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江戸前ダンジョン繁盛記!  作者: ひさなぽぴー/天野緋真
1855年~1856年 拡張
120/147

第百話 文化財保護

本日2回目の更新です。

 それからしばらくは、ダンジョンの拡充、装置の研究実験、幟子たかこちゃんの一部の調査、それから年末年始の準備で瞬く間に過ぎて行った。


 正直忙しすぎて、細かいところまでは覚えてない。ダンジョンで初の出産なんかもあったけど、ほとんど気にしてる余裕もなかった。なんていうか、気づけば一月も終わりかって感じだ。

 今までに比べて住人の数も相当増えたから、年末年始なんかは本当に大変だったんだよ。


 特に、巫女として神事を取り持つかよちゃんには、かなり苦労をかけたと思う。彼女の負担を減らすためにも、神事の方面で彼女にも部下を付けたほうがいいかとも思ったけど……この手のことって、何かしらの行事のとき以外はさほど必要ないから悩ましいところだ。

 それに、宗教ってのは下手に横の繋がりを持たせると面倒なことになる。ベラルモースには神様が普通に存在してて、ちょくちょく信者に話しかけたりするくらい距離が近いから、さほど深く考えなくていいだろうけど……地球の宗教はやばい。色々と、やばい。調べたのを後悔するレベルでえげつなかった。


 だから、とりあえず今回は忙しかったけど何事もなく過ぎたから、保留とさせてもらう。早いうちに答えを出さないといけないのはわかってるけど、直近の緊急性は一旦下がったからね……。


「閣下、幕府より受領した金銭および文化財を持ってまいりました」

「お、りょーかい。すぐ行くから倉庫で待っててくれる? ウェルベスと一緒に。あ、あと運搬係としてフェリパも呼んどいて」

「御意」


 研究室でパソコンを叩いていたボクのところに、ロシュアネスがやってきた。

 彼女をひとまず先に行かせて、ボクは伸びを一つ。


 今画面には、幟子ちゃんが進めている自分探しの記録が表示されている。けれど結果は芳しくない。

 なんとあの幟子ちゃんの目をごまかした後、そのままどこかに行方をくらましてしまったのだ。おまけにいまだに自分の亜空間に引きこもってるらしく、世界の歴史、情報をそのまま調べられる【真理の扉】でも現在地がわからない(現在地:亜空間内って表示される)。随分慎重にことを進めてるのは、とても同一人物とは思えないんだけど。

 こうなると、さすがの幟子ちゃんでも手が足りない。ボクもちょいちょい手伝ってはいるけど、あと一歩……あと一つ決め手にかけるんだよな。

 一応、それまでの軌跡はわかってて、藤乃ちゃんと出くわしたのが越後の国にいた欠片ってことはわかってる。餌を求めてあっちこっちを放浪した挙句、信濃の国周辺まで来た、ってことはわかったんだけどね……その先がね。


 ついでに、暗殺対象だった二人も見つかってない。正確には、おおよその当たりはついてるんだけど、現実にいないっぽいんだよね。

 というのも、【真理の扉】で調べた限り、どうやら幟子ちゃんの一部が作りだした亜空間に捕まってるみたいなんだよ。

 幟子ちゃんの見解では、相手はしばらく隠れてるつもりらしい。そのために、栄養源(保存食って言ったほうがわかりやすいか)として確保されたんじゃないかって話だ。まるで冬眠だよ。


 それでさっさと死んでくれればいいんだけど、あいにくまだ生きてるらしいから、めんどくさい。ホント、さっさと殺しておくべきだった。

 仕方ないから、藤乃ちゃんは他のメンバーと特訓させてる。彼女も結構堪えてたみたいで、かなり自分を追い込んでるみたいだ。おかげで、彼女をはじめ戦闘力が要求される幹部たちのレベルアップは順調ではある。


 ただなー、まだ他にも幟子ちゃんの一部がいるんだよなー。一応残る数が二つであること、それぞれの現在位置は特定できてるけど、今のところそっちに目を向ける余裕はほとんどない。

