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風渡り

作者:キュウ
3分程で読めるミニ短編です。
お茶やおむすび片手にサッとどうぞ♪
今回は終始流れるようなあっさりしたお話となっとります。
やまなしおちなしの心地よさ(?)を少しでも感じていただけたら幸いでございます。
 ふらふらと足先だけで無心に進み、私はその草原に倒れこんだ。視界が揺らぐ中、ここに命運尽き果てたかとにわかに危惧したけれど、傷ついた身体はたわわの枝のように柔らかい青草に抱き留められた。
 こんな場所が、どこにでもあればよいのに。
 そう思いながら体をひねると、仰向けに晒された半身は、視界いっぱいに広がる青空に覆われた。絶え間ない青色を点々と縫い合わす白い雲は、どれもこれも穏やかに流れていく。しかしながら、そこから思わず目を背けてしまうほど、私は心の底から疲弊しているらしかった。
 こんな時に思い出すのは、幼い頃の記憶である。
 私は険しい渓谷のど真ん中に生まれた。そこにいるのは、むつっこい顔のわりにお淑やかな動物たちや、天井知らずに子煩悩な優しい両親に数多の仲間たち、そしてつつがなく毎日を送るあどけない私。
 いつの間にかこんなに遠くへ来てしまったものだけれど、今でもしかと覚えているものがある。あさぼらけに山峰で輝くお日様を始め、心通ったと友との談笑も、臈長けた大人のくだくだしい説教も、お調子者たちのばかばかしい軽口も、彼等の表情一つ一つと共に鮮明に刻まれている。
 私が出逢ったものすべて、相互のいたわりに絶えず糸を張り巡らせて、温かく震えるその時々を何よりも好んだ。みんな懐かしい思い出だ。それは当然、私にだってできることのはずである。
 誰かのためを思えば、私はいくらだって飛んでいられる。
 いつの間にか、さわさわとそこら中で響き合っていた草のすれる音が随分と心地良く感じられていた。私は瞼を上げて、再び金魚鉢から覗くような丸い青空を眺めた。目の前を数えきれない風たちが横切り、その度に思わず微笑を浮かべてしまう。
 あの空が、明日どんよりと灰色の雲に覆われても、激しい嵐に襲われても、私がヨイショと腰下ろせるだけの草原は、いつまでもここにある。
 たとえ、町にぞろぞろと兵隊さんが押し寄せようと、あちらこちらと路地が守銭奴の波に揉まれようと、私は必ずここに帰ってくるとしよう。
 そう意気込むと、私はそっと腰を上げて、ようやくまた宙に浮かび上がった。

 ――それはある日の、雨上がりの午後のことだった。人知れず、町はずれの小高い丘に迷い込んだその風は、時には涼やかに、時にはポカポカ陽気にと色を変えながら、どこまでも足を運んだ。
お疲れ様でした♪
HP(→http://kyunote.blog.fc2.com/)にて
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