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第二十話 ダンジョン再開

に、日間総合ランキング56位・・・(白目


11/20 かよちゃんの所有スキルに祭事Lv3を追加しました。

「これでよし」


 各種メッセージを一通り眺め終わって、DEを確認する。ちゃんと5000増えてて、5337になっていた。

 これだけあれば、初期段階も同然な今の【江戸前ダンジョン】でも結構な改装ができる。


 というわけで、早速着手しよう。


 ダンジョンを少し広げ、さらに構造を今までの一本道から、本来のダンジョンとも言える迷路状にする。この世界の人間がそこまで強くなれないなら、難易度の基準をモンスターじゃなくって構造で補うことにしたのだ。


 そのモンスターのほうはと言うと、ゴブリンファイターやポイズンバットといった中位種は追加せず、それより下のモンスターだけを作ることにする。それでもって、最初に用意したファイターたちをリーダーに、小さなグループを作って徘徊させるのだ。ファイターたちはやられたら都度追加するってことで。


 そして、彼らがドロップするものアイテムはお金だけにしておく。本来なら、むしろお金より探索で有用な武具や装飾品、あるいは希少な素材なんかを中心にドロップさせるのが定石なんだけど……。

 いくらなんでもそれらを下位種のモンスターにドロップさせるのは儲けがなさすぎる。


 かといって日用品の類は、ベラルモースのものと地球のものじゃかなり技術力に差がある。日本に至っては、隔絶してるって言ってもいい。となると、そもそも手に入れても使い方がわからない、ってことになる可能性が高い。

 そんなんだったらアイテムの意味がない。だったらもう、いっそお金が無難だと思うんだ。金額はさすがにバラけさせるけど。


 最後に、モンスターたちの行動方針として、武装してない人間は襲わない設定にしておこう。ベラルモースだったら、入ってきた人間はたいてい問答無用で殺すんだけど、後で国のお偉いさんと話をする機会を作ることを考えると、配慮しといたほうがいいだろう。

 武器を隠し持ってるやつが来たらどうするかって? 大丈夫、そのあたりの判断はダンジョン自体が行ってる。モンスターたちが目で見て認識してるわけじゃないから、暗器の類は全部武装ってみなされる。便利でしょ?


 ちなみに、トラップに関しては申し訳程度。ほぼ設定をいじってない洞窟型のフロアじゃ大した罠も設置できないし、いっそないほうがいいと思う。罠もただじゃないしね。


 あとは……随時改装でいっか。そのためにDEはある程度残しといたほうがいいよね。本気で殺すつもりのダンジョンを構築したら後で困るし、バランス調整が難しいところなんだよな。


 とりあえず、一旦操作はやめてマスタールームの再構築に移ろう。再構築っていうか、運び出してた設備を元に戻すんだけど。


 というわけで、【ホーム】の中に入る。そこには、なぜかジュイの周りで眠るニワトリたちと、ジュイのお腹に包まれて寝息を立てるかよちゃんが。

 ベッドで寝てない辺り、起きようとしてて力尽きた感じかな。やっぱり、先に寝ようとはしなかったんだなあ。


 ボクが苦笑していると、ジュイが少し困った様子で赤い目を向けてきた。


〈うごけないよー〉


 表示された彼の言葉に、ボクは思わず吹き出した。いや、彼には悪いけどその絵面が面白おかしくって……。


 笑っちゃったことを謝りながら、ボクは先にかよちゃんたちを運び出すことにして、触腕を伸ばす。眠ってるかよちゃんやニワトリたちを起こさないように、そっとだ。

 ニワトリたちはそのまま【ケージ】行きだけど、かよちゃんはお姫様抱っこで運ぼう。そう思って、彼女を腕の中で抱える。


 間近で見る彼女の顔は、まだあどけない。けど、ボクらアルラウネ種としてはこれくらいがちょうどよくって、先日のやり取りもあってかとても愛おしく感じる。

 そんなかわいいかよちゃんを眺めながら【ホーム】を出て、マスタールームへ。そして、人間用のベッドにそっと彼女を寝かせた。


 起きる様子のない彼女にブランケットをかけて、そのまま少し、彼女のそばで彼女を眺める。ああ、かわいいなあ。自分のことだけど、ボクってちょろいなあ。


 ……あのさ、ここ数日……というか、江戸に来て宿に泊まった日から、彼女に対してちょっと思うことがあるんだよね。


 いや、ボクってアルラウネじゃない。ボクら用のベッドってほぼほぼ植木鉢で、その中でボクらは花を閉じてその中にこもるような形で寝るんだ。だから人間と同じ状態で寝るのは無理なんだよね。一応、花の中じゃ抱き枕使ってるんだけどさ。


