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SO2シリーズ
作:憂生



キープ・ユー・2


(あぁ、昨日の事、夢じゃない)
確かな温もりがすぐ傍にある。素裸の身体。
(クロードの嬉しげで満足な顔見てたら、僕もなんか嬉しくて、ほっとしてそのままクロードに抱かれたまま…寝ちゃったんだ)
レオンは起きて服を着た。
(クロード…もう、僕だけのクロード)
「ねぇ、起きてよ。クロード」
「…」
「もう、起きて。僕お腹すいた」
昨日、まともに食べてないのさえ、忘れていた。
レナの事でショックを受けて、それから、突然の展開…初めての快感。
…それだけじゃなかった。
帰って来たクロードにあんな…初めての経験。
わあああっと時間が流れた。
今、それが夢じゃないと判ると、昨日から張り詰めていた神経が緩んだ。緊張がほどけてホッとすると、やっと、お腹が空いているのに気付かされた。
「ねぇってば、もう…起きて。お・き・て・もう、クロードォ」
「レオン、もう少し寝かせて」
「や、僕お腹空いた」
「先にひとりで食べといでよ」
言ってる事は冷たいけど優しい響きがある。
でも僕も独りで食べて、クロードも独りで眠るの?
「やっぱ、いい」
クロードといる方がいい。もう少し後で食事したっていい。クロードと一緒に眠って、一緒に食べる。だって僕達…
「あのさ、皆に伝えて欲しいんだ。もう一泊するって。だから、レオン食べといでよ」
少しはにかんで、そう、言われた。
「あ、あぁ。じゃ、行って来る」
一泊、その言葉に秘められた意味に俯いた。
僕達の秘め事の為に、勝手に予定を変更する。
変更を告げるのさえ、何か気恥ずかしい気もする。でも言わなきゃ、皆が困るよね。
眠たげなクロード。クロードもほっとしたんだ。
「うん。…判った」
でも、
(すこし淋しい)
クロードの傍に寄った。
クロードが僕を引っ張ってキスしてくれた。
「食べといで、お腹空いてるんだろ?いっぱい、食べといで、ん?ねっ」
部屋から出て階段を降りた。まだ…僕も眠い。
「ふあぁ」
あくびが出てくる。
手であくびを押さえながら、ゆっくり階段を降りた。少し、クロードとの痕に響く。
でも、これも、クロードに愛されたせい…。

「レオン、おはよう。クロードは?」
レナが僕に気がついた。
「レナ、おはよう。あのね、クロードまだ眠いって、あの、皆にもう一泊するって、伝えてって」
「あら、そうなの?皆、もう一泊よ。判ったぁ?オッケイ!!」
レナが確認を取ってくれたので、レオンはメニューボードを読み始めた。
ベーコンエッグかオムレツ。ボタージュかコンソメ。サラダ。パン。バターかジャム。コーヒーかジュース。チョイスした方を給仕のボーイに告げて、席を探した。
皆と離れた隅の奥の席に決めた。誰の傍にも寄りたくなかった。今はクロードだけの自分を、感じていたかった。席に座る時も、やっぱりツウゥと痛みを感じた。どうしょうもなく、自分がクロードのものだと思う。
痛みが、『そうさ、こうやってクロードに愛されたんだよ』そう言ってる気がする。たまらなく自分が愛しい。あぁ、こんな自分も全てクロードのもの、僕はクロードのもの、クロードのものになれたんだ。
自分の中に浸りこんでいるレオンの目の前に、スープが置かれる。
「あっ」
次が運ばれて来た。
チュッ、そんな音をさせて、ベーコンから油が染み出てる。熱そう。ベーコンの焼けたにおい。おいしそう。
「いただきます」
そう言って食べ始めた。
クロードとそうなれて初めての食事。
だからなおさら、こんなに美味しい。僕、このベーコンエッグの味、きっと忘れないだろうな。
随分お腹が空いていた。キレイにたいらげると、搾りたてのオレンジジュースが運ばれて来た。
いいタイミング。飲み終えると、
「レオン」
レナが手招きして呼んでいた。
「なに?」
子犬が転げるみたいに、レオンがレナの傍へ走って行く。
「ん?」
小首をかしげて、くるくるした目でレナを見つめた。
「ちょっと」
レナが自分の首に巻いていたバンダナを外すと、レオンの首にきれいに結んだ。
「はい。これでいいわ」
気がついてない様子のレオンに言おうか、言うまいかレナは迷った。
「あの」
口篭もるレナに、
「何?」
素直に聞こうとするレオンだった。
(これだから、かわいい)
レナもそう思う。
「あっ、あのねレオン。皆の前でクロードって呼ばない方がいいかもよ。皆に判っちゃうよ」
レナに言われた事を聞くと、レオンが真っ赤になった。
(レナには僕がクロードとの間に何があったか、判ってるんだ)
昨日の夜の事も、何もかも知られているように思えて、レオンはレナの顔を見れなくなった。
「もう、いいわよ。レオン。クロードの所へ早く行きたいんでしょ?」
俯いたままの顔がこくりと肯くと、レオンが走り去った。
レナはその姿をじいっと見送った。
「かわいいわね…」
クロードの傍へ行きたい一心のレオン。
そして、レオンのあの首の赤い印。優しくて、容易周到なクロードが、あんな見える場所に印を残してしまうなんて、我を忘れるほど、レオンに夢中になってる。
クロードがそんなにまで夢中にさせてしまうレオン。私ったら、とんでもない子と張り合いかけてたのかもしれない。レオンと張り合っていたら、どうしても勝てないレオンの魅力に、自分の存在がズタボロになっていたかもしれない。あれほど、クロードが欲しがるレオンと振向いてももらえない自分。自分に無いものいっぱい持っているレオン。レナも未練でしかないのは、よく判っている。
(だけど、なんか淋しくなっちゃうよね)
レナは、同じ言葉をぽつりと呟いた。
「可愛いわね。レオン」


「?」
レオンは鏡の前で首を傾げた。レナが結んでくれた、バンダナが見たくて鏡の前に座った。
そこに映っているものは綺麗に結ばれていたけど、レオンの服には全然マッチしてなくて、似合わないのを通り越して、むしろ奇妙だった。
「?」
レナのセンスはあっさりしていたけど、色の組み合わせが素敵で、時にミスマッチと思う色の組み合わせも上手くこなして、こんな着方もあるんだ、と思わせる程上手だった。
でも、このバンダナの色は頂けない。レオンは迷ったけれど、折角レナが結んでくれたのだ。と思うとそのままにしておく事にした。

