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眷属たちの決意

 ユヴィルは、己の存在理由を理解している。彼の存在理由は冷静な判断と献策であり、航空戦力の統括だ。

 だからこそ彼は、一見まとまりのないメンバーにあって調停役(ツッコミ役とも言うが)を担い、忌憚のない意見を主にぶつけ、多くの鳥を支配する。


 しかしそれでも、彼の本質はダンジョンキーパーだ。そしてダンジョンキーパー最大の存在理由は、やはり主を守り侵入者を排除することである。


 そして、だからこそ彼は、思う。


『もっと強くなる必要がある』


 その思いを、彼は同僚に語った。場所は彼を祭るために住人達が築いてくれた社である。外に出る機会が多いため利用頻度は少ないが。


 その前にいるのは、ユヴィルの他にジュイ、フェリパ、ティルガナ。いずれも最初の3か月以内に眷属となった名づけネームドたちだ。


「いきなりやな、ユヴィー。どないしたん?」

〈ねむい〉

「わざわざ呼び出して何を言うかと思っておりましたが」


 同僚の反応は、芳しくなかった。それを受けて、ユヴィルは大きくかぶりを振る。


『俺も最近までそう思っていた。確かに俺たちは、この世界の人間より強い。ベラルモースなら、まだまだ底辺に近い俺たちがだ。

 しかしだな……主が迎え入れた二人を思い出せ。あれはなんだ? この世界の生き物だってのに、俺たちより強いじゃないか。そしてその実力のままに、主に常に頼られている。これは由々しき事態だと思わないか?』


 彼は危惧していた。いずれ自分たちが用済みになるのではないか、と。

 そう思わせるだけの存在感と能力が、新たに加わった二人にはあった。


 特に、魂だけで動ける狐。あれはいけない。


 確かに、5000年以上を生きている年の功はあるだろう。大抵のことは如才なくこなし、メンバーの誰にもできないことが可能な能力を持つ。まさに何にも代えがたい人材と言える。

 そして彼女の能力があれば、ユヴィルをはじめ多くのメンバーの役割は形骸化してしまうのだ。そんなことは、名前を持つ一個のダンジョンキーパーとしては認めたくなかった。それがユヴィルの、偽らざる本心である。


 何より、主よりステータス的には上の眷属など、【モンスタークリエイト】で生まれた生粋のダンジョンキーパーであるユヴィルにとっては、最大限に警戒すべきことだ。

 今のところは主にその心を向けているが、何かの拍子にそれがなくなった時、果たしてどうなるのか。あの桁外れの力が主に、あるいはその妻に向いてしまったら、どうなるのか。


 この世に絶対はない。ダンジョンコアによる魂の束縛が破られないとは、誰も断言できないはずなのだ。何よりこのダンジョンの主は、緊張感が足らない。


 そう考えた時、ユヴィルは強い焦燥に駆られた。

 だが、彼に与えられた役目は副官であり、冷静な判断こそ最も主に期待されたもの。その彼の頭脳は冷静に、そして一つしかない選択肢を導き出した。


 あの化け物に匹敵するだけの力を得る。最低でも、主夫妻が逃げる時間を稼げるほどには、強く。


『……というのが俺の考えだ』


 そう締めくくって、ユヴィルは同僚を一瞥する。

 彼を見つめる視線は、先ほどよりもだいぶ鋭くなっていた。


「あなたの言うことは至極もっともですね……。わたくしめは特に、奥方様の護衛をも仰せつかった身。外に出る可能性こそ低くとも、誰よりもこの身を高める必要があります」

「うちは農業担当やからな……それほど必要には思えんけども。いざってときにクイン様守るくらいは、できひんとまずいわな……」

〈おれは別に、そういうのいいと思うけどなー。お腹いっぱい食べれれば、それでいいしー〉


 だがジュイの発言に、三人は表情を険しくして彼をにらみつけた。

 けれども彼はひるまない。ただあくびを返すだけだ。


〈おれは他人のために命を使うなんて、まっぴらごめんだねー……あー、そうにらまないでってばー〉


 そして彼はどうでもよさそうに言う。

 だが、それは一瞬。すぐにその鋭い牙をむき出しにすると、【裂帛】を使った時のような凄惨な笑みを浮かべた。


〈でもさー、さすがに狼が狐に負けてる、ってのは認めるわけにはいかないなー。あいつらはおれの獲物だからねー〉


 ぐるる、と鳴った低い声には、他者の庇護下に入ってでも生きようとしたジュイに残されたプライドが見え隠れしていた。


 その様に、ユヴィルたちは緊張を解く。忠誠心はなくとも、とりあえずは利害は一致しているのだと判断して。

 ユヴィルだけは、「主とダンジョンキーパーの命は一蓮托生なのだがわかっているのか?」と少し呆れていたが。


『……まあ、ともあれだ。そういうわけで、俺たちは強くならねばならんと思う。少なくとも、このまま中位種でいる意味はまったくない。最低でも主と同じ超上位種、できるならば最上位種にならなければ』

