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SO2シリーズ
作:憂生



イッツ・オンリィ・ユアマインド・4


何とかアシュトンとの仲も元通りになったプリシスなんだけど、
心のそこにへばりついた不安まではどうしても取り除けはしない。
その不安というのはもちろんアシュトンの中に
芽生えた受けの性癖のことであり、
それがまたボーマンを求めさせちゃうんじゃないだろうか
と、いうことである。
だから、あれからプリシスはアシュトンの無茶な要求にも、
随分素直に従っている。
ボーマンの口からアシュトンとの事を聞かされた後、
プリシスは本当に悩んだんだ。
オーラルがいやだなんていってることが実に他愛なく
些少のこだわりでしかなくなってしまうくらい
ボーマンとアシュトンが一線を越えてしまったと言う事実は
プリシスに大きな衝撃を与えた。
「やだよ・・・」
自分の恋人が浮気してる?
そんな事に気が付いちゃった事がある人がいるかもしれないけど、
その相手がよりにも寄って・・・男。
そうなると負けるもんかって思うより前に、
自分の恋人の性癖を信じられるわけがない。
自分を抱いた手で他の女を抱いた?
こりゃあ、きれるなんてもんじゃない事だろうけどさ、
他の男を抱いた?
おまけに抱いたなら
まだしも、抱かれる同士が不本意ながらも
同じ土俵に立つ事も可能かもしんない。
なのに、抱かれちゃったぁ?
受け?い、いったい、どんな神経になってるんだろう?
気・・気味が悪い。
って、心の底で思って、もういやだ
コッチから別れてやるって半ば決心してるのに、
もう、本当にボーマンの物になって、
プリシスの所には帰ってこないんだろうか?
もう、正常な欲望をなくしてしまってプリシスのことは
本当にいらないんだろうか?
別れてやるって決心してるくせに、
プリシスの心の底のもう一つ裏側では、
アシュトンが帰ってくる可能性がどのくらいあるのかばかりが
気になった。
「なくしたく・・ないんだ」
プリシスを見てくれるアシュトン。
プリシスを求めてくれるアシュトン。
プリシスだけのアシュトンになったはずだったのに。
たった一つの些細なこだわりがこんな結果をうむなんて。
「ボーマン相手じゃ・・・もう、だめだよ」
いつも不埒な事ばっかりいってるけど、
ボーマンってひどく大人で、本当はとても優しい。
優しくて厳しくて強くてどんな事でも包み込んじゃう。
そのボーマンがアシュトンの心に応えたのならもう、勝てるわけがない。
「ボーマンの馬鹿。何で、アシュトンの事
うけとめちゃったりしたんだよう」
膝を抱いて、プリシスはあふれてくる涙を膝小僧に押し当てていた。
どうやってアシュトンを諦めればいいんだろう?
「いやだよ」
例え、アシュトンがそんな異常な性癖を持っていても、
だからってプリシスの根底にある
アシュトンが好きだって気持ちまでは捻じ曲げられない。
膝に落ちる涙をふき取ろうともせず、
涙がくるぶしまで伝うほどいっぱい涙を落としてたプリシスの
部屋のチャイムが鳴った。
ドアを開けるなりアシュトンが入ってきてプリシスをぐいと押すと。
ああ、そう。この続きは既に前回にかいてあるんだ。
んなわけでもうここで再現はしないけど。

それで
それからプリシスはアシュトンのものでいるんだけど。
当のアシュトンは本当のところどうなんだろう?
