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SO2シリーズ
作:憂生



キープ・ユー・3


旅に出てもう随分たつ。
とっくに地図のなかからつぶれたような道を辿った。
旧ナルハ街道をあがりゴーフェルムにつくのには
もう、2、3日かかるだろうか?
最後のモンスターの拠点をくだけば、この長い旅も終る。
クロードのいった通り、今回はかなり厳しい旅だった。
おまけに随分暑くなってきてもいた。
野営を張る。
野宿する時の焚き火はどうしても必要だが
こう暑くなってくると、
皆、火の側から離れて寝るので、
あまり役にたっていない気がする。
「お兄ちゃんもう随分先までなにもないの?」
レオンの問いに
「明日くらいには小さな村につくよ」
と、クロードが答えた。
クロードがレオンに話した事は、
次から次へ伝わり後ろの方からも、
ウオーと歓声があがる。
森の奥をぬける道を探しながら、
クロードは不安になっていた。
「迷ったか」
もう、二時間以上、同じ森の中を彷徨っている気がする。
クロードの不安をよそに後ろの方から声が聞こえる。
「もうなんでこんな仕事引き受けたんだよ。クロードの奴」
「仕方ないでしょ、お金がいるんだから」
レナの声だ。
「フフ―ン、若い奴はすぐ。根を上げるからな。
だから、いざとなった時つかえんのだ」
宥めるように言う声や、とにかく頑張ろうと励ます者。
『まだ抜けないのか? 深すぎる森・・・。
やはり 迷ったのか?』
クロードがそう判断するしかないと考えていたその時、
森の向こうから、スーと風がふいた。
風の中にかすかな乾いた土のニオイがした。
クロードはほっと胸を撫で下ろした。
『間違いない。もう大丈夫』
クロードはさらに歩みを進めた。
すると突然森は開けた。
途端、そこは一面サバンナだった。
「よかった」
道は間違ってはいなかったが、
すでに西の山に太陽が傾いてる。
今日はサバンナに入らないほうがいい。
クロードはそう判断すると皆に声をかけた。
「ここでピットする」 
野営の場所が決まると火を焚く為、
木を集めなければいけない。
クロードはレオンと一緒に森に入った。
すでに他に何人か先に森に入っている。
「なんだか もう嫌になっちゃった」 
レオンがクロードに訴える。
「だろうな、僕もこんな仕事、引き受けなきゃよかったって、思ってるよ。でも行動資金がいるしな」
拠点と思われる所でモンスターを絶滅させてきている。
戦いは楽なものだったが、歩きという行軍には皆参っていた。
「バーニー呼べば良いのに」 
「駄目なんだよ、目立ちすぎる」
過去にもそんな事があった。
あんな乗り物(?)で乗りつけた途端、
モンスターは一匹も姿を見せなくなった。 
「ふーん、でも僕がモンスターだったら、
そんなものに乗り込まず、
歩いてくる奴の方がよっぽど凄腕だと思って、
逃げちゃうけどね」
「頭がよくないんだろ」
「そうかも・・・ね」
くすっとレオンが笑った。
ーやっぱり、かわいいー
クロードは持っていた木々を下に置くと、
レオンを引寄せてキスをした。
パラパラと乾いた音がしてレオンの手の木々が落ちた。
うっとりしているレオンから、唇を離すとクロードは、
「欲しいだろ?」 
と、聞いた。 
「でも皆いるし」 
「もう居ないさ」
実の所、クロードのほうがレオンを欲しくてたまらなかった。今までにも何度か接触したが、
時間はかけられず、欲求を処理するだけの簡単な接触だった。そのせいでクロードの中で
完全燃焼しきれない燃え滓のようなものが
凝り固まってきていた。
だから、なおさら欲求が高まる。
その繰り返し。
そんな状態の中からでも、
ここ何度かの接触でレオンが
どんどんかわってきていた。
もう痛がらなくなってきていたし、
時折、レオンの言う
『ずうううっと奥の方で感じる』ものが
だんだんはっきりしてきていた。
それでも やはり今の状態では、
さかる様な、あさましい形でしか接触を望めない。 
それでも ・・・欲しい・・・。
「レオン・・・ごめん」 
「うん?」 
「やだろ?こんなとこで」
レオンが黙って首を振った。
クロードだってゆっくり 抱いてやりたい。
そう思うけど無理。
じゃあ 抱かなきゃ・・・乾くような餓えがある。
レオンを感じたい。
ほんのわずかな刹那でもいい。
その欲求にまけてクロードは
欲望を処理するためだけみたいな自分にいらいらしながら
さっさとすます、しかなくなる。
そんな風にしかレオンを抱けない。
レオンの下半身を剥き出しにすると
クロードも自分のズボンをずりさげた。
レオンの愛撫からの、ぬめりを待っている時間さえとれない。焦りがある。
『こんなの嫌だな・・・』 
そう思いながらクロードは自分の唾を手に受けると
自分のものになすくった。
そして、木に寄りかかってじっとしている、
レオンの後ろからぐっとさしこんだ。
「あ・・・うん」 
「かんじる?」 
「うん・・・」
だんだん感覚があがってきている。
短い接触の中から
それがだんだん、成長してきているのが判ると、
なおさら抱きたくなって人目を盗んだ。
“ ごめん レオン。もう・・・イク ” 
クロードの方があっさりと頂点をむかえていた。
「う・・・・」 
返事にならない嗚咽をこらえてるレオンの中に
叩きこむようにはきだす。
やっぱレオンがいい。
 早くこの仕事終らせたい。そして、ゆっくり抱いてやりたい。
クロードはそんな事を考えながらレオンに
「ごめんな。レオン」 
と、謝った。
「ううん」
って、レオンが短く返事をする。
物足りげなさも愛撫でカバーしてやれず、
そのままレオンの服を直してやると、クロードはキスを与えた。
「だめだよ レオン」 
「うん」 
「してあげらんない」
クロードはレオンのバンダナをはずすと思いきりポイントを吸う。
「ああ・・」 
そんな声を漏らして、崩れおちそうなレオンの身体を
クロードはしっかり抱きしめた。
そして、そっと身体を離してレオンにいう。
「帰ろ。 レオン」 
クロードに促がされるとレオンも
「うん」
と、短い返事をした。
なんだか、心まで重なりきれない慌しさにクロードは 
「好きだよ。 レオン」
と、クロードの心をレオンに素直に告げた。
途端に
「クロード」
クロードの名を呼ぶとレオンがとびついてくる。
(あは かわいい。)
ぎゅうってレオンをもう一度抱き締めたクロードも
何処かでレオンが欲望を処理する為みたいな
刹那のセックスに対して
一抹の不満と淋しさを感じているのは判っていた。 
「速く仕事終わんないかなーー」
クロードの言葉にレオンも 
「うん」
って、頷いた。
クロードは足元の木々を拾い上げると歩き出した。 
「あんまり遅いと変に思われる。 急ごう・・・」
レオンを先に歩かせるとクロードも後に続いた。

「はぁーー」 
レナのため息だ。
レオンとクロードが二人で森にはいったのを見かけた。
あれから、三十分以上。
そろそろ戻って来ないと、皆が変に思う。
また、レオンを泣かせているのかしら?
初めの頃は、レオンを羨ましいとこそ思ったが
今はクロードの態度が目に余る。
とは言うもの、二人のことに口をはさむ野暮もできない事はよく判っていた。
・・・・に、しても遅い。
今までも二人でスッと脱け出して行くのを何度か目撃した。
追いすがるようにレオンがついてゆく事もあったし、
クロードが妙に張りつめた顔で、レオンを引っ張って行くこともあった。
始めは、それがどういう事だか判らなかった。
二度、三度見るうちにバンダナの結び目がかわっている。
レオンの頬がうっすら上気している。
クロードがそのあと妙に穏やかな落ち着いた表情になっている。
―あっー
二人が短い刹那に何をしているのか判った。
また、いつか、クロードがむっとした表情で向こうへいった。
レオンがしばらくして後を追った。
その姿に「喧嘩でもしたか?」と、 誰かがそう、言った。           --違う。欲求をぶつけ様としている。
レオンがクロードの為に痛々しいほど必死になって、
彼を昇華させる為だけに、受け入れ様として追いかけている。
レオンの一途さが憐れにみえた。
ーそんなにしてまで、クロードの野獣のような欲望を
受け止めてやらなきゃいけないのか?
レオンの一途さを利用して欲望を処理してる。
性の恐ろしさ。
あんなクロードじゃなかったのに、レオンに溺れ、
我を忘れ、大人の様に扱った報い。
・ ・・にしても遅い。誰かが探しに行きかねない。
もし 現場でも見付けられたら?
レナは少し、考えた。
最良の方法。それは・・・。
「遅いわね。ちょっと見てくるわ。皆は他の段取り お願いね」 
レナが言う。 
すると、アシュトンが
「ぁ 僕も行く レナ一人じゃ、なんだし。 僕も行くよ」
と、声をかけた。
(ちょっ ちょっ ちょっと それがまずいから
私が行こうとしているんじゃないの)
アシュトンは、この間の一件からレオンのことが心配になってしまっている。
また腹痛でもとアシュトンが思っているのなら、
クロードが就いているからと言えばいいけど、
そしたら(レナも、行かなくていいじゃないか)と、言われそうだし
 心配そうなアシュトンのその気持ちを考えると、どう切り返そうか?
思いつかずレナが困っていると、デイアスがレナに声をかけた。
「俺がいく」
と、いいだしたデイアスだったが、
 アシュトンはそれを聞くと、じゃ3人で行こう。
手分けして探そう と、言い出した。
(もう 次から次。) 
デイアスは二人の事を判っているから、
わざと行くと言ってくれたんだ。
(だったら3人もいらないかってアシュトンが引いてくれると思った) 
アシュトンがなにか言いかけている所に、
デイアスが近づくとなにか、ぼそっといったようだった。
すると途端に 
「あ 僕やめとくよ。なんかデイアスの方が感がいいし。いや。うん・・」
しどろもどろになって、アシュトンは引き下がった。
それでレナとデイアスの二人が森に入ることになった。
「さっき、アシュトンに何ていったの?見事に引き下がったじゃない」
やはりデイアスも二人のことを、気にかけてくれている。
アシュトンを来させない言い訳を思いつかずに
困ってるレナへの助け舟としてデイアスは、
いったいどう言ったのかをきいてみたくもあった。
「邪魔だって言ってやった」
「え、そんなひどいこと。アシュトンは自分が
足手まといになってるんじゃないのかって自信なくしてるみたいなのに」 
ホテルの時にもそうだった。
クロードがついてるからそう言った時も
「僕。たよんないしな」 
そんな言葉がアシュトンから返って来ていた。
今も、それでも 皆の役にたちたい、
そういう思いで一緒に探してあげると言ったに違いないアシュトンなのだ。
それを役にたたないどころか邪魔って。
・・・いくらなんでも、デイアス、あなた・・・。
レナはデイアスにアシュトンのことをどう説明しようか迷った。
「ばかやろう」 
「えっ」 
デイアスが返して来た短い言葉をレナは考え直した。
違ったのかな?
場合が場合でも、
確かにデイアスは人を傷つける言い方なんかしない。
「じゃ、なによ どういう事?」 
と、レナが尋ね返すと
デイアスは少し戸惑った顔をしていたが一息に
「俺達の邪魔をするな・・・そう言った」 
と、レナを伺いみながら返事を返した。
「ぇ?」 
意外なデイアスの言葉にレナの方が慌てた。
その慌て振りの底にある物を
デイアスに気取られない様にどう繕おうかと。
「ああ。成る程。ああ、そういう風に。
確かにそう言われたら、
アシュトンもついて来れないわよね。
うまい!賢い。策士ね。デイアス」
そう言うレナを黙って見ていたデイアスが口を開いた。
「すまない。俺とできてるように思わせたな」
「ああ、いいのよ。だって、私 」 
本心を言いかけそうになるのをレナは押し留めた。
自分の気持ちを悟られたくない。
でも、(出来てる)
そう思われたってちいっとも迷惑なんかじゃない。
そんな事言えないけど、
かといって迷惑だって思ってるなんて
デイアスに誤解もされたくない。 
「いいわよ。どうせ、男、いないし」 
少し軽い女みたいに、なんでもない。
そんな口調で答えると、二人ともしばらく無言で歩いた。
「!」 
レナの目にレオンとクロードが、
こちらに向って歩いて来るのが見えた。
いち早くレナを見つけたレオンが、かけよって来た。
「レナ。 あ、・・デイアス」 
と、レオンがいう。 
「レオン クロードは?」
と、レナが尋ねると
「後ろに居るよ。クロード。
ク、ぁ、お兄ちゃん。お兄ちゃん」 
レオンが自分で気が付いた失言を言い直した。
男であるばかりに、余りに幼い為に、
隠さなきゃならない事実に
レナはなんだか、可哀相になっていた。
「レオン。いいのよ。デイアスも知っているのよ。
あの御免ね。私が話したの。
あの、だから、クロードって呼んでいいのよ」
レナの言葉にレオンは黙り込んだ。
レオンはデイアスが、何故か怖かった。
クロードとの事を知られたら、
なんて事をしているんだって、
いきなり、叩かれそうな気がしてた。
クロードだって、只じゃ済まされない。
そう、思ってた。
なのに、レナの姿を見てほっとしてしまった。
唯一人、クロードをクロードと呼ぶ事を許し、
判ってくれる人。
そんな油断が思わず
そのまま、クロードと名前を呼ばせてしまった。
お兄ちゃんなんかじゃない。
僕は決っして、弟じゃない。
レナだけが判ってくれている。
そんな油断が・・・・。

