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 挿話 初夜

今回かなりノクターンに近い描写があります、あしからず。

10/7 案の定運営からおしかりを受けたので、描写をマイルドにしました。

 千代田のお城から戻ってきた旦那様はその後、ダンジョンの管理に専念されるとのことでマスタールームでお昼を取られてまたすぐに出て行かれました。

 ダンジョンのことはまだよくわからないので、私は日が暮れるくらいの時間に旦那様が戻ってこられるまで一人でぼんやりと過ごしていました。


 先日旦那様が魔法の教本を用意してくださったので、最近は時間があれば読んでいるんですけど、この日はそれにも手が付きませんでした。

 それというのも、旦那様が朝に今夜から夜の営みを始めるとおっしゃったからです。


 最初に感じたのは、やっとこの身を使っていただけるんだっていう喜びでした。


 元々私は生贄として旦那様に差し出された身。旦那様はそんな私を気に入ってくださって、身分どころか種族も違うのに、めとるとおっしゃってくれて、隣に置いていただいています。

 そんな、ある意味で恩人でもある旦那様の妻になった私ですが、私にできることなんて多くありません。しかもそのほとんどは、旦那様が用意されたとても便利な道具たちで簡単に済ませられるのです。


 となれば、私にしかできない私だけの仕事と言えば、子をなしてお家をしっかり守ることだけです。

 だから今の今まで、旦那さまからのお手付きがなかったのは、私としてはとっても不本意なことだったのです。


 ……でも本当は、旦那様もちゃんとそういう気持ちはちゃんとあって、まだ未熟な私の身体を気遣って遠慮されてたんだって知った時は、勘違いしていた自分を叩きたくなったものです。

 そんな旦那様が、ダンジョンを再開した翌朝に突然それをするとおっしゃったのです。嬉しくないわけがないです。


 はい。

 私は、かよは、優しくて笑顔の素敵な旦那様に、抱いていただきたいのです。あの暖かい腕の中で、涼やかなお声でささやかれるというのは、きっとすごく幸せだと思うのです。


 出会ってさほどの時間はありませんけど、でも、それでも私は、それを嬉しいと思えるくらいには、旦那様のことを好いているのです。あんまり、はっきりとこの気持ちをお伝えできない自分の口下手が、恨めしいんですけど。


 でも……ぼんやりと考える時間ができて、悶々としていると、もたげてきたのは不安でした。


 お母さんが言うには、「初めて」は得てして痛いものだと聞いてます。そりゃあ、今まで物を入れたことのない場所に物を入れるんですから、痛いでしょう。

 けど、旦那様はそれに加えて、最悪死ぬとおっしゃいました。だからこそ今まで旦那様は我慢されてたのですけど……だ、旦那様の一物はそんなに大きいんでしょうか。


 それを思うと、急に怖くなってきたのです。そんな時間が数時間続いたのですから、余計です。


 途中で考えがそれて、村のみんなはどうしてるのかなとか考えてしまって、ますます気分が沈みました。なんだか、生贄にされたはずの私だけ、随分といい思いをしてるような気がして。

 貧乏だった村のことを考えると、すごく申し訳ない気持ちになります。毎日たくさんご飯を食べさせてもらえて、知らないこともたくさん教えてもらえて、何より、とても大切にしてくださって……。