 でも、あの日ボクは人に変化してて、そのおかげで彼女と同じベッドで寝た。それがなんていうか……こう……いいな、って……思ったんだ。

 それで、できれば一緒に寝たいなー花の中でも彼女抱きたいなー、なんて思うんだけど……さすがになあ……花の中っていう窮屈な環境で彼女が快眠できるとは思えないしなあ……。

 ボクが抱きつくだけなら、彼女の体格ならできるだろうけど、花の中で彼女は横になれないんだよね……。どうしたものかなー……。


 ボクが人間に変化し続ければできるんだけど、アルラウネにとってそれは危険なんだよなあ。何せ、ボクらには他の種族のような排泄行為がない。植物だからね。

 代わりにあるのが、落葉だ。老廃物は出すことなく身体……っていうか葉っぱに貯め続けて、たまったら一気に落とすんだ。


 ただ、それをやると落ち葉の処理が面倒。ってことで開発されたのが、植木鉢の形をしたアルラウネ用ベッド。これ実は魔法道具の一種で、老廃物を土にすべて還すことで落ち葉を出さないようにできるっていうものなんだけど……。

 人間に変化してたら、当然それはできない。そうすると、もちろん身体に老廃物がたまりすぎて最悪死ぬ。そして変化もまだまだ万能な技術じゃなくて、完全に人間のすべてを再現することはできないんだよね。


「……でも、どうせならあがいてみるかなあ」


 ボクは、魔法工学の修士課程を取ってる。魔法の改良や新作は、当然やったことがある。うまくいったかどうかは置いといて……一応、経験はあるからね。ちょっと、変化の魔法の改良に取り組んでみよう。

 まあ、ボクがかよちゃんに合わせたほうがいいのか、かよちゃんにボクに合わせてもらったほうがいいのか。どっちが正しいのかはわからないんだけど。


 でもどうせなら、両方できるようにして日替わりで……っていうのはよくばり?

 よくばりでいいじゃない。そういうよくばりが、技術を進歩させるんだしね!


 よし。


 そうと決まったら、早速……。

 ……いや、まずは設備の復旧だね。


 名残惜しいけどかよちゃんを残して、ボクはダンジョンに戻った。


 ニワトリたちを改めてゴブリンナイト任せて……。

 ジュイは、そうだな。とりあえずダンジョン内を自由に動き回ってもらおう。身体動かしたいだろうからね。


「わおーん!」


 ダンジョンの中に放ってあげたら、嬉しそうに一鳴きしてジュイは駆け出した。なかなかのスピードだ。


 うん、よっぽどストレスがたまってたんだろうな。あれ、たぶん全力疾走だぞ。走り回った挙句にモンスターたちを轢き殺さなきゃいいけどなあ。


 しっかし、なんていうか彼はあれだね。扱いとしては、遭遇したらアンラッキーなユニークモンスターって感じかなあ。まあ、ボスにしたらこの世界の人間じゃ突破できなさそうだし、このポジションが妥当かも。


 ……ボスって言えば。ボスのゴブリンナイトは、いっそこのまま養鶏担当にした方がいい気がする。いや、さすがに今すぐにそれをやったらボスがいなくなっちゃうから、すぐにはしないけどさ。

 そうだなあ、養鶏スキルを彼が取得したら、名づけネームドにして別のやつをボスにすえよう。そうしよう。


 あとは……【ホーム】から設備の移動か。わかってたことではあるけど、面倒だなあ。

 マスタールームにも【ホーム】にも万全の設備を備えられるくらい、裕福に早くなりたい。第一目標はまずそこかなあ。


 なんて遠見未来の絵図面を頭の中で引きながら、ボクは黙々と設備の移動を続ける。一度かよちゃんとやったおかげか、今回の工事が長く感じた。

 説明しながらだったから、合計時間はさほど変わんないはずなんだけどなあ。楽しい時間は早いっていう、あれなのかもしれない。


 で、結局、ボクが眠ることができたのは月も沈んだ三時ごろだったとさ。

 おかげで、次の日は初めてかよちゃんが先に起床した。


 目が覚めたら場所が変わってたことに驚いたらしい彼女は、寝落ちたことをしきりに謝ってきたんだけど、もちろんそんなことは気にすることじゃないから、さらりと流してあげる。

 それから朝食を食べる段になって、ふと思い立って、もらうだけもらって使ってなかった【鑑定】スキルを試してみることにした。


 まず、手元の味噌汁をだね……。


《鑑定に失敗しました》


 うん。


 ……うん、そうだね、Lv1じゃそんなものだよね!


