プロローグ
うだるような暑さが続いていた。
世界中が大きな鍋の中におさまっていて、ぐつぐつと音を立てて煮えたぎっているようだった。
四方から容赦ない熱が体を襲う。額に浮いた汗がたちまち球になり、頬から顎へと伝ってアスファルトに落ちると、数える間もなく消えてしまった。体は熱く火照り、脳みそまで沸騰している気がする。
すでに限界は超えているんだろうと、他人事のように思った。きっと心が真っ白なんだろう。
太陽が降りそそぐ八月の空の下で、わたしは駐車場に立ちつくしていた。
体が重いようで軽く、軽いようで重い。どちらにしてもただの入れ物と化しているようだった。記憶も、意識も感覚も、空っぽの体の中で宙に浮いて漂っていて、自分というものの中心が今どこにあるのかわからない。暑い――何だかすべてを投げ出してしまいそうで、ゆっくりと瞳を閉じる。
瞼の裏に何色ともつかない光がちらついて、目の前まで真っ白につつまれていった。
ああ、蝉時雨。うるさいぐらいに鳴いている。
撃ち殺してもいいだろうか――
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