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第四十六話 次に向けて

今回は結構長めです。

 完全に徹夜になったあくる日の朝、ボクは人間に変身して正弘君の家に向かった。


 向かうって言っても、正面からは入らない。こないだのアメリカ船潜入と違って人目の多い江戸で、目立つ行動はお互い避けたいからね。

 だから、まずは忠震君が正弘君宅に入る。そして彼が目的の部屋に入ったら、それを目印にしてボクが魔法で飛ぶって寸法だ。


「ってわけで、お待たせ」

「何が『というわけ』なんです?」

「その律儀なツッコミ、嫌いじゃないよ」


 ボクの答えに、忠震君がわずかに眉をひそめた。

 それに笑いながら、ボクは上座のほうに向けてあぐらをかく。そこには、苦笑している正弘君がいた。


「どうかした?」

「いやいや。それでは、揃いましたし始めますかな」


 その言葉に頷いて、ボクはいつものように【アイソレーション】でこの空間を隔離した。


「……相変わらず、魔法による変化が本当にあるのかと思ってしまいますな」

「簡単に察知されたらそれはそれで、ボクのほうもショックだけどね」


 曲がりなりにも魔法を勉強し続けてきた身だ。そんなあっさり見破られるのはちょっとね。


「ま、それは置いておきましょう。本題ですが……昨日は随分と揉めましたが、基本的には締結した通りの内容で進むことで合意しましたぞ」

「基本的には、ね。どのあたりが例外になるの?」

「下田におけるアメリカ人の自由行動範囲ですな。条文では7里(約27キロ)で合意していましたが、これを林殿が勝手に決めた越権行為ではないかという声が出ていましてな」

「その声の主たちには、『全権』という言葉の意味を勉強してもらいたいところですね」

「同感。論点がずれてるとしか言いようがないね。条約の内容は近いうちにアメリカ本土に渡るだろうから、手遅れだし」

「やはりそう思われるか……」


 深いため息が返ってきたけど、今は触れないほうがいいだろう。


「……そこ以外は、おおむね激しい反対はなかったですな。ああ、もちろん攘夷過激派の意見はさておき、という枕詞がつき申すが」

「じゃあ、開国に向けての第一段階はクリアかな?」

「と、思っておるところです。そして御庭番に探らせた結果、あの合議に出席していた人間のうちなんらかの行動をしたであろう人物が、こちらです」

「……思ったより多くないね」

「今回の条約自体は通商を目的としたものではない、というのがあるのでしょうな。それと、ペリー殿に見せられた異国の技術も一定の効果を上げたのかと」

「ああ、なるほどね」


 とはいえ、いないわけでもないんだね。


 ただ、リストを見る限り大半の人間は似た考えの人と相談したり集まったりしてる程度で、あんまりよそとやり取りをしようって人はいない。

 商人に情報を売ってる人がちょこっといるみたいだけど……大体はアウトまでは行ってない感じだ。


 その中で、京に向けて情報を発信した斉昭君がひときわ異彩を放ってる。関東を跳び越えて他の地域にまで行くって、何してるんだろうね。

 一応、この手合いもまだ捕縛とか処断まではやってなくって、泳がせてるみたいだけどさ。


「……ボクも何人か水戸家の隠密を捕捉したけどさ。目的地はやっぱり京だったよ。斉昭君はどうしたいわけ?」

「水戸家は尊王攘夷派の急先鋒ですからな。特にここ数十年は、そうした風潮を積極的に外に向けて発信するようになったほどです」

「私に言わせれば、彼らの言う尊王攘夷など耳触りがいいだけの言葉にしかすぎないですがね。空虚な観念論だけをひたすら積み重ねて真実を否定して、己を高揚させて自己満足に浸るだけの狂気的な思想だと思うのですが」

