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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第二章 暗黒竜のひきこもり部屋の主になったった
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第13話 不法占拠者になったった

 「突然ですが、ここは鉱山として接収しますので、即刻退去しやがって下さい。」みたいな流れになってしまった。 



「ちょっとぉっ!

 この広間はワタシの寝室で、このダンジョンはワタシの宮殿みたいなものよ?


 なんでヒュームが勝手に掘り返す流れになってんのよ!?」



「たぶん、アルタミラを襲った奴らがこの洞窟のドラゴンを皆殺しにした、って情報が広まったんだと思う。


 この人達はそれが本当かどうか確かめに来たんだ。

 国とかの偉い人が、おっかないドラゴンが居なくなったから貴重な鉱石を掘り出そう、って考えたんだろうね。」



 ちなみに、俺の発言は<日本語+念話>、アルタミラの発言は<竜言語+念話>で、竜言語が分るのは子ドラゴンのみ、念話は直接相手にのみ送っている。

 冒険者達に内容が伝わらないよう警戒しているのだ。



「むかつくわねっ!


 ちょっと街を破壊してくるわ!!」



「いや、ちょっと落ち着こう!?」



 発想が完全に怪獣だよ!

 って、ドラゴンだからいいのか?


 腰にしがみついて止めようとするが、「アイザルトどいて、街が壊せない」とか言われながら引きずられていく俺。



「無関係な人達を大量虐殺とか、魔王みたいなことやめようよ!?


 それに、そんなことしたら勇者が大量に押し寄せてくるかもしれないし!」



「むぅ、仕方ないわね。


 ……アイザルトを勇者から守ってあげる約束だもんね。

 とりあえず今は我慢するわ。」



 そう言って元の場所に座るアルタミラと、胸を撫で下ろす俺。



< 失礼ですが、この人族の女の姿をした魔族は、聖者様とはどのようなご関係でしょうか? >



 俺達の寸劇を強張った顔で凝視していた冒険者一行を代表し、魔術師のおばさんが念話で聞いてきた。

 自分達を惨殺したアルタミラと子ドラゴンに相当怯えているから、当然気になるよな。


 アルタミラは、正真正銘、闇の神竜ダークバハムートです。

 でもって、俺と契約した竜で、この「暗黒竜の巣窟」のヌシです。


 これ、言っちゃっていいのかな?

 ――たぶんまずいだろ。


この「暗黒竜の巣窟」のドラゴン達を手当たり次第に殺戮し、アルタミラに瀕死の深手を負わせた存在。

 卵を守るために全力で戦えなかったのだとしても、神竜にあれほどの傷を負わせる実力者たちが、この世界に居るのだ。


 狙いは何だったのだろう。


 神竜からとれるレアアイテム?

 それとも神竜を殺すこと自体?

 あるいは子ドラゴン?


 アルタミラは「死の大空洞」まで逃げ延びて死んだわけだが、彼らがアルタミラの死を確信したから追わなかったのか、それとも素材目当てだけど追跡手段が無くて諦めたのか?


 いずれにしても、アルタミラと子ドラゴンの存在も、出来るだけ秘密にしておきたい。


 まぁ、アルタミラを襲った勢力と目の前の冒険者達にどんな繋がりがあるか分らない。

 悪い連中には見えないが、この正座してる全裸美女の正体は隠しておくことにしよう。


それで、俺との関係が何かって?



< 俺の嫁です。 >



 騎士の目が驚愕に見開かれ、斥候の目が猜疑心の色に染まる!

 失礼だな、なんで嘘だって分った!?


 っていうか。



< それよりも、さっき、気になる単語が出てきたんですけど。


 俺、聖者なんでしょうか? >



< 聖魔法のこれほどの遣い手となれば、長年厳しい終業を積んだ神官か、聖神より特別の恩寵を授かった勇者或いは聖女しかありえません。

 失礼ながら、高位の神官としては若すぎ、勇者にしては貧じゃ……いえ、武張ったところがお見受けできないので。 >



 いや、ごまかせてないから。

 どうせなら「貧弱、貧弱ゥッ!」とか言って貰った方がすっきりするわ!



< おそらくは、勇者のために癒しの力を使う『聖女』様の男性版なのではないかと。 >



 ふ~ん、そんなのもアリなんだ?

 俺、ホントは魔神なんですけど~。


 今は乗っかっておくとしよう。



< じゃあ、俺、たぶん聖者ってことでいいです。

 ここに居るのも、この者達を従えているのも、全裸でドラゴンの肉を焼いていたのも、たぶん俺が聖者だからデース! >



< そ、そうですか。

 聖者様がそうおっしゃるなら、きっとそうなのでしょう、聖者様の中では。 >



 納得してもらえて何よりだ。



< それでは、もう一つお聞かせ下さい。

 そのモンスターは何者なのでしょう?

 今までに見たことも無い種族です。

 もしや、暗黒魔竜が人化した姿なのでしょうか? >



 ぇ、それ勘違いなんだけど?


 しかし、「その子はアルタミラが産んで俺が孵した子ドラゴンで、アルタミラはこっちです」とは言えない。



< その者は、聖者を守護する聖獣、『名状しがたいドラゴンのような者』デース! >



< そうなのですか、流石は聖者様です。 >



 あれ、受け入れられてしまった。

 っていうか、今の返事、棒読み?

 まぁ、「追及しない方がいい案件だと理解しました」って返事に脳内変換していいんだよね?



