「はぁ…ハァッ」
疲れた…、つーかもう駄目だ、走れねぇ。
こうなりゃやる事はただ一つ。
ヒッチハイクッ!!
ププ〜ッ
そう考えている所に丁度一台の小型バスがこちらに向け、走っているのが見えた。
「おっ…ラッキー!ヒッチハイィィク!!」
親指を立ててかっこつける。
ブォンッ
「………」
一瞬で目の前を通り過ぎるバス。
「ごらぁ!運転手、慈悲ってもんがねぇのか!!」
キキィッ
「…あら?」
小型バスは少し進んだ場所で止まった。
バスのドアが開く、入れという事だろう。
「いや〜すいません、なんか押し掛けるみたいで」
バスの中に入って運転手に話した。
「いや…いいんだ」
運転手の口調は何故か重い。
つか…運転手だけじゃなくてこのバスの中の空気が重い気がする。
まず会話が一切無い。
乗っている者一人一人から負のオーラが放たれてる。
ふと…天井の方を見てみる。
垂れ幕があった。
【集団自殺サイト、オフ会】
「………」
いやいや…まさか、そんな事は。
【今夜、《決行》】
「キャンセルと聞いてたんだが…決意したんだね、鬼瓦君」
鬼瓦って誰ですか!!
「これで全員揃ったね…」
「ち、ちょっと待って下さい、たぶん、いや、絶対人違いです!!」
「…え?鬼瓦君じゃないのかい?」
「YES、って事で降ろして下さい!!」
当然、バスから降りようとする。
「おいおい…違う奴乗せちゃったのか?(ひそ…)」
「………」
…え?何?このひそひそ話し。
「どうするの?警察に駆け込まれちゃ面倒な事になるわよ(ひそひそ…)」
「そうなる前に道連れに殺してしまいますか?どうせ我々はもうすぐ命を断つ身、失う物もないでしょう?(ひそひそひそ…)」
そ・の・発・想・が・も・う・あ・り・え・ね・ぇ
「はい!俺、鬼瓦です!!」
「え?さっき違うって…」
「さっきはびびって降りようとしてしまったんですよ!なんかすいませんねぇ!空気読まなくて!!!」
「…怖い気持ちもわかる、が、勇気を持つんだ、鬼瓦君」
「アハハ…そっすね〜」
なんだよ、てめえ…鬼瓦、んな大層な名前の奴が自殺なんか考えんなよ…。
「どこか適当な場所に座るといい、今目的地に向かっているから」
「ちなみに…目的地ってどこだったり?」
「そうだな…誰にも迷惑をかけない為に、やはり森の中か」
「………」
誰か…僕をこのバスから降ろして下さい。
とりあえずあいてる席に座る。
バスの中は負のオーラで満ちている。
見た感じ各々に年齢もバラバラ、会話も一切無く、おそらく、皆初対面だろう。
(なんで会ったその日に一緒に自殺とか出来るんだよ…)
淡々と会話も無く、暗い雰囲気のままバスが進んでいく。
こりゃ…まずい、このままじゃ確実にあの世直行だ。
この状況を打破するしかないのだ、負のオーラから勝のオーラへの変化を!!
…勝のオーラってなんだ?
「え…、え〜っと…、皆さん」
俺はゆっくりと発言の為に手を上げる。
ここで
「ダンスでも踊りませんか?」とか言って明るい雰囲気にするんだ!!
じろっ…
「…うわ」
視線が一切に集中してくる。
その全てが生気の無い目だった。
「し、しりとりでもやりませんか?暇ですし」
何言ってんだよ!俺!!
いや、仕方ない、うん、こりゃ仕方ないんだ。
このしりとりから徐々に皆の心を開いていくんだよ。
「あ〜…じゃあ僕から行きますね〜、しりとりのりから、リュック!!」
さぁ…ノってこい、しりとり、人生最後のしりとりになるかもしれないんだぞ!!
「く…く…」
!?、キターーーーーーーーーー!!
隣の人!ありがとう!!
「苦しみ…」
「………」
…はい?
「身投げ…」
「限界」
「いじめ」
「めった刺し」
「死神…」
「だぁぁぁぁあ!!やめよう!しりとりやめよう!!」
「…そうですか」
「………」
「………」
またバスの中が重い空気(気持ちさっきより重い)に包まれた。
「あ、それ、そこに積んであるの何ですか?」
ふとバスの中にある荷物が気になり、聞いてみる。
「あぁ…コレかい、練炭だよ、やっぱり定番だからね」
「………」
ふっざけんなぁぁぁぁぁあ!!定番なんてあるかぁぁぁぁあ!!
