弁当?
昼休み。
俺は今まさに人生の分かれ道に居る、こういうの何て言うんだっけ……ライフカード?
眼前には智代が作ったという料理(?)が見える。
疑問系なのはそれが俺の知る料理の定義に全く一致していないからなのだが……。
恐らくなのが焼きすぎで墨に変化した卵焼きとウィンナー、異臭がする未知の色をした液体などなど。
唯一まともなのはサラダだけという……。
この説明を聞けば疑問系の理由をして頂けると思う。
無論、弁当は用意していない。
失敗する可能性を考慮しないのか?
常識的に考えて智代が失敗する訳がないだろう。
世界一の美貌と世界一の優しさと世界一の頭脳と世界一のプロポーションを持つ智代が失敗するなんて……果たしてあるだろうか?
ある訳がない! 反語ぉおおお!!!
だから、俺が失敗の可能性を考慮するなんて有り得ないのだ。
いや、そんなことはどうでも良いのだ。
別に昼飯食わなくても死ぬ訳じゃないからな。
が、これを食べないという選択肢を選べば智代を悲しませてしまうかも知れない……それだけは絶対に避けたい。
……。
元より選択肢なんて一つしかないのだ。
俺は覚悟を決めて……。
誰かが俺の腕を揺さぶる。
「おい、大丈夫か? しっかりしろ」
世界一愛しくて大切な人の顔が俺の視界に映る。
ん、今までのは夢だったのかな?
そりゃそうだよな! 智代が失敗する訳がない。
が、現実は何処までも残酷だった。
「やっぱり、夢じゃないのか……」
智代が目を細めて、俺を避難する目で睨む。
「……うぅ、酷いぞ。た、確かに失敗作だが……そんな嫌そうな顔しなくても良いじゃないか」
や、普通の反応じゃねぇ?
「だって……」
「ふん、そんなに嫌なら食べるな!」
智代が怒鳴る。そして眉を下げて、力なく肩を落としてしまう。
このままじゃ駄目だ!
「誰も食べないなんて言ってないだろう!」
「……無理するな。これは私が食べる。失敗したのは私の責任だからな」
「や、腹壊すから止めれ」
……あ、俺ナニ言ってんの? 馬鹿なの? 死ぬの? バッドED直行なの?
「……そ、そこまで言うか。いくら何でも酷すぎるぞ」
諦めちゃ駄目だ、諦めちゃ駄目だ。まだ希望はあるさ!
「や、智代は美人だから胃が繊細だろ? だから……」
「……」
智代はほんのりと頬を赤く染める。
「それにコレは俺のモノだっ!」
ごめん、コレを料理と呼ぶのはどう考えても無理です。
「……嫌なんだろう?」
「うん、どう考えても危険だしね」
正直、食べたくないです。人間だもの仕方ないよね。
「ッ……だったら!」
智代は弁当箱を床に叩きつけようとする。目がうっすらと潤んでいる。
「ま、待て! 人の話は最後まで聞けとならわなかったのか!?」
「うるさい!」
智代は今にも泣き出してしまいそうな顔をしている。
「それでも、俺はソレを食べたい」
愛する人には笑っていて欲しいのだよ。そのためならば命すら余裕で賭けるさ。
「え?」
「だって、ソレは智代が俺のタメに作ってくれたものだろう?」
「……うん。ぐっちへの愛を込めて作った」
愛か、ならば俺は何があろうとソレを食べなければならない。我が愛は何人たりとも邪魔出来ないのだから!
俺は智代から弁当を奪い返す。そして、墨を口に運ぶ。
「……」
くちゃくちゃ固い、歯が折れるかも知れない。なぁ、智代お前はどんだけ焦がしたんだ?
「どうだろうか?」
智代が期待と不安が混じる目で俺を見つめる。
味? そんなの聞くまでもないからな。苦味しかねぇーよ!
無論、そんなことを言える訳がない。
死にたくないから?
