ピーマンは全人類の敵!
人間なら嫌いな食べ物ひとつやふたつあるだろう?
俺が最も嫌いな食べ物、それは……。
ピーマン……口に入れた瞬間に苦味が広がり、食感もぐにゃぐにゃして食べ辛い。それに色が変だと思う。あと、名前も嫌い。
故にピーマンは全人類の敵である。誰だよ、ピーマンなんか開発したのは……。
だから、俺は外食する時はピーマン入ってないか必ず聞いている。それなのに……。
俺は智代とファミレス来ていた。俺達が制服なのは学校帰りだからだ。
因みにファミレスというのはファミリーレストランの略称であり、ファミリーレスラーと云う意味ではないから誤解しないでくれ。
俺は店側のミスを不快に思い、怒りに身を任せて呼び出しボタンを連打する。これは絶対に許されない行為である。生涯の許せないランキングトップ30には入る、多分。
「そんなに連続で押すな。壊れたらどうするんだ?」
智代は俺を諭す。この程度で壊れる訳がない、多分。
イケメンな店員がやってきた。それが余計に俺を苛立たせる。イケメンとか……爆発すれば良いのに!
「どうされましたか、お客様?」
「どうもこうもねぇーよ! 俺はピーマン入ってないからこの料理を注文したんだ! なのに……」
俺は怒鳴る。三流店への迷惑、何ソレ美味しいの? レストランはサービス業なのに……客を不快にさせるとか何なの?
「それは大変失礼を致しました。急ぎ作り直して参ります」
彼は深々と頭を下げ謝罪する。そして問題の料理を下げて、踵を返して厨房に向おうとする。
こちらの希望通りピーマン抜いた料理を持ってきて、この件は解決。イケメンはムカつくが。
それなのに……。
「待ってくれ……それには及ばない」
智代が彼を呼び止める。彼は振り向く。
「……よろしいのですか?」
「ああ、構わない」
「かしこまりました」
彼は料理をテーブルに置き直す。
「いや、全然良くないから!」
俺は再度怒鳴る。
「お客様……店内ではお静かにお願いします。他のお客様のご迷惑になりますので」
そう言って彼は去る。
ハァ? ミスしたのはテメェだろうが! 人が下手に出てやらぁ、調子に乗りやがって!
俺は全力で怒鳴ろうと息を吸い込む。
「……」
智代が「黙れ」と殺気を込めた目で、無言で俺を睨む。
ヘタレな俺は恐怖で身がすくみ、声を出せなくなる。
「私の連れが迷惑をかけてすまなかった」
智代は頭を下げ謝罪した。
智代が俺の方を向く。
「次、また私に恥をかかせたら帰るからな」
智代が帰る……つまり、それはデートの終了を意味する。それは嫌だ。折角のデートなんだから楽しみたい。
俺は悪くないけど、仕方ないか……。
「ゴメン。気を付けるよ。雰囲気壊してすみません」
智代に頭を下げ謝罪する。
「わかってくれればぞれで良い。……折角のデートなんだから私だって楽しみたいからな」
数分後。相変わらずピーマンが残ったままだ。ピーマンを食べようと何度か挑んだが尽く失敗した。
体でなく魂が俺の体内にピーマンを摂取することを拒んでいる感じだ。だいたい、ピーマンは先にも言ったが全人類の敵である。
故に食べれないし、食べる意味がわからない。敵を食べるメリットは何? スピリット・オブ・ファイアみたいに食べたら力が上がるならまだわかるが……。
「早く食べろ。料理が冷めてしまうぞ」
智代が催促する。
「無理」
「どうしてなんだ?」
「ピーマンは全人類の敵!」
智代は肩を力なく落とし、眉を下げる。そして大きな溜め息を吐いた。
「……意味がわからない」
意味がわからないことが、俺には理解出来ない。
「智代だって嫌いな食べ物あるだろう?」
「ない」
智代は一瞬間すら置くけとなく即答で断言した。
「……マジ?」
嫌いな食べ物がないとか信じられない。
「私は嘘が嫌いだ」
……確かに智代は嘘が嫌いだ。だから、他人に対して嘘を吐くことはないだろう。つまり、食べるしかないのか……。
が、何度挑んでもピーマンを食べることは出来ない。
智代は侮蔑した目で俺を見る。
「……さっきからお前は何をやってるんだ?」
「見ればわかるだろう」
智代は小さく溜め息を吐いた。しかし、行動とは裏腹に智代の表情は暗くない。寧ろ、明るくみえる。
「ほら、私が食べさせてやるから口を開けろ」
智代がピーマンをフォークで刺し、俺の口元に持ってくる。
これは!? 恋人にして貰いたいランキングトップ10に入る、恋人に食べさせて貰うという行為じゃないか! ならばピーマンごときに屈する理由などない。俺の口よ、開けっ!
