな気持ちでレオンにどうしてやったらいいか、
教えてもらった方が良いぜ。直前発射なんてのは、格好つかねえぜ」
ボーマンの言葉にすくなからず、クロードの心が動く。
そして、アシュトンも
「行こうよ。クロード。僕一人でいくの、やだ」
って、クロードを頼りにしてる。
「アシュトン。おまえ、なにしにいくのかわかってるのか?」
「うん。たぶん。ああして、こうして・・・
大丈夫。大人になるんだ!!アシュトン!!」
「はああ・・・」
ボーマンの不安は溜息にしかならない。
でも、ひょうたんから駒って事もある。
「ま。やってみることさ」
結局、三人で夜の町にくりだした。


きれいな女の人だった。
優しそうで少し寂しげな目をしてた。
「えっと、ボーマンから聞いたわ。これから恋人と初体験なんだって?」
「???」
この人との事は、初めてとはいわないんだろうか!?
クロードはそんな事を思った。
「うふふふふ。赤くならなくてもいいわ。
うーーん。少しおしゃべりしよう。ええと」
「クロードです」
「最初どうすればいいか、判る?」
「あの・・キスしてから・・・それから・・・・」
「うーーん。あってるけど・・・」
「相手のこは、経験あるの?」
「あるわけない。だって、まだ12・・・あ・・」
「十二歳かあーー。どうしても、欲しいんだ?でも、迷っちゃうね」
「あ・・」
判ってくれる。何故か、そんな気がした。
「十二歳の女の子なら、そ」
「あの、男の子」
「あら、クロード。両刀?」
「あの、ドッチも、経験なくて、あの・・・」
「十二歳の男の子かあ」
クロードが少し暗くなる。
「やっぱ、ひどいよね?早いよね」
「あら、あたし。13歳だったわ」
「えっ」
「んふ、でも、相手は随分年上だったけど。
その話したら、判りやすいかなあ」
「・・・・」
「あのね。いざとなったら。やっぱり、怖かった。
好きだったのよ。とっても、その人の事。
でも、怖かった。
今までの自分でなくなるみたい。そんな感じの怖さ。
で、その人すごく優しかったの。
嫌なら、しなくて良いんだよってそんな事目的じゃないんだって。
でも、スデラ、ア、あたしの名前よ。
スデラが欲しいんだ。ワガママだねって。
なんか、大切にされてるって感じと
その人のワガママでも、何でもいい、叶えてあげたいって。
すごくすきって、すごく大切に愛されてるって安心できたの。
彼の言う通りにすればいいって・・・」
「あ」
「うーん。つまり優しいっていうのも、一つのムードよね。
欲望ぎらぎらって感じでされたくないでしょ!?
それと、色んな言葉。
愛してる・・とか
心配しないでいいよとか、
僕に任せてとか、大切なのよね。
でも、本当に好きならそんなの自然にいえるよね?
だから、これはいいよね」
「・・・・」
「それと、相手の子、はじめてなら・・・」
ステラの手がクロードの膝の上に置かれた。
その手がずうう、と、クロードの股間にのびた。
細くてしなやかな指がクロードのものをつつみこむと
やがて、細かな振幅で、動き始めた。
「あ、・・・あの・・ステラ」
「じっとしてなさい。
これからあたしがしてあげることを、よく覚えておくの。
どんなふうに、感じたか。