「君は相変わらず手厳しいね。同感だけど……ところでそういう情報ってさ、幕府からも伝えるよね?」

「もちろん。名目上は、将軍家が朝廷から政治の一切を任されているということになっておりますからな。事後報告という形で追認させているわけです」

「それをしてるにも関わらず、密書っていう危険を背負ってまで報告するんだ? 頭おかしいんじゃない?」

「情報は時に万の軍勢より強いものですからな……。過程を知られるというのは、存外打撃になることもありますぞ」


 そんなものかなあ。

 まあともあれ、だから何よりも早く幕政の情報を京都に送ってるってことか。


「とはいえ、朝廷に情報を送るということ自体は、そこまで大きな問題ではありません。まったく問題ではない、とも言いませんが……それでも今回の条約は人道的見地にのっとった協力条約、とでもいうべきものであって、その内容が早期に漏れても影響は少ないでしょう。そもそも幕府が朝廷を抑えている現状では、あまり意味を持ちませんしね」

「忠震君の言う通りだと思うけど……万が一幕府と朝廷の権威が逆転するようなことがあったら、すぐにまずいことになるよ?」

「左様。ゆえに、拙者は今回も今後も、異国との交渉事で朝廷にすがるつもりは一切ござらん。仮に諸侯が開国に反対しようとも、それを抑えるために朝廷の承認を得ようとする行為はもってのほか。それをしてしまったら、日の本を二つに割ることになってしまいますからな」

「私もそう思います。権威は常にどちらかに傾けるべきだと。そして、政治から二百年以上遠ざけられてきた朝廷に、それは務まらないと思っています」


「なるほど、だからボクとの条約では『統治機構側を全面支援する』って指定したわけだ……と、ごめん。話の腰を折っちゃったね」

「いえ。ともあれそういうわけで、今回の条約締結の情報を朝廷に漏らした程度で、仮にも御三家の水戸徳川家を処すわけにはいきません。が、今後彼らが幕朝の均衡を崩しかねない事変を主導しうるという懸念は着いて回ります」

「左様。斉昭公を海防参与としたのは拙者ですが……それは幕府の目の届かぬところで勝手に暴走されるよりは、いっそ手元で毬を与えて適当に遊ばせておくほうが賢明と思ってのことだったのですが……まったくの見当違いであったと、ここに至ってようやく認識いたした。よって、斉昭公には舞台から降りてもらうことにする」

「で、ボクの出番ってわけだ」


 忠震君が、正弘君が、同時に首肯した。


「どこから嗅ぎつけたかわからぬのは、老中首座として不徳の致すところですが……ある意味で、彼を廃する絶好の機会を得ることができた、とも言えると思うわけです」

「彼の隠居が、まだ疑念程度しかダンジョンに向けていない、というのも幸いですね。さすがに憶測をばらまくほど愚かではないようで、こちらから仕掛ける余裕があります」

「うんうん。で? そこまで言うってことは、仕掛けるタイミングはめどが立ってるんでしょ?」


「然り。まず、斉昭公にはアメリカとの交渉を妨害しようとした咎でもって、改めて蟄居を言い渡す。過去に蟄居をさせていたこともあったが、こたびは永蟄居とする。二度と幕政に関わらせぬようにするのだ」

「これについては、クイン殿もご存じの通り証拠は挙がっているので、反論はさせません。したらそれこそ、幕政への反逆として水戸徳川家そのものを取り潰す方向で動けますが」

「さすがにそこまではせぬだろう。……と、そういう理由で閉じ込めるゆえ、クイン殿にはその後で例の忍の娘を介して情報を流していただく」

「なるほど、その情報が彼の耳に入った段階で秘密協定に引っかかったって判断して、踏み込めばいいんだね?」

「左様。その後は煮るなり焼くなり、貴殿の好きになさっていただければ。表向きの理由はこちらで用意しておきますゆえ」


 正弘君のその発言に、思わず顔がにやけた。

 それはつまり、DEに変えちゃっていいってことだね?