「クロード」 
クロードの姿が目の前に現れると、
レナは続けざまに 
「なにしてるのよ。あなた達」 
と、怒り出した。
「なにしてたって?・・・見たら解るだろ」 
クロードは手に木切れをいっぱい抱かえている。
どうやらレオンの分を余分に持ってやっている。
クロードにそう答えられると、レナは黙った。
レナの心配も知らぬ気な様子が気に入らなかったが、
そう言われては、引き下がるしかなかった。
「もう、早く、皆の所に戻ろう。
遅いって、皆心配してるからきたのよ」 
と、レナは言い分け半分に続けた。
「ごめんなさい」 
レナの後ろからレオンの声がした。
「僕が、木、持ってもらっていたから・・」 
レオンのしょんぼりした声だった。
「あ」 
レナだってレオンをしょんぼりさせるつもりじゃなかった。だから、レオンの気を取り直す様に、明るい声で 
「もうーー。とにかく早く帰ろう。ね、レオン」
と、レナが振り向いてレオンにいうと、
レナの目の中のレオンがにこりと笑った。
その時にレナが気がついた。
「あら」 
レオンの首のバンダナが、ゆるく解けそうになっていた。
これじゃ、いつ見えちゃうか、判んない。
当然レナだってあまり、見たくはない。
いや、できるならば、全然見たくない。
でも、かといって他の人の目にさらさせたくない。
「レオン」 
レナはレオンを呼んだ。
「レオン。もっと側にいらっしゃい」 
レナに言われると、レオンは素直に近寄ってきた。
そのレオンの足元にレナは膝をついてかがんで
レオンのバンダナを直してやろうとした。
が、それに気が付いたレオンが
レナの気持に逆らうように
意外に、スッとよけようとした。 
「あっ、レオン、これもデイアス、判っているから・・。
気にしなくてもいいのよ」 
レナはレオンが避けた理由を
デイアスの存在のせいだ。と、思っていた。
レオンの方は、さっきのクロードとの事で、
そこに新しい印がついていた事が判っていた。
だから、レナに見られたくなかった。
レオンだけの印をやすやすと、覗きこまれたくなかった。
そう思ったら自然とレナの手を避けていた。
そのレオンにかけられた言葉に、レオンは沈黙した。
クロードと呼ぶぐらいなら呼び方が変わったな。
で、済むかもしれない。
けど、この事になったら決定的証拠でしかない。
それを知っているという事は、
デイアスに何もかも、知られていると言う事だった。
でも、もう、いい。
本当の事だもの。
デイアスの裁き。
それに耐えるしかない。・・・だって僕・・・。
そう、思って顔を上げたレオンに、レナが
「ほどけそうなのよ。だから」 
と、レオンの聖地に入る事を言い分けしながら、
バンダナに手をかけていた。
緩かった結び目は、レナが軽く引いただけで
あっさりとほどけた。
「いいよ。レナ、僕が自分で直す」 
と、レオンが答えた時には、
バンダナはレナの手の中にあった。
レナの目にとびこんできたものは、
今、つけた。と、判るくらいに
鮮やかな赤い印だった。
「あ」 
やっぱり、森の中でという思いと、
レオンの言う通り、
彼にまかせておけばよかったと、いう
いまさらの後悔がレナの中でまざりあった。
どこかでそれを確かめたかったのかもしれない。
クロードの言う通り、何もしてないはず。
なのに、見てはいけないものを、
わざわざ確かめて見た自分の愚かさをせめる一方で
クロードの嘘に目をつぶらなきゃと、
考えている事と裏腹に、湧いてくる憤りに
レナは我を忘れていた。
「クロード」
我を忘れて、レナがクロードに詰め寄った。
レナの声が怒りで震えている。
「あなた。こんな森の中にレオンを連れこんで、
あさましい事して!
あんなに、はっきり判る証拠残して、
あれじゃ、レオンが可哀相でしょう!
自分の欲望で、レオンを玩具にして、
楽しんでるだけじゃない!」 
そう、クロードをなじるレナの頬でピシャッという音がした。
(ぁ、 痛っ ) 
レナは頬を押さえた。
あ、私、引っ叩かれたんだ。と、判った。
誰に?
クロードのはず・・・。じゃない?違った。
続く声でそれがレオンだと解った。 
「レナ。ひどいよ、そんな言い方。
いくらレナでも、許せない・・・」 
勘がたっているせいで、目が潤んでいる。
泣きそうな顔だけど余程口惜しかったのだろう。
こんな事、できる子ではなかった。 
「僕、先に戻ってる。皆が心配してるのに・・・」
そう言い残すとレオンが走り去った。
レナは頬をおさえたまま黙っていた。
ショックだった。
レオンを庇ってやりたくて言った言葉が、
当のレオンに、こんな事をさせるほど
レオンを怒らせてしまった。
そんなにクロードが大事? 
おもちゃみたいに弄ばれても?
レオン。貴方に。
どんなに頑張っても、私、貴方に勝てない・・・
心の中でレオンに語りかけながら
レオンの去った方をみていたレナに
クロードの声がした。
静かな抑揚のない声で
レナの事をレナとは呼ばなかった。
「レオンが叩いてなかったら、
僕が君を叩いていただろう。
僕の事を、どんなに言おうが、かまわない。
確かに、僕はあさましいし、レオンの事を楽しんでいる。
玩具にしている様に見えるだろうし、
やってる事は、実際、そのとおりだと思う。
だから、僕は弁解の余地はない。
でも、そんなことをレオンの目の前で言って、
レオンを傷つけるなんて許せない」 
レナは、レオンが見せられた態度と
レオンに叩かれた事で
自分の中にわいてきた事との葛藤で
クロードに何を言われているのか、よく判らなかった。
が、更に、クロードの抑揚のない声が続いた。 
「君には、判らない。
本当に人を愛したことがない。
君にはなんにも・・・判らない」
そこまで聞くとレナは慌ててレオンのあとを追った。
後に残ったクロードの側にデイアスが立ち尽くしていた。

レナが慌てて、レオンを追ってみたものの、
とっくにレオンはいなくなっていた。 
帰ろうか。
レオンにどう謝ろうか。
そう、思うのだが自分の中が困惑している。
レオンを怒らせたのは間違いない。
でも、そんなクロードを許していいの?
そういう思いが歴然とレナの中にある。
それなのに、今、レオンに謝ったら
弄ばれてるままのレオンでいいって言うことに成る。
レオン。
そんなの惨めじゃない?
それでもいいの? 
考える時間が欲しい。
確かにレオンを羨ましいと思った。
クロードがレオンを抱いた。
そう、告げられた時も、嫉妬があった。
クロードは私には対等にぶつけてこない。
恋愛の対象とすら見てもらえてない。
なのに・・・レオンに負けた。
男の子に。
それも十二歳の子供に。
それでもレオンと張り合ったら、
ぼろぼろに傷つくに決まっている。
すでにプライドはぺしゃんこだった。 
潔くあきらめる。
残された道はそれしかなかった。
さも話しの判ったレナ。
そういう自分を取り繕うしかなかった。
愛されない自分は余りに惨めすぎた。
そして・・・  
デイアスの胸の中に泣崩れた。
受け止めてくれる人がいるだけで心が救われてゆく。
二人がうまくいく事を祈ろう。
素直にそう思えたのも
ディアスの存在が支えになったせいかもしれない。
そして、二人の結びつき。 
あんなに悩んでいたクロードが、やっとレオンと・・・
それをレナは素直に喜んだ。
―ぶつけられない恋なんて、独り善がりもいいとこよー
そう、クロードに言った。
言われた方のクロードは
そんなとこ、さっさと乗り越えていったのに、
相変らず自分は恐れという壁ひとつ乗り越えられず、
自分をぶつける事も、
デイアスを受止める事も出来ない。
これじゃいけないんだよね。
貴方達みたいに強くならなきゃ。
そう考え始めていた。
―なのに、クロード。
貴方のやってる事はレオンを泣かせてるだけー
「はぁ・・・・私まちがってるのかな?」 
ぽつりと呟いたレナに
「話しができるか?」 
と、デイアスの声が響いた。 
「えっ」 
いつのまにか、レナの側にデイアスがいた。
「・・・・」 
レナが黙りこくる。
黙ってレナを見ていたデイアスが
「レナにはそういう風に見えるのか」 
と、尋ねた。
「え?」 
聞きなおすレナに 
「クロードのこと」 
と、デイアスはこたえた。
それでレナにもデイアスの言う、
そういう風と言う事に察しがついた。
「あ・・レオンをおもちゃにしているってこと?」 
レナがデイアスに確かめると
「ああ」
と、デイアスが答えた。
(どう、言えばいいんだろ・・)
レナは少し考えていたが
自分の思ったままを素直に話す事に決めた。
「私、クロードが好きだった。
だから、始めは二人の事、それでいいって思ったの。
でも、ああやってレオンを連れ出しては、
小さな男の子に平気であんな事するの、
見てる内にだんだん許せなくなって。
レオンのことを好きだから、そうなるんだよねって、
そう思うのに、
もし私がレオンだったらクロードの事、
汚らわしいって考えてしまうだろうに。
なのにレオン。
それ、受け止めてる。
きっと不安なのに。好きだから一生懸命。
そんなにしてまで、クロードのなぶりものにされてもいい?レオンが余りにも可愛そうじゃない」 
デイアスの瞳がさすように、
そして憐れな事を告げなければ成らない事を
覚悟するかのように、レナをじっと見た。
「レナ。それはお前だ。
クロードも本気だし、レオンも本気で抱かれていたんだ。
お前、お前がクロードに抱かれたら
クロードに決っして本気で相手されない。
もし、相手されても、お前が弄られるだけだ。
お前とクロードの間に生じるものはそれしかない。
だから、二人の睦みあいもお前の範疇でしか量れない。
弄られるほどでしか相手されない自分を
レオンに映して見てる。
レオンじゃない。
弄られる事になるのはレナ。
お前だ」
「あ」 
がくっとレナの瞳の中が一瞬真っ暗になった。
クロードに必要とされもしなかった自分。
それでも、まだ何処かで彼を求めている。
それでも振り向いてもらえない。
かすかな望みは男にありがちな欲望の受け手に成る事だけ。
遊ばれる?
そんな事でもしなきゃ歯牙にもかけられない程の自分?
恋愛の相手としては、
心ひとつ寄せられる事はないだろう。
ただ、欲望の処理にだけなら
微かな望みがあるかもしれない。
それ程愛されない自分。
それ程、惨めな自分。
それをレオンに映していた?
そんな目でレオンを見ていた?
確かにそうかもしれない。
でも、あれが、レオンをおもちゃにしてない。
そう、言い切れる? 
―判らない―
自分の奥底を覗き込むように、
じっと考えているレナをいきなり、引寄せると、
デイアスの腕の中にしっかりくるんだ。
「俺は・・本気だ」 
と、レナの耳元に告げた。
デイアスに、そう囁かれるとレナの身体が動かなかった。
デイアスの胸の中。
(デイアス・・・)
レナはしばらく、じっとしていた。
そのまま彼に傾れかかりそうな自分。
「駄目」
デイアスがどうなってゆくか。
駄目。
怖い。
彼を押し返そうとしたその時。
デイアスが手を離した。
「気をつけて帰って来い」 
言うとデイアスは背中を向けて歩きだした。