どんなふうに舌が、動いたか。
よく、覚えて。
そして、今度はあなたがその子にしてあげるの。いい?」
そう言うと、ステラは、クロードの足元にしゃがみこんだ。
そのまま、ステラは掴んでいた物に顔をよせてゆく。
クロードのものに温かく、柔かなステラの舌が這いまわり
その感覚に思わずクロードはステラの肩を、つかんだ。
クロードが一つの感覚を味わったのが判ると、
ステラはクロードのものをほうばった。
「あ・・ああ。ステラ・・・」
柔かに滑るステラの舌の動きなのに、
鋭い快感が突き寄せて来てクロードは、
堪えられずステラの名をよんだ。
抗えない快感がステラの動きから、うまれてくる。
くるくるとクロードの物をなぞるようになめていたかと思うと、
しっかり、吸ったままステラの顔ごと上下させて
クロードに愛撫を与える。
動きを止めてクロードの先を、
唇の動きでしめあげたり緩めたりしながら
舌が、中心部を、擦る様になめてゆく。
「ああ・・・・」
クロードの手に、力がはいるとステラは、
ぐうと締め上げるようにクロードのものをすうと、
くるくると、頭を廻すようにしてクロードのものに回転を与えながら、
クロードの物をゆっくり奥深く飲み込み始めた。
クロードの根元まで来ると逆にすい上げるような刺激が
くるくる廻りながらクロードのさきにゆっくり、あがってくると
おなじ繰り返しが、だんだん、はやくなってきた。
「あ・・だめ・・・ステラ」
クロードがそういったときには、
もうすでにクロードのものはステラの口の中で
小さな脈動をおこしはじめていた。
「ああああ」
そう、判ったのも、つかのま、
一番、判ってる筈のステラがクロードを離そうとせず
さらに舌を細かく擦る様にしてクロードの快感を高め、
発射を促す様であった。
「だめ・・・いっちゃう」
ステラの口の中にである。
ぐうと、クロードのものがそりかえったと思ったら、
快い波に押されてぐっっぐっぐと
とろりしたと熱い物をはきだしはじめた。
「ああ・・・ああ・・・ううう・・・」
ステラはクロードの物がはて、しぼみおわるまで、
じっとクロードのものをほうばっていた。
が、やがて、そっと口を離すと、つっと、立って、向こうにいった。
すぐ戻ってきたステラは優しくクロードをみた。
「ごめんね。やっぱり、のんであげれない」
むこうで、そっとクロードの物を吐き出したんだと判った。
「やっぱり、ほんとうに、好きなひとじゃないとね」
「あ・・ううん。あの、わかる・・から」
「うん。貴方も、恋人の物ならきっと、そうしてあげてね」
「あ・・あ?あの」
自分がレオンとそうなる?そうする?
「きっと、彼も、そうしてくれるわ」
レオンも!?レオンが、こんなことする?
レオンにこんなことさせる?
「だいじょうぶよ。すきなら・・・なにもかも・・・」
「あ、確かにレオンは、あの・・・されたいって、いってくれてるんだけど」
「あは、なるほどね。そこらへんにふんぎりがつかなくてきたわけかあ」
「え」
「ボーマンがね。ちょっと、そんなこといってたから」
「はあ・・・」
もう一度、ステラの手がクロードを触り始めた。
途端にすなおのものである。元気になってゆく。


