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蝉時雨
作:日暮ひかり



<二>


 わたしと桜庭が出会ったのは小学生の頃だった。
 わたし、新藤しんどう理津りつ。あいつ、桜庭尽。
 最初のきっかけは、ただ入学して一番最初のクラスで出席番号が同じで、席が隣だったってだけ。
 自然とよく喋るようになって、気がつけば、わたしは桜庭に夢中になっていた。

 好きだった、ってわけじゃないし、今もそうだ。
 桜庭は変な奴だ。
 見てるところがわたしともみんなとも違っていたから、わたしはいつもなにを見てるの? って聞いた。
 桜庭の考えてることが気になって、いつも追いかけていた。
 桜庭は静かに、でも少し嬉しそうに、いろんなことを話してくれた。

 空の雲がちぎれるのはきっと風の通り道をあけてあげているからだ、とか。
 砂の粒が丸いのはできるだけどこか遠くへ転がっていきたいからだ、とか。
 海の色が青いのはみんなの代わりに泣いているおかあさんだからだ、とか。

 桜庭の話はいつも途方がなく広くて、遠くにある。
 いま思えば全然現実感のない話ばかりだけど、夢はいっぱいだった。 
 わたしの知らないことをたくさん教えてくれる物知りの……
 博士、というほどお固くはない。
 妖精さん、ってほどかわいげはない。
 森のフクロウ。ちいさくて白いやつだ。そういうのが近い。
 かわいげはないけど、顔は可愛い。目がでかくて口が小さくて、肌はなまっ白くやせていた。

 性格なんかははっきり言って、わたしなんかとは全然違う。
 わたしは元気で、元気すぎて、小学校時代なんかは結局一度も学校を休むことがなかった。
 いつも外で走り回っているようなタイプ。よくジャングルジムからむちゃくちゃな飛び方で落っこちては青あざを作っていたし、写真を見返すと、今より全然よく日焼けしている。男勝りってやつだ。
 わたしのランドセルからはいつでも太陽のにおいがした。

 りっちゃんはおひさまの子みたいだね。
 大好きだった若い女の先生に言われたその言葉を、いたく気に入っていた。
 だから、雨の日はいつもしょんぼりしていた。
 そんなときに、逆に元気になるのが桜庭だった。
 












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