「うん、じゃあお言葉に甘えて煮たり焼いたりしちゃおうかな」


 人間一人から得られるDEは決して多くはないけど、少なくとも国の主だった人間はそれなりの高値がつくだろう。本当に好きにさせてもらおう。


「味付けは味噌ですかな? 醤油ですかな?」

「あははは! そうだなあ、両方するなら醤油じゃない?」

「違いありませんな」


 そして笑い合うボクら。

 なんか、すごく悪役みたいなことしてる気がしてきた。


 いいんだ、ダンジョンマスターってのは基本的に悪役だし。殺してナンボの職業なんだし、善人ってことは決してないよね。


 っていうか、最近の正弘君はよくしゃべる。初めて会った頃は人の話を聞くことが基本姿勢だったけど……心境の変化でもあったのかなあ。

 体格はますます太くなってるみたいだけど。


 ひとしきり笑った後、改めてボクは口を開く。


「料理はそれでいいとして……踏み込む際のやり方はどうすればいい? やっぱり周りには気づかれないようにしたほうがいいかな?」

「左様ですな、そちらのほうが我々としても後々助かりますゆえ」

「万が一目撃者がいたらどうする?」

「ふむ……さすがに消えてもらうわけにはいかぬ話ですな」

「……クイン殿、確か記憶を消せる魔法があるとか言っていませんでしたか?」

「なんと!?」

「正確には変える、だね。ただ絶対じゃないから、何かの拍子で戻ったりするんだよね」


 闇魔法【メモリーアルター】。記憶をいじくる魔法で、別の記憶を植え付けたり内容を変えたりといったことができる。消去もできなくはないけど、本来はそうした改変の魔法だ。


 ……問題はボクが言った通り絶対ってわけじゃないってことと、難易度が高いことかな。上級魔法に分類されるんだよね、これ。


「それでもいいなら、記憶を消す方向で対応するけど」

「うむう……その可能性があるというのは躊躇してしまいますな……」

「目撃者が多かった場合、それで行けるのかという疑問もありますしね……」

「あー、ボクの闇魔法のレベルだと、最大十人くらいが限界かな。同時にってなると、二人くらいまで落ちる……」


 不倶戴天の仇敵火属性を除けば、闇属性は世界樹の花であるセイバアルラウネ種とは一番相性が悪い。

 世界樹は神聖な霊樹だ。いかに化け物の姿を取ったとしても、そこから生まれる存在の本質はより光のほうに傾いてる。だから闇魔法も当然相性が悪くて……決して怠けてたわけじゃないけど、全然レベルが上がらないんだよなあ。


 レベル2って、正直藤乃ちゃんにすら負けそうなんだよね。ちょっと悔しい。


 とはいえ、できないことでどうこう言ったってしょうがない。ここは他の方法を考えないとね。


「あー……じゃあ、神隠しに遭ってもらおうか?」


 どこに、とは言わないけど。それがどういう意味かは、この二人なら察してくれるだろう。

 実際、正弘君がその手があったとでも言いたげにひざを叩き、忠震君は同意すると言わんばかりに大きくうなずいた。


「しかし良いのですかな? 既に200人も人間を受け入れていて、ダンジョンが飽和してしまいませんかな?」

「いやあ、さすがに三ケタも人が一気に増えかねない踏み込み方はしないよ」


 増えても問題ないけどさ。200人のうち大半はもう死んでるし。


「だからいざって時は任せてよ。今更十数人程度増えたって、誰も困らないから」

「……そう言っていただけるのなら」

「おっけー。じゃあ、目撃者がいた場合は、神隠しってことで」


 って名目で、数人かっさらってもいいかな?