今。プリシスはボーマンの事を尋ねるのが怖かった。
ボーマンと言う人には、多くの恋人がいる。
そういう生き方のボーマンに自分を重ねるように
アシュトンにとってもプリシスが、
恋人の内の一人でしかなくなっているのかもしれない。
あるいは、自分だけのものにならないボーマンへの寂しさが
プリシスを求めさせただけなのかもしれない。
だとするなら、アシュトンを繋ぎ止めておく唯一の手段は
どんなことがあっても、
例えアシュトンがプリシス一人の物でなくても、
プリシスの方は、アシュトンの物になる事しかないと思えたんだ。
だから、プリシスは怖くて聞けないんだ。
プリシスが思ったとおりだったらどうしよう?って。
もう、ボーマンとは別れたんだ。
プリシスを選び直してくれたんだ。
と、信じておく為にも聞ける事じゃなかったんだ。
「どうしたの?」
じっと、黙っていたプリシスにアシュトンは相変わらず 優しい。
でも、二人だけのことになるとアシュトンは随分変わってしまった。
強制的だし強引だし何よりも命令してくる。
「ううん・・なんでもないよ」
「うふ、だったら、そこに座れよ」
少しきつい目で、そしてあの口調。
それはプリシスに対しての蹂躙といっていい行為が始まる前兆なんだ。
ひどく殺伐とした思いのまま
プリシスはアシュトンに命ぜられるまま、
自分から下着を脱ぎ取っていった。
好きなようにプリシスを嬲り
アシュトンはひどく夢中でプリシスを抱いた。
『いいん・・だ・・これで・・だって』
同じ快感を共有し始めると
確かにアシュトンに繋がれている自分を深く感じ取れる。
『だ・・って・・すて・・き』
プリシスである前に女である事がアシュトンにひれ伏して行く。
『今だけは、間違いなく、私だけのアシュ・・トンだ・・もの』


「おりょ?」
「あ?ん」
ボーマンはぱったりと出くわしちまった。
アシュトンとプリシスにである。
「よお」
詰まった返事のアシュトンの後ろに隠れるようなプリシスに、
ボーマンはひどく痛む胸の内にしらを切って、
何事もなかったように気軽に声をかけた。
「ボー」
言葉さえ出ないままプリシスは不安げにアシュトンの手を掴んだ。
無理もない。
プリシス一人でいたって一番逢いたくない相手だろう。
それがアシュトンが一緒なのだ。
何気なくボーマンを見るアシュトンの顔色一つさえ、
プリシスには浮き立って見えるだろう。
顔色を窺うような卑屈な思いを味わいながら
プリシスの中は不安と嫉妬と恐れがうずまいてしまう。
それだけじゃない。
自分の恋人の浮気相手が男であるとなれば、
自分の女としての魅力に自信も自尊心も
粉々に砕けちまうってもんだろう。
アシュトンの心の浮き立ちを見つめると、
惨めさによほどその場を逃げ出したいプリシスであったが、
このまま、その場を去ればアシュトンは
すぐさまボーマンの所にいってしまうのではないだろうか。
逃げ出す事もできず、プリシスはアシュトンの心におののき
アシュトンの手を強く握り締めた。
プリシスの心を見抜いてしまってるボーマンは小さなため息をついた。
『元々、盗る気もねえ、恋でもねえ。
単なる同情と相変わらずの無謀な救援でしかなかった』
だが、プリシスが受けている傷と
アシュトンへの信頼をなくさせてしまったことが
ボーマンのしてしまったことの罪深さを露呈していた。

「プリシ・・・ス」
アシュトンもプリシスの不安げな様子に
プリシスの手を強く握り返していた。
二人の手をじっと見ていたボーマンは心の中で
『俺は友人も・・なくしちまったか』
と、呟いた。
が、それが間違いなくふたりが元に戻った結果であると判れば、
ボーマンにしてみればニーネに言ったとおり
『あの二人別れさせやしない』の言葉どおりなのであるから、
結果オーライ。終わり良ければ全てよしと、自分を宥めるしかない。
「ん・・じゃあな」
ボーマンは小さく手を振ると二人から離れていった。
セックスがお互いの心の結びつきを確認したい為だけの物であるのなら、決してボーマンもアシュトンなんかに(失礼!)手を
出したりしやしない。
『ちっとばっかし俺のもんを駆使させただけじゃねえか』
それに元はといえば、お前がつまんねえことに
こだわってるがきんちょだったから。