 これで、いいんでしょうか。私、こんなに幸せでいいんでしょうか。そんな風に、思うのです。


 ……実際、戻ってこられた旦那様を見たら、落ち込んだ気持ちは飛んでしまったわけで。私は自分のことながら、幸せな女だなあと思うわけで……。


「かよちゃん、夜のことなんだけど」

「は、はひっ」


 お夕飯の最中にそんなことをおっしゃるので、私は思わずお箸をおとしそうになってしまいました。


「あ、ごめん。急すぎたよね。大丈夫?」


 それに対してそうおっしゃる旦那様は、少し下から見上げるような仕草で私を見ます。

 こんな些細な事でも、私に気を配ってくださる旦那様の優しさが嬉しいやら恥ずかしいやら。


「は、はい。あの、つ、続けてくださいっ」

「わかった。えーっと、夜のことなんだけど、専用の部屋作ったから後で案内がてら移動するよ」

「……えっ」


 本当になんでもないことのようにおっしゃいましたけど、結構とんでもないことだと思うんですけど。

 よ、夜のためのお部屋。な、何があるんでしょうか。聞きかじった噂では、吉原などの遊郭ではそういうことのための道具なんかがあるって、聞いたことありますけど……。


「ボクらアルラウネ種との行為は当然だけどベッド使えないからね」

「あ……は、はい……」


 そ、そうですよね……旦那様は花の妖怪で、下半身がありません。人間と同じやり方、できないですよね。

 なのに私、何を勘違いしてたんだろう……ずーん。


 肩を落とした私に、旦那様は首を傾げますが、私は大丈夫ですと続きを促しました。


「……この部屋は基本的には行為のための部屋だけど、構造上お風呂としても使えるようになってるから。これからは一緒にお風呂入れるよ」

「へっ!? お、おふろ!?」


 ま、またさらりととんでもないことを……。


 毎日湯船につかるなんて、並みのお武家さまでもできることじゃないのに。旦那様と一緒にいると、本当に常識ってなんだろうって思っちゃいますね……。


「詳しくは家事が終わったらそこに案内してから、かな。まずはお風呂としての使い方とか、そういうの説明するけどね」


 そう締めくくって、旦那様はにこりを笑いました。


 ……いよいよ、もうすぐです。お母さん、私もうすぐ、本当に彼の女になります。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 ……えーっと。

 その、なんですかね。想像してた以上に、そこはお風呂でした。


 いえ、私は湯屋なんて行ったことがないので、想像なんですけど。想像してた湯屋にかなり近かったので、少し拍子抜けしちゃいました。

 想像と違ったのは、木じゃなくって石……みたいな何か? で、できてたことくらいでしょうか。


 そんな閨なのかお風呂なのかわからない場所の説明をまずは受けて、私は今、湯船の中で旦那様と向き合っています。

 入浴は既に済ませましたので、中に張ってあるのはぬるま湯、それも私の膝くらいまでです。


「それじゃあ説明するよ。いいかいかよちゃん、ボクらアルラウネ種との行為はまず、相手の身体に種を植えるところから始まる」

「種」


 いきなり剣呑な言葉が出てきました。一瞬、子種と俗に言う男性が出すアレかと思いましたけど、旦那様の口ぶりから言って違うのでしょう。

 たぶん、本当に正真正銘の種なんじゃないかと思います。だって、旦那様は花の妖怪ですから。


 その事実を改めて頭に浮かべながら、私はごくりと生唾を飲みました。


「……あの、植えるって、その……それはどこに……」

「もちろんお腹の奥だよ?」


 私の問いに、旦那様はまっすぐ私の股間を指差しました。


 で……っ、ですよね……! 他にないですよね!


「あ、あ、あの、その種って、お、大きいんですか?」

「安心しなよ、そんな大きくない。これくらい……ああいや、管のサイズはこれくらいかな」


 言いながら、旦那様は人差し指と親指を向い合せにして顔の前に出しました。途中でその幅が広がります。

 半寸くらい……じゃなくって、一寸半くらいでしょうか。それならまあ……入る……かなあ……?


「植えた種は、数日でかよちゃんの体内に定着する。その後は、種が成長するために定期的に養分をかよちゃんの中に注ぐ必要がある。具体的には、一度種を植えたら毎晩頑張る必要があるかな」

「まい……っ!?……が、がんばります……」


 この場合の養分は、たぶん、俗に子種って言うアレでしょう。


 そ、そっか。ま、毎晩かあ。た、確かに、そんな毎日してたら、最悪死んじゃうかも……。


「その後は……えーっと、人間は確か十月十日で大体出産に至るんだったね。アルラウネ種は、地球時間に換算して大体六か月で出産になる。ただ、出産するのはまだ種だ」

「……え?」

「うん、種が出てくるの。大きさは赤ん坊くらいだから、無理ではないはずだけど。それで出てきた種をね……改めて地面に植えるの」

「……地面に」

「うん、地面に。それでそこから日光とかいろいろ与えて、大体一か月後。ベビーアルラウネが『開花』するの」

「……開花」

「うん、開花。……まあ、ね。ほら、ボク、元々は花だから……」


 ……そうでした。こうして聞いていると、本当に旦那様は人じゃないんですね……。


「で、まあ。ここからが本題なんだけど。種を腹に植えてから出産するまでの間は毎晩ってのはさっきも言った通りなんだけど……あのね、種にとって必要な養分を満たすには、大体十回くらい注がないと足らないから。最低でも毎日三時間くらいは平気でかかるのを覚悟しといてもらいたいの」


 そこで私は、完全に言葉を失いました。


「消費する体力はかけた時間だけ全力疾走するレベルだから、本気で死にかねないんだよね。ってわけで……最初は三十分くらいから徐々に慣らしていって、最終的には数時間をぶっ続けでできるくらいの体力を身に着けてもらいます」


 あの。


「大丈夫、ものも最初は小さい奴からするから。それに、快感は保証するよ。そういうスキル持ってるから」


 だ、旦那様?


