第6話:霞愛歌編〜臨時生徒会長と副会長さん
白皇学院時計塔。
ここは、選ばれた生徒が生徒会役員となり、集う場所である。
今ここに、生徒会役員でも何でもない1人の少年がいた。
少年の名は綾崎ハヤテ。
なぜ、こんな事になったかというと・・・
朝の三千院邸にて
綾崎ハヤテ
「え?ヒナギクさん体調不良なんですか?」
ハヤテはヒナギクから電話を受けていた。
桂ヒナギク
「そうなのよ。だからハヤテ君、今日1日だけ生徒会長やってくれない?」
ハヤテ
「ええ!!ボクがですか!?」
ヒナギク
「そうよ。もう泉達には連絡してあるから、よろしくお願いね。」
ハヤテ
「ハ、ハァ・・・」
まぁこんなワケで、ハヤテは1日生徒会長をやるハメになったというワケである。
ハヤテ
「ハァ・・・それにしても、1日だけとはいえヒナギクさんの代わりだなんて荷が重いなぁ・・・」
ハヤテはため息をついている。
そんなハヤテに、泉が声をかけた。
瀬川泉
「大丈夫だよハヤ太君〜。私達がいるじゃない!」
ハヤテ
「そうでしたね。でも、瀬川さん達だけだと少し不安が・・・」
花菱美希
「その心配はないわ!」
美希が自信たっぷりに言う。
朝風理沙
「忘れたのかねハヤ太君。生徒会には後2人仲間がいる事を。」
理沙の声と同時に、後2人の仲間が入って来た。
ハヤテ
「えっと、確かあなた方は・・・」
霞愛歌
「私は副会長の霞愛歌です。」
春風千桜
「私は書記の春風千桜です。」
2人は挨拶をした。
ハヤテ
「あ、どうもこんにちは。」
ハヤテも挨拶をした。
泉
「委員長さんレッド〜♪」
美希
「副委員長ブルー!」
理沙
「風紀委員ブラック!」
千桜
「えっと、書記グレー!」
愛歌
「副会長ピンク♪」
泉・美希・理沙・千桜・愛歌
「5人そろって、轟々生徒会戦隊タンケンジャー!!!」
ドーン!!!
ハヤテ
「楽しそうだな〜。」
美希
「なので、私達がいれば心配無用!」
千桜
「綾崎君はかまえていてくれれば良いですから。」
泉
「では、早速〜。」
理沙
「この服に着替えてくれハヤ太君。」
そう言って理沙が取り出したのは、どこからどう見ても女物と思われる制服だった。
ハヤテ
「着替えてくれって、この服・・・女物ですよね?」
泉
「そだよ?」
ハヤテ
「なぜボクに?」
美希
「なぜって、そりゃ・・・」
理沙
「似合いそうだから。」
ハヤテ
「思いつきですか・・・」
愛歌
「さぁ、綾崎君。男らしくこの服を・・・」
ハヤテ
「『男らしく』全然関係ないですよ!ってキャ〜!!」
いくらハヤテといえども、4人の女の子に囲まれて逃げられるハズもなく(千桜は止めようとしたのだが、愛歌ににらまれすごんでしまった)・・・
哀れにも女物の制服を着せられてしまったのだった。
美希
「やはり・・・」
理沙
「素材が良いと・・・」
泉
「良く似合うね〜♪」
愛歌
「私もそう思います。ですよね千桜さん?」
千桜
「は、はいそうですね・・・」
千桜はハヤテに申し訳ないと思っているらしく、半ば遠慮がちに言う。
ハヤテ
「こんな格好ほめられても全然嬉しくないですよ〜。」
愛歌
「ではカツラもかぶりましょうか。さすがにそのままだと何ですし。」
理沙
「では、こんな時のために用意しといた水色のロングヘアーのカツラを・・・」
ハヤテ
「何でそんな物用意してるんですか〜!!」
その後、全校集会が始まった。
ハヤテは泉達の真ん中にいる状態である。
ハヤテ
「え〜、今日はヒナギクさんが体調不良なので、私綾崎ハヤミが臨時生徒会長をする事になりました。よろしくお願いします。」
綾崎ハヤミとは、もちろんハヤテが考えた偽名である。
生徒達から拍手が起こった。
「誰だろあの子?新入生かな?」
「桂さんに負けないぐらいの美人だぞ。」
「あ、綾崎の妹なのか・・・?ちょうど良い!この機会にあの子と仲良くなって綾崎の好感度をアップだ!」
最後の声の主は誰あろう、変態執事虎鉄だ。
ハヤテはピキッとなった。
ハヤテ
「瀬川さん、麻酔バズーカを出してください。」
泉
「ハイな〜♪」
泉がバズーカ砲を渡すと、ハヤテはバズーカをぶっ放した。
球は虎鉄めがけて飛んでいき、虎鉄を眠らせた。