プリシスに言えるわけもない文句を呟きながら
ボーマンはプリシスを庇う様にして立ち去ってゆく
アシュトンを振り向いた。
『ふうーー』
小さなため息が混じると
なんだかボーマンはひどく寂しくなってる自分に気が付いている。
こんな時にはさすがのボーマンも、
心のうさをセックスなんかじゃ晴らせないのは判っている。
(ステラじゃ・・駄目か。)
ボーマンが頭の中に浮かぶ人を手繰ってゆくと、
ふと、セリーヌがいる事に気が付いた。
恋人への裏切り。
アシュトンとの事を話せる相手は
秘密を共有したセリーヌぐらいしかいないと気が付いた。
セリーヌだってボーマンとの事で
ひょっとして自分を責めちまってるかもしれない。
その重苦しさをどう、解決したか。
それを聞いてみることプリシスの心の鍵をとく事にもなるように思えた。
「セリーヌなら、話せるか」
アシュトンと何かあったことは
当のアシュトンよりプリシスの方が誰にも知られたくないことであろう。
だけど、秘密を共有したセリーヌなら、
アシュトンの事をしゃっべっても、
セリーヌだって相身互いってことになる。
『って・・・俺が・・そうしちまったんだけどよ』
勝手な言い分に少しばかり反省しながらボーマンは歩き出した。
クリスが帰っちまったというのに、
やっぱりセリーヌは着いていかなかった。
「よお」
ドアを開けたセリーヌにボーマンは笑って見せた。
「あ・・あら?」
「ひさしぶりだな」
ひさしぶりってほどじゃないけど、
この前までボーマンの物になってしまいかねなかったセリーヌと、
いいほど、クリスに抱かれつくされて自分の中の女を受け止められたい相手がクリスしかいないって事を思い知らされたセリーヌとでは
ボーマンには天と地ぐらい違う女に見えた。
「でも・・・ないわよ」
「そうか?俺には随分時がたったように思えるぜ」
ボーマンにとって、あの崩れ落ちそうだったセリーヌは
もうとっくに昔、過去の物でしかない。
今のお前は確かにクリスのもんだぜっていいたいんだ。
「いやね・・・」
ちっとばかし、馴れ合った男と女のはにかみを見せながら
セリーヌはボーマンを見た。
「と・・外に出ねえか?何だよ・・・。
嫉妬がねえわけじゃねえんだ。
な、おまえになにするかわかんねえしよ・・」
相変わらず落ちないって判ったら
平気でくどき文句を言ってみせるボーマンだけど、
あながちこれはウソじゃないかもしれないって思いながら
セリーヌは外に出た。
「相談っていうか・・ぐちをきいてもらいたくてな」
珍しい事ではあるけど
「それって誰かさんと一発やりてぇなんてことじゃないでしょうね?」
「あーん。レオンのことはあきらめてるって」
誰とは言ってないのに自分からレオンの名を出して
ボーマンは首をすくめた。
「じゃないってことですわね?」
もう一度念を押すとセリーヌは歩き出した。
「そっちは・・」
セリーヌがアマンダのほうに向かって歩き出したので
ボーマンはためらった。
「アマンダでは、つごうがわるくて?」
察しのいいセリーヌの言葉にボーマンは頷いた。
「ああ」
「じゃあ」
っセリーヌは向きを180度変えると歩き出した。
やがて、二人は通りすがりの店に入ると
客もまばらな奥の席を選んで座った。
「で?」
「アア・・少し飲んでからはなす」
注文をオーダーして品物が運ばれてくるまで二人は黙りこくっていた。
ボーマンが水割りに口をつけると
「アマンダが駄目って事はそこに来る人で
逢いたくないひとがいるってことでしてよね?」
と、セリーヌが切り出した
「あいたくねえわけじゃねえさ。でも、大方そのとおりだな」
「そうですの?」
アマンダに来る人。
レオンかクロードかアシュトン。
でも、レオンのことじゃないっていってたから。
「で、アシュトンとなにかあったわけですの?」
セリーヌの当て推量でしかないのに、
ボーマンの水割りのグラスを持つ手がふるえた。
「荒療治すぎたんだよな」
「え?」
「二人が元に戻ってんだ。それでいいんだけどよ」
「あの?どういうことか説明してくださらないと」
アシュトン?ということが当たっていたのはいいけど
ボーマンの説明は説明になっていない。
「プリシスを傷つけちまった」
「はい?」
この人が言う傷つけるって?