え、馬鹿なの? あんなに可愛い智代が暴力なんかする訳ないだろ、常識的に考えて!
理由は愛する人の悲しむ顔をみたくないからに決まってるからな。
「……個性的な味だな」
ちょっと酷い言い方かも知れないな。美味しいと嘘をついてやるのが優しさなのかも知れないな。
でも、それは残念ながら出来ない。
嘘を吐くと智代に怒られるからな……。
え、お前は嫁さんの尻に敷かれるタイプ?
いえ、亭主関白です。……でも、智代の尻になら敷かれたいかも。
変態じゃありません。仮に変態だとしても、紳士な変態さ。
「……そうか……不味いなら無理して食べなくて良いぞ」
智代はこの世の終わりみたいな感じで落ち込む。
「でも、胸に何か暖かいモノを感じるよ。智代が俺のために頑張ってくれたのが何よりも嬉しい」
俺は何とか墨を食べおえた。癌になったらどうしよう……。
とりあえず喉が渇いたな。
「何か飲み物ないか?」
「暖かい日本茶ならあるぞ」
智代は鞄から水筒を取り出して、コップにお茶を注ぎ俺に渡す。
「ありがとう」
俺はお茶を飲む、喉が潤う。
さて、次は……。
「……」
やっと、危険物を食べおえたぜ。後はサラダだけだな。俺はサラダを口に運ぶ。
「どうだろうか?」
「普通に上手いよ」
「そうか……良かった」
残りのサラダを食べる。
「ま、まさかこれは!?」
口に広がる圧倒的な苦味と、不快な食感。
俺は正体を確かめるために吐きだした。
頼むから、俺の勘違いであってくれ!
「な、なぜ全人類の敵が……」
「何時からピーマンが人類の敵になったんだ?」
「人類が生まれた時からの敵だろ。こんなの食える訳がない、JK」
なのに、ソレを食べさせるなんて……智代は俺に何か恨みがあるのか?
「ピーマンは健康に良いんだぞ」
だから、何なの?
「他で補えば良いじゃん」
「好き嫌いはよくないぞ。第一、私が料理作ったら食べてくれる約束じゃないか」
「ぐぬぬ……」
アレは料理じゃない!
とは、流石に言えず……俺は我慢して敵を食べた。
やっと、全て食べ終わったぜ。
「ごちそうさま」
俺頑張ったよね? もう、ゴールしても良いよね……。
視界が全て真っ白に染まり、全身から力が抜けていく。
視界には何故か見覚えのある、天井が映る。
だから、ここが保険室だと分かる。
何故わかるのかって?
……察しろ。
視界に天井が映るということは寝ている可能性が高いな。
今までの状況を考えて俺は気絶していたと推察出来る。
「良かった……目が覚めたんだな。急に気絶したからびっくりしたんだぞ」
言うまでもないが……原因は間違いなくお前だからな。
無論、口には出さないがな。
「その……また弁当を作ってきたら食べてくれるだろうか?」
だが、断わる。
「と、当然だろ」
智代の顔を曇らせないためなら、どんな苦難も受け入れると誓ったからな。
誤解するなよ、俺はMじゃない!