『(デイアス?デイアス) 私、やっぱり貴方が・・好き。』 
まだレナの身体は固い殻の中にとじこもっていた。
わずかな無意識な自覚をレナに残したまま
デイアスは立ち去ったが
この時レナの中に渦巻いた思いが
いずれレナを殻の中から
とびだたせてゆく原動力になってゆくことになる。
つったったまま立ち去ったデイアスを考えていたレナだったがこの時点でレナは自分の発した一言が、
レオンをどんなに追い詰めていたか知るよしもなかった。

レオンが森の中から帰って来たのを、
アシュトンがいち早く気がついた。
「ヨッ、帰って来たか」 
アシュトンがレオンに声をかける。
「お?クロードはどうした。
レナとディアスも迎えに行ったのに。
まっ、あいつらは、まだ帰ってこなくても、判るけどな」
アシュトンはぼそぼそと口の中でつぶやいた。
クロードは?と聞かれたレオンは、ムッとした声で
「知らない!」
と、答えた。
その様子でアシュトンは
『ありゃ?けんかしたかな?
クロードも、馬鹿だな。
こんな小さいの相手にムキになって』
と、勝手に決めつけていた。
こういう時には下手にあれこれ余計な事を聞かないほうがいいのもアシュトンも判っている。
アシュトンはレオンに尋ねた。
「腹へってるんじゃないのか?
皆はもう、食べちゃったぞ。とってきてやろーか?」
レオンはアシュトンにいわれると
アシュトンの気遣いに涙が出てきそうだった。
かろうじてレオンが
「うん」と、返事をすると
早速取りにいってくれたアシュトンの手から
とってきてくれた物をうけとると食べ始めたが、
気分が塞いできてレオンにはあまり、食べれなかった。
その様子を見ていたアシュトンが
「うーん、くたびれてるんだな。
レオン、寝ちゃぇ。あ、うん、ゆっくり休め」
いつもクロードの側に子猫みたいに引っ付いて、眠っているレオンだったので、アシュトンは、思わず
「あ、クロードの側がいいよな」
と、言いかけてやめた。
(けんかしてんだよな)
と、思い直したからだ。
レオンもアシュトンのいう通り、
こんな時は眠ったほうがいいと思った。
だけど、独りぼっちで眠るのは
レオンも心もとなく淋しい事だったので、
アシュトンにきいてみた。
「アシュトンの側で寝て、いい?」 
「あっ、いいよ。どーぞどーぞ」
と、アシュトンは答えながら
アシュトンの側の平たい場所をあけてやった。
一人じゃ眠れないんだから、本当、まだ子供だよなと、アシュトンは思った。
今日くらい、クロードの代わりをしてやってもいいかと思いながら悲しげなレオンの様子に
クロードが帰ってきたら、
一言、文句いってやろーと決めていた。
レオンは横になったが、
レナの言葉が頭の中でうずまいていた。
『僕はおもちゃなんかになりたくない』
レオンがどんなに否定しても
クロードのことが恋しかったのは事実だけど、
クロードの事で、レナに違うと言えなかった事が
レオンを打ちのめしていた。
クロードがして見せた、色んな事は
レオンには確かに、クロードの欲望を満たすためだけでしかない様に思えた。
僕はおもちゃじゃない…そう思うと口惜しくて、
レオンの頬にまた、涙がこぼれた。
いつの間にか、疲れがレオンを眠りに誘っていた。
アシュトンは寝入ったレオンの顔に涙のあとを見つけて、
「本当にクロードの奴…」
と、思っていた。


「君をにくんだりしてないよ」 
クロードがレナにそう云ってはみたものの、
暗く、重たい気分で帰てきた。
そっと、見まわして、レオンを確かめてみた。
アシュトンの側で食事をしていた。
よかった、ちゃんと戻ってきてる。
それに、何か食べているのにも安心した。
食べなかったら、もたなくなる。
クロードはレオンが神経をまいらせて、
食べる事さえ出来なくなってないという事に、ほっとした。レオンと目があった時、
レオンはにらむ様にクロードを見ると顔をそむけた。
「やっぱり」 
レナの言った事でレオンはレナに対してではなく、
クロードに怒り出すだろうと思っていた。
クロードも夕食をとりにいって
自分のきめた場所で食べ出した。
いつもならレオンが側にいる。
胸にぽっかり穴があいたように淋しい。
レオンに目をやると、アシュトンの側で横になっていた。
いつもなら手の届くところにレオンがいる。
クロードはレオンをじっと見つめていた。
せめてもみているだけでもしなきゃ
狂おしくて変になりそうだった。
その時クロードはポンと背中を叩かれた。
見上げてみるとデイアスだった。 
「やっぱりか」 
レオンがそうなる事は、デイアスにも予測はついていた。 
「うん」 
クロードは一言うなずいた。  
「戻ってくるだろうか」 
なによりも一番の不安。
このままレオンを失いやしまいか? 
「くるさ」 
デイアスは答えると、夕食をとりに立ちあがった。
アシュトンはクロードが帰ってきたのに気がついて腰を浮かした。
「よし、いうぞ」
と、立ち上がりかけたのだが、
そこをデイアスに先を越され、
もう一度どっかり座りなおした。
デイアスがクロードの側を離れたので
大急ぎでクロードの側に行った。
アシュトンは思いきり文句を言ってやろうと
意気込んでいたのにクロードの側によって見ると、
ひどくクロードも元気がない。
虚をつかれアシュトンは声が出なかった。
レオンとの喧嘩に相当応えている。
そんな感じがした。
クロードがアシュトンに気が付いて
「何?」
と、尋ねた。
きかれたアシュトンは何をいえばいいのか 
判らなくなっていた。
「レオン 泣いてたぞ」 
それだけやっと告げるとクロードの側を離れた。
アシュトンに聞かされた事は、
クロードにも多分そうだと判っていた事だったけど 
あえてきかされると胸に応えた。
「ああーーねむうーーー」 
と、誤魔化す為にクロードは声をあげると、
さも 眠そうに手で 顔を覆った。
膝の上にぽたりと涙が落ちた。
レオンが一人で泣いているのに慰めることも出来ない。
ましてや泣かせているのは自分なのだ。
『レオンが泣いていた』
クロードは溜まらなく哀しかった。

次の日、レナは憂鬱だった。
森から帰ればそこに、レオンとクロードがいて、
二人で私をにらみつけてくる。
まっ、いいわ。そんな事ぐらい、と覚悟していた。
ところが、レオンはアシュトンの側にいるし、
クロードは膝を抱えて、眠っている。
おかしいなと思ったけど
たまには、こんな事もあるのかな、と考えた。
皆が心配してるって帰ったレオンの事だから、
きっと心配性のアシュトンに真っ先に声かけられて、
おまけにこの間の事もあるし、
アシュトンがクロードに怒った。
だから、皆の手前、クロードの所へ行きにくくなったんだわ。
そう考える事でレナは不安を追い払おうとした。

だが、朝、目覚めると、その不安が現実になっていた。
一向にレオンはクロードの側に近寄ろうとしないし、
クロードはクロードで、レオンに無関心で
皆に行動予定を説明したり、なにかれやって、
そ知らぬ顔をしている。
歩き出しても、何をしていてもそうで、
オマケにレオンは話しかけられたら答えてはいたが、
自分からは何もしゃべろうとしなかった。
『お兄ちゃん』の声の聞こえないパーティはいつもより沈んでいた。
                    
こんなはずじゃなかった。
レオンがレナをひっぱたいたのは、
クロードをあんなに悪く言ったせいだとばかり思っていた。きっと、それも間違いなくあっただろうけど、
レナの言った言葉。
レナは興奮して言った自分の言葉を思い返していた。
「あっ」 
クロードを責める事ばかりだったと思っていたが、
『クロードのおもちゃじゃない』
その一言に思い当たった。
裏を返せば、レオンに
「クロードのおもちゃにされてるのよ」
と言っているのと、同じ事だった。
迂闊だった。
やっと、今になって、クロードの言った事が判った。
「でも、そんな事を、レオンの目の前でいって、
レオンを傷つけるなんて許せない」 
その言葉がレナの頭の中でグルグル回った。
愛する者を傷つけられた哀しさ、口惜しさ、
腹立ちでいっぱいだったろうに
クロードは私を憎まないって、そんな事まで言った。
それは、ひょっとして、
私が今、こんな風に自分のした事の重大さに気が付いて
苦しむのが判ってたのかしら。
今の私の為にあんな思いの最中でさえ
私を思いやってくれていた?
なんてやさしい人。
レナの瞳から涙が落ちる。
でも、こんなに深い思いをかけられる人が
何故、レオンにはああなんだろう?
そして、私はいつもそうやって
クロードに優しくされるだけの子供。 
レオンは逆にクロードが
あんなに我が侭したい放題ぶつけられる子。
そんなレオンだから?。
レナははっとした。
クロードがレオンを支えていると思っていた。
でも、違う。
クロードがレオンに支えられている。
レオンがどんなことでも受け止めてくれる。
それがクロードの支えになっていたんだ。
私は表面に見えてる事だけ見て批判したんだ。
クロードの気持ちも判らないで、
レオンを傷つけクロードから支えを取り上げた。
ビクとレナの身体が動いた。
「きみが人を愛した事のないのを残念に思う」 
クロードの声が響いた気がした。
クロードは自分の脆さや弱さ全てレオンに預けていたんだ。やっとそれに気がつくなんて馬鹿なレナ。

パーテイの静かさがレナの足取りを一層重くさせていた。
やがてパーテイは、と、ある小さな村についた。
川の流れに沿って大きな水車小屋がひとつある。
村人達が粉を引き、日々の生活を送っている。
こんなのどかな村に来ると戦いも全て忘れて、
このまま村人達と同化して暮らしたくなる。 
クロードは村長の家と思しき建物を見つけ歩み寄っていった。
「こんにちは」 
クロードが声をかけると中から
白い顎鬚のもの優しげ気な老人が出てきた。
「旅の者です。ほんの二、三時間、
村で休息させてもらえませんか?」 
と、クロードは老人に尋ねた。
もし、駄目だと云われれば素直に出発する。
それが旅人のルールだ。
「さぞかし、お疲れでしょう。
泉もあります。お使いなされ。
仮眠を取るなら水車小屋が涼しくてよろしかろう。
鍵はかけておりませぬ。お使い下され」 
クロードの申し入れに返されて来た老人の言葉は
思うより以上に親切なものであった。
老人の言葉でも判る様にモンスター達も、
この小さな村を歯牙にもかけていない。
それゆえに恐れる事を知らずに暮らせてゆけるのであろう。
見ず知らずの旅人を受け入れられる平和な村なのだ。
「足らないものがあれば、用意致します。
ただし、この村で調達できないものは御容赦下さい。
遠慮なく、云ってくだされ」 
と、さらに老人はクロードに言葉を重ねた。
「イエ、泉と水車小屋だけで充分、助かります」 
クロードは丁寧に礼を言うと、老人の家をあとにした。
許可が取れた事を皆に告げると、
皆はそれぞれ、思う所に散った。

レオンは一人になりたかった。
クロードの事はずーっと気になっていたが、
声もかけ様として来なかったし、
忙しそうに立ち歩いて、
レオンの事を見ようともしなかった。
少なくとも、レオンにはそう見えた。
水車小屋に入ると、ほの暗く、
天窓からのわずかな日差しが粉引き台を照らしていた。
わら、麦の束が粉引き台とは
反対側の物置き場に積まれてあった。
レオンは誰にも見つかりそうにもない
奥の方に座り込み、膝をかかえた。
『レナの言う通りなんだ。
僕の事はおもちゃだったんだ。
それが僕に判ってしまったから、
もう、面倒くさくなったんだ。
ううん、もう、おもちゃを捨てるみたいに
捨てたくなったんだ。
だから、知らない顔をして、そのままほっておくんだ』 
レオンの瞳からぽろぽろと涙がこぼれる。
レオンは膝をだかえた手をぎゅっとしめた。
まるで、自分を抱きしめるように。
…クロード、大好きだったのに。
頬を伝う涙がさらにこぼれおちて、
ズボンの膝に大きなしみを作っていた。