「ま、まさか?プリシスに手を出したって
おっしゃるんじゃないでしょうね?
ぁ!それで、アシュトンに顔あわせたくない?」
セリーヌのあの時にもボーマンはそういった。
お前のこれに顔あわせられなくなるって、
でも、それはセリーヌのこだわりとわだかまりを
解きほぐすためであったのだし。
それにセリーヌは傷ついてない。
むしろ感謝してるくらいである。
なのに、傷つけたという事はボーマンの、
心のあり方をいうことになるんだろうか?
と、いうことは
「ぁ、貴方?プリシスをおもちゃにしたってこと?」
わいてきた疑問をそのまま口に出したけど、
ボーマンはそんな人じゃない。けど?
「あんな、がきんちょにてをだしゃしないさ」
セリーヌの随分の推測にボーマンは怒りもしなかった。
「じゃあ?」
「あーん?俺は両刀だぜ」
「え?と、いうことは?」
「アシュトンに手をだしちまった」
「ええっ!ウソ?」
「嘘じゃねえよ」
「ば、馬鹿。なんで?なんでそんなこと?」
「成り行き上ってやつだよ」
わからなくもない。
自分自身を考えればもう少しでクリスを裏切っていた事であろう。
でも、それもボーマンの自制心が全てを解決させてくれている。
そのボーマンが何故抑えも効かされず
アシュトンに手をだしちゃったりする?
「俺はわりきってるよ。でもプリシスはそうはいかない」
「ぁ、貴方、アシュトンに本気だって言いたいわけ?」
ボーマンは首を振った。
「あいつらを元に戻すためでしかなかったんだ」
「だったら、手を出したり・・しなくても」
「お前。あん時、俺がどんなに
お前を抱いてやりたかったか判ってるのかよ」
「ボーマン?」
寂しくて辛くて悲しくて、そんな思いに埋め尽くされていた
あん時のセリーヌだった。
「アイツはお前ほど強くねえんだ。」
「自分の思いにまけちゃったわけですのね?」
「そうだな」
自分をあざ笑うような寂しい笑みを浮かべると
ボーマンは水割りを口に運んだ。
「でも?何故?そうはいかないって?プリシスにばれちゃったわけ?」
「俺がしゃべった」
「な?何ですって?何で?なんで?黙ってりゃすむことをわざわざ」
「仕方ねえだろ?プリシスはすぐ、にげかまして、
自分からアシュトンを捕まえようとしないんだぜ。
アシュトンがどっかいっちまいそうにならなきゃわかんねえ。
なんでも受け止めてやるって程
アシュトンが大事な事にきがついてねえんだ」
「だからって」
「俺もせつねえだろ?」
「え?」
「はい。どうぞって渡したくねえぜ」
「や。やだ。じゃあ。貴方、本気なわけじゃない?」
「は?一度肌をあわせたやつだぜ。情も移るってもんだろうが?」
「え。あ」
セリーヌもまた
ボーマンのその範疇にはいるんだといわれているようなものである。
「だろ?」
確かにかすかな接触であっても
特別であることの秘密に触れさせた男のことはけして憎くないし、
ほかの男には感じない馴れ合った感情がわく。
でも、それはそうなったせいでもあるけど、
そうなる前からボーマンの事を
どこかで好ましく思っていたせいかもしれない。
で、なければ、あん時
セリーヌはボーマンにだかれてもいいって思っただろうか?