「クロード、ねぇ、クロード、起きて」
と、呼びながらレオンは慌てて辺りを振向いた。
クロードとレオンの二人しかいるわけがない。
レナの言葉を思い出したのだ。クロードと呼ぶ事は僕がクロードのものになったんだって云っているのと同じ事だって、レナはそう言いたかったのだ。
クロードのものなった喜びを味わうように、レオンはもう一度クロードの名を呼んだ。
「うぅん…なんだよ」
やっとクロードが目を開けた。
しどけない顔で覗き込んでいる、レオンがいる。
レオンが…。僕のレオン。とうとう手に入れた。
昨日の愛しさがクロードの胸に渦巻く。
(お願い 僕を離さないで)
そう言うと僕を引寄せた。
「レオン…」
レオンに手を延ばしかけた。
「あれ?お前。朝からなに赤くなってんだよ」
自分の胸の内をレオンに察せられた気がした。
朝からレオンを抱きたくなってる自分への気恥ずかしさとレオンがそれに気が付いてるらしげなのにも照れた。そしてレオンが赤くなるという事はレオンも…満更その気がない訳でもないのかもしれない。
(僕のものになったんだぞ。おまえ、セックスされたんだぞ)
自分のものにするための作業の効果をもっと、感じたかった。もう少し卑猥な冗談を言って(そう例えば…「赤くなって、もう、して欲しいのか?」とか…)それを本当にしていい、特別な冗談が言える『仲』になったんだって、レオンにだけ言える、レオンにだけ通じる冗談。【僕達】になったことの確認。
レオンに何か言おうとしたクロードが、気が付いた。
「あれ?…何だよ?そのバンダナ、似合ってない所か、変だぞ!」
「あっ、これ?うん…。レナがさっき巻いてくれたんだ。僕もレナにしちゃ変なセンスだと思ったけど、折角、レナがって思って」
「ふぅぅん?でも、外しとけよ。変だ」
言いながらクロードは、バンダナの結び目をほどいてやった。スッと引張るとレオンの首筋からバンダナが抜けた。その抜けた場所に鮮やかなキスマークが残っていた。
「あっ」
クロードはどぎまぎした。自分がどんなにレオンに溺れているか、その溺れ振りを赤い印が鮮やかに語っていた。同時にレナが、この醜態に気が付いて慌てて隠してくれたのだと解った。でも、当然ながらレナに見られている。レオンをどんな風に嬲ったか、クロードのその様子を見られたようであり、クロードしか知らないレオンの吐息を覗かれたようでもあり、恥ずかしくもあり、口惜しかった。
迂闊だった。
「どうしたの?」
はぁぁと、溜息をつくクロードを見てレオンは怪訝に思った。
「鏡見てこいよ」
と、クロードはレオンに言う。
(僕のものだ)赤い印がクロードの代わりに叫んでるのを見たら、レオンはどう思うだろう。
「?」
鏡の前に立ってみるとレオンの白い首筋に赤い痣のような物が付いている。
(あれ?痣…)
それがどこで着いたか判らない。
「どこで打ったんだろう?こんな所、覚えてない…」
クロードは可笑しかった。
「僕が着けたんだよ」
そう、レオンに告げるが、
「クロードが?いつ?えええー叩いたっけ?僕のこと」
気が付いてないレオン。
「ええーどこで?」
クロードは真面目に答えた。
「風呂場で、昨日」
「?」
首を傾げて考えている。
…だってお風呂って、あんな事してて、クロードがこんな所叩いたら、痛いよね。それにこんな所叩いたりするわけない。死んじゃうよ…
突然思いついたのか、レオンが赤くなった。
―すぐ顔に出るんだから、可愛いー
クロードは思いながら、黙って待っていた。
…思い当たった…
クロードの舌がうなじを這い、そして、首筋を強く吸われた。痛いような感覚と目眩のするような感覚があった。気持ちの良さとは違う、別の感覚があった。
(あ、あぁ…)いつのまにか声を上げていた。
その場所と、同じ場所に出来ている痣…。
でも、あれで?
「あっ、あの、あの時の?それで、こんなになっちゃうの?」
クロードが頷いた。
「ふぅーん」
鏡を見ながら
「でも、綺麗だね。それに」
と、レオンは黙った。それにクロードに愛されてる証を身につけているみたいで嬉しかった。
「『それに』なんだよ?」
と、促がすと、レオンは照れくさそうに
「なんだか嬉しい」
と、付け足した。
『ワ―ォ』って気分だった。それを聞くと先程レナに思った口惜しさがくるりと引っくり返った。心配かけたし報告すべきだろう。御礼も言っとかなきゃ、こいつとこうなれたのも、レナの正義の鉄拳のおかげでもあるし。
「レオン、レナ、まだ下にいた?」
「うん。いた」
「ちょっと、飯食って来る。それと、バンダナかせよ。返しといてやる。うん、少し話しときたい事あるし、ちょっと遅くなるかな」
「クロード、一人でいくんだ」
レオンが少し、淋しそうな顔をする。
「うん。お前がいたら、お前のこと、レナに話すの、照れちまいそうだから…」
そう言われるとレオンは黙った。
僕達がどうなったかレナに話すんだ。クロードの口からそれを言う事で、レナがパーティの一員にしかすぎないことを宣告するんだ。
レナ、ゴメン。でも、もう僕、クロードを譲れない。どんなに、君がクロードを好きでも、絶対僕クロードを離さない。クロードも同じ。
(離さないで、僕を抱いてて)
あの瞬間に、僕は身も心もクロードのものになった。けど、同時に、クロードも、もう、僕のものなんだ。
黙りこくっているレオンにクロードが言う。
「すぐ、帰って来るよ」
それから先はレオンの耳元で囁かれた。
「シャワーでも浴びとけよ」
そう、言い残すとクロードは階下へおりた。

クロードが食堂にきたとき仲間は誰もいなくなっていてレナとディアスだけが、何か話し込んでいた。どうしょうか迷ったが取合えずバンダナだけは返すことにして、レナの傍に近寄った。
気が付いたレナが
「あら?クロード。地獄の番人に見つかるわよ」
と、皮肉な言葉をかけてきた。
クロードも開き直って、
「いいさ。そうなったら番人と二人でレオンも連れに行くよ」
と、答えて見せた。
「ハァー」
レナが感心している。
余程、仲が深まったせいなのか、強くなった。ゆるがない。クロードはバンダナを
「これ、ありがとう。それから昨日の『地獄へ落ちろ』ありがとう。きいたよ」
と、差出した。
レナは綺麗に畳まれた、バンダナを見つめると、
「あは…」
ちょっと困った。バンダナは、貴方達のしてる事、判ってるのよ。と、メッセージを送ったみたいだった。バンダナなんかせずに気が付かない振りしてたほうが親切だったのかもしれない。
ここは下手な言い分けをしない方がいい。
そう決めると、
「どういたしまして」
それだけ言うと、レナはバンダナを受取った。
ディアスはコーヒーを飲み干すと静かに立ち上がってその場を離れた。
クロードはディアスの後姿を見送りながら、
「相変らずだな」
と、呟いた。
「あんまり、関りたくないのかなと思ってたら肝心な時には、ちゃんといてくれるのよね。ディアスも貴方達の事気が付いてるのよ」
「彼は、他の人に喋ったりしないよ」
「そうね」
「あっ、あの」
二人が同時に喋りかけた。しばしの沈黙の後、
「クロード先に言って」
と、レナが切り出した。
「あっ、いや、レナの方のを先に聞きたい」
「あっ、私は聞かなくてもよい事聞こうとしてただけだから。別に」
「だったら、僕も話さなくてもよい事を、話そうかなって」
「じゃあ、これじゃ、へんだよね?私の方はね、どうなったの?って聞こうと思ったんだけど、こんなバンダナ渡さなきゃなんない、その…『あれ』見といて、どうなったの?何て聞くの、お節介と言うか、大間抜けといっていいか…。それだけ」
「僕も同じかな。レナだって僕達がどうなったかアレ見りゃ判ったろうから、何も言わなくてもいいかな?って思ったんだけど、心配かけてしまってるから、やっぱ、話しとかなきゃって思って」
「ああ、でも、もう二人のことに私がどうこう言う気ないし、そりゃあ、気になるわよ。あれ見たって、それだけなのか、えっと…ちゃんと、最後まで言ったのか、わかんないもの。でも、そんな事聞くなんて失礼じゃない。それに、私が聞く必要もないし…」
「最後まで、いったよ。レオンは最高だったよ」
「えっ」
クロードが余りにあっさりと、あからさまに言うのでレナがあっけに取られる。
やっぱり、今までのクロードじゃない。幼いレオンに性を強要した、そんな翳り一つない。それどころか、クロードも大人に対するように求め、レオンがそれに充分応えた。と、暗にいう。
「レナのおかげだよ。感謝してる」
レオンがどう応えたか判らないけど、そんなに求めたかった、レオンへの堰をとってくれたレナに、感謝しているという。どこか、切ない気分を味わいながら、二人がそうなった事が判ったら、もうこれ以上、話す事もなかった。
「あっ」
やっと気が付いた。
「クロード、貴方、朝食まだでしょう?もうオーダーストップかかっちゃうわよ。朝のメニューがボードに書いてあるわ。どっちか選んで、早く食べてレオンの所に行って上げなさい。帰って来るの、遅いって、泣くわよ。あの子」


「いい加減、うだっちゃうよ」
レオンは一人でシャワーを浴びていた。
クロードが帰って来たら、すぐ入って来るかも、そう思うとすぐ出る気にはなれなかった。クロードの腕に抱かれて、あの肌を寄せられた感覚。肌を重ねて僕を守ってくれてる。なにか、そのまま、彼に自分を委ねればいいって、そんな安心感を与えられた。
(なのにー待ちくたびれた)
レオンはかなり長い間シャワーにうたれていた。
「嘘ばっか。すぐ、帰って来るって言ったのに」
レナとまだ話してるんだろうか?
レナはキレイだし大人だし話していても楽しいだろう、クロードだって、きっとそう思ってる。
レオンはタオルをとると体をふき服を着た。
あっ、この服じゃ見えちゃうんだ。が、適当な服は見当たらない。このままクロードの所に行ったら、クロード怒るかな?誰かに見つかっちゃうかな?迷いながらレオンは部屋を出た。
階段の下まで誰にも会わなかったが、玄関の方からアシュトンがにこにこしながら、入ってきたのが見えた。レオンは慌てて手で首筋を抑えた。
「アシュトン、何か見つかった?」
レオンが先に声をかけると、
「いいや、駄目さ。後でもう少し探して見るよ。じゃな」
アシュトンは部屋に戻るらしく、そのままレオンの横を通り過ぎて行った。
食堂に入るとクロードが食事をとっていた。
レナがクロードの前の席に座っていた。
「レナ。クロード」
レオンの声に気が付いたレナは、
「ほら見なさい」
と、笑った。近寄って来たレオンが、
「クロードまだ食べてなかったの?」
と、聞いた。クロードは、レオンを見た。
まだ、シャワーの残り香がする。
「クロ…」
僕も何か頼んでいい?
そう聞きかけたレオンが、慌てて、
「お兄ちゃん、あの、僕も」
と、言い直した。レナはくすくす笑った。
「レオン。私の前で気にしなくてもいいわよ」
クロードは黙って二人の遣り取りを聞いていた。
レナも黙った。
レオンが『クロード』と、そう呼ぶのはレオンが彼を、恋人として意識したせいだけじゃなかった。
クロードに大人の様に扱われ、熱い吐息の中から彼を、クロードと呼び始めたのは間違いない。レオンがもう彼を『お兄ちゃん』と、呼べる訳がない。クロードにもそれが判っている。黙ってそう呼ばれる事でクロードも『特別なレオン』になった事を感受している。
そう思うとレオンがこともなげに、クロードと呼ぶのを聞くのは、レナにはちょっと辛い事ではあった。
「ぁ、あん。あれ?クロード、コンソメなの?」
「うん」
「ええぇ?ここのポタージュ、おいしかったよ」
「これも、おいしいよ」
「どれどれ」
そう言うとレオンが、コンソメをスプーンにすくった。見なれた光景だが、今日からは慣れ親しんだ恋人同士のさまに見える。
「ぁ、ほんと」
スプーンを返す時、レオンがクッと手を伸ばした。その拍子にレオンの首筋の鮮やかな印が、レナの目に飛び込んで来た。
あまりにもくっきりと…。
「あっ」
思わず息を飲んだ。『みてはいけないもの』に、レナは思わず目を伏せた。余計な事かもしれない、でも、たった十二歳の子がそれをつけさすことを許している。クロードがレオンにどうしたのか、淫猥な想像さえ、浮かび上がる様だった。
「やっぱり、いけない。レオン見えちゃうよ」
「うん判っているんだけど、ないんだ」
レナはさっきのバンダナを見た。
この服にやっぱり似合わない。
「待ってらっしゃい。探してきてあげるわ」
レナは部屋に戻った。
レオンに嫉妬している自分がいる。
おまけにあっちの方でも最高だったなんで、それをぬけっとクロードに言わせてしまうなんて…。
なんか、私、自信なくしちゃったな。そんな事を思いながらレナはもう一度、食堂に戻るとレオンにバンダナを渡した。
「これなら、いいわ」
「まいてあげよっか?」
「うん」
すなおにレナの傍によって来る。
「はい。おーけー。しばらく、その格好だね。レオン、気を付けなきゃ、駄目よ。レオンがよくても、クロードが、皆にレオンに何やったんだって思われちゃうよ」
「うん」
「じゃね。私はもう退散するネ」
二人に当てられていても仕方ないと、レナがそそくさと立ち去ると、朝食を食べ終え、コーヒーを飲んでいたクロードはレオンに問いかける。
「待ちくたびれた?」
「くたびれた」
レオンの案の定の答え。
クロードは辺りをゆっくり見まわして、人影のないのを確認すると、レオンの手を引っ張った。
レオンがスッと傍へ寄って来る。
そのままクロードはレオンに深いキスを与えた。レオンの体の力が抜けてゆく。しばらくディープキスに酔わせておいてから唇を離した。
クロードが、
「続きは部屋に帰って…」
と、言うのと、レオンが甘えた声で、
「早く部屋へ戻ろう」
と、言うのが同じだった。