 どいつもこいつも、既にそれなりのことをしているみたいなんだけど、はっきり言って人手が足りないんだよな……。頭が痛いよ、ホント。

 幕府にも注意喚起をした上で、鳥たちを使って遠巻きに監視するくらいが精いっぱいだ。


「って、これは一旦置いとこう」


 調査、捜索は今も幟子ちゃんが進めてくれてる。いずれ解決に向かうと信じるしかない。なにせ、ボクにはダンマスとしての仕事がある。これは大半ボクしかできないからね。


 というわけでパソコンはそのままに、研究室を後にする。

 目的地は、さっきもちらっと言ったけど倉庫だ。ロシュアネスの献策で建てた倉庫が、ようやく使われる時が来たんだね。

 そしてそこに着いてみれば、ロシュアネス以外にもフェリパ、それに新しく内政担当として作ったウェルベスがいた。


*************************************


個体名:ウェルベス

種族:ノーブルエルフ

職業:ダンジョンキーパー

性別:男

状態:普通

Lv:5/300

生命力:271/271

魔力:476/476

攻撃力:99

防御力:126

構築力:475

精神力:333

器用:186

敏捷力:162

属性1:天 属性2:時空


スキル

体術Lv3 弓術Lv4 聞耳Lv2 念話Lv2 念動Lv1 指揮Lv2

火魔法Lv1 水魔法Lv1 風魔法Lv1 土魔法Lv1 天魔法Lv1 時空魔法Lv2

魔力察知Lv2 危険察知Lv1

耐毒Lv5 耐麻痺Lv5 耐痛覚Lv5

魔力自動回復・微Lv9 物理抵抗・小Lv1 魔法抵抗・微Lv8 集中Lv3

儀礼Lv5 交渉Lv5 弁舌Lv5 情報処理Lv4 日本語Lv3 並列思考Lv2


称号:クインの眷属


*************************************


 とまあこんな感じで、傾向としてはロシュアネスとほぼ同じだ。完全に文官にするつもりで作ったから、当たり前なんだけどね。


 彼が今、らい病を治療した後政治に関わらせてる人間を部下として、ダンジョン内の政治は行われてる。

 彼を作ってからというもの、居住区に関することは彼に任せてられるから、ボクはボクの仕事に専念できている。やっぱり、こういうのは専門家に任せるのが一番だね。


「クイン様、時間はきっちり守っていただかねば困ります」

「あ、うん、ごめんごめん」

「なりません」


 とまあ、こんな感じですごい堅物なのが玉にきずだけどね。

 性格の設定は、内政はしっかり者じゃないと務まらないと思ってのことだ。その上で実際の業務には何の支障も出てないから、贅沢なことを言ってるのはわかってるんだけどさ。毎回毎回ガチガチに固い対応されるのは、ボクみたいな研究者にはどうも肌が合わないんだよねえ。


 とりあえず重箱の隅をつつくようなウェルベスの話は聞き流して、作業を始める。


 今回うちに運ばれてきた物資はどこにも見当たらないけど、これはロシュアネスの時空魔法で運んできてるから。彼女とウェルベスが亜空間からの取り出しを担当して、ボクやフェリパがより細かく運んだりする担当になる。