「貴方、じゃあはじめから、アシュトンを?」
「そうじゃねえよ。そうじゃなくて。
ぁ?なんだよ?やいてくれてんのかよ?」
「かな?」
「何だよ?つれねえ返事だな」
「そうね。女の魅力には負けないくせに・・
男には負けちゃうなんて・・私女としての自信がなくなりましてよ」
「ち。嘘こけ。目が笑ってるぜ。
あいつとの事で自信たっぷり満足だって顔にかいてあるぜ」
「い。いやですわ」
図星だったんだろうセリーヌが妙にうろたえてると
「プリシスは多分そんな気分だろうよ」
と、ボーマンが沈んだ声で言った。
「自信がなくなっているってこと?」
「ああ」
「ですわよね」
「俺はばかだよな」
「ばかですわ」
「だよな」
「貴方が二人の事を大事なのは判ってましてよ。
でも、そんな方法で二人の溝を取っ払ってやろうなんてむりですわ」
「おまえにゃ、ききめあったのになあ」
「そりゃ・・・アシュトンにはききめはあったかもしれませんことよ。でも、プリシスは」
ため息をつくようにボーマンはセリーヌの言葉を継いだ。
「ゆるせるわけねえよな」
コホンとセリーヌは咳払いをすると
「まさかのことって言うのは許せない事ですのよ。
まさかって言うのはその人とセックスをするしないでなく、
まさか、その人に心ひかれたりしてないかってことですのよ。
もし、私が貴方とあの時一線を越えててしまったとして、
それがあの人に知れたとして。
彼が一番こだわるのはそれをした事じゃなくて、
私が心惹かれているということにだと思いましてよ。
心惹かれ、心重ねて自分より深い物を求めたくて
そうなったのかと思うとたまりません事よ」
「遊びならいいって言う事かよ?」
「極端ですけど、そうですわ」
「・・・遊びだってことにしろってことか?」
セリーヌは黙って首を振った。
「アシュトンはそういう人じゃない。
プリシスでは埋めれない物をボーマンなら埋められる。
そして、貴方もアシュトンに遊びでちょっかいを出すような人じゃない」
「どういうことだよ」
「それを一番判ってるのはプリシスだと思いましてよ。
でも、お互いの心のひだまであの子には判らない」
『・・・・・』
「二人は愛し合ってる。
自分は負けてる。
自分が無理やりアシュトンを引きとめてる。
アシュトンは優しいから、プリシスが可哀想で側にいてくれる。
そう、考えていたら?」
「ん・・・」
「あのこ妙にプライドが高いから、
自分から愛してるなんて認めないし、
あの鼻っ柱の強さでアシュトンを追い詰めてるとはきがつかない」
「レオンよか、たちが悪い」
「相手がアシュトンだからなおさらね」
「お前・・よくわかってるじゃねえかよ」
「あのこ自分が招いた結果だって事は判ってない。
でも、そんなあの子の性格をあの子自身に突き詰めて見せるのも
もっとつらいことですわ。
アシュトンは逃げるしかなかったんだと思いましてよ」
「おまえ・・」
「それを見てしまったボーマンが
アシュトンを包んでやりたくなって・・」
シュンと肩を落としたボーマンにセリーヌが言う。
「おホホ。役得でしかありませんわ。
きっと、私もボーマンと同じことしてましてよ」
「かよ?」
「ええ」
「でも、これいじょうは、ほうっておくしかねえよな」
「問題の解決は自分たちでするしかありませんことよ。
その問題は貴方とアシュトンが
どうした、こうしたって事じゃないですわ」
「そりゃそうだ」
「アシュトンを追い詰めてしまう原因があるから、
今回のことがあったんですもの。
それをなくさなきゃ仕方ない事でしょ?