 ……さすがにそれはやめといたほうがいいか。


「えーっと、確認しよう。まず、そっちが斉昭君を閉じ込める」

「左様。その後、そちらが然るべき機会を見て情報を意図的に流す」

「そしてそれを持って捕縛をしていただく。万が一目撃者がいた場合は、ダンジョンへ」

「事後の細かい情報統制はそっち、と……こんなところかな?」

「ですな」

「ええ」


 二人の肯定を受けて、ボクも頷く。思ったよりもシンプルにまとまったみたいだ。


 ま、下手な考え休むに似たり、なんて言葉がこの国にはあったはず。考えすぎたって思考のループにはまるだけだし、これくらいがちょうどいいんだろう。


「では、この話はここまでとして……」

「ん? まだ何かある?」

「ええ、実は折り入ってクイン殿に頼みたいことが」

「ん、どんなこと?」

「西洋船の設計図を手に入れることはできるだろうか?」

「ふむ」


 正弘君の申し出に、ボクは指を唇に当てた。

 その状態でちらっと忠震君に視線を向けると、うっすらと口の端を釣り上げてる。どうやらこないだの案は、しっかり正弘君まで伝わってるみたいだな。


 さて、どうしようか。西洋船……つまりは、あの蒸気船のことだろう。しまったな、設計図を作るとしたらどれくらいの出費になるか、調べるの忘れてたな。

 ここは……【並列思考】のスキルをフル活用しよう。ダンジョンの仲間に連絡を取りつつ、話をする……!


『かよちゃーん』

『ふえっ!? あ、だ、旦那様!?』

『うん。ちょっと悪いんだけど、そっちで【アイテムクリエイト】開いてくれる? それでボクが言う条件を入れてみて、出費額を調べたいんだ』

『はい、わかりました!』


 なんて会話をしつつ。


「可能だけど、一口に西洋船って言っても、いろいろあるよね? 蒸気機関の有無はもちろん、船としての様式もいろいろあったわけだし。どんなのを想定してるの?」

「やはり蒸気船ですな。それも最新型……と、言いたいところですが、さすがにそれは問題が起きそうですからな……件の艦隊で旗艦として来ていた船のものを……」

「サスケハナ号かあ。……いや、途中から旗艦はポーハタン号に移ってたっけ? どっちも同じタイプだったからそれは別にいっか。サイズとかは変える? それとも丸写し?」

「……安く済むほうで、お願いいたしたい」

「安く済むほう、ね……」


 という会話も進める。


『かよちゃん、「サスケハナ号の設計図」と「帆走・外輪式蒸気機関併用型三しょう式フリゲート船(小型)の設計図」を試してみてくれる?』

『はいっ!……っと……まずサスケハナ号ですけど、こちらが17000DEみたいです』

『おお、さすがに設計図まで落とすとだいぶ安くなるね。後者は?』

『帆走・外輪……えーっと、後者……のほうは……15000DEですっ』

『ふむ、やっぱり完成品のサイズが小さいほうが安いんだな……』


 思ったより安い。今後、魔法道具関係が必要になったら、時間に余裕がない場合を除いて自作しようかな?

 そのほうが節約になるもんねえ。自作ってなると、ボクのレベルだとせいぜい並み程度までの品質しか出せないだろうけど……自分の訓練にもなるし。


「サイズを小さくした方が安く済むね。どれくらい小さくするかにもよるけど……とりあえず、それで考えようか」

「蒸気機関の設計図も合わせていただきたいのですが、そうなるといかがか?」

「蒸気機関も込みかー。あれ、ベラルモースにはないやつだから高くなるよ……んー……」

『かよちゃーん、「帆走・外輪式蒸気機関併用型三しょう式フリゲート船(小型)に搭載する蒸気機関の設計図」でちょっと調べてみてくれるー?』

『わかりました! えーっと、……15000DEみたいですね……』

『あ、やっぱりベラルモースにない技術の道具は高いんだね……おっけおっけ、ありがとうね。助かったよ』

『い、いえ! 旦那様のお役にたててうれしいですっ』

『それじゃあまた後で』

『はいっ』


 せっかくだし、お土産買って帰ろうかな。


 並行してた【テレパシー】を切りつつ、そんなことを考える。


「高くなることは承知の上。対価はいかほどになりましょうや?」

「そうだねえ……」


 天井に視線を向けつつ、指先で計算してるっぽい動きをする。


 船、機関の設計図を合わせて30000DEなら、大体30人も殺せば賄える。とはいえそれじゃ利益にならないから、もう少し色を付けたいところだな。

 でも金銀の時は3倍近くふっかけたけど、その分そっちの支払いがまだ終わってないし……あんまり今の幕府側に負担をかけるのはまずいかも? ここは多少割り引いとこうか。


 あと、人間を要求するのは一旦止めといたほうがいいかな。あまり人権が声高に叫ばれない状況にある日本ではあるけど、平和に過ごしてきた国だからこそそこまで人命が軽視されてるわけじゃないし。