< あなた達がギルドに戻って、『ここには暗黒魔竜なんていません、何の危険もありません』って報告した場合、あと何日ぐらいで鉱山関係者がやってくるんですか? >



< ここから、転移石のある集落までが2日、そのまま首都に転移して、翌日早朝ギルドへ報告。

 情報が、ギルドから開発担当貴族へ、貴族から諸王国会議に上げられるのも、その日のうちでしょう。

 その後どのくらい掛かるかは私達のような一冒険者には分りかねますが、事態が動き出すのはすぐでしょうね。

 魔結晶採掘を行うことは、ガイエナ諸王国の国策として、予め決定済みです。

 既に大貴族や政商が暗躍し、利権を獲得するための争いにも決着がついています。

 『パイを焼くことも、パイの分け方も既に決まっている、後は窯に火を入れるだけ』という状態なんですよ。

 最短で5~6日もすれば、鉱山技師の調査団が到着するでしょう。 >



 それはマズイ。


 せめて、子ドラゴンのLVが上がって、人化しても問題ないくらいに成長するまで時間が欲しい。


 子ドラゴンが未だに人化していないのは、肉体の成長速度がある程度緩やかになってからでないと、竜形に戻った時危険だからだ。

 もし人化している最中にLVが急激に上がるようなことがあった場合、その後竜化した時に一気に体が成長し、俺が味わったような激痛に見舞われることになる。


 体力のステータス値が高く丈夫だった俺と異なり、子ドラゴンの場合、自分の成長で体を引き裂かれる可能性もあるのだ。

 アルタミラが言うには、「人化は最低でもLV30になってから」ということだった。


(しまったなぁ、子ドラゴンのLV上げ用に、ドラゴンゾンビ、残しとくんだった。)


 腐敗が進行する前に肉取らなきゃと思って、あらかた片づけちゃったんだよね、俺のヒールで。



< それでは、時間稼ぎに『アンデッド大杉、チョーやばい系みたいな!?』という報告をしてもらった場合はどうなります?

 アンデッドドラゴン討伐隊となると、すぐには出せませんよね?

 兵士や糧食を揃え、討伐隊が組織されてここに送り込まれるまで、どれくらいの時間がありますか? >



< その場合には、かなり時間が掛かると思います。

 人員と資金の負担割合について、諸王国会議は紛糾するでしょうから。

 1カ月以内に結論が出ることは無いのではないかと。


 ――それが、聖者様の御心に適うのでしょうか? >



< はい、しばらく時間を稼いで、誰にも知られずにここで暮らしたいので。


 ――嘘つかせることになって申し訳ないですけど。 >



 とりあえず、ナントカ王国の都合は知ったこっちゃない。

 もともと、子ドラゴンが育ったら、みんなで人化して旅に出る予定だったのだ。


 ここがナントカ王国のものだと言うなら、討伐隊が来るまで不法占拠するだけだ。



< 奇跡によって救われたこの命、我らは聖者様の御心に従います。

 

 マウザー、シグ、ブレタ、あんた達も異存ないだろ? >



 残りの冒険者達も、それぞれに頷いた。


 まぁ、全員血まみれでボロボロの姿だし、『あそこやっべぇ、まじパネェ』とか吹聴して貰っても、かなりの説得力があるはずだ。

 だが、もし報告が嘘だとばれた場合、彼らはどんな目に遭うのだろう?



< 嘘の報告をして、あなた方に危険が及ぶ可能性はあるんですか? >



< 普通の依頼を失敗してもランクが下がるか命を落とすだけですが、諸王国からの依頼を意図的に失敗させたとなれば、反逆者として処刑される可能性も覚悟しております。 >



 え、……ちょっとそれは重いなぁ。



< あの~、やっぱ無理しなくていいですよ?

 俺のツレは凄く強いですから。

 余所にいっても生きていけますし。 >



< 我ら如きに過分のご配慮、痛み入ります。

 なに、ドラゴンの生き残りかアンデッドドラゴンの実在を示す証拠を持っていけば、おいそれとばれるものでもありますまい。 >



 証拠、かぁ。



< これなんてどうです? >



 俺がアイテム欄から引っ張り出したのは。



< これは、なんという大きさの角!?

 しかも、これほどの数を! >



 冒険者達全員が、口をぽかんと開けて凝視している。


 ドラゴンゾンビを倒した後、アンデッドとして再生されないように『神竜剣ムラクモ』で角を切り取っておいたのだ。


 流石はアルタミラの角で出来た刀。


 まるでカッタ―ナイフで割り箸を削るように、サクサクと角を切り取ることができた。


 一番大きい角は、この大広間で遭遇した30m級のブラックドラゴンゾンビのもので、長さ1.5m以上ある。

 あとは1m前後のものが5~6本で、70cmくらいのが20本くらい。

50cm以下のものは数えてない。



< っていうか、一体どこから出したんだぃ、このデタラメな量の角を??

 ……失礼しました。

 流石は聖者様です。 >



 うん、追及しない方がいい案件だと理解していただけたようで。


 

< あまりに大きい角を戴くわけには参りません。

 我らの実力で倒せるはずの無いモノを持ち帰っては、話の信憑性が薄くなります。

 この辺りのものを。 >



 魔術師が選んだのは、20~30cm程度の小ぶりな角ばかり4本だった。



< これだけでも、ちょっと多いくらいですが。

 1本で白金貨1枚は下りますまい。

 聖者様からの口止め料として受け取らせていただきます。 >



 ニヤリと笑う魔術師。

 冒険者達も、興奮気味だ。


 とりあえず、その日は大広間で全員泊まることになり、俺の焼いた「ドラゴンゾンビの腐ってないお肉」に、分けて貰った塩を掛けて、皆で食べたのだった。





アルタミラ達の存在を秘密にしておきたい事情、ってのをコッソリ追記しておきました、てへぺろ。

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