「クロード。頭で考えてちゃ駄目よ。
ここにきかなきゃ。
ここが、満足しなきゃハートも満足しないのよ。
ボーマンはきっと、それを判ってほしくてここに、貴方をつれてきたのよ」
「あの?」
「わかんないんでしょ?」
「あの、わかんないって、なにが・・」
「つまり、わかんないのよね。クロード。本番、いくね」
そう言うとステラがクロードの膝の上に上がってきた。
クロードの腰がステラの左右の腿で挟み込まれると
ぬるっとした感触がクロードの物に伝わった途端、
クロードの物が確かにステラの中に深く入りこんだ。
「ああ・・・」
二人の声が重なるとクロードは、いつのまにか、動き始めていた。
「あん・・いい・・クロード・・・それでいいのよ。
とっても、・・上手よ・・ほ・・ん・と・・・」
クロードの中にわいてくる、快い刺激を
さらに深く追従する事に、浸りこんでゆくクロードだった。

ステラの中に、欲望をはたきこんでしまうと、
クロードはステラから、そっと体をはなした。
なんのことはない。
そういったボーマンのいうとおりだとクロードは思う。
確かに、なんのこともない。
だけど、もっと、はっきりいうとこれだけの事かな?とまで思う。
「おつかれさま・・・」
クロードの顔をじっと見ていたステラが
クスッと笑いながらクロードに言った。
「あ・・・」
クロードは確かにステラの言う通り、なんだか、少し、草臥れている。
「クロード。それでいいのよ。わかったでしょ?」
クロードの中に小さく、ちかっと光る感じで湧いて来た思いを
ステラの一言ではっきりと、クロードは掴み取った。
ステラとのセックスで感じ取った物は
ステラには、申し訳無いけど処理しているだけ、
そういった感覚だけを残した。
これが、レオンだったらどんなにいいか。
あのレオンとのキス一つのほうが
もっとクロードの心を酔わせたし、
レオンをしっかり感じ取れて充足感があった。
あっさり、欲望が沈むとクロードの心の中で、
―ようは、ステラとはセックスをしただけで
なんだか上手く言えないけど
ステラを抱いたわけじゃないーと、思う。
体は確かにセックスをしたけど、心はしてない。
そんなかんじだった。
同時になによりも自分がセックスで感じ取りたいのは
レオンそのものなんだと思った。
レオンの事をふと思った時、
クロードはひどくレオンが恋しくなってきていた。
クロードの心の中にレオンが言った
「僕が欲しいのはクロードだ」
そのレオンの一言が沸きあがってきていた。
今のクロードにも、その一言がよく判る。
おまけにレオンの言う通り自分の欲望が、
セックスだけへの欲望でしかないと、思い込んでいたことにも、
気が付かずにいた。
ステラをだいてみて、
欲望だけじゃ重ねられないものが、今、クロードにはっきりとみえてきた。それがなんであるか。
僕が、欲しいのはレオンだ。
素直にそう思うし、そして、なによりも、
「ああ、僕は、間違いなくレオンを愛している」
確かにそう、思う。
心も体も重ね合わせて感じ取りたいのはそのことなんだ。
それが無いから、ステラとのセックスが、こんなにも、あじけなく、
初体験だってのに、そんな感慨しか残らない。
「クロード。あのね、こんなの、初体験なんていわないのよ。
三っが、重なり合わなきゃ」
「3っ?」
「そう、心と体と好きな人。
だからあ、わたしとのことは、
こんなの、セックスじゃないって思わなかった?」
「あ、そこまでは・・あ・・」
「いいのよ。ほんとのことだもの。
ね、彼がされたいっていうの、
するとか、しないとかじゃなくて、
そんなふうに、思いを、重ねあいたいってことなんじゃない?」
「僕もいま、そう思ってました。
レオンとどうなるか、すぐには僕にも、判んないけど、
いろんなこと、重ねたいって思う相手は
レオンだけだってのはよく、判りました。
だからレオン、欲望だって重ねてくれればいいって、
そういっていたんだって。やっと・・・。
それに・・・それも、クロードだって、なにもかも・・・僕のこと」
「受止めたいほど愛されてるんだって判ったって訳ね。
レオン君だっけ?いいこね?」
「はい。僕は、なんか、随分、遠回りして・・・」
「じゃあ、もう、ここにはこないね。ちょっと、このみだったのに、残念」
「え、あ、ごめんなさい」
ステラが吹き出して笑い始めたので、
やっとクロードが自分の返事がおかしかった事に気が付いて、
二人で笑い出した。