食堂から出たレナが振向いた時。クロードがレオンの手を取るのが見えた。気になって、二人の気が付かない角度の廊下ごしから、そっと二人を見てた。
…長い…キス…。
「(人の気も知らないで)まったく」
そう小声で言うと、
「『まったく』どうした?」
と、後ろから声をかけられた。ふりむくとそこにはいつのまにかデイアスがたっていた。
「ディアス!いつから、そこにいたの?」
「お前が、振向いた当りからかな」
「じゃあ、ずっと?」
「随分、羨ましそうに見ていたから、声はかけなかった」
「嘘、羨ましくなんかないわよ。只、ちょっと」
レナは言いよどんだ。
クロードに愛されていると言う事でなく、レオン自身が羨ましかった。クロードをあんなに変えるほどのレオンの愛らしさ、いじらしさ、一途さが羨ましかった。
「別に、キスしているのが羨ましいわけじゃないわよ。あんなに夢中になられてレオンも幸せだなって…。只それだけ」
「俺も、お前に夢中なんだがな…」
「エッ」
今、何て言った?ディアスが言った言葉が意外すぎる。聞き間違いよね?たぶん、そう。ディアスがそんな事いう訳ない。…私どうかしてる。
「あの…」
いない。
ディアスはいつのまにか姿を消していた。
「…もう。いつも、こう」
ディアスに思われているわけなどない。デイアスへの淡い恋をそう諦めた心にクロードが飛び込んで来た。年齢も近い、背伸びせず好きになれる。そう思ってたのに、結局クロードの方が大人だった。レオンとあんなこと…。
(さっきのディアスの言葉が本当なら…(それを確かめる勇気もないくせに…))
でも、ディアスだって同じ、只、それを抑えていられる分だけクロードよりもっと大人なんだろう。
けど、私、レオンのように自分を投げ出せない。
それをする事は自分をなくしそうで怖い。我を忘れるほど夢中になれるのも、夢中にさせてちゃんと受け止められるのも、そのどっちも出来そうにない。
(弱虫だよね)
レナはそうっと、小さな声で
「ディアス」
その名を呼んでみた。どこからかまたディアスの「なんだ?」そんな返事が聞こえそうな気がしたが、ディアスは現れなかった。

レオンとクロードが食堂から出て来るのに気が付くと、レナは慌てた。そのまま階段を上がれば、まだ、いた事が後姿で気づかれてしまう。
(いいか…。少し散歩して、それから部屋に戻ろう)
二人をやり過ごす為にレナは玄関に向った。
一歩外に出ると、朝の光が緑を濃くした木々に反射してレナを照らした。
(うーん。さわやか)
散歩も悪くなさそうだった。
ぐるりと辺りを歩き回って、もういい頃だと思うとレナはホテルに向きを変えた。
階段を上り詰めたレナが部屋に戻ろうとしたとき、向こうの廊下にアシュトンがいるのが見えた。
「あら?アシュトン。何してるの?そんな所で」
その場所は、確かレオンたちの部屋の前だった。
レナは、(もう、無粋な人)と、思いながらアシュトンに近寄って行った。
「う〜ん。あのさ、なんか、ヘンなんだ」
「?」
「ちょっと、今、聞こえないけど。レオンの声だと思うんだ。なんか苦しそうな声が聞こえるんだよ。どっか痛いのかな?にしちゃあ、クロードが医者を呼びに行くわけでもないし、皆に言いにこないだろ?クロードもなんか言ってるんだ。けど、レオンが我慢してる?放って置いていいのかな?僕、医者をフロントに言ってこようか?でもクロードがついてて、医者がいるか、いないか、判断できるよな?」
そう、言い終わった時、レオンの切なそうな声が聞こえてきた。
「あっ、ほら、また」
「!」
聞こえて来たその声がどういう事か、アシュトンには判らないんだ。と、レナは気づいた。
「あっ、あぁ。アシュトン、大丈夫よ。そう言えば、さっき少しお腹が痛いって、言ってたもの。それにアシュトンの言うとおりクロードがついてるのよ。大丈夫よ。勝手なことして医者呼んだりしたらクロード怒るわよ」
この場を何とか繕って、アシュトンの気を反らすしかない。レナはそう判断した。
「…う〜ん。判った」
「レオンの事、心配なのね」
「そりゃ、当り前だろ。レナだって気になるだろ」
「そりゃあね。でも、クロードがついてるし…。それに男の子じゃない?だから男同士の方が言いやすいとか、判りやすいってことあるでしょ?私だってセリーヌとかプリシスの方がいてくれてた方がいいもの。レオンだってクロードがいてくれた方がいいんじゃない?」
アシュトンは痛い所を突かれたという顔をして、
「そうだよなぁ〜。僕たよんないしな」
と、呟く。
佳境に入ってきたのか、レオンの声が繰返し聞こえる。
(もうー!いったい、いつまでやってるのよ)
とにかくアシュトンをこの場から追いやるより方法がなさそうだった。
「ねぇ、アシュトン。下降りて、コーヒーでも飲まない?久し振りにアシュトンと話ししたいし…。聞きたい事もあるの。教えて!」
レナが、下手に出て頼むと、アシュトンは振向きながら、
「ウン。わかった」
と、返事をした。
階段を二人で降りると、アシュトンは明るい踊り場に出た時びっくりした様に言った。
「レナ?顔赤いよ。熱があるんじゃない?」
レオンの声を聞いて赤くならないのは、アシュトン、あんたぐらいよ。レナは心の中で呟きながら、
「あっ、大丈夫よ。さっき、お酒飲んだから、そのせいよ」
と、あわてて誤魔化した。
(あたし、次から次、出任せに何言ってんだろ?)
つじつまを会わせる為といえ、レナの自身の人格にも関わる事である。
「レナ?どうしたの?そりゃ、お酒ぐらい飲んでもいいけど。まだ、朝だよ。人は見かけによらない…」
「なんですって」
そんな朝から何かやっている人のお陰で、私か朝から酔っぱらいにされてるのよ。そう言いたい言葉を抑えながら、やはり、『とんでもない女だ』と、思われたことにレナは思わず声を荒げた。
「レナ?何かあったの?」
レナの妙な様子にアシュトンは尚心配そうに尋ねた。
「下でゆっくり聞いてくれる?」
気のいいアシュトンは、今度はレナが心配になってきたようだった。


