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  黒と白の約束 作者:浅倉
すいません、三話追記しましたm(__)m
ご迷惑をお掛けします
第四話
次に意識を取り戻した時、まず粗末で今にも崩れそうな天井が目に入り、続いて粗末な布団の上に寝かされていることを理解した。
あまりにも粗末過ぎてそれが布団なのかどうか定かではないが、とりあえず寝かされていたのだから布団ということにしておこう。
起き上がると体の節々が痛んだ。
そして意識を失う前の記憶が蘇る、血濡れて倒れた幼馴染みたち。
恭一は頭を振ると意識からその記憶を意識的に消した。
今はさっきとはまた違う状況を知るのが先だ。
外れそうな扉を明けると、すぐ横の扉から声が漏れてくる。
耳を近付けた。

「べる……がで………なばくは……おき…らしわ。それ…ゆ…えふ…いだった……デルはか…もぐう……み……ったとか」
「えぇ!?それっってホントなの?」
「こらっ……こ…が………い。おこし……た…どう……の?」
「ごめ…な…い」

恭一はヒソヒソ話に入っていいものかと思ったが、このままここに突っ立っているのもどうかと思ったので、深呼吸して扉を開けた。
が、思わず息を飲んでしまった。

「あらっ、起きちゃったの?ごめんなさい、声が大きかったわね」

目の前にいたのは壮年の女性と幼い女の子だったが、その全身は顔や手のひらなどを除いて青黒い鱗に覆われていた。
世に言う亜人というやつだろうか。
恭一が驚いた顔をしているので女の子がどうしたの?と顔を覗いてきたが、その目は白目の無い青だったので、思わず身を引いてしまった。

「鱗族を見るのは初めてかい?」

壮年の女性、おそらく女の子の母親が恭一の様子を見て聞いてきた。

鱗族(りんぞく)?」
「そう鱗族。私たちみたいに、体に鱗があるものを総称して鱗族って言うのさ。その他にも牙族(がぞく)羽族(うぞく)爪族(そうぞく)っていうのがいるよ。特徴が種族の総称になっているのさ」
「わかりやすいですね」
「……そういうあんたは不思議だね、身なりはヒトなのに纏う雰囲気は全く違う、邪なものを全く感じない」

邪なものが全くないかどうかは分からないが、雰囲気が違うのはしょうがない、なんせここでの異世界から来たのだから。
とりあえず、彼らが自分に危害を加えるつもりはなさそうなのでその点に関しては安心した。

「先程は何の話をしていたんですか?」
「ん?あぁ、ベルデルガで大規模な爆発があったのさ。その時に行方不明だったランデル博士も見つかったらしい」
「ベルデルガ?」
「知らないのかい?ヒトが作った巨大な都市さ、ヒト以外で近づく者のいない不気味な所だよ。ここからはかなりの距離がある、そうさねぇ馬車を乗り継いでどのくらいになるかなねぇ……」
「………俺は何日くらい眠ってました?」
「丸々3日だよ、呼吸はしてるのに起きる気配が無いから心配したよ」

3日前の情報がここまで伝わってきている。
馬車でどのくらいかは分からない距離らしいが、情報伝達速度からしてそこまで遠いとは思えない。
記憶に幽かに残っている眼下に映る街並み。
ランデルという名前が出たということは会長は生きていておそらく恭一たちが飛ばされた場所、そしてその街を爆発させたのは………俺?
目の前で倒れていった仲間たち、彼らは無事なのだろうか。
会長は無事らしい、だったら同じ場所にいた彼らも無事であると願いたい。
ふと湧いた疑問……

「それであんたは何者なんだい?」

『……俺は…何者なんだ………。』

「分からないのかい?名前も…?」
「……恭一」
「変わった名前だね。この世界の生き物ではないみたいだ」

あまりに自然と出てきたその言葉。
危うく受け流してしまうところだったが、寸でで踏みとどまった。

「この世界の他にも世界があることを知ってるんですか?」
「あるらしいってことは知っているよ、その存在は確かなものじゃないけどね。何年か前までベルデルガでランデル博士やディスティル博士が中心となって外の世界を探す研究をしていると聞いたことがあるよ。ここだけの話、ランデル博士が行方不明だったのは、その外の世界に行っていたからなんじゃないかって言われてる。爆発もランデル博士が発見された日と同じだから、何か関係があるんじゃないかってね。………まさかあんた、外から来たのかい!?」

その返答に曖昧に答えると女性が呆れたように深いため息をついた。
どう捉えようと彼女の自由だ。
沈黙が生まれた。
女の子が不思議そうにこちらを見上げている。
何となく頭の上に手を乗せて撫でてあげると、気持ち良さそうにされるがままだ。
小動物みたいで可愛い。
しかし静寂を破るかのように、突如外から悲鳴が上がった。
そして扉が壊れんばかりの勢いで開けられ、これまた全身鱗に包まれた男が立っていた。