「しかしユヴィル、そうは言ってもわたくしめたちがレベリングできるような環境、この世界にはありませんよ?」

「せやで。クイン様とやったら相当なレベル上げになるやろけど……あんまクイン様に頼りきるのもなあ」

『うむ。だから、時間の明いている時にでも俺たちで模擬試合をするかと思うんだが、どうだろう? 少なくともフェリパ以外は同格だ、いい勝負になると思うんだが』

〈それ、おもしろそー〉


 ユヴィルの提案に最初に賛同を示したのは、先ほどとは打って変わってジュイだった。

 そして彼は、挑発めいて立ち上がる。


〈退屈は退屈だったんだよねー。せっかくだしー、おれらの中で誰が一番か決めてもいいよねー?〉

『ほう……随分と言うじゃないか』

「ええ、大した自信ですね?」

〈あたりまえー。一番強いのは狼に決まってるー〉

「ジュイ先輩、スイッチ入っとるがな……」

『烏を甘く見るなよ、ジュイ。力だけですべて解決できるなどとは思わないことだ』

「同感ですね。わたくしめの愛の力を見せてあげましょう」

〈かかってこーい〉

『いいだろう。では、早速やるとするか。まずは対戦相手を決めるぞ』

「あ、せやったらこないだ甚兵衛に教えてもらったあみだくじっちゅーの試してみよか」


 かくして、初期メンバー4人の間で、特訓という名の序列付けが始まった。

 元々がほぼ同格だった彼らの特訓は伯仲した戦いとなり、彼らにとっては極めて良質な経験となる。


 そして彼らだけでなく、住人たちにとってそれは格好の娯楽となった。暇を持て余していた住人達はすぐにこれに飛びつき、次第に規模が大きくなっていくことになる。

 これが最終的に、江戸前ダンジョンにおける目玉イベントの一つとなるのだが。

 それはまだ、遠い未来の話である。


 ともあれ。


 特訓を始めてから一ヶ月。

 ジュイ、ティルガナ、ユヴィルの順で、三人は次の段階……上位種に進化した。


 ジュイは、大神遣オオカミノツカイから大神オオカミへ。

 ティルガナは、フェイからモリガン・ル・フェイへ。

 ユヴィルは、霊烏レイウから天烏テンウへ。


 それぞれが新たな力を獲得し、より高みに向けて階を昇り始めたのである。


「みんな思ってたより随分早く進化したね。一年経たずにレベル上げ終わるなんて思ってもみなかったよ。みんな優秀なんてボクは運がいいなあ」


 そんな彼らの成長を見た主は、呑気にそう言っていたが。


**************************************


個体名:ジュイ

種族:大神オオカミ

性別:男

職業:ダンジョンキーパー

状態:通常

Lv:1/300

生命力:401/401+18

魔力:210/210+18

攻撃力:287+18

防御力:134+18

構築力:105+18

精神力:263+18

器用:99+18

敏捷力:423+18

属性1:神 属性2:天 属性3:土 属性4:木


スキル

噛襲Lv1(Grade up!) 爪撃Lv7 咆哮Lv7 裂帛Lv3 念動Lv6 雷撃Lv4 威圧Lv2(New!) 霊能Lv1(New!) 念話Lv1(New!)

夜目Lv10EX 追跡Lv8 気配遮断Lv6 気配察知Lv2(New!) 魔力察知Lv1(New!)

氷耐性Lv7 雷耐性Lv3(New!) 天耐性Lv2(New!) 時空耐性Lv1(New!) 耐飢餓Lv3 耐毒Lv4 耐痛覚Lv3(New!) 生命力自動回復・微Lv9 魔力自動回復・微Lv3(New!) 物理抵抗・微Lv4(New!) 魔法抵抗・微Lv3(New!)

日本語Lv3 水泳Lv1(New!)


称号:アルビノ

   クインの眷属

   信仰を得た者(New!)