第二のボーマン第三のボーマンがでてくるだけでしてよ」
「ん。おせっかいでしかなかったよな」
「いずれ、誰かがそうしたかもしれませんわよ。
たまたま、ボーマンがくじをひいた。
それがボーマンだったからプリシスの元に
アシュトンがもどれてるんじゃありませんこと?」
「かもしれねえな」
「私の事もそうだと思ってましてよ」
「え?」
「感謝してましてよ」
「へ。すんだことさ」
「ええ」
済んだ事。
そのおかげでセリーヌの心が澄んでいって、
自分の気持ちをつかみなおせたのである。
どろどろにかき回された欲求を沈められてゆくと
水は澄み切りその底にあるクリスへの思いを
しっかりみせつけてくれたできごとであった。
「のもうぜ」
ボーマンの心を判ってくれる存在がボーマンの気持ちを
いくらか楽にさせてくれていた。
「もちろんですわ」
そう答えるとセリーヌは空になったグラスを持ち上げて
2杯目をバーテンに合図した。

その頃。
「プリシス」
アシュトンの部屋に入ったプリシスが
アシュトンの背中に泣き崩れていた。
アシュトンはそのプリシスを捕まえて
胸の中にくるみこむとプリシスの顔を覗き込んだ。
「や・・だ」
子供みたいに駄々をこねて
アシュトンに顔を見せようとしないくせに
アシュトンから離れたくなくて
プリシスはアシュトンの胸にすがり付いて泣きじゃくっていた。
「ごめん・・」
この場合謝られるというのもみじめなものである。
悲しい同情と、成り立たないボーマンとの恋を
あきらめざるを得なくて
プリシスにもう一度振り向いてくれたアシュトンである
といっているだけに聞こえる。
さっきボーマンにあったアシュトンは
どんなに心をときめかせていたんだろうか?
ボーマンのまなざし一つにどんなに心をはずませたんだろう?
『そんな気持ちもう私にはもらえな・・い』
ひどく惨めな気持ちのままプリシスはアシュトンの胸の中にいる。
『愛してるっていわれなくてもいい。せめて欲しいよって求められたい』
最低限の必要性すらプリシスにも求める気にならないのも
ボーマンにあったせい?
アシュトンはじっとプリシスを抱きしめているだけだった。
でも、アシュトンにすれば当然の心境なのである。
今、あからさまにプリシスを求めてしまえば、
今のプリシスはアシュトンを失いたくないために
アシュトンをうけいれるだろう。
でも、それは、心が重なっているとはいえない。
そんな状況で自分の満足の為にだけに
プリシスを求めるのが、ボーマンとの事があってから
ことさらいやになってきている。
けれど、プリシスにはそんなアシュトンの気持ちが判らない。
『欲しくないんだ・・・。でも、私だけを求められたい…。
そんなアシュトンを見たくて、ねだってまでセックスをする?
惨めだよね…。アシュトンからのぞまれたいよ・・・』
一つになりきれない思いを抱えながら、
求められない惨めさと自分から求めてしまえば
またそれも惨めでしかない。
『アシュトン。私は・・今・・貴方にとってなに?』
アシュトンの胸の中に入れることだけを喜ぶしかないんだろう。
それ以上はわがままだよね。
ポツリと落ちる涙がアシュトンのシャツをぬらしてゆく。
『プリシス』
キス一つでも、渡したいアシュトンだったけど
『そんなのごまかしだよね?』
プリシスの気持ちを軽く扱ってしまうように思えて、
アシュトンは自分の中に起こってくる
身体を重ねあいたいって欲求をこらえてる。
『勝手すぎるよね。泣いてる彼女にセックスしたいっておかしいよね』
なにいってんでしょ。
何もかも包んであげたい。
その思いが欲求という形でアシュトンの中に沸いてきてるんじゃない?