「メイ、逃げろ、『陰』だ!!」
「そんな、まさか!!」

メイと呼ばれた女性が呆然としている俺と女の子の腕を掴むと外に飛び出した。
直後に背後で家がバキバキという音を立てるのが聞こえる。
振り返ると黒い塊、そう学校を襲った黒い塊が巨大な爪をこちらに向けて、押しつぶした家の上で威嚇していた。
全身の血が沸騰しそうになるのを感じる。

「くそっ、なんでここ最近は無かったのに…。ってあんちゃん、ヒトか!?」

今更恭一の存在に気付いたらしい男が警戒の目を向けてきたが、黒い塊が咆哮したためすぐに注意が逸らされた。
また悲鳴があがった。
顔を向けると黒い塊が爪で鱗族を串刺しにして投げ捨てるところだった。
あれじゃあ助からない。
どこか冷静な脳が考える。
しかし注意を逸らしたのがいけなかったのか、視界の端に目の前の黒い塊が襲ってくるのが見えた。
ほとんど反射的に傍に立って泣いている女の子を抱きかかえると横に跳んだ。
大きく抉られる地面。
あがる悲鳴。
恭一は近くに立っていた鱗族に女の子を押し付けると、再びこちらを襲おうとする黒い塊に向かって拳を振るった。
爆散する黒い塊。
息を飲む声。
仲間が散ったのを見た黒い塊が恭一の周りに集まり、警戒するように周回し始める。
いくらなんでも数が多すぎた。
そのうちの3頭が一斉に襲いかかってくる。
避けきれない。
今度こそ死ぬ。
そう思った瞬間、何かが飛び出しあっという間にその3頭を叩き切った。
ゆっくりと立ち上がる何か、鱗族の男。
恭一よりも少し背が高いくらいだが、その体は比べようもない。
がっしりと鍛え上げられたその体は傷だらけで、どのくらいの死線を越えてきたのかを物語っている。
そしてその手に握られた大振りの剣。
再び襲ってきた黒い塊を片手で握った大剣で切り裂く。
背後から襲いかかる黒い塊、気付かないのか?
恭一が助けようと飛び出すが、男に爪が当たるか否かで何かがそれを貫いた。
巨大な槍だ。
続いて降ってきた矢も抜群の命中率で次々と黒い塊を襲っていく。
全滅するのにそう時間はかからなかった。

呆気にとられた。
目の前で剣についた黒い塊の体液をふき取る男の存在が信じられなかった。
その隣に当たり前のように立つ女性の手にも大振りの槍が握られている、さっきこの鱗族の男を助けた槍の持ち主。
背後で鈴が鳴るような声がした。

「リューラン、トリナ。もう気配は感じない」

振り返ると背中に羽を生やした弓を持つ少女と、やけに顔が整った男が立っていた。

「帰ってきてくれたのか……」

誰かが呟いた。
その瞬間、それを合図にしたのかのように水を打ったように静まり返っていたその場が一気に歓声に包まれた。
4人があっという間に村人たちに囲まれた。
何がなんだか分からない恭一はその場から逃げるように離れると、小さな手が逃げる手を握ってきた。
見降ろすとさっきの女の子だ。

「きょうち、どこに行くの?」

青い目でこちらを見てくる女の子の頭にまた手を乗せて撫でてやると、にっこりとはにかんだ。
可愛い。
しかし突然黒い影が女の子を覆い、あっという間に引きはがされた。
顔をあげると大剣を構えたリューランと呼ばれた鱗族の男が自分の背後に女の子を隠すようにして立っている。

「この子に何をするつもりだった」

何かをするつもりはない。
多少可愛いなぁという下心的なものはあったのだが、それに気付かれたのだろうか?

「別に可愛いなぁって思っただけで、特に何かをするつもりはっ」
「何もしないだと、しらばっくれるな!!ヒトの分際でこの村に一体何の用だ!!」

喉元に突きつけられた刃先、完全に首に触れているのが分かる、そして伝い落ちる液体。
あぁ俺殺されるかも、と呑気にそんなことを考えていた。

「リューランさまやめて!!きょうちはあたしをたすけてくれたんだよ!!」
「助けただぁ?ヒトが俺達にそんなことするたぁ何か下衆なこと考えてじゃねぇのか、あぁ!?」

言い方はそこら辺の不良と大して変わらないが、とんでもない得物を持っているだけ性質が悪い。
短気は損気という言葉を教えてあげたい衝動に駆られた。
周囲は完全に静観を決め込んでいる。

「いやだから、本当に俺は何も」
「うるせぇ!!」

怒鳴ると同時に大剣が振り上げられた。
人の話を聞けと言いたい。
女の子が恐怖で目を瞑る、それを見ながら名前聞いておけば良かったなぁなんてことを考えた。
なんともあっけない最期だと振り下ろされる刃先を見て思った。



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