確かにレオンは水車小屋に入っていった。
じっと見ていたクロードは焦っていた。
まだ、出発前にしなきゃいけない事がある。
レオンが自分の水筒に水も入れ様としていない事も見ていた。
朝から一言も声をかけていない。
僕がレオンの声が聞こえないのがこんなに応えるんだから、レオンだって相当、まいっている筈だ。
今朝から笑い声も聞こえてないし、
皆まで沈んでしまう程、静かだった。
クロードはレオンの水筒を取ると、泉から水を汲んだ。
コポコポと泡が出終わって、水筒一杯に水が満たされた。
『クソッ。』 
クロードは苛立っている。
「それから、次」 
つぶやく様に言ったクロードの側に
ディアスが例の如く、いつのまにか来てたっていた。
水車小屋に背を向けて、
肩越しに親指を立てて、行けという合図を
クロードにしめした。
「後は何をすればいいんだ?」
と、いうデイアスがクロードの代わりに
準備をしてくれる気でいるのがクロードにも判った。
「ァ、アリガトウ」 
デイアスに必要な事を告げると、
クロードは水車小屋へ向かった。
水車小屋の中はほの暗かった。
見まわしたがレオンはいない。
レオンのことだ。
どこか隅っこに隠れて泣いているのに違いない。
「レオン。・・レオン」 
クロードが呼んでもレオンの返事はなかった。
「全くこどもなんだから」 
呟くクロードの目に露草色の髪の毛が
麦の束の向こうにちらりと見えた。 
『そこか・・』 
クロードはその髪の毛の見えた方にちかずいていった。 
「レオン」 
クロードはそう呼びながら
蹲って膝をだかえているレオンに近づいていった。
レオンは蹲って顔を上げない。
「レオン」 
もう一度クロードが声をかけると、
涙のからんだ声でレオンが何か言うのが聞こえた。
「・・ちゃ・・じゃない・・」
「なに言ってるのか聞こえないよ」 
クロードが云うとレオンは顔を上げて叩きつける様に云った。
「どうせ。僕のこと抱きに来たんでしょ?」
クロードがレオンに手を伸ばすとレオンは
くるりと向こうを向いた。
それでも近寄って肩を抱こうとした途端、
レオンはクロードの手を振り払った。
「欲しくなったら 
僕の気持ちなんかおかまいなしってわけ?
僕の気持ちなんかどうでもいいよね」 
レオンは唇をキッとかみ締めると
「面白かった?まだ飽きてないんだ」 
と、いうレオンの唇が震えている。
自分達を最初に認め判ってくれていて
応援しているはずのレナから投げ出された本心。
普通なら許されるはずもない恋ゆえに、
その理解者からの批判は、
レオンの中にあった小さな不安を拡大させた。
そしてレオンは不安を
そのまま目の前に付きつけてきたレナを叩いた。
(そういうことなのよ )
レナにはっきり断言されるとおもわず手が出た。
『そうじゃない』 
なのにクロードが押し黙ったままだった。
『そのとおりなの?』 
レオンはいたたまれずその場から逃げた。
嘘でもいい。
「そうじゃない 」 
そういってクロードが追いかけてきてくれるかと思った。
なのに、クロードは来なかった。
その後も、事実を知られた後ろめたさみたいに、
なにも話しかけてこようとさえしない。
ああ。レナの言う通りだったんだ。
僕はクロードのとって・・・こんなにツマンない自分なんだ。なのにこんなにクロードの手が欲しい
でもそれを許しちゃ僕もクロードも駄目になっちゃう
レオンはそう、思うと
「クロードなんか 大嫌いだ」 
と、叩きつけるようにいった。
クロードはなんとかレオンをなだめ様と思ってはいたが、
レオンが云っては成らない言葉を言い放った。
嫌いだ。
レオンがそんなことを口に出した事はなかった。
もう無理なのか?
悲しい恐れを確かめる様にクロードはレオンに尋ねた。
「僕のこと許せない?」 
レオンはクロードの言葉をもう一度頭の中でなぞった。
クロード自身、僕をおもちゃにしていたって事認めるわけ?僕クロードのなんだったの?
もう要らない・・君なんかいらない・・
その言葉をクロードに言おうとすると
レオンの咽喉の奥が萎む様にひきつって痛い。  
「ごめん。いい気になりすぎていた。
レオンは僕のものだって。
抱きたくて自分でもどうしても止めれなかった」
「・・・」
「嫌になった?僕のこと許せない?」
「もう・・嫌だ・・」
「そう・・」 
(馬鹿だった。可愛くて可愛くて、つい手が出た。
モットゆっくり抱いてやりたいって。
でも、レオンの望んでた事はそんな事じゃなかった。)
クロードは情けなかった。
レオンも抱かれたいって思ってくれてると
勝手に決めつけていた。
一生懸命、クロードの云う通りにしようとしてただけだったのに、甘えすぎて結局レオンを傷つけていた。
レナに言われなきゃ、クロードはレオンの心の底に気づかずにいた。
(性の快楽だけ与えていい気になって。
遅かれ速かれ駄目になることだったんだ。) 
「レオン・・・ごめん」 
どんなに謝ったって、いまさら取り返しがつかない。
レオンを猫にしたてあげて挙句・・この結末。
「戻ってこないよな?」
クロードの瞳から、涙が落ちた。
ぽたぽたと床に落ちた。  
「追いかけ様ともしなかったくせに、クロード。
皆の手まえばかり気にして、
二人きりになったら 元通りおもちゃになれって?
よく云えるよね?どこまで僕を・・・」 
レオンの言葉が続かなかった。
「違う。違うんだレオン。
そんな事決っして思っちゃいない。
ただ可愛くて可愛くて。欲しかったんだ。
レオンをいつも僕のものだって感じていたかった。
レオンもそうだって思っていたんだ。
判ってくれてる。
レオンも僕を望んでくれてるって思いこんでたんだ。
ごめん。
レオンの不安、判ってやれず、わがままぶつけ過ぎたよ」 
「・・・・」
「レオンもう僕のこといらない? 
あんなに僕のこと受け止めてくれたの、
レオン、心からそうしてくれていたンじゃなかったの? 
そうじゃなかったの?」 
クロードが顔を覆った。
「う・・」 
クロードの手の中から嗚咽が漏れた。





―クロード?クロードがほしいのも ほんとの心?― 
レオンの中にわだかまっていた
クロードの玩具でしかないのかもしれないという疑惑は
クロードに投げかけられた言葉で一気に氷解していった。
「僕も、クロードと同じだった。
不安はあったよ。こんなんで良いのかな?って。
でも、クロードに抱かれたいって。
欲望、ぶつけてたのは僕の方だ。
僕も汚い。汚くても良かった。
でもレナにああ言われてから、
その欲望ごと良いように利用されてる。
そう思えたんだ。
僕もクロードも同じ。
只、違うのは能動側か受動側かの違い。
行動起こさなきゃ問題は成り立たない。
クロードだけ責めたけど、
欲望という点では同じだったんだ」
往来の天才少年らしい口ぶり。
冷静に何かを考える時
いつのまにかひどく大人びたレオンになる。
「レオン?」
「クロードがそんなんじゃいけないんだ。
僕に溺れて。セックス、そればっかのクロード」
「・・・」
「それも辛かった。クロードをこんなにしたの僕だよね。
僕もそれどこかで見ぬふりしてしていた。
僕も、クロードにわびなきゃ行けない」 
「レオン」
「馬鹿だよね?自分だって抱かれたいくせに、
玩具じゃ嫌だの、欲望だらけのクロードじゃ嫌だの。
僕も勝手過ぎるよね?」
「レオン。ごめん。
自分でもみっともないなって思ってるよ。
でもな、レオン。そんな事どうでもいい事なんだ。
昨日、お前が側にいなくて、良く判った。
胸の中、張り裂けそうなほど苦しくて、
レオンが、そう思うならなにもしないよ。
頼むから、側にいてくれよ。
自分でもこんなに辛いなんて思わなかった。
狂いそうだった。
愛してるんだレオン」
「あ・・・」 
レオンが顔を伏せた。
涙をぬぐおうとしなかった。
が、やがて
「だって・・僕・・男だよ・・」 
と、レオンがいった。
「今さら なにいってんだよ。
そんな事、僕の中じゃとっくに乗り越えているよ」 
多少の苦笑を交えながらクロードはレオンをみた。
「だって」 
と、レオンはいう。
クロードだって随分そのことでは思い悩んだ。
だから、レオンにだって不安があったのは間違いないことだろう。
それでも、クロードを受け止めたいって
レオンのほうも不安を自分の中で堪えていたのだと思うと
クロードはやっぱりレオンがますます愛しく感じられた。
「それも 不安だった? 」 
クロードがレオンをのぞきこんで尋ねた。
「ん」 
レオンが小さく返事をした。
それをきくとクロードはなによりも
レオンの不安をとりのぞいてやりたかった。
「地獄に堕ちてもいい。ううん、レオンのこと 
手に入れられるなら、自ら、堕ちてやるって決めていたんだだからレオン、もう、離さない。
決めてしまったんだ。
レオンの許可これから取る。
僕はもう二人分の切符手にしてる」
「クロード。ずるいよ。
もう列車にのせてから許可とるなんて」
「だって そうしなきゃ・・レオンのこと::」 
「なに?」
「絶対、要る人だったもの・・・」
「・・・・」
「愛してる」
レオンの顔がぱっと明るくなると、
僕も僕も クロードが大好き。愛してるという。
―やっぱり可愛いー
立ちあがったレオンの肩を抱き寄せて
クロードも思わずキスをしようとした。
が、戸惑った。
そのクロードの様子にレオンのほうも
「いいんだ。もう、いいんだ。
クロードの好きにして、いつものクロードに戻って」
と、クロードに抱きついてきた。
レオンのフワフワした髪が
クロードの顎にかかってくすぐったい。
「顔あげろよ」 
クロードが胸に顔を埋めて甘えているレオンに言うと、
レオンもいつもの素直なレオンに戻っている。
すぐ顔をあげると 
「なーに?」 
と、いう無邪気な顔をしてクロードをみている。
(この顔なんだよな。これにまいっちまうンだ。)
ぴったりと、身体をひっつけると
レオンのものがクロードの太腿に固くふれる。
レオンもそれが、クロードに判った事に気が付いている。 
「結局。レオンも」 
クロードも少し流し目。
「ほしいんだ?」 
クロードの問いにレオンが赤くなりながら答えた。
「だって、僕たちの到達地点って、そこが最高だもの」
普通の男女のカップルなら、あるいはそこがスタート地点かも知れない。
結婚。妊娠。育児。
生活の色んな煩雑な事、細かな事をやりこなしてゆく。
―が、僕達にはそれはないー
レオンのいうとおり
僕達には確かにそこが最高到達地点かも知れない。
なのにその底にある思いをキチンと告げずに
レオンを揺るがせた。
でも、僕もその最高到達地点にずうっといたい。
愛してる。その思いを教えてあげたい。
そして、愛してる事を最高に現してあげたい。
レオンを抱き締めながらクロードはそんな事を考えていた。