部屋を出てゆくと、その先に待合室とでも言う小部屋がある。
その場所にある長椅子に寝そべっていたボーマンが
帰ってきたクロードに気が付いた。
途端。
「えらく長かったな!?クロード。延長料金はらえ」
ボーマンにからかわれて、クロードは黙っていた。
「冗談だよ」
「う・・・ん」
「いいこだったろ?」
と、ボーマンは尋ねた。
「うん」
「自信ついたか?」
「まーね」
「よし」
ボーマンはひどく満足そうにクロードをみていたけど、
そういえば・・・・。
「アシュトンは?」
「あそこで、頭にひよこ 飛んだ状態・・・・」
部屋の隅の壁際の椅子の上に、
随分、静かにアシュトンは座り込んでいた。
「はあ?」
「なんか良く判らん。
うまくいったのかよってきいたら「あははは」だとよ。
それよか、帰るか?レオンがまってんだろ?
ん、それと、こんなことは、だまってんだぞ。いいな」
「・・・・」
もとより、いえるわけがない。
クロードはアシュトンの側に行った。
「アシュトン。大丈夫?」
「うん。あはははは」
「だめだ。こりゃ」
クロードがアシュトンを押し上げて、たたせると、
ボーマンも立ち上がった。
そして、3人で店を出払った。

店から外に出るとボーマンはゆっくりと歩きながら、
クロードの顔を眺めた。
いい顔付きになってるぜ、って思いながら
それでもボーマンはきいてみた。
「さてと、クロードお前、最初にレオンにどうするか、わかったのか?」
「うん」
「なにすんだ?いってみろよ」
「やだ。レオンにいうんだから」
「ち、けちだな」
って、言いながらボーマンはにこにこしてた。
『言う・・・か。判ってるじゃねえか。
最初にする事は、ちゃんと、愛してる事を伝える事。
そうだよな!クロード』
心の中でボーマンはそう呟いた。 
                         (おしまい)                    
                                                    

―エピローグー


「ステラ、今いくつ?」
尋ねたクロードと対して変らない年だった。
「あの、さっきの、初めての人とは?」
「だって、彼、奥さんいるのよ」
「なんで、こんな、仕事?」
「その彼、たまに来てくれるのよ。元気か?って。
あたし、その人に逢いたくて、こんな仕事してるのかもしれない」
「逢うなら、こんな仕事してなくても・・・」
「あら!?それじゃ不倫でしょ?
好きなときに来て、好きな気分で、お金払って、・・・それで終り」
「それで、いいの?」
「だって、そうじゃないと彼のこと一人占めしたくなっちゃうもの」
「そ・・うことって?」
「わかんなくて、いいの。
あなたは自分の大切な人のこと考えてあげなさい」
「う・・・ん」
ステラの気持ちはよく判んないけど、別のことが少し引っ掛かった。
「ひょっとして、その人ってボーマン?」
「内緒」
そうなのかもしれない。
そうじゃないのかもしれない。


帰る時にボーマンに尋ねた。
「ボーマン。
十二の子にその気にならないって言ってたけど、
十三の子なら、その気になった?」
クロードはかるくボーマンにかまをかけてみた。
「ステラが、そんな話したのか?」
「ボーマンなの?」
「さあな。今度ステラにきいてみりゃいいじゃないか」
「もう、いくことはないよ」
「そうか」
ボーマンは黙って頷いた。
『そうだな。レオンにやっちまうんだものな。
お前のハート全部。まるごとな』
ボーマンは横目でちらりと、クロードを見た。
なんだか、ひどく、大人びたように見える。
たった一つの大事な物に気がつくだけで、
顔付きまでかわっちまいやがって。
その横で、アシュトンが、ひどく、子供っぽく頼りなげにみえる。
『やれやれ、こいつが、本当のセックスできるようになるのは、
当分さきだな』
小石を、蹴り上げると、ボーマンは二人をせかした。
急に、カアちゃんが恋しくなって来た。
だから
「おい、はやく、帰ろうぜ」
って、そう言った。 
                        ( おわり )

                                                  

ボーマンは人前じゃ照れて、
カアちゃんなんていってるけど、二人っきりの時には、
ハニーなんて呼んでるんだよーん。 
でも・・いい!?絶対に内緒だからね。 












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