クロードはやっと部屋に辿りついた、まるで、そんな感じだった。レオンも『部屋に行こう』そう言った。けれど、階段の所になると、
「あの、少しゆっくりいって」
「?」
「ぁ、あの、何ともないんだけど。なんかの拍子に、その…ちょっと、痛みが」
それだけ言われたら、クロードには何の事かすぐ判った。
「だいじょうぶ?」
「ウン。ぁ、あの、ほんと、なんともないんだよ」
そう言ってレオンが赤くなった。
はぁーん。それでもう一つ判った。
『痛い』って言ってしまったら、『無理するな』、そう言われて抱いてもらえなくなる。
レオンが逆に『なんともない』って言う事は、すなわち『クロードを望んでいる』と言ってることになる。それで赤くなったのか。少し、不思議な気がした。昨日の科白にしろ、今にしろ、そんなに早く、抱かれたいって(痛かったろうに)思う様になれるんだろうか?
「ねぇ?レオン。あの、そのそんなに早く…。あの、痛いだろ?辛くない?」
抱かれる事が、そう言わなくてもレオンが察した。
「あの、痛いのも…嬉しいんだ」
「えっ」
「あ、変な意味じゃなくて。それも、あの、クロードに抱かれてるからなんだもの。だから、痛いのも嬉しい」
「……」
このままその場でレオンを押し倒して抱いてしまいたい。クロードはそんな衝動にかられ、随分部屋が遠くに感じられた。
部屋に入ると、
「シャワー、浴びて来るよ」
そう言ったもののクロードの体は動かなかった。
早くレオンを抱いてやりたい。昨日のレオンの…奥の方で何か鈍く気持ちいいみたいなものがある…その言葉で思わずもう一泊しようと決めてしまったけど、やっぱり、猫にされてしまったショックやら、あの部分の痛みとか考えると、しばらく無理だな。クロードは内心で、そう、思っていた。
痛みに耐えた姿も意地らしくて体を寄せて、そっとレオンのものを弄ってやるだけでもしてやりたかった。でも朝起きて見て見ると猫にされたショックの微塵の欠片もみえない。昨日と変らず嬉しいというし、心配した痛みさえも『嬉しい…』。
おまえこんなちっちゃいくせして、僕のこと、なんでも受けとめちゃうんだ。
おまけに僕のことの痛みでさえ嬉しい。
…そんな事、言う。
(ああレオン、レオン。僕のレオン)
レオンを抱き寄せた。しっかり抱き締めてキスを与えると華奢な体をクロードにすっかり預けて来た。そのままベッドに倒しこみ、ゆっくりシャツのボタンを外すと、バンダナもといた。レオンを生まれたままの姿にすると、クロードも服を脱いでレオンに体をよせた。
「レオン、怖くない?」
「うぅん」
レオンの小さな体を眺めた。この、小さな体で何もかも、受けとめてしまう。愛される事を望む、十二歳の少年の愛欲。レオンという名の不思議な生き物。大人だったらクロードをここまで感受しただろうか?レオンのまだ少年らしい性器が一人前に勃起している。それが、もう女を知る事はないだろう。
それを僕が許さない。
猫にしたててやる。痛みでなく快感に喘ぐ、僕だけの猫。僕だけを求める猫にしたててやる。
レオンのもの。それは僕が味合わせてあげる。
ほうばりやすい、可愛い性器。
いきなりスピンをかけたら…離れられなくなる快感、味わうだろうな…。

さぁ、レオン、どうしてあげよう?
クロードはレオンのものをじっと見ていた。
レオンのものが愛撫を待つように上を向いて、じっと堪えている。やがて、レオンが自分のものを見られているのに気が付いた。
「いや」
そう言うと、身体を横に向けた。
「レオン見えないよ。さっきみたいにして」
「いや…恥ずかしい」
「いいからさ。可愛いんだ」
そっと先の方だけ包み込めようにくわえると、レオンの形をなぞる様にちろちろと舌を動かして、レオンに声をあげさせた。中心の小さな穴に舌をさし入れるようにして、その部分をくるくる円を描くようにしてやると、新たに滲んで来る、愛液のツルッとした感触と希釈した生理食塩水に似たような味が、舌に絡んだ。
クロードの辛抱が切れた。
「レオン。僕のを舐めて」
クロードの声が切ない。体を入替えるとレオンが先程クロードにされた様にやってみた。
クロードのものが、時折、反り返るようにピクリと動く。
(いいのかな?)
レオンはそう思う。
「レオン。もっと、深く入れて欲しい」
レオンはそうすると、口を上下させ始める。
(まだ、この、方法しか教えてないんだっけ)
そのうちレオンの口の中なら、グチュという音がした。レオンの口の中の唾を、そのままクロードのものに伝えすべらす事が出来ないでいる。
(まだ、遠慮している)
レオンが溜まった唾を飲み込む為に、クロード野物からゆっくり口を外そうとしているのが判った。
(まだ、判ってない。それが必要なのに)
ゆっくりと、レオンの口がクロードの物の先まで来た時、クロードの手がレオンの頭を押さえ込んだ。レオンの動きを止めると、わざとクロードはレオンの口の中で自分の物を軽く動かしてやった。クロードに動かされると、レオンの唾液は口の中に止められず、そのままクロードに伝った。
クロードはそれが感触で判ると起き上がって
「レオン。後ろをむけよ」
と、告げた。
レオンが言われるままに、後ろを向いた。クロードがレオンの腰を引き寄せてやるとレオンは自然と四つん這いの格好になった。
「レオン。いい子だ:::」
そう言いながらクロードはレオンの腰に手を廻した。これで逃げられない。痛みから逃げても、この手で無理やり引き戻す。慣れさせてやる。
そして、いつかこの部分でお前が喘ぐ。
レオンの唾でぬるぬるする物をレオンの局に宛がうと、ぐうぅと押し込んでやる。同時に押えた腰をクロードの物に向けて引き寄せてやる。
やはり、かなり肉の抵抗がある。
昨日は腰を引き寄せる代わりに、レオン自身の体重を利用した。でも、
―入ってしまえば、大丈夫―
「くっ」
レオンが痛みを堪える様子だった。
「まだ、痛いよな。無理ないよな」
「いいよ。僕::平気だよ」
痛みを堪えてクロードを受け入れてるレオンの前に手を伸ばした。クロードは初めからそうするつもりで、レオンにこの格好をさせた。
クロード野指の動きに肩を竦める様にしてレオンが反応する。
「一緒に可愛がってあげる」
前と後ろ、同時に。そう言う言葉も上等の落とし文句。レオンの物を愛撫し始めると
「あぁ」
レオンが声を漏らし始めたのでクロードが自分の物を動かし始めた。小さくて締りがいい。肉が吸い付いてくるように絡む。レオンが苦痛の声を上げると、更にレオンの前の物に鋭い愛撫を加えた。
「あぁっ」
レオンの声にクロードはすかさず腰を動かす。後はもうどちらも同じようにしてやると、そのうちレオンが、いいのか、痛いのか判らない呻き声をあげた。やがて、クロードの手の中のレオンの物に波の来る前触れがわかった。レオンの物が今まで以上に固くなっているのが判る。イクのを堪えるかのように、波が来るのを待つかのようになっていた物に第一動が来た途端、クロードはその手を離した。
レオンの声が途切れた。
クロードの腰は巧みに動いたまま::::。
レオンの中のものが空を切った。
「ああ::。クロード::どうして?」
レオンは自分の快感が分断されると、たまらなく続きが欲しかった。
「クロード。やめないで。ねえ、クロード。僕、辛い」
しかし、クロードは触れようとしない。
こんなに欲しいのに:::切ない::。
「クロード」
少しレオンの物が元気をなくした
その時クロードの手がレオンの物を弄りだした。
―嬉しい。やっぱり::ちゃんとしてくれる:―
レオンの体がクロードの手に再び反応し始めてゆく。
「あ::」
切ない声が上がり始め、レオンは快感を与えてくれるクロードの手の動きだけを追い求めていた。
なのに::また同じだった。
「クロード::ひどいよ::」
波を迎え始めた物を分断されて、疼く様な切なさに身悶えして耐えるレオンの後ろに与えられる感覚がはっきりしてくる。痛みが麻痺しているのかくっくっと、動く感覚が伝わってくる。
「お願い::少しだけ::ね。::触って::」
レオンの懇願にクロードはにべも無い。
「まだ::だめ::」
クロードがレオンをじらせて楽しんでいる。
「::::」
欲求が沈むとレオンは再びクロードの手からの巧みな愛撫を受けた。
「お願い::ね、お願い::僕をいかせて」
クロードの手が再び離されることを恐れながらレオンは、逆らう事の出来ない欲求の昇華を求めて小さな声で懇願を繰り返した。
「::::」
黙ってレオンへの愛撫を続けているクロードの手の中のレオンの物がかわいそうなくらいに張り詰めているのにクロードは変わらず自分の物を動かし続けていた。
「ねえ::ぁ::もう::駄目::いきたい::」
クロードからの愛撫を分断される前に:::。
「ね::いかせて::」
レオンの声が哀願に変わる。その声を聞かされたクロードは嗜虐的なものが満足したのか
「レオン::僕も::いく。あれだけじらせたから::レオン今度いったら堪らないよ::」
クロードの手がレオンを休みなくこすり上げ::レオンの後ろの中のクロードの動きがそれの呼応するようになり、どちらの動きも一層早まってゆくと::レオンは発射のうねりの長さに高さに声を漏らし続けていた。
(クロードの言うとおりだ::)
感じた事の無い高みに押し上げられていったまま、その感覚の中をクロードの物が激しく動いている。
「あ?」
何か、昨日とは違う感覚がレオンの中を走った。
(なんだか::少し気持ちよかった)
そんな気がした。
が、自分の前の物がいった感覚に溶け込んでよく判らなくなった。
続けてクロードが
「レオン::あ::いい::いいよ::」
と、声を漏らすとレオンの中で彼の物がひくひくとどよめき、レオンにもクロードの到達が感じられた。
「あ:::ああああ」
クロードの心地よさそうな声に包まれながらレオンは不思議な満足感を感じていた。
やがて、二人は折り重なるようにベッドに沈み込むと心地よいまどろみに引き込まれていった。