そのクロードにレオンが
「僕はいつも、クロードに抱かれる事ばかり考えてた。
僕を抱きしめて。
そしてどうしょうもなくひとつになってる。
そう思いたかった。
なのに、御免。
僕が、僕が、クロードのこと信じなかった。
御免。ごめんなさい」 
と、謝りだした。
「レオン・・・」 
それはクロードだって、同じことだった。
なのに、
「僕の方が謝らなきゃいけない事だったんだ」 
と、レオンがいう。
「レオン」 
クロードはレオンをじっとみた。
レオンに大切なことをちゃんとつげずに
レオンを不安にさせていたのはクロードの方なのに、
そんなクロードのことを
それでもやっぱりレオンは必要としてくれているのだ。って判ったらもう、これ以上レオンに、
後悔の言葉なんかいわせたくなかった。
「僕のこと・・」 
レオンの言葉がどう続いたのか、
あとは塞いだ口の中に入れこんだ
クロードの舌に絡み取られて判らなくなった。 
「レオン愛してるんだ。
それだけ判ってくれたらもう何もいわなくていいよ」 
「ん」 
「ねっ」 
また泣き出しそうになるレオンを
しっかり抱き締めるとクロードはもう一度キスを渡した。
そして
「レナのこと 怒ってる?」 
って、レオンに聞いた。
「ううん。つい、叩いちゃって、レナに悪かったなって。
だって、心配だったら、
僕が自分でクロードに聞けば良かったんだ。なのに」 
と、レオンが言うのでクロードもほっとした。
「信じてくれようとしてたんだろ?いいさ。
僕もついかっとしたからレナにひどい事いったし、
一緒に謝っといてやるよ」
「あ?クロード。それで、僕を追いかけて来なかったの?」
「それも、あったけど。デイアスに謝られた」
「デイアスが?なんで?」 
「デイアス。はっきり認めたよ。レナのことを好きなんだ。レナがセックスの事、変な風に・・・。
:汚いとかさ・・そんな風に見るのは
俺の愛し方がたりないんだって。
レオン見てたらそれが良く判ったって」 
「ぁ、あの」 
クロードがほんとに本気。
クロードに愛されている。
だから、僕がこんなにクロードが欲しい。
それがデイアスには判っていたんだ。
「もう・・泣くなよ」 
泣き出したレオンの頭を撫でながら
クロードが言うとレオンが 
「だって、嬉しいんだもの」 
と、涙を手の甲で拭った。
胸の中にいるレオンの暖かさを
はっきりクロードは感じ取っていた。
その温かみをもう二度と手放したくはないって
クロードは思った。
だから、クロードはレオンに改めて話しておく事にした。
「レオン。なんでも、言えばいいんだよ。
レオンが僕を受け止めてくれたように
僕もレオンの事、受け止めたい。
だから、疑ってるとか、信じてないとか、
そんな事心配せず、なんでも言ってこいよ。
もう二度とレオン一人で泣かせたくない。
二度と離したくない」 
クロードに告げられるとレオンが
「あのね・・」
って、言って口篭もった。
「なに?」 
クロードもレオンがまだ心配事を話そうとしているんだなと考えながらレオンの言葉を待った。
だけど、レオンがあれもこれもと不安ばっかり持って事に、自分でも気が引けるのか、なかなか言い出そうとしない。
「言ってみろよ。レオンの言うとおりしてやるから」 
優しげにクロードに促がされるとレオンがやっと
「あの・・」
と、いう。
背伸びしてレオンが、
クロードの耳元になにか言おうとするので
クロードも少し屈んだ。
「お願い僕を抱いて。クロードでイキたい」 
レオンが密やかな声でそう告げると、
顔を隠すようにクロードの胸に顔をうずめた。
クロードは、そのレオンの顎に手をかけると
軽く屈みこんですするようなキスをかわした。
「レオン」
名前を呼ぶだけで、
クロードに浸りこんでいるレオンが見えてくる。
レオンの感性が育つのは早かった。
ここ何度かの接触でレオンのレオンが
クロードを欲しがる様に成ってきていた。
その欲求に突き動かされるかのように
レオンはしゃがみながらクロードのズボンをずりさげた。
そのままレオンが膝をついて座ると、
レオンはいきなりクロードのものをしゃぶりこんだ。
「ぁ。レオン」 
久しぶりのレオンの舌からの愛撫に
クロードも思わず声をもらした。
つったったままクロードはレオンを見下ろしている。
驚くほど鋭角にそりあがってるクロードの物を
斜め上からレオンはかぶさるように口に含んでいる。
くわえこんだレオンの顔をささえるようにして
軽くわずかに上にむけてやると
クロードの好きなポートレートになる。
レオンの口の中からクロードのものが
ヌルリとでてくると軽くクロードが腰を動かして
レオンの口の中にクロードのものを押し込んで行く。
レオンの咽喉の奥まではいろうかというデイ―プなインサートにレオンは口を半開きにした。
すると、たらりと落ちて行く唾を
ねっとりクロードの物に絡み付けながら
レオンはクロードのものを口からゆっくりとはなした。
そして、そっとたちあがった。
「ネ おねがい」 
レオンの言葉に、クロードは
レオンのズボンをもどかしげに下げると、
そのまま座り込みながら、レオンを引寄せた。
・・・座位・・・
レオンの中につきいれるようと場所を探るクロードに
レオンも腰をかすかに移動させながらポイントに誘導する。
ここ・・・・。
そのままレオンを沈み込ませれば、
そのままレオンの中に入りこんでゆく。
「クロード淋しかった。
クロード僕をきらいにならないで。
 ね、クロードが好きなん・・・」 
レオンの声がとだえた。
クロードの物がレオンの中にずぶりと今、入り込んだ。
途端に レオンの口から、声がもれだしてくる。
「あ・・いい・・ああ 僕の クロード」 
レオンのひどく快さ気な声にクロードも
「レオン。 愛してるよ」 
と、答えながらクロードの物をうごかさずにはおけない。
「ああ・・ クロード」
 短いストローク。
なのに、レオンが感きわまって唇を寄せてくる。
「クロード クロード・・あ、ああ・・」 
クロードの名を呼ぶ唇をふさぐ。
舌を差し込んで奥まで入れると
一端、引っ込めて唇を丁寧になぞる。
「あん・・ん・・」 
ここも感じる。
半開きの唇に割り込むように舌をいれて
唇の裏側をなぞると思いきり奥まで舌を差しこんだ。
レオンがそれに応えてクロードの舌を吸い始めた。
それに陶酔させたままぎちぎちと短いストロークで、
レオンのものに刺激を与えてやる。
そのうちレオンの舌を吸う力が抜けてゆく。
クロードはレオンの顔をしっかり掴まえると
舌での愛撫を繰り返しながら、
レオンへの短いストロークを重ねてゆくと
「ん・ん・・ん・ん・」 
クロードに塞がれたレオンの口から
クロードの動きに呼応して声が上がる。
何分間か、そのままレオンの声を塞ぎながら。
(嗚呼・・・・レオン・・・とってもいい)
クロードもレオンに浸りこんでゆく。
少し休む。
もう、すでに汗。
レオンの太ももの下あたり。
ぴっちり引っ付いてるところに、じっとりと汗。
レオンが片足をまたぎかえる。
横向き。
クロードの上で、90度の角度。
レオンへのストロークがかせげない。
心持ち結合が浅くなってしまってる。
レオンの意図するところは判っている。
結合がはずれないように
レオンの腰をひきながら
レオンの脚を揃えて前を向かせる。
小さな肩が目の前にある。
クロードはかがみこむようにすると肩を軽くかんだ。
「あ」 
声をもらし出して行くレオン。
そこからさらにうなじを責めてゆく。
舐め上げるような舌の動きとともに、
クロ―ドの動きごと、レオンが揺れる。
なのに、やっぱり 振幅が浅い。 
「あん、クロード」 
じれるようなレオンの声。
「一緒がいい?」 
そう聞くとレオンの手がクロードの手を探り当てると、
つかまえた手をレオンの前のものにかぶせた。
「お願い  クロード」  
結合がはずれないように前に廻した手で、
レオンの腰を引き寄せながら
クロードはレオンを軽く押した。
押されたレオンの体が前のめりになってくるのを
クロードの物がいれこまれたまま追いかける様にして
レオンにかぶさりながらレオンの好きな体勢にかわった。
膝をつくとレオンが両手を床に着いた。
クロードは手を伸ばしてレオンのものに触れる。
ヌルリとした感触に親指を当てこんで
中指と薬指の間にレオンの軸をはさみこむと、
すり上げる愛撫と
ぬめりを起点にレオンの先をくすぐり撫でてゆく愛撫を与える。 
「ああ」 
レオンの声が早くももれだしてくる。
同時にクロードの深いストロークが開始される。
ピッチを上げると同じ様に、
前への愛撫もスピードを上げてゆく。
「ああ、ああ・・いい」 
レオンの声が深い。
「レオン・・・愛してるよ」 
クロードがささやくと
レオンの声がますます切なく高まって来た。

アシュトンは樽がないかいつもの如く捜し歩いた。
水車小屋の裏へ回ると小さな入り口があった。
「あれ?」
当然アシュトンは樽探しに入っていった。
入ってみると 
なんだ、最初に見た水車小屋に続いてる
隣の物置部屋の裏扉だったんだ。と、判った。
麦束ばかり積んである。
なにもありゃしない。
その時、何か声がしたので、アシュトンは聞き耳を立てた。 
誰だろう?そう思ったに過ぎない。
声はなにを話しているのか判らなかった。
が、レオンとクロードの声だと判った。
はっ、心配する事もない。
もう仲直りしてるんだ。
と、思ったらアシュトンもほっとした。
声をかけていこうか、どうしようか迷ってるうちに、
又、あのレオンの切なそうな、苦しそうな声が聞こえてきた。

え?なんか病気なのかよ?
隠さなきゃいけない病気なのか?
医者にみせようともせず
こんなところに寝かしてたって駄目だぞ。
なんで、隠すんだ?
まさか不治の病?
 
どこまでも大げさにアシュトンの心配が広がる。
矢も盾も溜まらず近づいていった時、
アシュトンは二人のあられもない姿を見てしまった。
が、アシュトンには一瞬
二人が何をしているのか判らなかった。
何してんだよ?お前達。
そういいかけて息をのんだ。
じっと呆けた様に見ていたアシュトンが
やっとこの状況を理解したとき
アシュトンの心臓がドキドキしてとまらなかった。
『えっ なに?セックス?
えっ、セックスしてる?
えっ、えっ?なにいってんだよ。
お前ら、男同士だろ?
えっ?えっ?レオンがこんな事するのかよ。
えーーーーー?
クロードォ?  
お前レオンに・・・わーーわーーっわーーー』 
声こそ押し留めた。
が、頭の中が蜂の巣をつついたように
うわんうわんなっていた。
ただ、あっけにとられて
呆然とアシュトンは二人を見ていた。
レオンもクロードもアシュトンに気がつくわけもなく
二人の時間を分かち合っている。
『すげえ・・まじで見た。初めて見た。ひょぇーーー』
リズミカルに腰を動かすクロードに、
アシュトンは見惚れている。
(あは・・・うまい)
レオンが所々で声をあげる。
「レオン・・きもちいい?」
「あ・・ん、いい、いいい、ん、いっちゃいそ・・う」
声まで聞こえる。
(はああ。一人前に感じてらぁ)
 慌ててアシュトンは首を振った。
なにやってんだ僕。
多少なり正気を取戻して考えてみれば
アシュトンの行為は覗きという犯罪行為でもある。
二人に気がつかれぬように
慌てて外に飛び出したアシュトンだったが、
心臓がばくばくいってる。 
アシュトンは今見た事が夢じゃないかと自分を抓ってみた。
・・痛い。なんだ夢か。 
アシュトンの頭の中が完璧にショ―トしている。
(どうする?)
アシュトンはどう考えていいか判らなかった。
(誰に相談しよう?。
コンなこと言える相手いないじゃないか。
・ ・・待てよ。
前にもこんな事があったっけ? 
フアンシテイホテルだ。
・ ・・! 
えぇ――。じゃ、あれもそうだったわけェーー?
あっ、あの時はレナが)
アシュトンはやっと合点がいった。
(はあーー。レナ判ってたんだ。
だから、あんなに赤くなって・・・
僕、レナにきいてみよ。)
アシュトンはそう決めるとレナを探して見る事にした。


