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第三十五話 尋問

 結論。100人中本当の犯罪者は87人。冤罪が12人、例外の藤乃ちゃんが1人だ。

 この冤罪12人には、過去に本当に罪を犯して裁かれたものの、今は更生して真面目にやってる人が3人いた。前科持ちってことで色眼鏡で見られて、冤罪になってしまったみたいだ。さすがにこれはかわいそすぎる。


 技能的な面では、漁師がいたんだけどあいにくとダンジョンで魚を養殖するところまではまだ至ってない。残念だけど、彼には他の場所で活躍してもらうしかないだろう。


 あと目立つのっていうと、髪結い……つまり床屋がいたのは大きい。かよちゃんもそうなんだけど、住人の髪については結構問題になってたんだ。何せ、プロがいないからみんななかなか髪を整えられなくってね。

 ボクは種族柄髪の毛はほとんど変わらないんだけど、人はそうはいかないからねえ。


 そんなわけだから、この髪結いさんは是非とも歓迎しよう。ハサミとかカミソリといった道具はもちろんだけど、設備も整えてあげなきゃ。

 ついでに、ベラルモースのファッション誌とか、美容師免許の教科書とかも渡そう。色んな髪型に触れてもらって、色んなカットができるようになってもらいたい。


 あとは……そうだね、犯罪者の中に鍛冶の経験者がいたからほしいところだったけど……罪状がねえ。打った剣を使っての辻斬りだから、手に負えそうにない。残念だけど、DEになってもらおう。


 目につくのはこれくらいかな。

 ってことで、犯罪者はさくっとジュイたちに殺してもらって。


 冤罪の人たちは、前回迎え入れた住人達に手伝ってもらって歓迎してもらうことにした。


 で、ボクはその間に今回のメインディッシュ、藤乃ちゃんと話をすることにする。場所は前回作った牢屋だ。ここにテーブルとイスを用意して、彼女に入ってもらった。

 そして、主に驚かせる目的で人に変身したボクは、その正面に座ってる。


「始めまして。ボクはクイン、ここの主だ」

「はあ……」


 反応は薄い。まあ、突然違う場所に転移させられたりしてるから、無理からぬことではあるんだけど。

 ステータスを見る限り、驚いてないんだよねえ。明らかに何か特殊な訓練を積んでる感じがする。


 そこから何を言ってもそんな感じだったから、とりあえず状況を説明した。ここでさすがに驚愕が出たけど、すぐに警戒になったあたり、只者じゃないね。


 ま、本番はここからなんだけど。


「さて、それでふじちゃん。君には聞きたいことがいくつかあるんだけど、答えてくれるかな?」

「……あたしに答えれることなら……」

「ふむ。じゃあ聞こう。君は水戸徳川家が送り込んだ隠密だね?」

「…………」


 おお、ポーカーフェイスを貫くか。やるねえ。

 でも、状態に驚愕がついてる。彼女の称号が答えだけど、これでさらに黒に近づいたな。


「……な、何を、仰ってるんだか、あたしにはさっぱり……」

「そーお? 身に覚えがありすぎることだと思うけどなあ。指示は斉昭君? それともただの偶然?」

「だ、だから……! 何の事だか……」

「嘘はやめてもらいたいんだけどなあ。お互いのためにならないよ?」

「ほ……本当に……知らないんだって……!」


 おやおや、泣き出しちゃった。でもそれ、嘘泣きだよねえ。

 それに、さりげなく身体の露出を増やしてる。それは今後の布石かい?


