ある時、ある場所に王子様とお姫様がいました。王子様はいつもひとりぼっち、なぜなら王子様を人々は恐れていたからです。
「なんであんなのが王子なんだろう?この国は大丈夫だろうか?」
王子様はいつもひとり・・。
お姫様はいつもげんき。お姫様といってもなばかりで、洗濯おばさんに混じって青空の下いつも洗濯をしていた。
「聞いたかい?隣の国の化け物王子?見た者は呪われるって話だよ。なんでも隣の国に出稼ぎに行った人の話では…。」
王様はいつも迷っている。我が息子は大丈夫だろうか?心配だ。何せあの子は、化け物王子なんて噂がたってしまっておる。トコトコ・・・。ああ今日もぬけるような青空だ。しかしわが国の情勢は・・。トコトコ・・・。
「こんにちは、王様。どこへ行かれるんですか?」
「…ここはどこだね?」
「は?」
王様は道にも迷っている。
大臣は真実を知っている。だから時々王子を慰めている。真実の言葉で…。
「どうして下を向いているんだ?」
「だって皆僕を恐れて逃げるから。」
「誰を見て逃げるって?」
「僕を見て。」
「そんなわけない。だってあなたは…。」
王子様は小さい頃から毎日勉強をしていた。ある時、王族の専属家庭教師が言った。
「あなたのお父様があなたぐらいの時はこんな簡単な事すぐ出来たでしょうに。どうしてあなたはできないのかしら?」
王子はその晩眠れなかった。家庭教師の言葉を思い出して眠れなかったからだ。傷ついたのだ。家庭教師のたった一言で。たった一言で…。
お姫様は時々星空を見ている。この広い世界のどこかで私を必要としてくれる人がいるのかしら?そういえばこの前化け物王子がどうとかこうとか…。ああ今日もよく働いた。明日はお弁当を作っていきましょう。あれもこれもいれて…。
「姫さま、昨日言った件なんですが…。あら?」
「ZZZ。」
お姫様は寝つきもとっても良い。
「誕生日パーティ?」
「そうだ。」
「隣国の姫君の?」
「そうだ。」
「しかし僕はみんなに恐れられてい。」 「問答無用だ。いいか、王子よ。そなたはもう16になる。そろそろ王としての仕事を覚える時だ。いや、これでも遅いくらいだ。」
「しかし、僕は・・。」
「ああ聞かぬ。パーティは明後日だ。そなたにお供するように大臣にはすでに頼んである。よいな。ではな。」
「しかし僕・・。」
王子は王様が去っていった場所をただ見つめるしかなかった。
パーティー前日
お姫様
「なんでパーティ前日に言うのよ。」
「だって姫様、毎日楽しそうに働きに行かれていたから。」
「だからってパーティ前日にドレスの打ち合わせなんて。」
「ご心配なさらなくても、姫様以外の準備は完璧でございます。」
「…そんな事を言ってるんじゃないわよ。」
王子様
「王子、何をそんなに心配しているのです?」
「僕、明日のパーティになんか行きたくないよ。」
「心配しなくてももう向かっています。」
「……。」
「大丈夫ですよ。明日のパーティは皆さん仮面をつけてらっしゃいます。」
「誕生日パーティじゃなかったの?」
「……そんなこまかい事を気にしていたらいい王子になれませんよ。」
「……。」
パーティ当日
王子様は壁の花となっていた。大臣は来賓者に挨拶をして回り、一通りしてまわると王子様に告げた。
「王子、今日は仮面誕生日パーティですよ。誰も噂など気にしておりません。あの方と一曲踊ってきていらっしゃったらどうですか?」
大臣はパステルカラーのドレスを着た女性に手招きをした。女性は軽く王子様に向かって会釈をした。
「あの方は?もしかして…、」
「もしかしなくてもパーティの主役のお姫様です。」
お姫様はまっすぐ王子様の方に向かってきて、
「あの私と踊っていただけませんか?」
「え?あ、はい。よろしくお願いします。」
お姫様は王子様の手を取り曲に合わせて踊り始めた。
「姫様、僕の噂はご存知ですか?」
「ええ、時々耳にします。」