「ああ・・だめ」 
ホテルの時の朝のように、
クロードがレオンのものがいきそうになると止めて、
又、触ってと繰り返してじらせている。
あの時と比べたら、随分レオンのレオンがかわってきている。
「ああ・・いい。・・いい」 
ドッチもいい。そのうち、
「ね、ね、ね、クロード。 いきそう」
「え?」
だって、今、・・・前、手をはなしてる。
「あ。へん。きもちいい、ホンと、きちゃう・・」
「あ?え、くそっ・・・」 
時間も気になりだした。
「イキタイ・・ね、ね、イカセテ」 
切なげなレオンの懇願。
クロードも思いきりピッチを上げた。
レオンの前に手を添えた。
先程とは違う指の添え方で、こっちも激しく。
「ああ。  きちゃう」 
そう、言うとレオンの前のものがいった。
少し出遅れた。
クロードは慌てて追いかけるように動かし続けた。
「あ・・ん。 来る。 きちゃう」
レオンの声が、たまらないと長い嗚咽に変った時、
クロードのものにおかしな感触を感じた。
レオンの中がぴくぴくと
何度かリズミカルに痙攣すると 
クロードを引き戻すようにうねって中が動く。
(うわっ。たまんない。・・もう、耐えれない) 
そのうねりを味わい尽くしたいけど
それはもう、無理だった。
「イク・・」
レオンの中のうねりと
クロードの頂点を迎えた細かな痙攣が重なり合った。
クロードの声が続いた。
クロードに押し寄せてきた波も長かった。 
レオンの中のうねりがおさまると
突然ぐううとしまるように、
クロードのものを圧っしてきて、
どんどんせばまってきた。
ああ。
でも、すごい。なんなんだ?・・・これまさか? 
レオンの言った通り。
でも、そうとしか考えられない。
イッタンダ。こいつ。やっぱ最高。
と、思いながらクロードはレオンを抱きおこした。
「レオン。ありがとう。あの」 
この気持ち、どう伝えればいい?
「クロード。駄目。僕・・動けない」 
「え?全然?」 
「うん」
「いいさ。そしたら、おんぶして連れて行ってやるよ」
「皆に聞かれるよ。どうしたのって」
「レオンがいっちゃいましたって・・言うさ」
「クロードの馬鹿」 
そう言うレオンの顔が嬉しそうだった。
「クロード・・気がついてたんだ」
レオンがクロードの胸の中に甘えてくる。
もう少し時間がある。
クロードは服を直すとレオンのも手伝ってやった。
「だいじょうぶ?」
「うん。もう少し休んだら。
なんか、自分の身体じゃないみたい」 
「当たり前・・・僕のだもの」
「うん」
「僕も、僕も。身体も心も、全部、レオンのものだからね」
言った後クロードは照れた顔で笑った。 
「ああ。でもレオンには・・勝てないや・・」
「なにが?」
「だってさ、欲張りだし。まじだし。感度良いし、可愛いし」
レオンがひとつだけ引っかかった。
「欲張りってなにさ?」 
そうやってチョットむきになるところもいいよ。
「欲張りでしょ?あっちもこっちも感じるくせ
前も後ろもいきたいってオマケに本当にいっちゃうな・・」
レオンの手が口を塞ぎにくる。
「もう、クロードの馬鹿」 
じゃれ合う事も、久方なかった。
手を捉まえるとレオンが
「そっちこそ」 
反撃の言葉。 
「なんだよ」 
クロードは押さえられた手を振りほどく。
「わがままだし、気分やだし、強情だし、
おまけに強引だし、一番始末の悪いのがエッチなとこ」
「あってるけど、自分の恋人けなしてどうするんだよ」
「良いじゃない。それでも好きだっていうんだから。
本物でしょ?」
「ぁ、そう。じゃ、レオンはすぐ怒るし、すぐ、泣くし、
はやとちりだし・・・」 
「クロードォ」
「たく、ドッチが自分勝手なんだか」
ひょいとクロードがレオンを抱き上げる。
「それでも好きじゃ、いけないんだろ?
それごと全部好きっていわなきゃ駄目なんだろ?」
「う・・ん」 
「だろ?だったらやっぱ欲張りに間違いないじゃん」
うん。うん。って頷いてレオンが
クロードの首に腕をからませた。

村の中の小さな泉とは別にもう少し下った所に 
大きな泉があると古老が教えに来てくれた。
女達は顔を見合わせた。
女達の思いはみな同じで「行こう」と言う事に成った。
「ありがとう」 
古老にそう礼をいうと、老人は
「サッパリなさっていらっしゃい」 
と、にこやかに微笑んだ。
「うれしーー」 
プリシスが声をあげる。
「うふふ」 
セリーヌもやっぱりこんな事一つが嬉しい。
「シャワーひとつのありがたみがわかりましてよ」 
と、言うセリーヌに
「よね。なんか当たり前になってて、
普段なら、そんなこと思わないけど、
無くなってみて初めて気がつくって事。
他にもいっぱいあるんだろうね」 
プリシスが感慨深げにいった。
「うふ。プリシス。
貴方この旅で、ずいぶん、大人になりましてよ。
そこに気が着いただけでも、
お金にかえられない収穫かもしれませんことよ」 
セリーヌにいわれると
「もう、すぐ子供扱いする・・・」 
プリシスがむくれて見せた。
二人の会話を聞いていた、レナの瞳がつううと落ちこむ。
無くなって気がつく。
プリシスのいう言葉のとおりだと思う。
クロードからレオンを奪う言葉を投げかけた。
レオンがクロードから離れていったのを見ていると、
胸が痛んだ。
つまらない表面的な批判でレオンを追いつめてしまった。
レオンの傷を思った時、
クロードがどう言葉をかければいい?
クロードしかレオンを引き上げれないのに、
クロード自身も落ち込んでいる。
二人の仲がおかしくなってから
二人をもっと大切に考えてあげるべきだって気がつくなんて
あたしのどこが味方なのよ。
どこが理解者。
どこが応援してる?  
本当にうらやましかったなら黙って見ているべきだった。
どこかで自分の迷いをレオンに重ね合わせているだけ。
何もかも、自分。
それしかない自分。
こんな自分がいまさらデイアスを
やっぱり好きだなんて言えるわけも無い。
そう、今だって結局自分の心配ばかりしてる。
なにもかも、洗い流したい・・・
ちっぽけでくだらない自分ごと。
「ねえ、早く・・いこう」
レナは先頭を切って泉の方に歩き出した。
                 
                 

レナ達が泉から帰ってくると
アシュトンが困ったような顔で
レナを呼んで手招きしている。
「あ?チョット、いってくるね」
二人に言うとレナはアシュトンの所に行った。
レナは首をかしげたままアシュトンの側にたった。
「どうしたの?」
「ああ・・レナ・・ふうう・・」 
どこかほっとしたアシュトンのため息。
レナを頼りにしてなにか話したい事があるんだと
判ったレナは重ねて聞いた。
「どうしたの?何かあったの?」
「ああああ。あったってモンじゃないよ!
レナ知ってたんだ?」 
アシュトンの言う事がレナにはさっぱり、わからない。
「アシュトン。ちやんと話して?
私が何を知ってたというの?」
「あいつらの事。クロードとレオンの事
ああ、あ、あ、あいつら・・・。
あそこで・・・。  
あの、その、なんだ・・・。
ほら、やってんだよ・・やってたんだよ」 
「はあ?」
「だから、『ア、いい』とか「愛してる」とか、
ああ、つまり、そのセ・・・セ・・・セ」 
「?」
「だからぁ・・・・セックスしてたんだよ」 
そういいきった途端、アシュトンの顔が真っ赤になった。
「あ、あ、あの。すごかったんだ。
いや見てたわけじゃないよ。
偶然・・・。ああ、見てたんだ。
いやいや、そうじゃ無くて、クロードは上手いなあ―って。 違う!違う!
ハア:わけわかんなくなってきた。
だから、なんだ。
あのレオンが「いいっ」て言うんだ。どう思う?」
どう思うと言われてもレナに答えようが無かった。
ただアシュトンの話し振りで
レオンとクロードが相変わらずの仲に戻ったんだ。
と、いう事だけは判った。
クロードがレオンを失ったらどうするんだろう。
どんなに苦しむだろう。
クロードの本心が判った今。
それだけが気掛りだった。
これ以上二人が離れている姿を見ていることは
レナにとっても辛かった。
お願い、クロード。早くレオンに本当の事告げて
元通り仲良くなって。
祈るような気持ちでみつめていたが
不安で仕方なかった。
クロードがレオンをあきらめるはずは無い。
そう、判っていても不安だった。
が、今、アシュトンの言葉で、クロードが動いたんだ。
クロードの気持ちが、レオンに通じたんだという事が
レナに判った。
「よかったあ」 
と、言うレナアシュトンの腑に落ちない 
「ええ?」
と、言う返事が返ってきた。
「ダッテ、そうでしょ?あの二人恋人同士なのよ。
私が要らぬ事いって仲たがいして
昨日から一言も口聞かなかったのよ。
仲直りしたのよ」 
そういうレナの瞳から涙がこぼれ落ちそうだった。
「あの?ああ、・・ああ。判るよ。・・判るよ。
でも、いや、そりゃ
僕もクロードが応えてんのも、判ってたし
レオンも泣きながら寝ちゃったし、気にはしてたよ。
でも、でも。
ショックなんだよ。
その、二人がさ、そういう仲だなんて考えてもみなかったし」
そういわれればそのとおりだろう。
アシュトンの気持ちも考えてあげなきゃいけない。 
「で?」
「ああ。だから、あんなことしててさ。
うらやましい・・・
違う!違う!
男同士だろ?
なんか、ショックでさ。
レオン、それでいいのか?
あああ、クロードがさ、そのケの奴だったなんてさ。
僕。あー――駄目だ。
上手く言えない。
どう言うのかチョット不気味って言うか
あああ、僕、襲われたらどうしょう?」
熊じゃあるまいし、
あんたなんかに手を出したりする訳ないじゃない。ばか。
とは思ったけど、
とにかくはアシュトンの気持ちを
落ち着かせてあげなきゃしかたない。
「大丈夫よ。クロードは、その、へんな趣味で
レオンとそうなってるわけじゃないのよ。
だから、つまりレオンのこと本気なの。
レオンもそうなのよ。
だから、間違っても、
アシュトンに変な気おこしたりするわけないわ」
「あ、そうなの?」
多少、残念そうな響きがある。
「やだ。貴方、まさか?クロードのこと?」
「ぁ、そんな変な意味じゃなくてさ。
クロードって統率力もあるし
判断力もあるし、なんていうか、けっこう男っぽいやつだろ?だからかな?
レオン選ぶの判る気もするよ。
でも、なにも男相手に恋愛感情もつなんてさ。
こうさ。男が男に惚れるみたいな相手だったらさ。
もう少し納得できるかなってさ」
「ようは、アシュトンはクロードに男として惚れてた訳ね?」
「あ・・変な意味じゃないよ」
「判ってるわよ。
つまり、レオン相手じゃ
まるで女の子の替りみたいにみえて。
クロードが変態に思える。
アシュトンの中で男らしいクロードがくずれちゃう。
そういうことでしょ?」
「ああ・・・そういうことかな・・・」
「アシュトン。
クロードの気持ち判って上げてよ。
貴方が誰かさんを好きなのと同じなのよ。
只、偶々、それが男の子だった。それだけのことよ」
「そんな 簡単に納得できるの?
はあぁ?まあ、それは判るとしてもさ。
子供だよ、まだ十二の」
「それもレオンが望んだ事じゃないかな?
納得の上じゃないかな」
「望んだ上?納得?十二の子が?
そうなのかな?本当に、納得してると思う?
だって、【いい】なんて言うんだよ。
だからクロードが・・・いつごろからか知らないけど、
その、・・・いいように、あの、慣らさせたっていうか、
それにレオンがはまっちまってるんじゃないのかな?
だとしたら・・なんか、もうクロードのこと」
「アシュトン。相手が十二歳で男の子だったら、
クロードが本気に成る訳がないって思う?
平気でレオンを玩具にすると思う?」 
そう。つい、昨日まで私もクロードを同じように疑っていた。
「あっ、いや。そう、いわれると。
クロードがそういう事する人間じゃないの良く判ってるよ。はあぁ・・・・。
ってことはレオンも本気だよな。
アイツ、結構一途だし、
クロードのこと好きなのは判ってたよ。
ああ、でも、そういう事じゃなくって
同性への憧れっていうか、尊敬っていうか、兄貴っていうか、そんなんだと思ってた。
なのにあんな事させるなんて・・・」
「あの、私。二人とも対等だと思ってるの。
させてるわけでなく。
レオンも、欲しいし。
クロードも欲しい。
その、だから、自然に結びついたんじゃないのかなって思ってたから、二人の組み合わせに違和感、そんなに感じなかったの。
好きあっているもの同士。
そんなふうにだけ理解したらいいんじゃないのかな」
「変な色つけて見るなって事かあ」 
「うん、そういう事かな」 
「あのさ。レナ、かわったね。
昔ならこんな事言えなかったし・・・」
「どうせ、すれたっていいたいんでしょ?」 
「ぁ そうじゃなくて、
なんかなんでも、包み込んでくれるっていうか。
幅が広がって柔らかくなったって感じで 
ものすごくいいよ」
「あ、 あの、アシュトン」
レナはアシュトンの言葉に涙ぐんでいた。
「レナ。なんか僕、悪いこといった?」 
「そうじゃなくて。わたし・・・」
「レナ。泣かないでよ。
あ?デイアスと上手くいってないの?」 
「嫌ね。そんな事じゃないわよ。
なんか、あの二人見てたら私も頑張らなきゃって、
なんか、そう思う。
今のアシュトンの言葉で
自分の中の拘りみたいな物 
少しづつでも変えてこれてるんだって判って、嬉しかったの」
「レナ?」
「あ、御免。あの二人の事、皆に内緒にしといてね。
きっと、アシュトンみたいに
ショック受けるんじゃないかな?」
「ああ、そりゃ。それに、こんな事他の人に話せないよ」
「だね」
そういって二人がわらった。

