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江戸前ダンジョン繁盛記!  作者: ひさなぽぴー/天野緋真
1854~1855年 震災
81/147

第六十八話 副官の副官

『主、少し話があるがいいか?』


 ユヴィルが突然そう言ってきたのは、鳳凰丸の試験航海を終えたタイミングだった。

 船の動向は見張らせてたものの逐一チェックしてたわけじゃないんだけど、それでも航海に問題があったようには見えなかったけどな。話ってなんだろう?


「いいけど、どうかした?」

『見込みのある動物を見つけたから、新しい眷属にどうかと思ってな』

「へえ、推薦ってことか。いいよ、どんなの?」

『俺と同じく鳥だ。知能も高い。今後の航空戦力の拡充に役に立ちそうでな、そのテストケースとしてもどうかと思ったんだ』

「おっけーおっけー、それじゃ連れてきてみてよ。まずは話を聞いてみるからさ」

『了解だ』


 そこで【念話】は一旦途切れた。


 ふむ、航空戦力になりうる存在か。どんな鳥が来るんだろう?

 まさか鳳凰とかそういうのが来るってことはないだろうけど……少なくとも、ユヴィルの目にかなう手合いだ。かつてのジュイみたいに、かなり能力の高いんだろうな。


 そう思って待つこと少し。やがてダンジョンの最深部に、黒い鳥を伴ってユヴィルが戻ってきた。


『待たせたな』

「いいんだよ。それで? そっちの黒い鳥が?」

『そうだ。……おい、こちらが俺の主になる』


 ユヴィルの言葉に、黒い鳥がボクの前に降り立った。

 鋭い目つきに鋭い足の爪は、上位種に至ったユヴィルと比べても遜色ない。猛禽類かな。身体はふわふわの羽毛で覆われていて、触り心地が良さそうだ。頭には、獣耳みたいな形の羽毛が二つ、ちょこんと飛び出てるけどこれは耳じゃないっぽい?


 けどその鳥は、そのまま睨むようにボクの顔を覗き込んできた。その態度に、ユヴィルが小さくため息をつく。


『すまんな、こいつなかなかにプライドが高くてな……』

「野生動物ならそれが普通じゃない? 別にこれくらい気にしないよ」


 ユヴィルに笑いながら、ボクは目の前の相手に【鑑定】をかけてみる。


***********************************


個体名:なし

種族:>ら=~やモ2

職業:なし

性別:女

状態:威嚇

Lv:20/20

生命力:51/79

魔力:0/0

攻撃力:60

防御力:18

構築力:24

精神力:30

器用:21

敏捷力:59

属性1:なし


スキル

嘴撃Lv1 蹴撃Lv2 無音飛翔Lv4 空中機動Lv1

夜目Lv10EX 音波察知Lv5 気配察知Lv4 気配遮断Lv2

氷耐性Lv7 耐疲労Lv2

潜伏Lv3 *・ぇカ語Lv4 日本語Lv1


称号:イspぢ94s「”

   夜の森の女王


***********************************


 おお、確かにユヴィルが進めてくるだけのことはあるね。

 レベルは既にカンストで、いつでも進化できる状態。ステータスは、種族柄どうかはわからないから比べられないけど、とりあえず初めて会った時のジュイと似たような感じだ。スキルも結構いいの揃ってるじゃない。


 文字化けが三つもあるのは調べるのが手間ではあるけど……種族はともあれスキルと称号の文字化けは調べがいがありそうだ。早速【真理の扉】を【並列思考】で連発しよう。


「なるほど、確かに有能っぽいね」

『だろう?』


 鷹揚に頷くユヴィル。


 ただ、【眷属指定】のためには相手の同意が必要だ。この状態でそれを了承してくれるとは思えないなあ。

 いや、力づくでやってもいいんだけど、藤乃ちゃんたち隠密と違って是が非でもほしいってわけじゃないからね……さてどうしたものか。


 とりあえず聞くだけ聞いてみようかな。


〈なんでこんな にんげんなんかに したがわなきゃいけないのよ!〉


 おっと、見た目通りなかなか気性の激しいお嬢さんみたいだ。まあ、野生の動物にしてみたらそんなもんだろうけど。


 ただ、ボクを見て人間って思うのはまだ位階が低いゆえの判断力の低さかな? 今のボクは、隠すことなくセイバアルラウネの姿をさらしてるんだけどね。……いや、見た目に怯えないのはいいこと、かな?


 まあ、従う気がさらさらなさそうなのは見てわかる。ここからどう口説き落とすかはダンジョンマスターとしての手腕かな。……ただ、別に本気で眷属にしようとしてるわけじゃないし、ダメならダメで構わない。


 とりあえず、食べ物とかそっち方面で釣ってみようか。


〈バカに してんじゃないわよ!〉


 ダメかあ。なるほどプライドが高いね。


 金銭……は、動物相手に言っても仕方ないか。


 と思ったところで、【真理の扉】での調査が一通り終わった。どうやら文字化けていた三か所はそれぞれ、シマフクロウ、アイヌ語、メラニズムらしい。


 シマフクロウは、日本の北方、蝦夷地と呼ばれてるところに住む鳥みたい。アイヌ語はそこで使われてる言語。

 そしてメラニズムは、ジュイが持ってるアルビノの反対なものらしい。あれが白くなるのに対して、こっちは黒くなるわけだ。シマフクロウ自体は本来茶褐色なんだけど、確かにこの子は全身真っ黒だ。