ハヤテ
「え〜、早めに言っておきますが、私を怒らせるような事をした人には、兄の怒りの制裁がありますのでお忘れなく〜♪」
ハヤテは笑顔で言った。
その瞬間、生徒達は思った。
この子はハヤテ以上にヤバいと。
まぁ、中身はハヤテなのだが。
そんなこんなで、全校集会は終わった。
ハヤテ
「しかし、半端なく多いですね〜。」
ハヤテは書類の山を見ながら言った。
愛歌
「そうですね。でも大丈夫ですよ。私達6人で力を合わせれば、こんな書類の山なんて・・・」
千桜
「あの・・・泉さん達帰っちゃいましたけど・・・?」
ハヤテ・愛歌
「ええ!!」
千桜
「またサボりのようですね。」
愛歌
「まぁ良いですわ。明日あの子達にお仕置きすれば良いんですから。会長の力も借りれますし♪」
愛歌は不敵に微笑んだ。
ハヤテ・千桜
「(怖っ!!)」
ハヤテと千桜は思った。
愛歌
「さて、あの3人は放っておいて、私達だけで片づけちゃいましょう。大丈夫です。私と千桜さんと綾崎君の力を合わせれば、ものの1時間程度で終わらせられます!!」
ってなワケで、3人は書類の整理にかかった。
愛歌
「・・・崎君、綾崎君。」
ハヤテ
「ん・・・ん?」
ハヤテは目を覚ました。
愛歌
「あ、やっと起きましたね。」
ハヤテ
「愛歌さん・・・あ、そうだ書類は・・・」
愛歌
「もう終わってますよ。」
ハヤテ
「え?」
ハヤテは目の前を見た。
確かに書類はキレイにまとまっている。
愛歌
「綾崎君はスゴいですね。意識朦朧の状態で書類を整理できるんですから。私と千桜さんも驚いてしまいました。」
ハヤテ
「ハァ・・・で、その千桜さんはどこに?」
愛歌
「千桜さんは先に帰りましたよ。何か用事があるそうです。」
ハヤテは愛歌が一瞬含み笑いをしたのをしっかりと見た。
愛歌
「さて、今のところここにいるのは私と綾崎君だけみたいですが・・・どうしましょうかね?」
その言葉にハヤテはハッとした。
今自分がしている格好の事を・・・
イヤな予感がするハヤテ。
愛歌
「せっかく2人きりなのですから、綾崎君には私の着せ替え人形になってもらいましょうかねぇ?」
ハヤテ
「き、着せ替え人形って・・・どういう意味ですか?まさか・・・」
愛歌
「んー?私が持ってる服を綾崎君に着てもらおうと思いまして♪」
ハヤテ
「やっぱり・・・」
愛歌
「言っておきますけど、今は2人だけしかいないから逃げられませんよ。」
ハヤテ
「わかりましたよ・・・」
ハヤテはしぶしぶ承諾した。
愛歌
「じゃあ、まずはこの服を着てもらいましょうかね?」
愛歌
「わ〜、綾崎君カワイイ〜♪」
愛歌は先ほどから、ハヤテの女装写真を撮りまくっていた。
愛歌
「綾崎君スゴく似合っていますよ。本当に男の子なんですか?」
ハヤテ
「それ、もう4〜5回は聞きましたよね?」
愛歌
「だって本当にカワイイですから。」
ハヤテ
「そんな事言われても嬉しくないですよ・・・昔ケーキ屋でバイトしてたら男性客に女性店員と間違えられましたし、中学生時代にプールバーでバイトしてた時も女性だと間違えられましたし・・・」
ハヤテはうつむいた。
愛歌
「・・・(あ、あら?もしかして私、地雷踏みました?)すいません、綾崎君があまりにもカワイイのでつい調子に乗ってしまいました・・・」
ハヤテ
「気にしなくていいですよ・・・」
そう言いつつも、ハヤテの周りの空気はよどむ。
愛歌
「(わ、私は気にするんですけどね・・・)」
ハヤテ
「ところで愛歌さん、他の人にもこんな事してるんですか?」
愛歌
「え!?」
いきなりハヤテに聞かれ、愛歌は狼狽えた。
愛歌
「は、はい。私、カワイイ子を見るとついイジメたくなっちゃうんですよ・・・私の悪いクセでして・・・」
ハヤテ
「まぁ、ボクは別に気にしませんよ・・・お屋敷でも初回から似たような目に遭ったので・・・」
愛歌
「ハ、ハァ・・・」
愛歌は冷や汗をかいた。
ハヤテ
「ところで愛歌さん、写真の事ですが・・・」
愛歌
「だ、大丈夫ですよ!誰にも見せず個人的に楽しむので。」
ハヤテ
「個人的にですか・・・」
ハヤテはホッとした様子だった。
ハヤテ
「では、そろそろ帰りましょうか?」
愛歌