「レオン。もう・・時間だ」 
抱きしめていた手をはなした。
「うん」 
「大丈夫?」 
「ぁ、うん。もう・・平気だと思う」 
そう言いながらレオンが立ちあがった。
「ア、なんか、宙に浮いてるみたい。見てて、おかしくない?」
「うん・・おかしくはないけど」
「なら、いいや、行こう」
最後の拠点を潰すのには、そんなに時間はかからないだろう。
「まだ、だいぶ、歩くの?」 
「2、3時間。かかるかな」
「ぁ・・?そんなに・・」
「ここで、待ってろよ?
戦いさえ終ったらバーニー呼べるし、
そしたら、すぐ迎えに来るよ」
「ううん・・いやだ・・一緒に行く」 
「ふうん」 
クロードが軽いため息をついた。
「平気だよ。少し歩けば感覚戻って来るよ。
行こう、クロード」
レオンに逆に促がされて外に出た。
うす暗さになれた目に外の光が刺すように眩しい。
しばらく佇んでいたがレオンが
「ぁ 荷物、取りに行かなきゃ。クロードも早く」
と、クロードを促した。
「ああ」 
レオンが荷物を取りに行くのをみつめながら
クロードも自分の荷物を取りに行った。
クロード自身の用意が整わなきゃ出発の号令もかけられない。
木陰に置いた荷物を持ち上げかけたレオンが
「ぁ・・水」 
水筒に水を入れてないのに気がついた。
打ちのめされたように哀しくて・・・。
なにもしないであの水車小屋に隠れるのが精一杯だった。
水をいれに行くしかない。
水筒を持ち上げるとずしりと重たかった。 
『ぁ、誰かいれてくれている』 
丁度、側にデイアスが荷物をとりに来ていた。
「これ、デイアスがいれてくれた?」
デイアスがレオンの手に持った水筒をちらりとみると
「クロードだ」 
と、水をいれてくれた主を教えてくれた。
「あ」 
レオンは水筒を抱き締めたまま、ぽろぽろと涙を零した。
『クロードいつも、僕のこと考えてくれてるのに、僕は・・』
デイアスが荷物を纏めながら
「仲直りしたんだろ」
と、かけた声に、レオンは慌てて返事をした。
「うん」
「だったら、泣くな。又 クロードが心配する」
「うん、ありがと」
ぐいっと涙を拭くと、
レオンは水筒を鞄に突っ込んで
急いで鞄を背中にしょうとクロードの元へ走り出した。
荷物をしょいこみ駆け寄ってくる
レオンの足元がまだおぼつかないようにみえる。
クロードは側に来たレオンに
「大丈夫か?」 
と、声をかけると支えように手を廻した。
そして、耳元で
「ごめん。やりすぎた」 
と、小さな声で謝った。 
「ウウン。いいんだ」 
と、レオンが返事をしたが、少し赤くなってしまっている。
その顔を隠すように下を向いた。
クロードは 周りを見廻した。
「よし。出発できるな」 
(いくぞ) 
そう声をかけようとした。
「ん?」
出発の用意もせずにアシュトンがレナと喋っている。 
(なにやってんだ) 
クロードは、アシュトンに忠告を与えた。
「アシュトン 早くしろ!」 
レナもその声で慌てて荷物の所へ駆け寄っていった。
「何しているんだ。いくぞ」 
その声に、アシュトンは鞄の蓋も
まともに閉めないまま慌てて荷物を担ごうとした。
途端にばらっと中身が零れ落ちた。
「なにやってんだ!」 
クロードが思わず怒鳴りつけた。
頭ごなしに何度も怒鳴られると、
さすがにアシュトンもむっとした。 
「なんだよ?さっきからアシュトン、アシュトンって
僕ばっか・・・。レナだっていただろ?
それになんだよ・・」 
言いかけてアシュトンはやめた。
自分の言おうとした事がいけない事だと、
気が付いたからだった。
が、クロードがアシュトンの言葉を聞き流さなかった。
「それになんだよ?」 
少し怒りながら、クロードは先を促がした。 
「なんでもないよ。僕が悪かった」 
アシュトンがそう言うのだから
クロードもそのまま引き下がればよいものを
「言えよ。なんか、後味悪いだろ?気分よくないよ」
そう言われてもアシュトンが言えるわけもない。
黙ったままのアシュトンにクロードがたたみかけた。
「アシュトン。お前そういうとこが駄目なんだ。
いつも口篭もって自分の言いたい事、言おうとしない。
言いたい事ひとつまともに言えないのかよ」
クロードになじられてアシュトンがカッとなった。
思わずぶつけるように言い放った。
「僕には、そんな態度のくせにレオンには随分優しいんだな」
クロードがレオンを庇ってる訳は言えない。
アシュトンの気持ちを静められる言い分けも考え付かなかった。
それに“随分やさしい”というところに
何か妙な含みがあるのを感ぜられた。
「別に、レオンだけ特別扱いしているわけじゃないよ。
まだ体力もそんなにないし」
「本当にただ、それだけで色々庇ってやってるって
言いたいわけ?今だって、そうだろ!!」 
そう言われるとクロードははっとした。
今の場合は説明できない。
「レオンは特別扱い。僕は怒鳴られまくって、面白くないよ」 
アシュトンは続けようとして、言いよどんだ。
「僕がいいたいのは・・」 
はっきり思いを言葉にだそうとしているアシュトンを、後押しするように、
「いえよ」 
クロードにそういわれ、アシュトンは話し始めた。
「僕が言いたいのは皆同じパーテイの仲間だって事。
恋人だからってそんなにあからさまに贔屓されちゃ
気分悪いだろ?」
アシュトンに一気に言われると、クロードは逆にほっとした。 
「知っていたのか?」 
「あ・・・」 
少しアシュトンは先刻の二人の事を思い出して赤くなった。
「ふううん」 
少しクロードは考えて言葉を続けた。
(隠そうとするから、結局、レオンを庇えなくなってしまう)
「アシュトン。君の言うとおりだな。
済まなかった。でも今日は、その、なんだ。
恋人だから、庇ってやりたいんだ」
「だから、それが、面白くないっていってるんだろ」
はっきり言わなきゃ
いったん口火を切ったアシュトンが
引き下がる様子はなかった。
クロードは言いよどんだ言葉を、一気に開放した。
アシュトンにもうすこし近づくと声をひそめて、
「だから、今日は僕がレオンを外させたから、その・・」 
「なんだよ?何をはずさせたってんだよ」 
意味が判らなくてアシュトンは平気で聞き直してくる。
「だから・・・さっき」 
クロードの目が水車小屋の方をちらりと、見た。 
アシュトンもつられてそっちを見た。
「僕がやりすぎてレオンの方が砕けちまったんだよ」
赤くなりながらクロードが答えたのでやっと意味が判った。
ぱかぁと口を空けたアシュトンだった。
クロードにあえてそこまで言わせたこともだが、
余りのどぎつさを逆に平静を装わなきゃいけないと考えた。
「はっ。そりゃ、あれだけやったらレオンも、もたないよな」 
と、答えてしまってから、アシュトンは
(しまった)
と、思った。 
案の定クロードがにらみつけてきた。 
「テメェーーー 覗いてたな。
知ってるっていったのは それでかああ」
アシュトンが手を合わせて済まないというポーズを作っていたが、思いきり向うずねを蹴飛ばしておいて 
「今度 やったらただじゃ済まさないぞ」 
と、クロードは笑って見せた。


レオンのところに戻るとクロードはレオンに
「それもう、はずせよ」 
と、告げた。 
「それって、これ?バンダナの事?」 
「ああ」 
「でも、見えちゃう」 
「いいよ。はじめから、そんなもん、しなきゃ良かったんだ」
「?」 
「隠さなきゃいけないなら、初めからつけなきゃ良いんだ。それに、これは、僕がレオンを大好きだよって証だろ?
なんで、それを、隠さなきゃいけない?」  
「う・・ん」 
クロードはレオンの首からバンダナをするりと、解いた。
赤い印が目に飛び込んできて
クロードは随分、気恥ずかしかった。
「あは、すげェ・・てれくさい」
「そんな事言ったら僕はどうなるのさ」
「いいよ。お前。自分で見えてないもの。
今度。もう少し場所かえとこうかな」 
独り言をいうとクロードはバンダナを広げてみた。
だいたい、地獄まで堕ちようって奴が
こんなのにびびってうだうだ隠そうなんてするから
レオンを傷つけてしまっていたんだ。 
「さもしい根性だったよな 」 
そうつぶやくと、ポケットにバンダナをねじ込んだ。
「なんか、さっぱりしたよ」 
クロードの頬がうっすら赤い。
「あはは」 
照れ笑いを浮かべながら、
それでも、しっかりとレオンを見つめると、
クロードの決意をレオンに告げた。
「ね。レオン。もう堂々としていようよ。
誰に恥じる事もない。お前が僕の恋人なんだ」


少し離れた場所でアシュトンとクロードの諍いを
黙って見守っていたプリシス達だったが、
クロードがレオンの側へゆくと、
「はああ・・良いなあ、うらやましい」 
と、一番初めにプリシスが、ため息混じりに喋り出した。
セリーヌが
「うふふふ」 
と、笑いながら 
「一番、鈍ちんのアシュトンもやっと気がついた訳ですわね。これで、はれて誰一人知るもののない
公認のカップルでございますことよ」 
と、いいだしたので、レナは
「えっ」 
と、聞き返した。
「じゃあ、アシュトン以外、皆しってたの?」
「あら?私、そう言いませんでした?
気が付かない方が・・・ねえ?」
セリーヌがいうとプリシスも 
「そうそう」 
と、合図地をうつ。
「皆、気がついてたわけ?」 
「そりゃぁ。レナは一生懸命、
お二人の事隠そうとなさってたから。
私も知っておりましてよ。なんていえませんでしたわ」  
そう?皆知っていたわけ。
知っていてわざと知らん顔してくれたんだ。
だったら、デイアスは
何故それを教えてくれなかったんだろう。
そしたら、二人の事きずかれまいとして
森に行こうなんてしなかった。
それさえなけり、レオンをあんなに傷つける事も無かった。
「いくぞお・・・」
クロードの号令がかかった。
先頭を歩くレオンとクロード。
何を話しているのか
クロードがレオンをみる、その横顔から
白い歯が惜しみなくこぼれている。
にこやかで、楽しげな二人・・・いつも通り。  
あんなに沈んでいたパーテイも各自が好き勝手な事を喋りながら賑やかに歩いている。
アシュトンはデイアスと並んで歩いていた。
「気がすんだか?」 
と、デイアスにたずねられたアシュトンは
「気がすんだどころじゃないよ」
クロードに言われた事に頭がクラクラしている。
その事をデイアスに告げるとデイアスがクスクスと笑い出す。 
「だいたい。僕がどっじたのも 
元はと言えばあいつらのせいなんだから」 
まだ、あの場面が、アシュトンの目の中から離れない。 
「しかし、クロードもかわったな」 
「嗚呼。驚いたよ。そんなにレオンがいいのかな」
「だろうな。お前も早く意中の人に告白しないと
また、クロードにはっきりしろってけとばされるぞ」
「あ。それで、蹴飛ばされたんじゃないよ」 
まだ痛いや。クロードの奴、思いきり蹴飛ばしやがって。 
「ホウぅぅ?じゃ、なんでだ?」
デイアスにはおおかたの察しはついている。 
「いいだろ・・なんでも」 
赤くなって誤魔化すアシュトンをこれ以上はからかえない。
「ふっ、まあ、いいさ。
これにこりて、二人きりの所にのこのこ近づかない事さ」 
「ウン。ほんとだね」 
そう答えてから気がついた。
「デイアス。あなた、判ってたのねえ・・・・・」
デイアスの笑い声がひびいた。 