が、思いと裏腹に口は開けなかった。
「……私のこと嫌いなのか?」
智代はとても悲しそうな表情をする。
「や、好きだよ」
「なら、口を開けろ」
「開けたいんだけど……開けられないんだ。どうやら俺のピーマン嫌いは魂に刻み込まれているみたいだな。だから、諦めて帰ろう」
智代は強引にピーマンを俺の口に入れようと隙間にねじ込む。しかし、ピーマンを拒む歯は堅く閉ざし開かない。
その堅さはまるで要塞のようだ。
「なら……その歯をへし折って食べさせてやる」
「え、それは……」
智代は更に力を込める。歯茎がキシキシと音を立てている。マジで歯が折れてしまいそうだ。
「ちょ、待て待てマジで折れる。誰か助けて!」
俺は叫ぶ。
「問答無用だっ!」
あと少しで歯が折れるであろう、その刹那。
「お客様……お静かにお願いしますって私言いましたよね? 他のお客様のご迷惑になるのでおかえりください」
俺達は強制的に追い出された。
もの凄く気まずい雰囲気。折角のデートなのに……ヘボ店員のせいで最悪なデートになってしまった。今度あったら覚えてろよ……。
しかし、それより今はこの雰囲気をなんとかしなくては!
「いやはや……俺のピーマン嫌いは本当にどうしようもないね」
「……」
智代は非難の目で、俺を無言で見つめる。
「いや、治そうとは思ってるんだよ」
無論、嘘である。ピーマンを克服するつもりなど全くない。
「本当かぁ……?」
智代は疑惑の目で俺を見つめる。
「……そうだ、智代が作ってくれた料理なら食べれるかも」
智代は完璧すぎると思う。人間なら誰でも1つは苦手なものがある筈だ。俺の推測では料理だと思う。
「う、それは……」
案の定、智代はうろたえる。やはり、智代は料理が苦手なんだな。
手料理食べられないのは残念だが……これでピーマンを食べる必要はなくなったから吉としよう。
「わかった。明日作ってくる」
「そうそう、やっぱり料理は無理だよね〜。まぁ、料理が出来なくても智代は可愛いから問題ないよ。だから、そう気を落とさず……って、ええ!? ……料理出来るの?」
俺の推測が外れるなんて……。
「ああ、女の子だからな。料理くらい出来るぞ。明日は期待していろ」
や、俺の推測は間違いない……理由はわからないけどそんな気がする。
「……無理しなくて良いから」
「無理なんかしてないぞ」
死亡フラグ確定? でも、智代の手料理が食べれるなら死んでも本望かも……。
―――視点変更―――
ぐっちと正式な恋人になってから一週間が過ぎた。
しかし、私達は何の進展もないままただ無為に時間を浪費している。精々、子供みたいなキスをするくらいだ。
動物園でデートした時みたいに私を強く抱き締めて欲しい。キスも触れるだけでなく、もっと……。
言葉にすれば簡単だが、そんな恥ずかしいことは言えない。それに拒まれてしまったら私はまた壊れてしまうかも知れない。
だから、私は精一杯の気持ちを込めてアピールする。
なのに……ぐっちは全く気付いてくれない。……鈍感にもほどがあるぞ。
私はもっとぐっちと仲良くなりたいのに……どうすればこの想いをお前に伝えることが出来るのだろうか?
私達はファミレス来ていた。俺達が制服なのは学校帰りだからだ。
ぐっちは馬鹿みたいにボタンを連打する。恥ずかしいからそんな子供みたいなことをしないで欲しい。
「そんなに連続で押すな。壊れたらどうするんだ?」
しかし、ぐっちは怒りで私の言葉が耳に入らないのかボタンを押すのを止めない。
仕方なく力ずくで止めさせようと思ってたら、店員がやってきた。
「どうされましたか、お客様?」
「どうもこうもねぇーよ! 俺はピーマン入ってないからこの料理を注文したんだ! なのに……」
ぐっちは怒鳴る。店の迷惑になるから止めて欲しい。
「それは大変失礼を致しました。急ぎ作り直して参ります」
彼は深々と頭を下げ謝罪する。そして問題の料理を下げて、踵を返して厨房に向おうとする。
こちらの希望通りピーマン抜いた料理を持ってきて、この件は解決。
だが、それは果たして本当にぐっちのためなのか? 好き嫌いは良くない。
「待ってくれ……それには及ばない」
私は彼を呼び止める。彼は振り向く。
「……よろしいのですか?」
「ああ、構わない」
「かしこまりました」
彼は料理をテーブルに置き直す。
「いや、全然良くないから!」
ぐっちは再度怒鳴る。
「お客様……店内ではお静かにお願いします。他のお客様のご迷惑になりますので」
そう言って彼は去る。
「……」
ぐっちがまた怒鳴ろうとしている。今度、騒いだら絶対に追い出されてしまう。折角のデートがこんな事で終わってしまうなんて嫌だ。