「とりあえず、物は試しって言うしね。そろそろ始めよっか?」


 そう言いながらにじりよってくる旦那様の下半身から……無数の蔓が私の方に伸びてきました。そしてゆっくりと、けれど確実に、力強く私の身体をからめとったのです。


「ふや……っ、だ、旦那様、あの、これ……!」

「うん、触手。見た目は気持ち悪いかもしれないけど、ボクの手足だと思って我慢してほしいな」

「はう……や、優しく……してくださいぃ……」

「もちろんだよ! ほら、力抜いて」


 言いながら、旦那様はからめとった私の身体を引き寄せると、宣言通り優しく口づけをしてきました。


 軽くついばむような口づけ。それは少しもどかしくって、不思議ともっと、もっとって思ってしまうような、そんな口づけで。

 私は自由が利かない身体を精一杯動かして、少しでも旦那様に近づこうとして……。


「ふむっ!? ひゃ……はう、ふぅ……ん……!」


 次の瞬間、一気に口の中に旦那様の舌が入り込んできました。そのまま、旦那様が私の口で暴れます。天井、歯の付け根、喉元、ありとあらゆる部分をねっとりと貪られます。

 その勢いがあまりにも激しくて、呼吸もままなりません。少しずつ、私の頭がぼんやりとしてきます。それに伴って、全身から力が抜けていきます。

 抱きしめられている、まさに旦那様の身体の温度を感じる部分がじわじわと熱を持って、身体中に広がっていくのがわかります。


「ぷあ……っ、はあ……っ!」

「……ふふふ、ちょっとやりすぎた? 苦しくない? 大丈夫?」

「はい……だいじょうぶ、です……」


 本当言うと、あんまり大丈夫じゃない気がしますけど。それでも、ああこれが夫婦の……愛の営みなんだなあって、心で理解できた私は、やめてほしくなくって。もっともっと、旦那様を感じたくて。


 だから、続けました。


「旦那様ぁ……お願いします……」

「もちろん、そのつもりだよ。じゃ、これいってみようか」


 私の言葉に旦那様はにっこりと笑いました。そして、一本の太めの蔓を差し出してきて、私の口に含ませました。


 その蔓の先端からは、じんわりと粘っこい液がにじみ出ていました。それが少しずつ早くなって、私の口の中に液が溜まります。

 ほんのりと甘い、最近毎日飲んでる蜜と似たような味のそれを、私はためらいなく飲み干しました。


 その瞬間、旦那様がさらに笑ったような気がしました。どこか妖怪らしい、悪そうな笑みに見えました。


 けど……私のまともな記憶はこのあたりまで。旦那様が与えてくれるあまりに強すぎる刺激で、すぐに気絶してしまってのです……。


 私が目を覚ましたのは、翌朝。どうやら一晩中気を失っていたようで、旦那様は「やっぱりまだ早かった」としきりに謝ってくださったのですけど。


 私としては、そのぅ。


「……あれで、いい、です……」

「えっ」

「……そのぅ、……き、きもち、よかった……です……から……こ、今夜も……あのぅ……」

「かよちゃん……」


 なかなか言い切れなくって、両手の人差し指をつんつんしまう私。

 そうしてもじもじとどもり続けてたら、突然抱きしめられました。


「あああもうっかわいいなあもうっ!」

「ひゃあぁぁっ、だ、旦那様ぁ!?」

「そこまで言うなら、今夜もするよ! 毎日するよ!? いいんだね!?」

「は……はい、お、おねがい、します……」

「かよちゃああぁぁぁん!! 愛してるよー!!」

「ふえぇぇ!?」


 一体どこに、そんな気持ちを高ぶらせる要素があったんでしょうか……。

 私には、よくわからなかったんですけど。


 その後も旦那様は、高揚した様子で愛をささやき続けてくれたので。細かいことは、まあ、いっか。


 でも、そうなると一番の問題は……。


「あの……あの、えっと、旦那様……あの……」


 興奮している旦那様に、ちゃんと応えてあげたいのに。

 慣れない異国の触れあい方にまだついていけなくって。


 この気持ちを正面から伝えられないのが、我ながらとっても情けないなあ、って……思うんです……。


 初夜を終えて、……それは理想の終わり方じゃなかったけど。

 それでも私の操を、この不思議で、少し恐ろしくて、でも優しい旦那様にささげることができて。


 私は、かよは、幸せに感じてるんです。


 だから――。


「わ、わた、私も……私も、旦那様のこと、好いておりますよぅ……」


 それは、私の本当の、本当の気持ち。

 これからも、ずっとあなたのお傍にいさせてください。ね、旦那様。


 ……そんな、私のつぶやきのような告白は、旦那様の声に上書きされて返ってくるんですけど、ね……とほほ。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


というわけで、久しぶりのヒロイン視点でした。リア充回とも言う。

ところで前書きにも書きましたけど、これセーフですよね?

運営さんとチキンレースしてる気分……。


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