**************************************


個体名:ユヴィル

種族:天烏テンウ

職業:ダンジョンキーパー

性別:男

状態:普通

Lv:1/300

生命力:299/299+7

魔力:381/381+7

攻撃力:192+7

防御力:127+7

構築力:154+7

精神力:201+7

器用:160+7

敏捷力:406+7

属性1:神 属性2:天 属性3:風 属性4:木


スキル

嘴撃Lv8 高空飛翔Lv1(Grade up!) 蹴撃Lv6 炯眼Lv6 眷属支配Lv6 指揮Lv6 念話Lv8 念動Lv6 雷撃Lv5 空中機動Lv4(New!) 威圧Lv1(New!) 霊能Lv1(New!) 

風魔法Lv5 光魔法Lv5 天魔法Lv2

夜目Lv10EX 追跡Lv9 魔力察知Lv4 気配察知Lv4(New!) 気配遮断Lv1(New!)

氷耐性Lv4(New!) 雷耐性Lv2(New!) 天耐性Lv2(New!) 時空耐性Lv1(New!) 耐毒Lv2(New!) 耐痛覚Lv3(New!)

生命力自動回復・微Lv9 魔力自動回復・微Lv3(New!) 物理抵抗・微Lv3(New!) 魔法抵抗・微Lv4(New!)

日本語Lv5 英語Lv3(New!) 潜伏Lv3(New!)


称号:クインの眷属

   野鳥の長

   信仰を得た者(New!)


**************************************


個体名:ティルガナ

種族:モルガン・ル・フェイ

職業:ダンジョンキーパー

性別:女

状態:普通

Lv:1/300

生命力:199/199

魔力:500/500

攻撃力:83

防御力:77

構築力:495

精神力:284

器用:174

敏捷力:149

属性1:天 属性2:時空 属性3:創造(New!)


スキル

体術Lv3 護衛Lv4 浮揚Lv4  魔力譲渡Lv1 房中術Lv2(New!) 魅了Lv1(New!)

水魔法Lv4 風魔法Lv4 土魔法Lv2(New!) 光魔法Lv2(New!) 闇魔法Lv2(New!) 天魔法Lv3 時空魔法Lv3 創造魔法Lv1(New!)

追跡Lv6 気配察知Lv5 魔力察知Lv5 魔力遮断Lv5 振動感知Lv1(New!) 熱源感知Lv1(New!)

雷耐性Lv3(New!) 天耐性Lv2(New!) 耐毒Lv1(New!) 耐痛覚Lv3(New!) 耐麻痺Lv1(New!)

魔力自動回復・微Lv9 魔法抵抗・微Lv7 生命力自動回復・微Lv2(New!) 物理抵抗・微Lv2(New!) 魔力節約Lv2(New!)

料理Lv5 裁縫Lv5 給仕Lv5 儀礼Lv6 教導Lv4 日本語Lv5 潜伏Lv2(New!) 英語Lv3(New!)


称号:クインの眷属

   ロイヤルガード

   禁断の愛に目覚めた者

   時空と創造の使者(New!)


**************************************


個体名:フェリパ

種族:ゴブリンナイト

職業:ダンジョンキーパー

性別:女

状態:普通

Lv:58/300

生命力:521/521

魔力:183/183

攻撃力:512

防御力:394

構築力:69

精神力:191

器用:211

敏捷力:207

属性1:天 属性2:土 属性3:木


スキル

剣技Lv2 大剣技Lv1 盾技Lv6 堅守Lv5 護衛Lv5 聞耳Lv1(New!) 体術Lv3(New!) 突撃Lv2(New!) 投擲Lv3(New!)  

土魔法Lv3 木魔法Lv3 天魔法Lv1

匂い感知Lv3 気配察知Lv3 魔力察知Lv3(New!) 危険察知Lv1(New!)

氷耐性Lv4(New!) 雷耐性Lv2(New!) 天耐性Lv2(New!) 時空耐性Lv1(New!) 耐毒Lv2(New!) 耐痛覚Lv3(New!)

生命力自動回復・小Lv1(Grade up!) 魔力自動回復・微Lv5(New!) 物理抵抗・微Lv4(New!) 魔法抵抗・微Lv2(New!)

養鶏Lv4 開墾Lv3 日本語Lv5 農作Lv3(New!) 和算Lv1(New!)


称号:クインの眷属

   剣を捨てた騎士

   ご意見番(New!)


**************************************


ここまで読んでいただきありがとうございます。


仲間からも驚異扱いされる伝説の大妖怪(笑)。

そして十分頼られてるからとハブられる忍者(エロ)。

さらに言えば、仲間からも緊張感がないと断じられる主人公(笑)

上がちょっと抜けてるから下がしっかりしなきゃって思う、町工場的な雰囲気だと思っていただければ……。


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