「あ、はい。そうですね。」
ハヤテと愛歌はカバンをつかむと、時計塔を出た。
ハヤテ
「じゃあ、ボクはこっちなので・・・」
愛歌
「はい、また明日ですね。」
ハヤテと愛歌は校門で挨拶を交わすと、別れた。
ハヤテと別れた愛歌は、デパートで買い物をしていた。
愛歌
「フゥ・・・今日はこれぐらいでいいですかね・・・」
愛歌はレジで会計を済ませると、買い物袋を持って外に出た。
しばらく歩いていた愛歌は、後ろからの気配に気がついた。
愛歌が振り返ると、謎の影はピタリと止まった。
愛歌の様子をうかがっているようだ。
愛歌は深呼吸すると、走り出した。
謎の影も少し速度を上げている。
愛歌は買い物袋を持っているので速度が上がらない。
しかし、影の方も何かを持っているのか、走るのが遅い。
愛歌はとっさに方向転換をすると、その方向に駆け出した。
謎の影は一瞬驚いたようだが、まだ愛歌の後をを追って来る。
愛歌は走りながら、ため息をついた。
愛歌
「(フゥ・・・もしかしてこれはおじい様からもらった『アレ』のせいでしょうか?とにかく、もう少し耐えれば逃げ切れるでしょう・・・)」
そう思って速度を落とし、歩き始めた愛歌。
その時、愛歌の前方から何かがやって来た。
帽子を目深にかぶり、コートを着込んで顔を隠しているいかにも怪しげな姿。
愛歌は後ろの影に気を取られていたせいか、前の影に気づくのが遅れた。
そして、横にすれ違った時だった。
影が愛歌の手を引っ張り、愛歌の口をハンカチで塞ぐと背中に抱え上げた。
愛歌
「うっ!!」
買い物袋が地面に落ちる。
愛歌
「う〜っ、う〜っ!!」
愛歌は必死に暴れたが、どうやら相手は男らしく、少し男の速度を落とす程度の効果しかなかった。
男はしばらく走ると、道路に止めてあった車の横で止まり、後部座席に愛歌を押し込もうとする。
愛歌がもうダメだと思ってあきらめかけた、その時だった。
1人の少年の声が聞こえてきたのは。
「疾風の・・・如く!!」
一瞬巻き起こる風。
何が起こったのかもわからずに、男は気絶させられた。
「・・・さん、愛歌さん。」
愛歌
「ん・・・ん?」
体を揺すられ、愛歌はようやく目を覚ました。
愛歌
「あ、綾崎君・・・?」
ハヤテ
「よかった、やっと起きましたね。」
愛歌
「私、一体・・・」
ハヤテ
「愛歌さんは誘拐されそうになってたんですよ。そこにいるあの男にね。」
ハヤテが指差す方を愛歌が見ると、1人の男がパトカーに乗せられようとしているところだった。
愛歌
「じゃあ、帰る時後ろから感じていた視線って・・・」
ハヤテ
「ボクだったんですよ。偶然愛歌さんを見かけましたし、最近は物騒な輩がいると聞きましたんで。」
愛歌
「だ、だったら、普通に話しかけてくれれば良かったじゃないですか。そうすれば、こんな目に遭う事もなかったのに・・・」
ハヤテ
「すいません。」
愛歌
「まぁ、良いですわ。助けてもらえましたし。ありがとう、綾崎君。」
そう言うと、愛歌はハヤテの頬にキスをした。
その後、愛歌とハヤテは警察で事情聴取を受けてから途中まで一緒に帰ったのだった。
ハヤテは翌日、生徒会3人娘と千桜・ヒナギクの5人と一緒に登校していた。
と言っても、偶然バスで会っただけなのだが。
ヒナギク
「今日もナギは引きこもりか・・・」
ハヤテ
「ええ、恥ずかしながら・・・」
その時、後ろから来た愛歌がハヤテの肩を叩いた。
愛歌
「おっはよ!」
ポン!
ハヤテ
「ヒャ!!あ、愛歌さんおはようございます・・・」
愛歌
「はい、おはよう。朝からそんな暗い顔してたら・・・幸せつかみ損ねますよ、ハヤテ君♪」
ハヤテ
「ハ、ハァ・・・」
愛歌は笑顔でそう言うと、軽快に校舎の方へと走って行った。
美希
「ヒ、ヒナ、愛歌さん一体どうしたんだ?いつもの彼女とちがうような・・・」
ヒナギク
「さ、さぁ・・・?」
理沙
「ウ〜ム・・・」
泉
「謎だね〜。」
ハヤテ達は疑問に思いながら、愛歌の後を追った。
ハヤテはその後、生徒会3人娘に女装写真を撮られる事はなくなった。
生徒会副会長・霞愛歌。
彼女がハヤテへの恋心に気づくのは、もう少し後の話だったりする・・・
霞愛歌編・完 |