 なるほど夜の森の女王、ね。この身体は夜の行動には適任ってわけだ。


 そしてその夜の森の女王から調べた結果、彼女がわざわざ北国からこんなところまでやって来た理由が判明した。

 うん。せっかくだから使わせてもらおっかな。


『ユヴィルとの仲を取り持つよ?』

〈!?〉


 ふふふ、効いてるみたいだ。


 うーん、それにしてもユヴィルに恋慕する鳥が出てくるとはねー。


 いや、想定してなかったわけじゃないんだけどね。ユヴィルは野生動物からしてみれば強すぎるし、その性格も男前だ。モテないわけがない。

 種族がまるで違うけど、そこはベラルモースの魔法技術でどうにでもなる。その時は応援させてもらおっと。ふふふ。


 そんなことを考えながら交渉することしばし、無事に了承を得ることができました。


 ちなみにここまでのやり取りは、一切ユヴィルに開示してない。せっかくだしサプライズにしてあげようと思って。


 というわけで、【眷属指定】した彼女のステータスはこうなりました。


***********************************


個体名:ラケリーナ

種族:トゥスクル

職業:ダンジョンキーパー

性別:女

状態:普通

Lv:1/50

生命力:98/98

魔力:121/121

攻撃力:87

防御力:48

構築力:96

精神力:100

器用:63

敏捷力:187

属性1:天 属性2:木 属性3:氷


スキル

嘴撃Lv1 蹴撃Lv2 無音飛翔Lv4 空中機動Lv1 指揮Lv1(New!) 念話Lv1(New!) 聞耳Lv1(New!) 雷撃Lv1(New!)

妖術Lv1(New!)

夜目Lv10EX 音波察知Lv5 気配察知Lv4 気配遮断Lv2 追跡Lv1(New!)

氷耐性Lv7 耐疲労Lv2

魔力自動回復・微Lv1(New!)

潜伏Lv3 アイヌ語Lv4 日本語Lv3 


称号:メラニズム

   夜の森の女王

   クインの眷属


***********************************


 ステータスはだいぶ強化されたね。属性に天と、土か木が勝手に着くのはもはやお約束だ。

 一方で、氷属性は任意でつけたものだ。シマフクロウからトゥスクルにランクアップするにあたって、一般級コモン希少級レアの中から一つ、好きな属性がつけられるみたいだったからね。

 氷にしたのは、ボクたちの中でまだ誰も属性として持ってるメンバーがいなかったから、消去法。


 ただ、最も注目に値するのは魔法系スキルだ。普通、得た属性と同じ種類の魔法が勝手に入るはずなんだけど、彼女の場合入ることなく【妖術】で統一されちゃったんだよね。


 覚えてる人もいると思うけど、これは幟子たかこちゃんが持つ、すべての魔法を網羅したこの世界特有の魔法スキルだ。それが、まさか中位種でついちゃうとは思ってなかったな……この世界はなんていうか、バランスがよくわからない。使えるものは使わせてもらうけどさ。


 見た目は、正統進化だからか体格が大きくなった程度か。上位種のユヴィルと比べると、まだ少し小柄だけど。

 ただ魔力を使おうとすると、その額のところに不可思議な文様が現れて光る。調べた結果、これはトゥスクルという種族特有のものらしい。


 なお、トゥスクルという種族はこうなってる。


***********************************


【トゥスクル】

テラリア世界の地球産生物の特殊固有種。その名は「巫術を行うもの」の意味。

すべての生物からなり得る特殊な種であり、神に至るための途上の存在と言われている。

そのため外見は元になった生物に依存するが、額の文様は共通する。

テラリア世界のバージョンアップに伴い、現在は自然発生しないように調整されている。

進化条件:アイヌ語が母語、もしくはスキルレベル4以上。

     自然に関係した称号の所持。


***********************************


 うん……実のところかなりレアな種族だと思うよ。神の前段階だからか神属性はつかなかったけど、進化したらつくのはほぼ間違いないだろう。

 ジュイの時もかよちゃんの時もそうだったけど、ボクって運がいいのかもしれない。ありがたいことだね。


 ちなみに、ラケリーナという名前はユヴィルにつけさせたもので、「悠久の風」という意味。

 ボクが入れ知恵してユヴィルにつけさせたけど、彼からの命名ってことでラケリーナは大層喜んでた。まあ、好きな人から名前をもらったんだ。ベラルモース的にもその意味は極めて大きい。


 その喜びようを、どうもユヴィルは「いっぱしのダンジョンキーパーになれて嬉しい」みたいな感じでとらえてる節があったけどね。彼は朴念仁なんだろーか?


 ともあれ傍から見てる分にはなかなか楽しい二羽になったので、しばらくはユヴィルにこのことは伝えないことにした。ラケリーナとしても、ボクの手を借りすぎるのは嬉しくないだろうし、まずは彼女にやらせてみよう。

 そのためにも、彼女はしばらくユヴィルの副官として、ここでのことを覚えてもらうことにする。色んな意味で。


 最近は、吉田寅次郎君たちと一緒に海外に行った木島忠太君から、海外の情報も入ってくるようになった。それに伴って、外国の鳥たちも順次傘下に収めて行ってる最中だから、今のユヴィルはメンバーでも一番忙しいのだ。

 ラケリーナには、そんな彼を支える立場としての活躍を期待してる。最終的には彼と共に航空部門を担う人材になってくれると嬉しい。


 まあ、それとは別に、あっちのほうも進展するといいね。うん。

 がんばれラケリーナ。ボク、応援してるから!


ここまで読んでいただきありがとうございます。


さらに新キャラを追加。

幕間で登場させた彼女がようやく登場です。

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