 それじゃあ何ができるかって話になるけど……。


「……じゃあ、お米の種もみ。横浜護国寺の代金と併せて、1000石分くらいでどう?」

「うぬ、そう来ましたか。この時期に種もみとなると少々困るのですが……」

「うちも今のところ主食の量が足りてないからね。時期的にもちょうどいいし、うちでもお米作りしようと思ってさ?」

「むむう……あいわかった。米というのであれば、人や金子よりは早めに用意できるはず。少々お待ちくだされ」

「うん。ものの受け渡しはそれと交換ってことで……えーっと、契約書作ろう。紙は……おおう、ありがとう」

「お構いなく」


 言葉の途中でさっと紙(しかも定型文が既に書かれてるやつ)と筆を差し出してきた忠震君の手際の良さに感心しつつ、ボクは筆を取った。


 ……正直、筆で文字を書くことにはまだ慣れてないんだけど、この国を相手にする時は必要なものになる。こればっかりは仕方ない。


「……これでよし、っと。じゃあそっちも」

「うむ」


 ボクから受け取った正弘君が、達筆を披露する。こうして並ぶと、ボクの字の下手なこと下手なこと。


 ……それにしても筆で書く日本の文字ってかっこいいよね。漢字って言うんだっけ? 模様としても使えそうだ。どこかに使ってみようかな?


「ではこれで、取引は成立ですな」

「うん、だね」


 これでやっとお米を自前で作れるな。

 DEで種籾用意しようと思ってたけど、ランクでどれくらい味に差が出るか想像できないし、品種が複数あるし、意外と値が張るしで、ちょっと迷ってたんだよね。


「では、本日はこの辺りで。拙者はそろそろ城に登らねばなりませんゆえ」

「あ、そうだったね。リーダーが遅刻するわけにはいかないもんねえ」

「左様。人を招いておいて先に退室する無礼、ご容赦くだされ」

「いいってば。お仕事がんばってね」


 そう言って、ボクは【アイソレーション】を解除した。


 それに頷いた正弘君が、静かに退室していく。

 彼を見送ってから、ボクも席を立った。


「じゃあ、ボクもそろそろ」

「わかりました。お気をつけて」

「あはは、ボクをどうこうできる人なんていないから大丈夫だよ」

「いえそうではなく……貴殿がどうこうするのを気を付けていただきたく。人前で魔法使ったりとか、言語道断ですからね」

「お、おおう……そ、そっちね……そうだね、気をつけるよ……」


 普段江戸の街中でそんなことしたことないってのに、心配性だな。

 確かに、人型になってても見た目だけで結構周りから浮きがちだけどさ。そこまでのことなんてあるわけないじゃない。


 ……ない……よね?


「……それじゃ改めて、ボクもお暇するよ」


 何もしてないよなあと思いつつそう言う。

 そして、【ステルス】コンボで正弘君の家から出ていく。


 ひょいひょいと屋根の上を伝いながら、降り立つ場所を考える。普段ならまっすぐ帰るけど、今日はお土産買おうかなって思ってたしね。


「でも何がいいかな? 予想で買って帰ったらいらないってのはヤだし……住人のほうも何か考えたほうがいいかなあ」


 外に出る機会は多くないし、何か買っといたほうがいいものがあれば買っておくんだけど。


 そう思ってかよちゃんに欲しいものはないか聞いてみる。彼女伝いに、住人が欲しがってるものがないかも合わせてね。

 そうして次々に届く注文を都度メモしつつ、江戸の街に溶け込んでいくボクであった。


 ……ところで、お酢に鉄粉に五倍子ごばいし粉って一体何に使うんだろう? かよちゃんが欲しいって言ってたから買ったけど……使い道がまったく想像つかないや。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


水戸家絶対殺すマンになりつつある3人でした。

とはいえ、当然ですがただで転んでくれる相手ではないので……その時はいろいろあるでしょう。たぶん。

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