 残念だけど、かよちゃん以外の女性に興味はない。まあ、お望みとあらばそれなりの対応はさせてもらうけどね。ベラルモースのエロモンスターたちをなめるなよ。


「そっか、あくまで知らないって言うんだね。じゃあ、君の魂に直接聞くことにしよう」

「ひ……っ!?」


 ボクがわざと浮かべた黒い笑みに、藤乃ちゃんが硬直する。

 拷問か何かでもされると思ったかな? でも残念。そんな効率の悪いことはしない。


「闇魔法【オンリーワントゥルース】」


 魔法の宣言と共に、うっすらとした紫色が一瞬藤乃ちゃんを覆う。

 それ自体はすぐに見えなくなるけど、喉に効果が発揮されたことを示すバツ印が描かれている。


 闇魔法【オンリーワントゥルース】とは、これがある限り本当のことを話すように強制される魔法だ。

 喋ることが全部本当のことに差し替えられるだけで、実は黙秘で抵抗できる魔法なんだけど……魔法に耐性のないこの世界の人間にはこれで十分だろう。


 もっと高位の魔法に、行動を完全支配する魔法とか記憶を読み取る魔法なんかもあるんだけど、ものすごく難しいからやらない。できないわけじゃないんだけどね? うん、本当に。

 それに、闇魔法はやりすぎると後が面倒なんだよ。最悪精神が壊れたりするからねえ。


 話を戻そう。


 魔法をかけられた藤乃ちゃんはというと、一瞬身を守るように両腕をかざしたけど、一見何もないような状態に戸惑ってるようだ。


「……さて、と。じゃあ改めて聞こう。君の名前は?」

「藤乃よ……ッ!?」

「ふうん? 事前に知らされてる名前と違うみたいだけど……」

「あ、いや……その……」


 さすがにこれは取り乱すか。自分が思っても見ないことを口走ってるんだから、無理もないね。


 でも、容赦なんかしないよ?


「どうして偽名を使ってるの?」

「あたしの身元を気づかれないために……ッ!?」

「へえ、後ろめたいことがある?」

「ええ。……~~ッ!?」


 あはは、混乱してる混乱してる。

 ちょっと楽しくなってきちゃったぞ。


「君の身元は、水戸徳川家の隠密で間違いないね?」

「そうよ……!」

「罪状の放火は、わざと捕まるための方便だね?」

「ええ……!」

「つまり君は、命令とはいえ自分の意思でここに来たわけだ?」

「うん……」

「命令したのは徳川斉昭君。あってる?」

「うん……」


 矢継ぎ早に出す質問。答えは全部、想像通りのものだ。

 当然だけど、その答えは藤乃ちゃん自身が言おうとしてるものじゃない。そんな状況が恐ろしいのか、それとも悔しいのかわからないけど、遂に本気で泣き出しちゃった。


 黙ろうとすればいいのにねえ。まあ、黙っても他に方法はいくらでもあるけどさ。


「斉昭君の目的は?」

「千駄ヶ谷洞穴の真実を探るためよ……」

「もうちょっと細かく言えない?」

「千駄ヶ谷洞穴についての断片的情報を手に入れたご隠居様が、事の真偽を確かめるためと仰せで……」

「それを知ってどうするつもりなの?」

「詳細は聞かされていないから知らないわ……」

「へーえ? じゃあここのこと、どうやって知ったの?」

「同僚の隠密たちが江戸城に忍び込んで……」

「おやおや。それは徳川宗家に対する背信行為じゃないの?」

「水戸家が仕えるのは、宗家ではなく朝廷よ……この世の大事にあって、朝廷に隠しごとをすることのほうが背信行為なの……」

「あー。そういや君ら、そういう考え方してるんだったね……」


 泣きじゃくりながらも、魔法の効果でかなり流暢に出てくる藤乃ちゃんの自白。その内容に、ボクはため息で応じた。


 忠震ただなり君は、潜在的に敵対しうる国がいることは自覚してたみたいだけど、こんな近すぎる場所にいるとは思ってないんじゃないかなあ。彼が警戒してたのって、たぶん薩摩とか長州だろうし……。


 はてさてどうしたものかなあ……。

 思わず唇に指を当てて考え込むボク。


 そこに、藤乃ちゃんが思わずと言った感じで口を開いた。


「な……っ、なんで……! どうして……どうして、こんな……っ!」

「ん? ああ、自白させられたの、不思議だよね? 悪いけど、内緒。でも覚えといて。君の意思を無視して自白させる方法なんて、腐るほどあるから。抵抗は無意味だよ」

「ひ……っ、い、う、ううぅぅ……!!」


 ああ、号泣しちゃった。何かそんなにショックなことでもあったかな?