ピクニック気分さながら
2時間も、歩き続けてゆくと、クロードが 
「静かにしろ」 
と、言う。
拠点が近い。
荷物を一塊に集めておくと 
「いくぞ」 
クロードが皆に気合を入れた。
戦いがはじまると皆 
「あっ」 
と、息をのんだ。
レナが先頭をきって魔物達の中に突き進むと
凄まじい勢いで魔物たちをなぎ倒してゆく。
張り切っているというより、なんか荒れてる。
手に触れる物、全て、次から次から
なでぎりといっていいくらいに拳がとんでゆく。
魔物の残骸をよけながら、皆、参戦していくが
レナは疲れを知らない鬼神か、なにかのように
拳ひとつで見事に急所をついてゆく。
「はあああ・・・すげえええ」 
誰かが感嘆の声を上げた時には、
あらかた、戦いは終っていた。
逃げ惑い隅に追い詰められ観念した魔物が
反撃してきたときレナの叫びが聞こえてきた。
「地獄へ・・・・おちなさい」 
どうっと倒れる音が響くとレナが振りかえった。
「あら?これで おしまい?」 
呆けた顔でじっと見ているクロードに 
「クロード、バーニー呼んで頂だい。
おなかすいたわ。早くまともなもの食べたいわ」 
と、ポンっと肩を叩いた。
レナは、回復の必要なものがいないのを確かめると、
もう一度、クロードに呼びかけた。
「早く!バーニー呼んで」 
「あ」 
レナの躍進であまりにもあっ気なく片がついてしまって、
クロードも虚を付かれていたが
何事もなさそうなレナの言葉で我に返った。 
「あ・・わかった」 
レナに言われるまでもない事であった。 
「カモ―ン バァニィ―――」 
いつ見ても 謎な生物がどよよーーんと現われた。
荷物を皆が担ぎ直すと、戦いの後が不意に遠ざかった。

ゴーフェイルの町についた。
「はあ」 
地面に脚を降ろすと自然とため息が零れた。
これで長かった旅が終った。
後はこの街の市長に契約金を貰いに行けばいい。
もう夕方が近い。
とにかく宿の手配をして、一汗流して、それから食事。
そして、久方のベッドの上での熟睡・・・
目についた大きなホテルに皆で向かった。
草臥れた足でぞろぞろと歩いてゆく。
まともに返り血を浴びている者も居る。
一行は不気味な集団に見えるだろう。
宿泊を申し込んでも、
これではホテル側に断わられるかもしれない。
一抹の不安を胸に隠して
フロントの前に立つと案に相違して
向こうから尋ねられた。
「失礼ですが、クロード・C・ケニ―様と
御連れの方々でいらっしゃいますね?」 
「?ァ、ええ。そうですが」
「市長から伺っております。
この度は私どもゴーフエイル市民のために
大変な仕事を引き受けてくださって
私どもからも一言御礼を陳べさせていただかなくてはと思っておりました。
引き上げていらっしゃったら
ゆっくり寛いで貰う様にと
市長からの伝言を承っております。
どうぞ、ご遠慮なくゆっくり逗留なさってください。
さあ、御部屋に、案内致しましょう」
部屋係り現われ、テキパキと夫々の部屋に皆を案内し始める。
「あ、すみません。各自の部屋割りを
把握しておきたいのですが」 
「かしこまりました。
後ほど、ルームナンバーと在室の方の御名前を
控えたものを御渡しします。
クロード様だけで宜しゅうございますか?
皆様に御渡しすれば宜しいですか?」 
「取合えず控えを二、三枚。私に、届けて下されば結構です」 
クロードの横でレオンが笑いをこらえている。
フロント係は 
「かしこまりました。
御用事があればいつでも仰せ付け下さい」 
そう答えると、自らカウンターを出て 
「御部屋にご案内しましょう。どうぞ、おもちしましょう」
荷物を受取ると少し前を歩き出した。
聞きなれないクロードの丁寧な言葉に、
レオンはまだ笑いが止まらないらしく
クスクスと笑いながら腕をからめてきた。 
「そんなに笑わなくったっていいだろ」
と、クロードはいいながらレオンの手をつなぎ返した。
「うん」 
そう答えるレオンの様子が心なしか弾んでみえる。
たぶん、手を繋いだせい。
こんな、単純な事ひとつ、
普通の恋人同士みたいに出来なかった。
たったこれだけの事が胸に染み入るほど嬉しくって仕方ない。
そんなレオンの手を固く握り締めると、
ぐっと、握り返してきた。
エレベーターをおりると 
「こちらで御座います」 
と、部屋の前で立ち止まったフロント係は
部屋の鍵を開けると、一歩後ろに下がった。
二人が先に部屋に入ると
ブラインドを開けた窓から
夕闇の迫った空が間近に見えた。
「御部屋のご説明を致します。
こちらがトイレとバスルームです。
私の左て、これがロッカールームになっております 」 
フロント係はロッカールームを開けて見せて
「とりあえず、ここに御荷物をお置きしておきましょう。
それから、こちらに室内用のスリッパを用意してございます」 
フロント係はそこまで言うと振り返った。
二人はいつのまにか寄り添っていた。
フロント係は客扱いを充分に教え込まれていた。
【とと・・・これは気の聞かぬことで】 
ジャラという音がすると 
すぐに自動ロックの扉が静かに閉まりはじめた。
「お客様。お二人に御邪魔な私どもはこれで退散致します。鍵をテーブルの上に置いた事だけお伝えしておきます」
・・・はたして、二人の耳に 届いたかどうか・・・
【クロード・C・ケニ―の恋人は
青い髪の青い瞳の可愛い少年かぁ】 
「ふーん なかなかいいじゃないか」 
独り言を呟くとフロント係はエレベーターのボタンを押した。
【しかし、あの調子じゃ、
先刻の頼まれ物を、いつ渡しにいく?】
「まあ、いいか。馬にけられる野暮はするまい」 
チインと音がして静かにエレベーターのドアが開いた。
エレベーターに載りながら
「ごゆっくり」 
そう、呟くとフロント係はドアを閉めた。

(おわり) 

― エピローグ ― 

*** 扉をあけて ***

部屋に案内されたレナはすぐにバスルームに入った。
すっきりしない。
セリーヌに告げられたことがムショウに腹立たしく、
その後の戦いでは、まるで腹立たしさをぶつける様に、
魔物達をなぎ倒していった。
はあああ スッキリした。
戦いが引けた時は確かにそう思った。
が、部屋に入って一息ついた途端、
気分がいらついてきているのが判った。
「シャワーでも浴びよう」
浴室に入ってシャワーの線をひねって
草臥れた体に湯を当てていく。
「はああ」
皆、レオン達のこと判っていたなんて。
誰一人、レオン達を変な目で見ていなかった。
むしろ二人の恋を黙って見守っていてあげていた。
結局、レナ自身が二人を偏見で見ていたのにすぎない。
貴方達は変。おかしい。
間違ってる。
汚い。みっともない。
だから 他の人もそう思う。
貴方達の事は、人に隠さなきゃいけない事だ。
「私自身が 二人を一番馬鹿にしていた」
奥底にある人の気持ち一つ理解できないで、
何でもない事をわざわざ騒ぎ立てるしか出来ないほど、
卑小な自分の姿をさらけ出しただけ。 
【 惨め・・・】
嫌に成るほどみっともない姿をさらけ出してしまった。
おまけに、さも大儀みたいに二人を隠そうとして、
皆も、きっと馬鹿なレナだと思いながら見ていただろう。
皆が、私の子供振りに目をつぶらなきゃいけないほどだったから、
誰も、私に知っているよ。とは、告げれなかった。 
「あ」  
でも、それでも、何故、ディアス。
貴方、貴方だけでも、何故それを教えてくれなかったの??

髪を洗い終わると手早く身体を洗った。
石鹸の泡が身体を伝い足元に
きれいに流れ落ちるとシャワーを止めた。
急いで身体をふきあげると服に着替えた。
髪の毛をざっと乾かすとレナはデイアスの部屋に向かった。
「デイアス ディアス」 
ノックをする。
何度目かノックでデイアスが現れた。
彼もシャワーを浴びていたのだろう。
濡れたままの髪をタオルで押さえていた。 
「どうした?」 
デイアスは、やや興奮したレナの様子に気がついている。
【デイアスの返事次第では許さない。
皆と同じ様に、何も解らない子供だと思いながら
見ていたんだって言うのなら、二度と口は聞かない。
そんな事を思われながら森の時のアシュトンを
遠ざけるのに協力されていたなら、
あまりにも、惨めすぎる】
レナの様子を見ると、デイアスは 
「入れ」 
ドアを大きく開けた。
レナは一瞬ためらった。
『デイアスと 二人きり・・・』 
躊躇するレナに、デイアスが 
「どうした? 俺が怖いか?」 
と、尋ねて見せた。
デイアスに投げかけられた言葉に、
レナは自分の心の内をみすかされまいとして
言葉きつく返した。
「馬鹿みたい。
なんで、私が貴方を怖がらなきゃいけないのよ」
デイアスは、レナの為に開け放ったドアを
軽く引き戻しながら 
「だったら中にはいれ」 
と、レナに向きながら、椅子の方を顎で杓った。
とに角、そこにでも座れ。
と、いう事だと判ると
レナはテーブルに歩み寄った。
デイアスはクーラーの扉をあけると、
ビールを取り出し栓をぬくビンごと、
ぐいと一口のむとレナに尋ねた。
「何かいるか」  
「同じ物でいい」 
と、告げると、デイアスはグラスを取り出して、
もう一本ビールを開けレナの前に置いたグラスに
注ぎながら、レナに尋ねた。
「で、何を聞きたい?」 
レナがふかぶかと椅子に腰を懸けると切り出した。 
「貴方。レオン達の事を皆が知ってるって、
解ってたんでしょ?」 
 が、
「―――――」 
デイアスが黙っている。 
「何故、教えてくれなかったの? 
教えてくれていたらレオンをなかせることも無かった」
「―――――」
 やはりデイアスの口は閉じられたままだった。
「いったい、貴方、何を考えているの?
アシュトンが森について来ると言った時、
私、貴方もレオン達のこと
庇って上げようとしているんだと思った。
でも、違うわよね。皆、知って居たんだもの。
庇う必要なんかない。
貴方がそれに気がついてないわけない。
皆二人の事知ってたのに、
私一人何も知らないで、馬鹿みたいに、
気がつかれちゃいけないって、じたばたして。
私のことオカシカッタ?まるで、ピエロみたいよね」
黙って聞いてたデイアスだったが、
一息にビールを飲み干すと 
「もう いい加減に 解れよ」 
と、答えた。
「なにを 解れっていうのよ?」 
答えをはぐらかされた様でレナの目が厳しい。  
「もう、いいだろう?俺は、始めから
レオンやクロード達の為になんか、動いちゃいない」
デイアスの瞳がレナをほだすように見つめてくる。 
「ぁ・・あの」 
デイアスの瞳が、ただレナ、お前のために動いたんだ。
そう語りかけてくる。 
「ああ・・あの」 
「お前も、それを確かめたくてきたんだろう?」 
「ち、違うわよ」 
「だったら、俺がお前をどう思っていようが、
気にする必要なんかないだろう?」 
瞳の奥まで覗き込むように、見つめてくるデイアスが、
レナが返す言葉を捜すより先にたたみ掛けた。 
「俺に同情されたくない。
馬鹿にされたくない。
他の皆と同じ思いで見て欲しくない。
デイアスだけはちゃんと私に特別な思いをかけてくれていたはず。
なのに同情だったら許さない。
そんなものならいらない」 
「あ・・・」 
デイアスの言うとおりだった。
「レナ。もう、お前自身の気持ちは
お前が一番、判っているだろ?
気がついていて、いつまで俺から逃げる?
いつまで俺を待たせる?」
 静かに瞳を閉じたデイアスが、もう一度瞳をレナに向けた。
もう自分を誤魔化す事は許さない。
デイアスの瞳がそう語っていた。 
「お前だけをみていた」 
デイアスの腕が広げられると
レナに飛び込んで来いと手をこまねいてみせた。
「レナ 来い」
自分からの一歩を真剣に望んでくれている人が、
他ならぬデイアスであったことにレナは頭をたれた。
「私からいかなきゃいけない?
ねえ、それでも、やっぱり、私。
これでも 女よ・・だから」 
レナの言葉が終らぬ内にレナの身体が
デイアスの腕の中に包まれた。
「だから?」 
耳元で囁くように尋ね返すデイアスにレナは
「だから、貴方から、こうしてくれなきゃ・・・。
レディに失礼よ」 
レナが答えると
デイアスが顎の下に手を差し入れて
レナをキスに引寄せてゆくのが判ると
レナは静かに、ゆっくりと、そして確かに瞳を閉じた。

―終―












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