 くう、これは困ったな。

 元々の【鑑定】はダンジョンに付随した機能で、ダンジョン内なら自由に使えるものだった。しかも失敗はない。ただし外に出ると一切使えないし、眷属以外の情報は一部しかわからない。

 一方、スキルとして獲得した【鑑定】のほうはどこでも使えるけど、精度はスキルのレベルに依存する。成功率もだ。


 汎用性から言って、スキルの【鑑定】のほうが有用なのは間違いない。ただ、ある程度レベルが上がるまでは到底使い物になりそうにない。

 うーん、これは地道に【鑑定】しまくってレベルを上げるしか、ないんだろうなあ。


 とりあえず、目についたものは片っ端から【鑑定】する習慣をつけることにしようかな……。


 そう思って、対面で食事をしてるかよちゃんを【鑑定】してみる。


****************************


個体名:木下・かよ

種族:人間

職業:巫女

性別:女

状態:普通

Lv:8/100

生命力:77/77

魔力:59/59

攻撃力:7

防御力:6

構築力:53

精神力:12

器用:38

敏捷力:6

属性1:光


スキル

魅了Lv2 性技Lv2 房中術Lv2

時空耐性Lv1

料理Lv5 裁縫Lv2 舞踊Lv3 和算Lv4 祈祷Lv3 祭事Lv3


称号:クインの婚姻契約者


****************************


「ぶっ!?」

「わっ、ど、どうしました?」

「い、いや……いや、なんでもない……ちょっとね……」


 思わずむせちゃったのは、いきなり【鑑定】が完全に成功したからじゃない。


 スキル! スキルのそれ何!?


 とっくに料理のレベルが抜かれてるのは、まあいいんだけどさ。舞踊と祈祷も、職業・巫女なかよちゃんが持ってるのは当然とも思う。


 問題は後半! 後半の二つ、なにそれどうした!? 未経験のはずのかよちゃんがなんで持ってるの!?


《禁呪【真理の扉】の発動を確認しました》

《【テラリア】世界の真理の記録アカシックレコードへ接続……接続に成功しました》


 こんな時に一発で成功するのって、なんか悔しいなあ!


《個体名:木下・かよのスキル構成について》

《日本地域における【巫女】とは、現代においても春をひさぐ者も存在する職業である。

 由緒正しい大規模な神社に属するものはともかく、民間信仰に依る地方の小さな農村の社程度の巫女はその範疇にある。

 個体名:木下・かよの母もその立場にあり、娘である当人もまた、その技術を数え十歳の頃より教えられている。

 魅了、性技、房中術のスキルを正式取得したのは数え十歳の時。現在のレベルに上がったのは、数え十三歳の時である》


 お、おおう……そ、そっか……。そっか……。


 ……だ、誰と練習したんだろう。お母さんとだけじゃ、修得できない技術だよねこれって?

 気になる……気になる、けど……知らないほうがよさそう、だな……。知っちゃったら、ちょっと……いや、すごく、嫌な気分になりそうだし……!


「……あの、旦那様……?」


 よほど顔に感情が出てたのか、かよちゃんが心配そうに聞いてきた。

 ボクは慌てて顔を緩めると、なんでもないよと手を振る。それでも彼女の疑問を払しょくするには至らなかったみたいで、不思議そうに首をかしげてる。


 その毒気のない顔に、ボクは決意した。


「……かよちゃん」

「はい、なんですか?」

「……マスタールームに戻ってきたことだし、少しずつ慣らしていこうと思う」

「……はい?」

「夜の」

「あっ……、は、はい……」


 真っ赤になって硬直するかよちゃんの初々しさがかわいい。かわいいけど……。


 ボクは今、なんかもう、すごく、無性に悔しい。ボク以外の男がいた可能性があるってことが、すごくむかつく!

 だから計画は繰上げだ。行為はできなくても、耐えられる身体に仕上げていくことはできるはず。今夜からがんばろう。


 そんな決心を胸中に抱いたボクだったけど、直後にメニューが立ち上がって侵入者を告げるコールが鳴った。

 時間は……なるほど、朝六時半ごろ。確かに、もういい加減周辺の住人がダンジョンに気づいてもおかしくない時間だ。


 ピンク色の話もいいけど、今はダンジョンのほうに集中するとしよう……。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


久々のガチなダンマス業務。次回も少し、ダンマス業務をやろうと思ってます。


ところでスキルの「性技」と「房中術」の違いですが、大雑把にいえば前者が攻めの技術、後者が受けの技術です。

夜伽の技術ってされがちな房中術ですが、本来の意味は「性行為の節制を保って、快楽に溺れることなく男女の心身ともに仲良くするためのもの」なのですね。

なので、今作ではこのスキルが高ければ高いほど快楽抵抗力が高いことになります。低い場合は……まあ……薄い本案件になるんじゃないですかね?(すっとぼけ


最後になりますが、なんとか締切すれすれで10万文字というオーバーラップ大賞のボーダーラインをクリアしたので、明日から更新頻度を一日一回に落とします。

詳しいことは、この話を投稿したあと割烹に書き込む予定ですので、そちらをご覧いただければと思います。

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