私は殺気を込めた目で、無言でぐっちを睨む。
ぐっちは恐怖で身がすくみ、声を出せなくなる。
「私の連れが迷惑をかけてすまなかった」
私は彼に頭を下げ謝罪した。
私はぐっちの方を向く。
「次、また私に恥をかかせたら帰るからな」
「ゴメン。気を付けるよ。雰囲気壊してすみません」
ぐっちが私に頭を下げ謝罪する。
「わかってくれればぞれで良い。……折角のデートなんだから私だって楽しみたいからな」
数分後。相変わらずピーマンが皿の上に残ったままだ。ピーマンを食べようと何度か挑んだようだが全て失敗した。
「早く食べろ。料理が冷めてしまうぞ」
私はぐっちに催促する。
「無理」
「どうしてなんだ?」
「ピーマンは全人類の敵!」
私は肩を力なく落とし、眉を下げる。そして大きな溜め息を吐いた。
「……意味がわからない」
ピーマンは栄養価も高くて、美味しいじゃないか。
「智代だって嫌いな食べ物あるだろう?」
「ない」
好き嫌いは良くない。アレルギーなら仕方ないが……。
「……マジ?」
ぐっちは目を大きく開き驚いている。
「私は嘘が嫌いだ」
嘘は人を不幸にする。そして私のトラウマを思い出させる。
「……さっきからお前は何をやってるんだ?」
「見ればわかるだろう」
私は小さく溜め息を吐いた。どんだけピーマンが嫌いなをだ。……しかし、これはチャンスなんじゃないか?
ここでピーマンを私が食べさせてやれば好き嫌いもなくなり、私との仲も一歩前進する気がする。
うん、これはチャンスだ。少し恥ずかしいが、ぐっちとの仲を進展させるために頑張るぞ!
「ほら、私が食べさせてやるから口を開けろ」
私はピーマンをフォークで刺し、ぐっちの口元に持っていく。
が、ぐっちの口は堅く閉ざされている。私の好意が拒まれた。つまり……。
「……私のこと嫌いなのか?」
早く否定してくれ。じゃないとこの場で泣き崩れてしまう。
「や、好きだよ」
……良かった。しかし、それならなぜ私の好意を拒むんだ?
「なら、口を開けろ」
「開けたいんだけど……開けられないんだ。どうやら俺のピーマン嫌いは魂に刻み込まれているみたいだな。だから、諦めて帰ろう」
私は強引にピーマンをぐっちの口に入れようと隙間にねじ込む。しかし、ピーマンを拒む歯は固く閉ざし開かない。
その堅さはまるで要塞のようだ。
「なら……その歯をへし折って食べさせてやる」
こうなったら意地だ! そのためなら手段は選ばない。
「え、それは……」
私は更に力を込める。歯茎がキシキシと音を立てている。よし、後少しで歯が折れそうだ。
「ちょ、待て待てマジで折れる。誰か助けて!」
俺は叫ぶ。
「問答無用だっ!」
あと少しで歯が折れるであろう、その刹那。
「お客様……お静かにお願いしますって私言いましたよね? 他のお客様のご迷惑になるのでおかえりください」
私達は強制的に追い出されてしまう。
もの凄く気まずい雰囲気。折角のデートなのに……私が暴走したせいで最悪なデートになってしまった。それに店にも迷惑をかけてしまった……。後で謝罪に行こう。
しかし、それより今はこの雰囲気をなんとかしなては!
「いやはや……俺のピーマン嫌いは本当にどうしようもないね」
全くだ、好き嫌いはよくない。
「……」
「いや、治そうとは思ってるんだよ」
そんな雰囲気は全く見れないのだが……。
「本当かぁ……?」
「……そうだ、智代が作ってくれた料理なら食べれるかも」
料理……今まで作ったことがない。家庭科の実習も昔の私は協調性がないため避けていた。だから、全く経験がない。
「う、それは……」
しかし、ぐっちが望むなら叶えてあげたい。そして喜ぶ顔が見たいんだ。
「わかった。明日作ってくる」
「そうそう、やっぱり料理は無理だよね〜。まぁ、料理が出来なくても智代は可愛いから問題ないよ。だから、そう気を落とさず……って、ええ!? ……料理出来るの?」
ぐっちは酷く驚いた。……やはり、女の子らしくない私が料理をしたらおかしいのだろうか。いや、ぐっちは私のことを可愛い女の子って言ってくれた。
「ああ、女の子だからな。料理くらい出来るぞ。明日は期待していろ」
「……無理しなくて良いから」
「無理なんかしてないぞ」
愛する彼氏のために料理を作る。これはすごく彼女らしいんじゃないか。うん、彼女らしい。
上手く行けば一歩前進するかも知れない。だから、精一杯頑張るぞ!
ふたりの未来の為にも……。
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