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弱小魔族の冒険譚 作者:さわ
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師匠の家から急転

久々の我が家、と言う訳ではないが、勝手知ったるなんとやらで、いい朝を迎えられた。
いつもは俺が朝食を用意していたのだが、今日はアリスがやると言っていたのでゆっくりできた。
身だしなみを整えず、寝起きそのままの格好で母屋に向かうと、途中の通路から師匠とサラが対峙しているのが見えた。
声をかけようと近づこうとしたが、二人の空気が一変したのを感じ、足を止めた。

-風よ-

サラが詠唱し、足元に魔法陣が展開される。
教会で戦った時と同じ魔法だと思ったが、その時とは異なり詠唱が短かった。
サラの足元のに魔法円が展開される。

「いざ!」

掛け声と共にサラが踏み込み、加速する。
加速した瞬間に目を疑ったが、明らかに以前戦った時よりスピードが増しているじゃないか。
しかし、難なくサラの攻撃をかわしている師匠は、もう変態だと思った。

しばらくの攻防が続いたが、サラのスタミナが切れたところで終了した。
どう言った経緯で戦っていたのかわからないが、とりあえず、サラに近寄り話しかける。

「……おはよう?」
「おはよう! 丁度、師匠に手解きを受けていたところだ!」
「……ああ、そうなんだ」

汗だくで息を切らしながら満足そうな顔で誇っていた。
師匠? いつのまにかサラが師匠と呼んでいる事に違和感を感じたが、いつのまに仲良くなったんだか。
サラは汗を流したいと風呂場の方へ向かって行った。

「師匠、何やってんの?」
「あぁ、ライザか。サラに戦い方のコツ? みたいなものを教えておったんじゃ」
「コツねぇ……。そう言えば、サラの詠唱が凄く短かったような」
「あぁ、それか。魔法はな、イメージなんじゃよ。魔法を発現するイメージを膨らませる意味で詠唱をするんじゃ。だから、実際は詠唱なんてなんでもいいんじゃよ」
「結構適当なんだなぁ」
「まぁ、そんなもんじゃ」
「後、以前見た時よりスピードが早かったのも何かコツがあるのか?」
「いや、あれは元々じゃ。お前は手加減されていたんじゃよ」
「……へぇ」
イメージか、そういえば、師匠から貰った本に書かれている詠唱文はアリスやサラが使っていた言葉とは少し違っていたのを思い出した。
イメージしやすい様に本が勝手に解釈したのか?

「師匠……、俺も少しお願いできるかな?」
「自分から頼むなんて珍しい事もあるもんじゃ。今の身の程を知ったか?」
「……まぁそんなとこかな」

これから何が起こるかわからないし、さっきの師匠とサラのやり取りで自分の弱さを再確認できた。
少しでも強くなれるチャンスがあるなら逃したくない。


しばらく師匠と手合わせをし、朝からどっと疲れた。
サラと戦った時の様に上手く魔法が発動できなかった。
師匠が言うには、使い慣れていない事と、イメージ不足だと言う。
もっとイメージの練習をしなければ!

大分汗をかいてしまったので、朝食前に風呂へ向かった。
ここには地下から温泉が湧き出ていて、なかなか快適だ。

温泉の扉を開け、中に入ろうとすると黄色い悲鳴が響いた。

「きゃー!」
「お、おまえ!!」

其処には、アリスとサラが裸で立っていた。

「わ、わ、すまん!」

慌てってその場から立ち去った。
まさか、サラがまだ居たなんて。しかも、アリスまで。
うーん。次は顔が合わせづらい……。

しばらく外で、待っていると、服を着た二人が出て来た。

「次は、コロス……。」
「ら、ライザさんおはようございます……。あ、朝食の用意しますね〜」

二人は赤面しながら、そそくさと母屋に向かって行った。
ま、まぁ、次会った時に謝ろう。

ささっと風呂で汗を流し、母屋へ向かう。
途中でいい匂いがしたので、アリスが朝食を作ってくれているのだろう。

食卓に着いたが、実に空気が重くて味わっている場合じゃない中、なにも知らない師匠だけが何食わぬ顔で食べていた。
皆がが食べ終わった頃に師匠が口を開いた。

「これからどうするつもりじゃ?」
「んー、少しの間、師匠に修行してもらいたいんだけど……」
「あまり時間はないんじゃないのか?」
「まぁ、そうなんだけど……。でもさ、今の状態だと不安もあってさ……」
「まぁ、そうじゃろうな。王宮には魔法は使えなくともサラより強い奴はいると思うからな」

サラは黙って話を聞いていたが、同じく師匠に修行して欲しいと申し出ていた。


それから、5日ほど師匠の家に滞在し、サラ共々修行をつけてもらった。
大分魔法の感覚はわかって来たが、結局サラと模擬戦をしても敵わなかった。
今は時間が惜しいため、再度師匠に頼もうと思った。

「また王都へ向かうんじゃろ? その前に行く場所とかあるのか?」
「んー、とりあえず教会に戻ろうかなぁと」
「教会とな?」
「あぁ、ここから結構近くにあるんだけど」
「ふむ、もしかして近くに湖があったりするか?」
「あぁ、師匠知ってるのか? ちなみに、女の子の神様の像も飾ってあるんだけど」
「……なんじゃと!? ふ〜む。そんな事になっとるのか……」

師匠がまたブツブツ言っているが、歳のせいだろうか。

「で、師匠は何か知ってるの?」
「あぁ、よく知ってるぞ。その教会とやらも」
「そうなんだ。それで、教会に戻りたいんだけど、師匠は何か移動手段なかな。馬車とか」

流石に馬車は持ってないだろうと思ったが、聞いて見たが、

「あるぞ」

「え?」

まさかの返答で固まってしまった。

「馬車じゃないが、教会にならすぐに行けるぞ」
「……どうやって?」
「裏庭にある祠があるじゃろ? あそこにゲートが張ってあるからそこをくぐればすぐじゃ」

ゲートとはある場所と場所を繋ぎ、遠距離へ移動を可能とする魔法なのだが、術者はほとんどいなく珍しい魔法のはず。
何故、師匠の家と教会がつながっているのかは謎でしかない。
理由を聞いたが、はぐらかされるだけだった。

裏庭に行ってみると確かに祠があり、扉を開けるとゲートの魔法がかかっている門があった。
3人で師匠に挨拶をし、緊張しながらゲートをくぐった。
しばらく歩くと、正面から光が溢れてくる。

「ここは……?」
「あ、もしかして、教会の離れにある倉庫でしょうか?」
「アリス、わかるのか?」
「はい、何度か物を取りに来た事ありますし、今までゲートがあるなんて気づきませんでした」

もしかして、一方通行なのか? もしくは、師匠が何かしたのか。
とりあえず外に出ると確かに教会とは目と鼻の先だった。
教会に戻ろうと建物の方を見ると、女性が逃げるように飛び出して来た。

「なんだ?」
「さぁ……。あ、あれ? マリアさんじゃないですか?」

後ろからは甲冑を纏った騎士っぽい奴がマリアを追いかけるように出てくる。

サラがナイフを抜き、険しい顔をする。
「何か、尋常じゃない! 急ぐぞ!」
「あ、待ってくれ。アリスはとりあえず待機だ!」
「わかりました」

騎士がマリアへ剣を振り下ろす瞬間、間一髪、サラが騎士の横っ腹を蹴り吹っ飛ばした。
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