「まずは先に金銭です」


 ロシュアネスの言葉と共に、ボクたちは金庫用の建屋に入る。当然今はがらんどうで、すっからかんの棚がただ並んでるだけだ。


「よし、じゃあ始めようか」

「仰せのままに」


 その言葉にロシュアネスが頷き、ウェルベスと目配せした。

 直後に、二人は時空魔法を駆使してどこからともなく大量の箱を取り出していく。


 千両箱ってやつだね。中身は日本の通貨が種類ごとに一通り入ってる。

 これを、力自慢のフェリパと触腕という数の強みがあるボクが、種類ごとに分けて棚に並べていくのだ。


「そういやクイン様、これで全部でどんだけのお金なん?」

「5万両分って聞いてるよ」

「ふーん……ようわからんけど、それって多いん?」

「持ち直してきてるとはいえ、今の幕府にとっては結構な出費だと思う。確か去年の総歳入が150万両くらいだったっけ?」

「ほーん……そやったら確かに、結構がんばったんやろなあ」


 慌ただしく箱を運びながら、そんな会話をする。


 正直、ボクに経済のことはよくわからない。でも歳入の30分の1ってのは、結構な額だとは思う。

 これが今後、うちのダンジョンが経済活動を進めていくにあたっての資本になるんだろうけど、うまくいくのかなあ。


 ま、そこは任せきりにすると思うけどね。ボクが音頭取ったところで失敗するのは目に見えてるもん。


「次は文化財ですね」


 金庫から離れた倉庫の方へ移動してと。

 こっちのほうは、置くものに応じてある程度場所が決まったレイアウトになってる。ここに、武具、絵画、書物などなど、カテゴリごとにまとめて並べていくことにする。


 ロシュアネスたちの亜空間から続々出てくる日本の品々。ものがものなので、ついでに【鑑定】しながら並べるけど、こうして見るといろいろあるなあ。


 武具は、やっぱり特殊な素材やらスキルやらがないからか、あんまり興味を引くような品はない。数百年前に作られた刀なんかがあったりするから、そういうのは確かにかなり値が張るんだろうけどね。でも、いずれにしても普通の道具の域は出ないかな。

 絵画なんかは、あんまりそっちの造詣がないボクにはわからないんだけど、やっぱりベラルモースのものとは明らかに異なる文化が見えて面白い。絵のタッチやスタイルは、全く違うよねえ。違いすぎて、こっちでの価値がどうついてるかわかんないや。

 書物については、何かの形で中身を調べておきたいところだね。娯楽本の類もあるだろうけど、技術書なり思想書なりもあるっぽいし。こういうのは、これからの交流を考えると知っておいた方がいいと思うんだよね。ちょっと数が多いけどさ。

 他にも磁器や漆器といったものもあるし、彫刻なんかもあって、運ぶのもいいけど一つ一つ色々見ていたくなるね。


 いっそこのまま博物館にしても面白いかも? いずれにしても、この手のものはしっかり管理しないとダメになっちゃう。専門の管理人を用意したほうがいいかもしれないなあ。


「……は?」


 そうやって整理や陳列に追われることしばし。

 ボクはとあるものに【鑑定】を施して、思わず手を止めた。っていうか、硬直した。


「クイン様、どないしてん?」

「あ、い、いやさ……この刀なんだけどさ……」


 磁器の大皿を運んでいたフェリパの顔が、横からにゅっと出てくる。

 彼女に応じながら、ボクは今し方【鑑定】したばかりの大きな刀を掲げて見せる。


「……でっかいけど、なんやボロボロやしえらい古い感じの刀やなあ」

「ボクもそう思ったんだけどさ……」


 そう、その刀はとても文化財と言えそうにない、朽ちかけた刀だった。鞘から抜いてみても、あちこちに錆が浮いている。

 ぶっちゃけ素人目には、破棄しちゃってもいいかなって思える。っていうか、数合わせか何かで押し付けられたんじゃないか、って気になるレベルの刀だ。見た目は。


 でもこの刀の鑑定結果……こんな感じなのだ。


*************************************


アイテム名:小狐丸(個体名)

ジャンル:太刀

品質:3(7)

レアリティ:伝説級レジェンド

スキル:防御力無視・小Lv4

    魄撃Lv1

    魔力察知・小Lv1

属性1:冥

特性:野狐系統のフォックス種を感知する。

称号:刀派【三条】

   妖刀


*************************************


ここまで読んでいただきありがとうございます。


小狐丸は、某刀が乱舞するゲームをプレイされてる方はご存じでしょうね。

当作品ではなぜか妖刀になってますが、まあ、大体お察しの通りです。

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