 まあいいや、少し落ち着くまで質問は中断しよう。経過を……うん、ユヴィルに相談しよう。彼の意見が聞きたい。時空魔法【テレパシー】!


『可能性の話だが……』


 藤乃ちゃんの嗚咽をBGMに、ユヴィルの【念話】に耳を傾ける(?)。


『ダンジョンの話が、既に攘夷派に漏れている可能性は否定できないだろう』


 やっぱりそう思う? はー、どうしよっか。


『手っ取り早いのは全員殺すことだが……人材不足のこの国で、疑わしきを罰するのは上策とは言えないんじゃないか?

 とりあえず、情報がどの範囲まで拡散しているのか、それを調べるところからか。あとは、不審なことをしないよう監視と……。そのためにも、彼奴が持つ情報網を抑えたいところだな』


 ふむ。斉昭君周辺を潰すのはそこまで難しくないけど……。

 どうせなら、その情報網はもらっておきたいね。江戸城にまで侵入して、情報を引っ張り出せるくらいのスパイがいるんでしょ? 相当の手練れじゃん。


『そうだな。そのために、その女は利用できるんじゃないか? 強引にでも眷属にして、そこから芋づる式に引き入れていく感じで……最終的には漏れても構わない情報をわざと掴ませて、一網打尽といったところでどうだ?』


 なるほど。いいねそれ、採用だ。

 引き抜く方法は……やっぱ拷問?


『単に心を折るのではなく、どうしてもこちらに協力したくなるように折りたいところだな。その辺りは、【禁呪】や【鑑定】が使える主の得意分野ではないか?』


 それもそうだね。

 うん、わかったよ。ありがとうユヴィル、すごく参考になった。


『フッ、役に立ったのなら光栄だ』


 ユヴィルは、そんな台詞と共に【念話】を切った。かっこいいやつめ。


 さて……どうするかな。目下のところ、藤乃ちゃんはようやく落ち着き始めたってところか。

 さっきかけた【オンリーワントゥルース】はまだ効いてる。せっかくだから、もうちょっと聞いてみるか。


 聞きながら【鑑定】して……最初にやったときは完全成功じゃなかったからね。スキル構成を見れば、少しは方策が見えてくるかも……。


****************************


個体名:藤乃

種族:人間

性別:女

職業:忍

状態:空腹/悲嘆

Lv:94/100

生命力:104/231

魔力:0/0

攻撃力:153

防御力:128

構築力:89

精神力:47(↓47)

器用:130

敏捷力:143

属性:なし


スキル

武芸百般Lv6 鉄砲術Lv6 大砲術Lv4 短剣技Lv6 投擲Lv5 8x:~Lv5 性技Lv4 房中術Lv1

夜目Lv1 追跡Lv4 気配察知Lv2 気配遮断Lv2

耐毒Lv6 耐痛覚Lv8 耐熱Lv1 耐寒Lv3 物理抵抗・微Lv5

科学Lv1 化学Lv2 薬学Lv3 調合Lv5 変装Lv4 潜伏Lv4 水泳Lv5 監視Lv4 無音歩法Lv5 儀礼Lv5 拷問Lv4


称号:努力家

   水戸徳川家隠密

   逮捕を望む者


****************************


 ……は?


ここまで読んでいただきありがとうございます。


新キャラが人間としてはバグってるようなステータスに見えますが、参考元がヒグマなので実際結構なバグり具合だったりします。

でも歴史を紐解くとたまにいますよね、虎とか熊とかとガチンコでやりあって勝った逸話もってる人。そういう人たちの同類と思っていただければ。


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