――無論、クロードが少し前にあった部屋の外の出来事などに気が付くわけも無かった。――
                   

「コーヒーでいい?」
レナがコーヒーをふたつ注文すると先に座ったアシュトンの前の席に腰掛けた。
「ねえ?アシュトンこんな事突然聞くの変だけど、アシュトンってレオンの事::好き?」
と、尋ねた。
「レオン?大好きだよ。小さいのに良く頑張ってるし、一生懸命だし::じゃなかったらクロードだってあんな歳の子パーテイに入れたりしないよ」
アシュトンの答えを聞くとレナは自分が聞きたい事の意味がアシュトンに通じていないのが判った。
「あ、そうか。んとね。そうじゃなくて::えとレオンを女の子みたいに::好き?:」
「はあーん?レナ?何言ってんだよ。レオンは男の子じゃないか::?」
「あ。あ。あの言い方がおかしかったね。あのね。レオンみたいなタイプの女の子って言うべきかな」
「うーん。レオンみたいな感じの女の子?確かに可愛いよな。」
「そう?」
レナはどきりとしながらアシュトンを見た。男の子でしかないと思っているレオンが女の子のように受身を呈してまでを自分に対峙してくるとなったらアシュトンもレオンに対して恋心を抱く可能性があると言う事なのだろうか。むろん、レオンが対峙してくるのを待つまでもなく、クロードがレオンに受け止めさせたのは判っている。
でも::つまるところレオン自身に魅力がある?
「アシュトンにとっても、レオンって魅力があるんだよね::?」
レナの少し元気の無い言葉にアシュトンは首をかしげながら
「そうかもしれないね。」
と、アシュトンは造作なく肯定すると
「でもさ::。僕はどっちかといったらレナみたいなタイプの方がいいな。」
と、付け加えた。
「え?わたし?」
レナが真顔になるのを見ながらアシュトンは
「ぁ、あの、本当に好きとか言うんじゃなくて好みでしょ?レオンはずうぅーと側についていて上げなきゃいけないって感じだし、レナは逆に離れて僕を見ててくれる甘えられるお姉さんって感じで、僕だったらレオンよりレナの方が気楽でいいよ」
(アシュトンにはレオンがある意味、手のかかる面倒くさい相手ってことなのかな?でも、レオンの同じ所がクロードにはほうっておけずには置けない魅力なんだろうし::レオンに勝てないって言うより::クロードの好みの領域でしかない?)
クロードをレオンに捕られてしまったと言うことがレナの中でひどくわだかまりを作りレオンと自分を比べて見てレナは随分、自分に自信をなくしていたのである。
レオンの存在のせいでなくクロードの好みにレナが入らなかっただけ、そう考えればレナの中の自尊心が少しは救われるような気がしていた。
黙ってしまったレナにアシュトンは
「で、それが朝からお酒なんか飲んだ事とどう関係あんのさ?」
「あ?え?::ああ:::」
言葉に詰まりながらレナはそういうことになっている事を思い出していた。
「そうね::。レオン見てたら可愛いし、いじらしいし、私なんかよりよほど女らしくみえちゃって:::」
(それで?やけ酒?なんかよく判んない心理だよな。でも男の子、それも随分年下の子が自分よりすごい物持ってるって感じたら::)
アシュトンは自分の事を少し考えて見てた。
(確かにクロードが僕よりすごいとこ持ってるって判った時::なんかいじけちゃった覚えがあるよな:::)
今は素直にクロードの実力として認められる事も最初はそうだったような覚えがあるような無いようなアシュトンなのである。
が、レナの些細ないじけ虫を追い出してやろうとアシュトンの心が動き出した。
「でもさあ。レナだっていいと思うよ。結構きついこと言う割には面倒見いいしさ。いいアドバイスもくれるし::。なんていうかな。何かをやろうとした時には絶対いて欲しい人だよ。だからレナのそんな持ち味を必要としてくれる人を探さなきゃ。自分の足りない所を気にさせられる人を選んじゃ自分がつぶれちゃうよ。自分を大切にするってそういうことじゃないのかな?だから僕も自分の事を大切に出来るから::あの子のことを好きにな::」
つい、いらぬ暴露まで口走りかけてアシュトンは口を押さえて黙った。
アシュトンの口からの意外なアドバイスにレナは驚いていたけどそれよりもアシュトンに言われた事がレナの胸を打った。
「ぁ::アシュトン。ありがとう」
クロードにとっていて欲しい人はレオンでしかなかった。レオンにとっても身を挺してまで受け止めたいほどの相手がクロードだった。
私はどう?クロードを受け止められた?
レナは小さくかぶりを振った。
そんな事出来ない。
それに第一、クロードは私を必要とはしなかった。
頭の中でぼんやりとアシュトンに言われた事を考え直しているレナの中に小さな点のようだった思いが浮かび上がってきていた。
(デイアス::貴方。私に::いて欲しい?)
が、レナの中の埋ずみ火のような思いをレナがやっと自覚するかと思われた瞬間をかき消したのはアシュトンだった。
「ねえ::あの::もういいかな?」
レナの顔色が落ち着いたのが判るとアシュトンはもう一度樽を探しに行く気になっていた。
「ええ。アシュトンなんだかとってもすっきりしたわ」
「うん。」
アシュトンは小さく手を振ると、レナの側から離れていった。
そのアシュトンにレナはもう一度心の中で呟きかけた。
(アシュトン。ありがと。貴方って::やっぱりとても優しい人だよ)