「駄目よ!そんなの!!」
おぉ、おばさん、よく言ってくれた。
「ここはやはり首吊りか飛び降りでしょう?」
おばさぁあぁぁぁぁぁあん!!
つかやはりってなんですかぁ!?
「ふむ…しかしそれだと死体の処理が面倒ではないか?」
「周りの人に迷惑をかけるのはちょっとねぇ…」
変な所で気を使ってる気がする…。
「そうだな…ならば一風変わったやり方にするか」
…はい?
「そうだ…こんなのはどうだ?首吊りの縄を屋上のどこかに繋ぎ、飛び降りる」
いやいやいや!!
「おぉ!!首吊り&飛び降り自殺ですな!!」
「まさに逆転の発想!!」
「天才だ!!」
周り大絶賛だし…。
「ふふ…これでもリストラされる前は社内ではアイディアマンと呼ばれていてね」
得意気に笑うおっさん、そんな嬉しいか?
「つか…、それ首吊りと変わんなくないすか?」
ギロ…と、周りの視線が俺に集まった。
げっ…、俺、そんなマズイ事言ったのか?
「ならば君には何か案はあるのかな?」
「…へ?」
「案だよ、案、何か素晴らしい自殺のやり方だ」
あるわけねぇだろこの野郎!!
「あ〜…そうっすね、例えば手首切ったりとか」
言った瞬間、周りの奴等が
「はんっ!?」みたいな見下した顔で俺を見た。
「いい事ぼうや…手首を切ったくらいじゃ死なないのよ」
おばさんが手首を見せる、傷が沢山あった。
「ほぅ、なかなか多いですね」
「えぇ、ちなみにこれは最近つけたもの」
「おぉ…これは深いですなぁ、素晴らしい」
自慢気に話すおばさん、それに感化されてた次々に腕を見せ出す人々。
「俺だって負けたもんじゃないだろ」
「私も…数では負けないよ」
あの…何の大会でしょうか?
「んで…君は?」
「はい?」
不意に声をかけられた。
「提案したくらいだ、自信があるんだろう」
「かなりのリストカッターなのかい?」
リストカッターってなんだよ!!
「いや…、傷なんて一つも」
「………」
うわっ…、なんだそのあり得ねぇみたいな顔。
「君は真面目に自殺する気があるのかね?」
真面目に自殺ってなんですか?
「いや…俺は―」
キキィッ
「のわっ!?」
バスが突然急ブレーキをかけた。
「…どうしたんだい?」
おっさんが運転手に聞く。
「いや…前に車が止まっててね」
「車…?」
プスゥッ…
ドアが開き、黒い服を着た男達が入って来た。
やべっ…つか、こいつら。
「あの…何の用で?」
「失礼するよ、宮田君は居るかな?このバスに乗ったのを見たんだが」
しまった…このバスに乗るのを見られてたか。
しかし…甘い、甘いな黒服共、このバスに乗ってる奴らは全員自殺志願者。
つまりは死兵。
集団自殺が邪魔されそうになるとしたら、当然動いてくれるはずだ!!
「宮田…宮田、(自殺志願者)リストにそんな名前はありませんね」
「…隠すと為にならんよ」
スチャッ…
黒服の男達が取り出したのは拳銃。
「彼は我々の組織の大事なブツを盗んだ泥棒なんですよ、さぁ、正直に話して下さい」
「………」
拳銃をつきつけられる運転手。
が、これから自殺する者に銃なんて今さら怖くないだろう。
「あ…、怪しいのは彼です」
運転手がガタガタ震えながら俺を指差す。
って…あれ?
「あぁ、アイツだ、ありがとう」
拳銃を持ったままこちらに向かう黒服。
「ひぃいっ…銃だ!!」
「こ、殺される!!」
「死にたくねぇ…逃げろ!!」
バスの乗組員達が窓から逃げ、散らばって行く。
しーん…
バスには俺と黒服の男達だけになった。
―あれ…お前ら。
「ったく…、散々手間とらせやがって」
――死にたかったんじゃ、ないのかよ。
バァンッ――― |