なのに、素直に自分の気持ちのままになれずに
アシュトンはじっとしていた。
「アシュトン」
「ん?」
アシュトンが問いかけてくるまなざしに
プリシスはやはりきくことができない。
「ううん」
「あの・・怒ってる?」
不安げにアシュトンがプリシスに尋ねると、
「ううん。あの・・なんでそう思うの」
逆にたずね返された。
「あ、だって・・」
だって、やっぱりプリシスがボーマンとのこと許せるわけが無い。
「わたし・・・」
どうしょうも無くみじめでしかない。
そういいたいのもプリシスは黙った。
軽く聞き流されても、
またアシュトンに謝られても一層惨めになるだけだった。
「あのね」
よほどだいてよといおうか。
でも、望まれもしないのに強制する?
『何で、抱いてくれないの?』
そう、たずねてみようか?
なに言われても驚いちゃ駄目よ。
プリシスは自分に言い聞かせるとアシュトンに尋ねてみた。
「え?」
やるせない寂しさが言わせたプリシスの言葉をアシュトンは考えていた。
不思議なほど欲求が萎えてゆくのに、
アシュトンはプリシスを抱いてあげようって思った。
今のプリシスの寂しさをなぐさめてあげようって。
アシュトンはプリシスの頬を挟み込みながら唇を寄せてゆくと、
片手をプリシスのスカートの中に突っ込んでいって、
下着をひきずりおろしていった。
欲しくなってしまってる事をあらわしている潤みがあるのを確かめるとアシュトンも下着を脱ぎ捨ててプリシスの中に入っていった。
どうしょうも無い寂しさがプリシスの身体に欲求を起こさせている。
『こんなに僕が欲しい?』
片割れにあえない寂しさが涙を流させるかのように、
プリシスの中はひどくぬめっていて
アシュトンの動きもなめらかになっている。
「プリシス・・・あいしてるよ」
激情でもない。
欲求に与えられた快感のせいでもなく
アシュトンはただ、プリシスの心を慰めたくて、
宥めたくて自分の物を動かし続けた。
『ボーマン。あんた・・こんな気持ちだったんだ?』
ふと、ボーマンの気持ちがアシュトンにかさなってゆく。
そして、プリシスがあの時の僕?
アシュトンの腕の中で、
「うれしい・・」
って、プリシスは呟いている。
最低線である異性としての必要段階。
あるいは女そのものを求めてくれるアシュトンがいる。
くちゅくちゅと音を立てているプシイに与えられてゆく快感が、
アシュトンから与えられている事が
プリシスには何よりも嬉しい。
「ぁ。アシュトン・・きもち・・いいよ」
プリシスの思いも迷いも悲しみもすべて快感に飲み込まれてゆく。
それをじっと見つめているアシュトンだったけど、
『プリシス。あの日、欲望に
君に
服従してしまう自分に、
僕は自分のスタンスが崩れてゆく気がしたんだ。
なぜなら君の思いは僕を受け止めたいって思ってなかったんだ』
でも、プリシスがかわった。
今のプリシスはアシュトンの一挙一投足にすがってくる女になってる。
プリシスを慰めるかのように一層早く動き出したアシュトンに
「あ・・アシュトン・・あ」
吐息を漏らしてゆくプリシスの中で脈動を起こし始めた物を
アシュトンは思い切り引き抜いた。
自分の手で押さえ込んで発射を受け止めてやると
アシュトンは立ち上がった。
「・・・・」
中でださんないんだ。
プリシスに思い切り欲求をぶつけているわけじゃない。
思わずプリシスの中で果ててしまう事をセーブするアシュトンがいる。
『何で?』
手を洗いに行ったアシュトンが帰ってくると
プリシスははっきりともう、駄目になったんだって思った。
それでも、
「アシュトン」
本当に好きよって言葉を出したら
心の中が空っぽになってしまいそうだった。
心の中の一片〔ワン・ピース〕を崩したら心の中に
風がはいりこんできそうでプリシスは黙った。
「ん?」
プリシスの頭を優しく撫でるアシュトンだったけど。プリシスには