その頃、レオンとクロードは眠りこけていた。
確かに旅暮らしが始まったら二人の時間を作るチャンスはほとんど無くなる。
とはいえ…昼に::夜に::朝に::。
そんな二人が目覚めたのはもう、夕方近かった。
時計を見て二人は顔を見合わせた。
明日はゴーフェイルに向かって出発する。歩きの行軍。辛い旅がまた始まる。
「当分:こんなことできないな」
「いいよ。:クロードがいてくれたら」
クロードの鎖骨の辺りにレオンは顎を乗せて、しなやかな身体をクロードに絡ませている。
クロードはレオンの腰の辺りに手を置いていた。
本当は髪を触りたかったのだけど、ちょっとその位置では腕がだるかった。
「ね?レオン。いつから僕の事を好きだった?」
「わかんない。でも、最初から好きだった」
「そうだろうな。出会った頃からお兄ちゃん、お兄ちゃんって、付いて来てたものな」
「クロードは?」
「お前にいつか、お兄ちゃんって呼ばれた時、胸にズキッって来たんだ。そんときに気がついた。それからはお兄ちゃんでいなきゃって:辛かったよ。けど、::もう::」
レオンの顔を覗き込んだ。
「うん」
満ち足りた顔のレオンが素直に返事を返すのを聞きながらクロードは
「ね::レオン。腹へってない?」
と、尋ねた。心が充足されると、やっとお腹が空いているのに気が付かされた。
「うん。すいた。だってお昼食べてない」
「外に食べに行こうか?」
そういえば、最初に町に着いたときレオンが街の中を見て回りたいといっていたのをクロードは思い出していた。
「なにか::欲しい物があったら買ってあげるよ::」
「うん!」
嬉しげにレオンが返事をした。まだまだ子供なのだ。レストランに着くと、見本のどれもこれもがおいしそうに見えた。
どれにしよう?迷うレオンにクロードは
「いいよ。全部たのんじゃえ!」
「ええ?」
「食べれるよ。おなかすきまくってるもの」
注文した料理が目の前にいっぱい並んだ。
黙々と食べ始めた二人だったが
「食べれねー―」
「僕ももうお腹いっぱい食べれない。頼み過ぎちゃったね」
「僕は食べれると思ったんだ」
「僕も思った」
クスクス笑うレオンを促すとクロードは外に出た。路地に立つとクロードはレオンに何か欲しい物があるか尋ねた。
「あのね::バンダナ::」
レオンが小さく答えたのは、バンダナの使用目的にいささか照れたせいかもしれない。
「あ。レナに借りっ放しだものな」
「うん」
それらしい店に入るとレオンはバンダナをいくつか選び出した。クロードは顔を寄せてそれを見ていた。
「どれにしよう::」
「レオン。この色と、それと::」
何枚か棚から引っ張り出してレオンに見せるとレオンはその中から4、5枚をチョイスした。そして、更に
「どうしよう::」
「全部。買えばいいよ:::」
「だって::いいよ::」
「いるよ:。ずうぅとつけといてあげるから::」
クロードの言葉の意味にレオンがうつむいた。
「あの::」
「だから、同じのしとくわけにいかないでしょ?」
当たり前の事であろうが、この先も二人のことがある。それを望む事をあからさまに囁かれると、それに素直に返事をすることさえひどく恥ずかしく思え、レオンは黙った。
「いや?」
レオンはクロードの言葉に慌てて首を振った。
そして同時に特別なクロードからの感覚を望んでいる自分にひどくうろたえてしまった。
レオンの初心な様子をクロードは目の端に止めながら、勘定を済ませると店の外に出た。
「もう、他にいる物はない?」
店から出て100メートルも歩いただろうか?小さな看板が目についた。
「あ、アイスクリーム!食べたい」
食事の後に食べたかったのだけど、そのときは満腹で食べれそうにも無かった。
「食べよう」
クロードを誘ったけど、あはははと、笑われた。
「僕はコーヒーでいいや」
「いつも、そうなんだ。たまには僕につきあってくれてもいいんじゃない?」
「だったらレオンこそこっちに付き合えば?」
「ふん」
少しむくれた前にアイスクリームが運ばれてきたら、途端にご機嫌が直った。
「おいしそうー」
夕日に変わる前の柔らかな日差しが道端のパラソルに斜めに差し込んでいる。
「ねえ。それ、少し飲ませて」
道路に面し置かれたテーブルの上にも日差しが差し込んで、グラスの中のコーヒーまで淡い苦色に照らし出された。
前に飲んだときは苦くてこんな物を飲むクロードの気が知れないと思った。
でも、今度は飲めるかも?なにせ、いろいろあって僕もちいっとはと変わったんだもの。
クロードの使ったストローでちょっと吸ってみた。
「うへえ」
どうやら味覚までは大人になってないのが良く判った。
「あ」
レオンは慌ててアイスクリームを持ち上げた。コーンの先から溶けたクリームが染み出してきている。顔の上まで持上げるとチュッと吸い取り、嬉しげに舐め始める。可愛い舌が楽しげにクリームを舐め取ってゆく。それを見ているクロードは不思議な感覚に包まれてしまう。
(あの同じ舌でレオンが本当にクロードを舐めたのだろうか?)
「何みてんの?判った。本当はたべたかったんだ。あはん。もう、ないよ」
コーンの先、少しになった物を口の中に放り込んだレオンには先程見せた姿のかけら一つさえ感じさせなかった。
クロードはレオンの顔をじっと見た。
(でも、それは僕だけが知っている秘密だ。ね。レオン)
コーヒーを飲み終えるとクロードは立ち上がった。
「街。見て廻ろうか?」
二人はぐるりとその辺りをめぐり歩いた。が、時間が遅すぎた。ミュージアムの前に来たときにはもう、閉館前だった。
「はいる?」
「どうする?」
「なんか、入った途端出てこなきゃいけなくなるよ」
中途半端に見るくらいなら見ない方がいい。
「やめておこうか?」
「うん」
「どうする?」
だいぶあたりも薄暗くなってきてグラス灯にもあかりがはいってきている。
「クロード。お酒をのんでもいいよ::」
「あ?うん:」
「僕もつれていってくれるでしょ?」
クロードは少し迷った。
盛り場が繁華になるにはまだ早い。
でも、その分、変な酔っ払いの出現も無いだろう。
「だめ?まだ、僕お子様扱い?」
「ああん。そんなことない。それに、だったらあんなことできないよ」
そう囁くとレオンがまた下を向いた。
「じゃ。行こうか。でも、アイスクリームは無いよ」
「もう!知ってるよ。それぐらい!すぐ、からかうんだから」
「だったら、いいよ。行こう」
レオンが向きを変えたクロードの腕にあの時のレナみたいに自分の腕を滑り込ませようとしてやめた。
「うん?」
クロードが立ち止まったままのレオンに気が付いた。
「痛い?」
「あ。そうじゃなくて::先にいっちゃうから:::」
「で、拗ねてたの?」
「う::ん」
「馬鹿::」
クロードはレオンの頭をなで上げると肩に手を回した。これだけなら、旅の疲れが出ているのにそれでも、街を見て廻ろうとしている少年を気遣う兄に見えるだろう。恋人同士みたいにそれに甘えるように寄り添ってはいけない。
「大丈夫?」
「本当に大丈夫だって。あんまり、そんな事聞かないでよ。僕、恥ずかしい」
「あ、ごめん」
ゆっくり歩いてゆくと小さな落ち着いた感じの店があった。
「ここ、はいる?」
「うん」
店に入るとボックスに座った。並んで腰掛けると店員に
「水割りと、えと、レオン、どうする?」
「あ::」
迷っているレオンの代わりに
「じゃあ。レモンロック::」
クロードが告げると店員がカウンターに戻った。
「クロード。レモンロックってお酒?」
「ううん。レモンを絞ったのに甘みを入れて、あと氷」
「それだけ?」
「僕は甘みは入れないけど::」
「ふーん」
想像したら口の中に唾がわいた。
やがて、レオンの目の前に運ばれてきたレモンロック。
「ねえ?クロード。これだけ?」
6オンスのグラス。目いっぱいに注ぎ込まれた氷。
普通のジュースの半分も無い。
「それでも、ガムシロップがはいってるから、まだ多い」
「ふーん」
ストローも無い。こんなグラスにいらないか。
「でも、なんか、お酒のむみたい::」
グラスに直接口をつけて、クロードが飲んでる水割りみたいにグラスを傾けて一口飲んだ。
「わ。おいしい」
「だろ?」
「うん」
「足らなかったらお替りすればいいよ」
「うん」
レオンは簡単なつまみが小さな器に置かれているのに気がついた。
「ねえ、これ::頼んでないよ」
「セットなの」
「あ、そうなの?」
どうも、面食らう事が多すぎる。
「食べりゃいいよ。僕はあんまり食べないほうだから::」
「うん」
レオンはチーズに手を伸ばした。
「ねえ?」
「うん?」
「あのさ、レナに僕達の事話したの?」
「ああ。いけなかった?」
「ううん。レナ判ってたし、それなのに何で言ったのかなって思って」
どこかでクロードがレナに心惹かれているのではないか?レナにはっきり告げると言う裏側にはクロードの中にもわずかながらでもレナに惹かれる想いを断ち切る必要があったからじゃないのだろうか?
別段四の五の言う気はない。けれど、少し気になった。薄い嫉妬とよんでいいかもしれない。
「ああ。それ::」
クロードの方はまさか自分からレオンに手を出しておいて、それでも迷いがあったとは言えない。
でも、レナのおかげなのも事実なのである。
その辺りの事はレオンにも告げておいた方がいい。レナの好意だし。
「あのね。昨日の夜、レナに怒られたんだ。レオンを一人にしてきたの?レオンとちゃんと一緒にいなさいってさ」
「あ?それじゃ、始めから知ってたんだ::」
(クロード)そう、呼んだ事で判った訳じゃなかったんだ。
「え?じゃ。レナと飲んでたの?(僕の事ほうっておいて?)」
完璧な嫉妬だった。
「ううん。レナは帰りに会ったんだ。僕は一人で飲んでたよ」
チサトのことは伏せた。
「あ。そうなの::」
「うん。レナはデイアスと一緒だったけど、昼間のお前の態度できがついていたんだよ。どうしてひとりでいるの?って。えらい剣幕でさ。お前の事応援してくれてるんだ。で、はい。スグ帰りますって」
「(ああ、その後::)ん?レナ。デイアスなの?」
「うーん。多分、そうじゃないのかな::」
「じゃあ、何で、クロードを誘ったんだろ?」
「レオン。そんな事無かった?」
レオンをあきらめなきゃいけない。そう思った時にレナの気持ちを受け止められない事を判っていながら、想いを寄せられている事に多少なり心が安らいだ。
「そんな事って?」
「好きな人のことを好きでいるのが辛いとき誰かが側にいてくれると助かるって事」
「ああ:::」
なんか、それってボーマンがそうだった。変な冗談言って、よくからかわれたけど、笑うとなんだかほっとして、やっぱりクロードを好きな気持ちは捨てれないんだ。笑ってクロードをみていよう。泣きながら見ていちゃ勿体無いよって、よく思わされたっけ。
「うん。ある」
「レナもそうだったんじゃないかな?」
「うん」
「デイアス、大人だし。でもレナって、どちらかと言うと潔癖症って感じで、デイアスもレナに、僕がレオンに対したみたいに近づく事が出来ないって言うか。レナが可哀想って言うか。だから、待ってたんじゃないのかな?レナ少し変わってきたしね::」
「で、デイアスがアタック開始ってわけ?ところで、ね、クロードも僕の事も可哀想みたいに思った?」
「思ってた。ううん。今も思ってる。怒る?」
「うん:::。そう言われるとね。そんな風に思われながらって、ちょっと嫌かな」
「うん。でも、それ仕方がない。7歳も下で、それも二十五と十八とか言うならまだしも、十二の子に本気でぶつけちゃうのって、僕も大人気ないって言うか。ごめん::レオン」
「ううん::」
本気でぶつけてしまった事が可哀想なんだと判るとレオンはほっとした。
「あの、そのほうが嬉しい。それに僕もうけとめたいし:::。あの::駄目だったのかなあ?
あの、大人だったもっと:::」
「ばか:::」
「え?」
「レオンがいいんだろ?大人とか子供とか思ってないよ。それに本当に可哀想だったら、あんなことできないよ。だから、御免。一人前に扱っちゃいけない年齢なのに。でも::どうしても::欲しかったんだ::」
クロードの中でレオンが対等に思われてることがはっきりと判った。
「うん。僕もそうしてほしかったんだ::」
「ウソつけ!なんにもしらなかったくせに::」
「後から思ったの!それに本当はどういうことか判っていたら、やっぱ怖かったと思うし::知らなくて良かったかもしれない。ん?::って事はレナはどういうことか判ってるって事なんだ」
「だろうな。デイアスもレナが怖がってる事を無理強いしたくはないし、そんな事をするために好きになるわけじゃないし、自然とお互いが引き寄せられる時期を待ってるんだろうな::。辛いだろうなあ。男なら誰だって好きな子の事は抱きたいと思うだろうよ。デイアスだって例外じゃないよ」
レオンが自分を指差した。
「僕は?」
「え?」
「だって、僕。クロードの事、抱きたくないもの」
「?」
「僕はクロードに::」
レオンが頬を染めた。
「抱かれたいもの::」
「あのね::。レオンは猫なの。もう、僕の猫なの」
「猫?」
「そう言うの。レオンみたいに抱かれる方の事、猫っていうの」
「あ、そうなの?猫:::猫ねえ」
「いや?そんな呼ばれ方」
「ううん。そうじゃなくて、なんで猫って言うんだろうかなって、なんで?」
「さあ?」
クロードも判らない。逆にクロード側(男方)をシテと呼ぶ。使い手(使手)からシテと読ませたのかなと考えたりする。
「知らないんだ?」
「うん。判ったら教えてあげる」
「うん」
「そろそろ、帰ろうか?」
「うん」
実のところ、クロードは先のレオンが赤くなっていった科白にそそられてしまっていた。
(こいつ。ひょっとして、その気にさせる名人?それとも、僕がスグその気になる駄目な奴?)
店を出ると、とっぷりと陽が落ちてあたりはもう暗かった。
「ゴーフェイルの街までしばらく野宿が続く。ところどころに小さな村があるだけで宿なんか無い。こんな大人数を泊めてくれるところなんかないし、あっても教会とかだろう。皆、雑魚寝だし、しばらく::レオンを抱けないよ:::」
クロードの言いたい事を察するとレオンは
「うん:じゃあ、早く帰ろう::」
と、答えた。
「レオン::」
クロードの切ない思いを気取ってクロードに従うレオンが、ひどく愛しい。
(帰って、思い切り抱いて::)
と、口に出していえないレオンだったけどクロードはそのつもりだった。
(やっと手に入れた天使。忘れられないくらいにハードに、そして優しく、最高の夜にしてあげる)
随分、背の違うレオンの肩を抱き寄せるとクロードは歩き出した。