愛だよ、愛。―――視点変更―――
今は授業中だ。
正直かなり眠い。昨日寝てないからな。
もし、睡眠が許されるなら私は直ぐに爆睡するだろう。
だが、残念ながらそれは叶わない。
休み時間を利用して保険室で寝れば良いのだが……もし、ぐっちが訪ねてきたらと思うと……。
結局、ぐっちは訪ねてこなかったがな! ……こんなことなら保険室に行けば良かった。
昼休み。
私はぐっちの教室に居る。
「弁当作ってきたぞ」
「マジ!? 智代の弁当ktkr
喜んでくれてる……頑張って作って良かった。
「開けて良い?」
「うん」
ぐっちは弁当の蓋を取る。
「……」
ぐっちが突然フリーズする。
「おい、大丈夫か? しっかりしろ」
「やっぱり、夢じゃないのか……」
ぐっちはこの世の終わりみたいな顔をする。
「……うぅ、酷いぞ。た、確かに失敗作だが……そんな嫌そうな顔しなくても良いじゃないか」
眠いけど……喜んでもらいたくて頑張って作ったのに……。でも、失敗作だから仕方ないか。
「だって……」
「ふん、そんなに嫌なら食べるな!」
悪いのは、私だ。でも、眠いから今の私はかなり機嫌が悪い。だから……。
「誰も食べないなんて言ってないだろう!」
「……無理するな。これは私が食べる。失敗したのは私の責任だからな」
ぐっちは優しいから私を落胆させたくなくて無理してるんだな。……でも、本当に無理しないで良いんだ。本当に本当だぞ。
「や、腹壊すから止めれ」
……わ、私の作った料理は危険物だったのか。
「……そ、そこまで言うか。いくら何でも酷すぎるぞ」
「や、智代は美人だから胃が繊細だろ? だから……」
「……」
び、美人? お世辞でも嬉しいぞ。
「それにコレは俺のモノだっ!」
「……嫌なんだろう?」
「うん、どう考えても危険だしね」
そうか……。
「ッ……だったら!」
私は弁当箱を床に叩きつけようとする。穴があったら入りたいぞ。
「ま、待て! 人の話は最後まで聞けとならわなかったのか!?」
「うるさい!」
「それでも、俺はソレを食べたい」
「え?」
「だって、ソレは智代は俺のタメに作ってくれたものだろう?」
「……うん。ぐっちへの愛を込めて作った」
沢山込めたぞ。
ぐっちは私から弁当を奪う。そして、卵焼きを口に運ぶ。
「……」
ぐっちは無言で噛み始める。
「どうだろうか?」
もしかしたら……。
「……個性的な味だな」
そ、それはどういう意味なんだ?
……。
「……そうか……不味いなら無理して食べなくて良いぞ」
やっぱり駄目だったか。
「でも、胸に何か暖かいモノを感じるよ。智代が俺のために頑張ってくれたのが何よりも嬉しい」
ぐっちの優しさが嬉しい。
「何か飲み物ないか?」
「暖かい日本茶ならあるぞ」
私は鞄から水筒を取り出して、コップにお茶を注ぎ俺に渡す。
「ありがとう」
ぐっちは喉を鳴らしながらお茶を飲む。よっぽど喉が渇いていたのだろう。
「……」
ぐっちはサラダを口に運ぶ。
「どうだろうか?」
「普通に上手いよ」
「そうか……良かった」
ぐっちが残りのサラダを食べる。
「ま、まさかこれは!?」
ぐっちはピーマンを吐きだした。
「な、なぜ全人類の敵が……」
「何時からピーマンが人類の敵になったんだ?」
「人類が生まれた時からの敵だろ。こんなの食える訳がない、JK」
JK……誰かの名前か?
「ピーマンは健康に良いんだぞ」
だから、食べろ。
「他で補えば良いじゃん」
「好き嫌いはよくないぞ。第一、私が料理作ったら食べてくれる約束じゃないか」
約束を破るのか?
「ぐぬぬ……」
ぐっちは残りの料理を無言で食べる。
「ごちそうさま」
そう言ってぐっちが何故か気絶した。
私はぐっちを保険室に運び、ベットに寝かせる。
数分後……。
「良かった……目が覚めたんだな。急に気絶したからびっくりしたんだぞ」
本当にびっくりしたんだからな。
「その……また弁当を作ってきたら食べてくれるだろうか?」
ぐっちに喜んで貰えるような料理を作りたいんだ。だから……暫くは大変だと思うが付き合って欲しい。
「と、当然だろ」
良かった。頑張って料理作るからな!
因みに彼女の料理の腕が上がるまで数ヵ月もかかることになるのは内緒の話だ←
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