『アシュトンは私を子供だと思って諦め始めてるんだ』
と、思えてくる。
「アシュトン」
「ん?」
寄り添ってくるプリシスに手を回すと
「たらない?」
って、たずねた。
『そうじゃない・・ううん。・・そう』
アシュトンの胸に身体を預けたままのプリシスの足の間に
アシュトンの手が伸びてくる。
「あ・・あ」
すがりつくプリシスの微妙な位置を覚えてしまったアシュトンは
スグに高い刺激をプリシスに与え始めていた。
「プリシス」
「ん・・ん」
「僕のを触って」
「ん」
すっかり、萎えてる。
前のアシュトンならこんなことは無かった。
プリシスの欲求に答えるため萎えた物をエレクトさせてまで・・・。
悲しい事実なのにプリシスは何故こうまで満たされない。
寂しくて悲しくてアシュトンを感じていたい。
アシュトンに与えられる快感の中で全てを忘れ溺れ去りたい。
その欲求がプリシスを変えていった。
アシュトンの膝の上に上がりこむと
プリシスは自分からアシュトンを求め出していた。
「ね、アシュトン」
今のプリシスに似た感情が
あるいはアシュトンにボーマンを受け容れさせたのかもしれない。
でも、是は愛じゃない。
どうしょうもない自己の確認でしかない。
まるで自慰行為そのもの。
プリシスの中にふと沸いてきたアシュトンへの理解だった。
「アシュトン」
「なに」
「寂しかったんだ?
私がアシュトンの事ちっとも受け止めないから。
我侭な女の子だったから、寂しかったんだ?
ね?そうでしょ?だから、ボーマンと」
アシュトンは少し考えていたけど
「そうだよ、身体だけおとなになっちゃって・・心が」
「ごめん。ね。よくわかったよ。だからもういわないで」
「ぼくは・・」
「いいの。もういわないで。私が、私がアシュトンを好きなの。
アシュトンがどうかなんてもういい。
ね?動いて。もっとアシュトンを感じたい」
「ぼくは」
アシュトンはプリシスへの愛情を精一杯表すかのように
動き出しながらプリシスの腰を何度も揺り動かしていった。
「あ・・」
ぬるぬるした物がアシュトンの股間までしたたりおちている。
「プリシスきもちいい?」
「ん」
「本当?」
「んん」
「ねえ。その気持ちいいのは僕があげたんだよ」
「ん」
「ね。プリシスもっとあげる。いろんなこともっともっと・・」
「ぁ・・あたしもあたしもあげる。アシュトンにいろんなことあげたい」

欲しい。欲しい。
って、ねだってばかりいた二人があげるってそういいだしていた。
「ボーマンはけして欲しくて僕をだいたわけじゃんない。
与えてあげたい。それだけの愛情だったんだと思う。
丁度今のこんな気持ちに似ているかもしれない。
僕もプリシスも与える事を知らない子供だった。
それをボーマンが教えてくれたんだ」
黙って聞いていたプリシスはアシュトンの言う通りだって思った。
二度目の疼きを訴えだしたアシュトンが慌ててプリシスに告げた。
「今あぶないんでしょ?」
「あ?うん」
「あは。せつなーい」
危ない日。それだけ?
なのに気を回しすぎていた。
自分の気持ちばっかだったよねってプリシスは思うと
慌てて身体を離したアシュトンに追いすがると、
アシュトンの物をほうばろうとしはじめた。
「あ?いいの?」
「いいの。そうしてあげたい。
自分の手なんかで受け止めないで。
アシュトンの事なら私が何もかも」
受け止めて見せるという口がアシュトンの物をほうばり始めた。
その優しい動きがアシュトンに伝わってきた。
瞬く間にアシュトンはプリシスの口の中で果てていてしまったけど、
放たれた物をプリシスはごくりと飲み込んだ。
アシュトンの事なら何でも受け止めたい
プリシスの少女期からの脱却だった。












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