ホテルの玄関に入るとアシュトンに出くわした。
「あっ。レオン。元気になったんだ」
「?僕?ずうっと元気だよ」
「あはは。心配かけないでおこうなんてしなくていいよ。お前すごく辛そうな声出してうめいてたじゃん?医者呼びに行こうかって思ったんだけどレナにクロードが付いてるんだからって、とめられたんだ。でも、レナの判断の方が正しかったみたいだな」
クロードは黙って聞いていたがどうやら朝の房事をアシュトンがきいていたんだと、悟った。
とんちんかんに誤解してくれているのが救いだったが、どうやらレナにまたもや借りができてしまった。二人の事を報告はしたものの正直なところレナにあまり立ち入って欲しくなかった。その為にも、あえて返答できないほどのことを返した。事実その通りだったし、仮にそうじゃなくても、その位の事を言ってレナに立ち入る隙を与えたくなかった。
レオンとの仲は自分で築いてゆきたかった。
「ああ。何とか治まったよ。心配かけてすまなかった」
クロードはレオンに代わって答えながらレオンの服の裾を引っ張った。それでレオンもアシュトンの話がどういう事だったのか、飲み込めたらしく
「ああ。御免ね。アシュトン有難う」
と、付け足した。
「いや::べつに::」
礼を言われるほどのこと等、何もしていないのだが。そう続きそうな言葉をクロードは遮った。
早く部屋に戻りたいクロードは、アシュトンが何か言い出さぬ内に
「明日からきついぞ!ゆっくり休んでおけよ。僕達もそうする」
と、切り口上に言い放った。
アシュトンは少しビックリしたような顔をしていたが、怒りもせず、やはり
「ぁ?食事は?」
と、人の事ばかり心配してしまう、相変わらずの優しいアシュトンでしかなかった。
「外で食べてきた。じゃ::おやすみ::」
「ああ::ああ」
あとから思えばこんなクロードのつっけんどんな態度がアシュトンの中にこだわりを作らせていたのかもしれなかった。アシュトンは二人を見送るように突っ立ていたが、そのうち食堂に足を向けた。



部屋に戻り始めたクロードにレオンが小さな声で謝った。
「クロード::御免」
「いいさ。レナはあんな事言ってたけど皆に知れたってかまわない。でも、レオンお前が皆に嫌な目で見られたくないんだ」
あんな歳で男をくわえ込んで。それも男の物がいいなんて、そんな目は当然あることだろう。自分の事をどう言われてもいいけれどあんなに必死になってクロードを受け止めたレオンを中傷されたくなかった。
「御免。僕。もう声をださない::」
「無理だよ。レオン」
どこかで人目を避けなきゃいけない。
さっきだって肩を抱いてもレオンが人目を気にして寄り添ってこなかったのは判っていた。
クロードは心の中でレオンに謝った。
『御免。そんな思いさせて』
なのに、声を出さない。そう言うレオン。
一番、二人が二人である事のせいで漏れる声まで自由になれない?
「いいんだ。レオン。いったろ?もっと良くなるって。そしたら、もっと無理になるよ。それに僕もレオンの声が聞きたい::」
レオンの心の負担を軽くしてやりたかったし実際自分の言ったとおりレオンのその声を聞いていると:::。
クロードは考えただけでも「はああ::」と、妙に甘くときめくようなため息を漏らしていた。
周りを見回すと誰もいない廊下。クロードはレオンにそっとフレンチキスを渡した。ゆっくり歩みなおしたクロードがレオンの肩を抱くと、レオンも身体を寄り添わせてきた。
部屋に入ると、クロードはレオンを背中から抱きしめた。バンダナをはずすとそこから現れた白い項に顔を寄せた。
「レオン」
そう、囁くだけでレオンのすべてが項に神経を集中するようだった。
(待っておいで::今::)
クロードが項に舌を這わせてゆくとレオンの身体がくっと硬くなった。
更にクロードはレオンの髪をかき上げると髪の生え際までスーと舐めあげた。
「ああ::」
レオンの声が漏れ出してゆくのを聞きながらクロードはもう一度肩の線まで舌をゆっくり這わせた。
「ぁ」
殺した声が小さく漏れた。項の下、肩の線と突き当たる点に強く舌を当てて、くるくる回すような愛撫を加えると軽く噛んでやった。
「い::痛::い」
その痛みがどんな種類の痛みか。::レオンの声。
甘い疼痛を訴える声が途切れると
「ああぁぁぁぁ」
そのまま寄せられた、新しい感覚に酔ってゆく。
レオンの身体の力が抜けてゆくのを支えながらボタンを探った。ひとつ、ひとつ、はずすとやっと項の下への刺激を許してやった。
肌脱ぎになった肩の線から肩甲骨の線に沿って舌を落としてゆく。
更にゆっくり、ゆっくり、屈み込みながら舌を這わせながらレオンのズボンに手をかけて引きおろした。
「レオン」
そう、声をかけて前を向かせると、クロードはかすかに潤んだレオンの物を屈み込むようにしてほうばった。
「あ、あ、いや::」
欲望を拭われる為に、ひれ伏する憐れな男さながら、クロードはレオンの前に額づいてみせる。
(レオン。お前は僕をそこまで堕とす価値がある)
「ああああ::や::やだ::」
与えられる快感に思考までゆだねられてしまう。
声を殺す事などできるわけが無い。
レオンの細い腰を抱きかかえるようにしてクロードは執拗なほどレオンをしゃぶりあげてゆく。
「あぁ::あ、ん」
額づくしもべに声を上げさせられてレオンの身体がじっと立ち尽くす事を許せなくなってゆく。
くだけ落ちるレオンの身体を抱きとめるとクロードは両手でレオンの身体を抱き上げてベッドに運んだ。
少し覚醒したレオンが
「御免::クロード」
「ううん」
くだけ落ちたことを詫びていた。