「僕のこと怖くないのですか?」
「どうして?」
「良くない噂が流されているので。イタッ。」
「ごめんなさい。ダンスは慣れていなくって。」
お姫様は王子様の足を踏んでしまい、ほおを赤く染めた。
「いえ、気にしないでください。」
「ダンスはやめてあちらでお話をしませんか?」
「そうですね。」
お姫様は王子様を人気のない場所まで案内した。
「ああ、お姫様ぶるのはやっぱり肩がこるわ。」
王子様は目をぱちくりしている。お姫様は仮面を取った。
「王子、あなたも仮面なんか取って素顔で話をしませんか?」
「は、はあ。」
ゆっくり王子は仮面を取った。
「あら?どこが化け物王子なの?普通の人じゃない。」
「普通?そんなわけないよ。姫様、僕の噂ご存知でしょう?みんな僕を見て逃げるんだ。」
「…そうね、しいて言えばまず姿勢が悪いわ。それに顔色も悪いし…、きちんと日光浴びているの?」
「…いや。」
「じゃあ、毎日何をしているの?」
「何って…、将来の為に勉強をしているんだけど。」
「毎日?」
「そうだよ。」
「……。」
「あっ、たったまに大臣に付き合わされて、町に行くけど。」
「そこでみんなが逃げるの?」
「う、うん。」
お姫様はずっと王子様の目を見て話していた。しかし、王子様は…。
「王子、あなたは誰も見ていないわ。今話している私の目も見ていないじゃない。」
「え?」
「普段もそうなんでしょう?なのに、どうしてあなたはみんながあなたを見て逃げたってわかるの?」
「だってみんなが僕の噂話をしているから。」
「王子の話していることは真実ですよ。」
それまで2人の話を黙って聞いていた大臣が、どこからか現れて王子様とお姫様の話に加わった。
「本当に王子の姿を見て逃げるの?」
「いいえ。」
大臣は静かに首を振った。
「けど、さっきは僕の話は本当だって。」
この時初めて王子は大臣の目をしっかり見据えた。そして、初めてお姫様の顔をしっかりと見つめた。
「私は噂話しているということ真実と言ったんです。あなたは一国の王子なんです。噂話ぐらい誰でもします。王子、あなたが小さい頃よく国王様と比べられ確かに悪い噂もたちました。しかし、王子には王様と違った素晴らしい面がたくさんあります。私はよく知っていますよ。」
そう言うと大臣はにっこりと微笑んだ。
「けど僕は化け物王子って噂が…。」
「あんな噂誰も本気で信じてないわよ。もし民が逃げるとしたら、それはあなたの態度じゃないかしら?」
「態度?」
「そう。そんなにオドオドしていたら誰だって不信に思うわ。」
「……。」
「王子?」
王子様はなにかを決意したようだ。
「大臣、パーティは切り上げて帰るぞ。」
「はい。ああ王子、先に行っていてください。少々姫様と話をしたいことがありますので。」
「早くしろよ。」
「はい。」
王子様は、今までとは別人のような顔つきで歩いて行った。
「……言い過ぎたわ。」
「いいえ。ありがとうございます。あそこまで言って下さって。」
「本当にあれで良かったの?」
「ええ。王子は周囲の噂でいつも落ち込んでおられました。最近は化け物王子だなんて噂にまで。これからは姫様の言葉で変わるでしょう。私の言葉では、あそこまで王子の胸には届かなかったでしょうから。」
「どうして私の言葉で変わるの?」
「決まっているじゃないですか。男なら誰だって愛らしい姫君の前ではいい男でありたいと思うものですよ。…では失礼します。」
王子様と大臣の去った場所には真っ赤になって立ち尽くしたお姫様だけが残されていました。
王子様はお姫様に会ってから変わり始めた。堂々とし、まっすぐに民を見つめ執務をこなした。王子様が立派な王様になるのもそう遠い話ではないだろう。
これは私が王子様だった頃のお話。
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