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ある少年と連れの話〜人売りと木こりと
作:古川まこと


「やあやあ、済まないね旅人さん」

「いいや、別に。」

「そうそう、ヨウは報奨金がもらえればそれで十分なんだもの」

「うるさい。お前は黙ってろ」

「は?なんだよ。さっき私をだまして囮にしたのはどこのだれだ?本当に危なかったんだぞ!」

「そうか。命のありがたみを再確認できるいいチャンスだったな」

「お前、」

「まぁまぁ、カイさんも落ち着いて」

「ほら黙れってよ」

「お前が黙れよ!」

「は?」

「ま、まぁまぁ。お二人とも仲良くしてくださいな。お礼に今日はうちに泊まってってください。今夜は豪華に頂きましょう」

「良かったじゃないか。野宿せずに済むってよ」

「野宿するつもりだったのか?」

「お前だけな。俺は良い宿を探すつもりでいた」

「は!?」

「誰が文句ばっかの餓鬼と泊まってられるか」

「文句ばっか言わせてるのはお前だろ。囮にするなら先に一言いってくれれば、」

「先に言う、ね。なら昨日、賞金かかった人売りが俺の寝首取りにきたのはなぜだ?」

「・・・」

「なんで奴らは日中フードをかぶっていた俺の髪が赤いって知っていた?」

「・・・」

「誰かが俺をダシにして奴らをおびき寄せたとしか思えないよなぁ?」

「・・・」

「さて、あれは一体誰の仕業だ?」

「・・・………き、今日はもう疲れたし、夕飯頂いたらすぐ寝ようか」

「誰の仕業だ」

「………ご、ごめん」

「お、お二人とも。まあまあ、ケンカするほど仲がいいとも言いますし。ひと先ず中に入りましょう。外も冷えてきてますし」

「は、はーい」

「ふんっ」

 *

「なるほど。昨日の奴らは帰り打ちにあったってわけか」
 暗く、月と星しか見ることのできないそこで低く小さな声がいきかう。
「で、奴らは?」
「ぐっすりだ。だが運が良かったじゃねーか。あのまま小僧を追っていて。おかげで赤だけじゃなく水色の方も手に入る」
「きっと奴ら高く売れるぞ」
「あぁ。女じゃないのが残念だがな。水色の方は男にしては奇麗な顔をしてる。あれはあれで値がつくだろうさ」
 声は3つ。だがそこに息を潜める者は合計5つ。その5つすべて、手には月明かりを鈍い銀で反射する何かを持っていた。鈍い銀は夜の気に冷たく凍え、今にもその場の空気を切り裂いてしまいそうなくらい鋭い。
「赤い方には気をつけろ。昨日の奴らを殺さずに役所に連れてったのはあいつだ。多分水色の方が弱い。今日見てても逃げてるばかりだったからな」
「ははは。お前もうまいよな。昨日の仕返しに木こりに化けて、奴らにここらの山賊片づけさせて」
「商売敵をまんまと消したうえ、商品までまんまと袋のねずみか」
「あぁ。だから売れた時の分け前、今回はちょいと俺だけあげてもらうぞ」
「へいへい」
「おい、ここのじじいはどうしたんだ?」
「ああ。あんな腐りかけ、売れもしないからそこら辺に捨ててやったよ」
「へ〜、なるほどなぁ」
 下品な笑いがその場に密集する。
 木々のざわめきはそれらを消し去ってしまい、虫の音色は物音などないもののように響き渡る。5つの人影は握りしめた物騒なものをきらめかせ、物音もなくその小屋へと忍び込む。本来の主人を無くした小屋は、悲しみに声を上げたのかキシリとその柱を軋ませた。

 入ってすぐに丸テーブルがあった。その上にはびっしりと皿が並び、冷めて湯気の出ることのない残飯が並んでいた。そして一つの扉。その横には階段があり、上にはもう一つ扉がある。一つの部屋に一人。ハズレの扉は存在しない事を男たちは知っている。
「下に二人、上に三人。いいな」
 木こりに化けた男は、赤い髪の少年を上へ、水色の髪の少年を下へと振り分けた。それもこれも、上なら逃げ場も減ると考えたから。そして、下に宛がえた水色は、そうそう手がかかることなくお縄につくと思ったから。
「よし、行け」

―――ガチャリ

―――ガチャリ

 二つの戸が同時に鳴った。
「う、うわぁぁぁぁぁ!!!」
「く、くそぉ!!」
 そして上の部屋からは2人分の声が上がった。
 だが物音はそれきりで、あっという間にあたりはひとたび前と同じ静けさに包まれた。
 そしてしばらくして、一階の戸から現れた一つの水色。
「誰が小僧だっつうの」
 不満の声は静寂に溶けて消えた。
 それに赤のこらえられた笑いが続く。

 *

「三人か。俺の勝ちだな」

「何言ってんだよ。私は声を上げさせる前に捕まえたんだ。ここは引き分けだろ?」

「何言ってんだ?そもそもこいつらこの間の余りなんだろ。だったらこの間の奴全員片したのは俺な訳だから、今の分を引き分けにしたとしても7人分の差があるわけだ。俺の勝ちだな」

「はぁ。まだ昨日のこと根に持ってるのかよ」

「気に入らないならもう二度としない事だな」

「はいはい。悪かったですね。でもこの二日でかなり儲かったじゃないか。これでまた、当分は金銭を心配しないで済むだろ?」

「そうだな。もしこれでまた困ったら、誰かさんにまた囮になってもらうとするか。餌になってもらうのもいい」

「このひねくれ者」

「お前が言うな」

 夜に寝静まる街中を、役所へ向かい五人の大人を引きづりながら言い合う二つの人影は、なんとも滑稽に月明かりに照らされていた。














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