クロードはゆっくり自分の服を脱ぎだした。
「レオン」
「うん::」
ケットに潜り込みながら返事をする。
「隠れなくていいだろ?」
「うん。だって::。御免。また声あげ::」
レオンが言いかけるのをキスでふさいだままクロードはズボンを手早く脱ぎ去ると、レオンの唇を離した。
「その声、聞きたいんだ:」
レオンと一緒にケットの中に入った。
「レオン」
「なに?」
うつ伏せになったレオンの横に仰向けに並んでケットの中。
「なに?」
「おまえ::」
クロードだって十二歳の少年にここまでの感性があるなんて思ってもみなかった。
「ん?」
「あ、いや::」
「:::なに?」
「感じやすいんだ」
慌ててレオンがケットを引っ張りあげた。
「嫌だ。::そんな事いわないでよ」
(自分でも恥ずかしいくらいか?そのせいでこっちはなおさら、夢中になっている)
「レオン」
クロードはケットを捲りあげた。押さえた手からケットを毟り取ると、小さな身体があらわになった。
「レオン。おいで。可愛がってあげる」
レオンの身体をクロードの身体の上に乗せた。
そのまま、腰を引いてレオンの身体を逆に向けながら、クロードの顔をまたがせた。クロードの顔の上にレオンのものがある。ぐっと腰を引き寄せるとレオンの物をしゃぶりこんだ。
「あ:::ん」
しゃぶりこんだレオンの物に舌を絡めた。
こすり付けるように、細かく動かしてやると
「ああああ::」
レオンの声が長く漏れ出した。
一端、レオンを口から離すと
「レオン、僕のも::」
レオンの頬の横にクロードのものがある。察したレオンがクロードを舐め始める。小さな舌が這って行く感触の後に遠慮勝ちにクロードの物が飲み込まれてゆく。クロードはもう一度レオンをほうばると、腰を押さえつけて吸ってやった。
「んん::ん」
レオンの口の中に入った物のせいで声にならない。レオンはクロードに与えられる刺激のせいで、ただ、ほうばっているだけになる。
クロードはレオンの物をもう一度口から離して手を添えた。軽く掴んでその捕まえた先を丹念に舐め廻して舌を這わせてゆく。
「ん:::」
もう一度深くほうばると、吸ってやりながらレオンの腰を動かしてやった。動かしながらクロードは突然、スピンをかけ始めた。吸いながら、かつクロード自身も口を上下させている。レオンを揺さぶるような腰の動きに合わせてスピンが重なった。クロードの口の動きだけじゃない。口の中では器用に舌がレオンの柔らかい部分をさすりあげてゆく。
レオンがクロードの物を離した。
「クロード、::やめて::お願い::クロード::あ::あ」
感覚に我を忘れる。
恐ろしいほどの快感に耐えれなくなるのか
「や::め::て」
とは、言ったが、しばらく逃げようとする腰を押さえつけたまま、スピンをかけ続けると観念したのか
「あぁ、いい」
そういうと後は「ああ」その声が続いた
与えられた感覚にレオンが埋もれてゆく。レオンの呻き声と一緒にレオンの物が脈打った。よがる声がひっきりなしに続く。受けた快感を表現するかのように切ない声。
(もう::じらせたりしないよ。レオン)
ひくひくとレオンの物が動く。
(こんなやり方をされたら、誰だってもちゃしない)
ぐっぐっと小さな物が波打ち始める。
「クロード、クロード、あぁ、::クロード」
レオンが何度もクロードの名を呼ぶ。クロードは最後の最後、果てるまで、レオンが萎み終わるまで愛撫をやめない。とろりとした物がクロードの唾と混ざり合うと、レオンを抱き起こしてレオンの口の中にそれを注ぎ込んでやる。クロードの意図する事はもうレオンにも判っている。力の入りきらない身体でクロードの物にそのまま伝えた。クロードは起き上がると、まだぐんなりしているレオンを引き寄せながら座った。クロードの腰をまたぐようにレオンの足を左右に開かせるとレオンを引き寄せた。前向きのまま、彼の小さなふくろを押し上げるようにしてクロードの物を挿入した。
「ん::痛:::ん」
まだ無理ない。ゆっくり、かなりゆっくりとクロードは蠢かした。
(無理だよな。おまけにこうなってから立て続け過ぎるよな。やめておいてやるか。どうしようか?)
クロードがそう思ったのも、束の間。
レオンの切なげで、なのに甘い声が漏れた。
「ああぁ」
「え?」
「あ・・いい・・」
「嘘だろ?レオン、ぁ?あの?。感じるの?」
「ん、なんか・・へん。きもち・・いい」
そのままクロードがじっとしているとレオンの中がひく付くように動く。
「えっ」
レオンの中の感性が目覚めるのは早い。
少しの接触でポンと花開くような感じがする。
いい猫どころじゃない。はじめからの猫。
天性・・の猫。感度もいい、感じやすいのにも驚いたけど、ありとあらゆる所、どこを触れても声が上がりそうなレオン。
環境のせいかもしれない。頭脳明晰な両親。自分を見つめて欲しい。天才少年の名を欲しいままにしたのもそんなところからだったのかもしれない。なのにレオンが一番欲した物は手に入らなかった。孤独で寂しい、愛に餓えたレオンに気が付いてやる者はいなかった。
そんな時にレオン、お前が僕と出遭った。
一目見て判った。
・・愛されたい・・・
少年の瞳の奥にある孤独な叫び・・・・。

クロードがレオンに惹かれたのはその瞳のせいだったのかもしれない。
そして、今、クロードに愛されたい。その愛を精一杯感受したい。同時にクロードにとって最高の自分でありたい。そんな思い一心がここまでレオンの感受性を引き上げたとしか思えない。
(そこまで僕を慕うか?そこまで僕の愛が欲しいか?)
「レオン。レオン。愛してあげる。ね、可愛がってあげる。ね。レオン。もうお前、僕だけの猫なんだ::」
その猫への愛撫。今の体勢では密着しすぎてクロードの物のストロークを稼げなかった。レオンの足を両手で持ち上げて身体ごと抱きかかえると、軽く身体を持ち上げた。扱いやすい小さな身体を、クロードの物を挿入させたまま、それを軸にでもしているかのようにレオンの身体を半回転させた。背中を向けたレオンを軽く押して覆いかぶさってゆくと自然と朝と同じ四つん這いの格好になる。一番ストロークのかせげる形。
レオンの中を確かめるようにクロードはゆっくりと、そうっと動き始めた。
「ああん・・・いい」
やっぱり間違いない。
そのまま思い切り奥まで進入してゆく。
「レオン、・・気持ちいい?」
「うん。そうやって、ゆっくりしてくれると::」
「どう?」
「なんか、奥の方にあるのが・・前に来て・・フワフワして・・よく、わかんない・・」
レオンが浮かされたように喋っている。深くはないが浅い快感が持続している証拠だ。
「レオン・・素敵だよ」
「:素敵、こんなのいいな、ナンカがノボッタリ、オリタリしてる・・・」
「ん?どんな感じ」
「アノネ。イキソウになる前のもう一つ、前くらいの・・かんじ・・ああ・・きもち・・・いい」
レオンが浮かされたまま、自分で腰を動かした。
「コッチの・・ほうも」
赤くなって俯くレオンには言えそうもないことをさらりと言ってのけた。
「コッチもこすって・・・」
羞恥さえ忘れさせるほど快感に浮かされているレオンの望み通りにしてやると・・甘い声で応えた。
「ああ・・ん、こっちのほうがいい」
クロードは朝のレオンへの仕打ちを返されてるような気がした。レオンがイキそうになるとはやめ。イキそうになるとはやめ。それを何度繰り返してレオンをじらせて楽しんだか。なのに、こうゆっくりじゃ、クロードが行き着けない。
(レオン。お前って奴は、くそ。こいつが僕なしでいられなくなるより先に僕がもうお前なしじゃ・・・)
それでも、クロードはじれたまま、レオンを間違いなく自分の手に落とし込むために更にゆっくりの愛撫を加え続けた。
「レオンいい?」
さすがに何もかも、思念ごと、快感の中にとろけだしているわけではない。
「いや・・きかないで・・」
言ってしまった事への羞恥と、そうされる事で与えられる快感に留められない自分を知られたくない。今更・・・なのに、いや、故に欲求の深み。
さらに高い快感が欲しくなる。
堪えていた言葉をレオンは吐き出した。
「クロード、・・・ねえ、クロード」
「なに?」
「朝の時みたいにして」
よほど前後ろいっぺんが良かったらしい。
クロードはレオンの前に手を添えた。望むだけの事はある。ひどくうっ血して硬く張り詰めている。指で愛撫しながらレオンの中をゆっくりうごめいてゆくと
「あん・・ドッチがドッチなのか、ワカンナイ」
二重の快感も同じ程度に手心を加えて触ってやっている。
「ああ・・ナンカ・・いい・・・」
クロードもゆっくり動かしていたけれど、それでも序々に高揚は訪れてくる。レオンの局からぬるりとした自分の物を際まで出してくるとレオンの入り口がクロードの先を心地よく締め上げてくる。その快感にクロードの物を強くレオンの中でこすりあげたくなってくる。もう一度ゆっくり、レオンの中にぐううっと押し入れて行った。
「レオン・・僕・・もうだめ。・・一緒に・・いこう」
レオンの前の物にクロードは激しく揺さぶるような、こすりあげるような愛撫を加えると片手でくだけ落ちそうなレオンの腰を支えながらレオンの中に向けてクロードの物を早く激しくかつ、しなやかに動かした。
「ああ・・レオン。レオン、レオン・・・」
昇り詰めたのは二人、ほぼ、同時だった。
レオンのものをクロードが受けてやれるわけもなく、ベッドのシーツに零れ落ちて白く滑った。
クロードは同時に従足感につつまれながら、レオンの耳元に囁きかける。
「レオン…しばらくお預けだよ」
自分の独占物になったレオンに、そう言い聞かすと、促がした。
「シャワー、浴びて…眠ろう」                          

(おわり)












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