僕と彼女のなんとかかんとか(6/23)PDFで表示縦書き表示RDF


更新遅くなってしまいました。すいません。今回は長ったらしいですがお付き合いしていただけるととても嬉しいです。文章の方も滅茶苦茶になったりしてるかもしれませんが悪しからず。



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二話目を手直ししたんで読んでやって下さい。
僕と彼女のなんとかかんとか
作:雨永祭



5.僕と彼女の賑やかな食卓


「くははははっ!泣けぇ!喚けぇ!糞乙女野郎がぁっ!」
「先輩っ玉葱持ってきたよっ♪」
「いっ嫌だーっ!!それだけはっ…ってちょっ待てっ!待っててあに…きぃゃーーー っ!!!!」

 余興という名の拷問を受けている要義兄さんの悲鳴と楓義兄さんの高笑い(義兄さんってこんなキャラだったけ?)、それに陽子ちゃんの楽しそうな声をBGMにして僕と歌澄ちゃん、姉さん、水波音ちゃん、そして歌澄ちゃん家のメイド兼料理長だと言う唐本彼方さんの五人で食卓を囲んでいた。
「彼方さん、アレ助けなくていていいんですか?」
 僕は二人の義兄を指差して聞いてみた。
「お前こそあの三人止めなくていいのか?」
「質問に質問で返さないで下さいよ。僕はあんなのに関わりたく無いですから止めませんよ。面白いと言えば面白い余興ですしね」
「ははっ、違いねぇ」
 傍観者に徹する僕と彼方さん。
「ぅにゃははははははははは〜♪受けるぅ〜っ!」
「いいぞーっ!もっとやりなさいっ!」
 馬鹿笑いする水波音ちゃんと煽る姉さんは既にぐでんぐでんに酔っ払ってる。
 そして、歌澄ちゃんは、
「んぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ…」
相変わらずひたすら食べ続けていた。
「…ぶふぁっ!顔がいだいっ!誰がみでばいでばぶべ…もぶふぅっ!」
「くははははっ!まだまだぁっ!」
「はいはぁーい、追加だよっ♪」
 要義兄さんは顔を陽子ちゃんが作った『すり下ろし玉葱の海』に楓義兄さんの手でぶち込まれ続けている。楓義兄さんは悪魔の笑みを浮かべていて、要義兄さんは姉さんにボコボコにされ、さらに涙と玉葱のせいで見るに耐えない顔、陽子ちゃんは心底楽しそうにしている。
 なぜこんな状況になったのか、それは要義兄さんと彼方さんが窓を突き破って入って来た後に起こった。



〜回想開始〜
…………
「人ん家の硝子窓突き破って入って来るのはどういう了見なのかな?糞乙女野郎」
「あ、ああぁあ兄貴っ!」
「おい、どうした?乙女執事」
 凄まじい負のオーラを放つ楓義兄さんと後退りをする要義兄さん。そして、野性味溢れているメイドさん。水波音ちゃんはいまだ幸せそうな顔で寝ており、歌澄ちゃんは固まっている。
「…彼方ちゃんに要ちゃんどうしてここに?」
「お嬢様っ!」
 ガバッと歌澄ちゃんに抱き付くメイドさん。
「…彼方ちゃん、だからどうして…」
「怪我っ!怪我はして無いかっ!?」
「…してません。ですからどうして…」
 このメイドさんは歌澄ちゃんの身内なんだろうな。
「あの、歌澄ちゃ…」
「なんだテメェ…馴々しくお嬢様を『歌澄ちゃん』なんて呼びやがって…まさかテメェがお嬢様を…」
 急にメイドさんに凄まれた。
「いや、なんだって聞かれましても」
「いいからさっさと答えろよ…」
 物凄くドスを聞かせるメイドさん。そこで気付く。
「…あの彼方ちゃん」
 必死にこのメイドさんに話し掛けてる歌澄ちゃん。なんとかして上げないといけない気がしてきたな。
「さっさと答えろよ、テメェ」
 更に凄むメイドさん。
「メイドさん…」
「あぁんっ!?」
「貴女のお嬢様が貴女が話を聞いてくれないから困ってますよ?」
「へっ?!」
 メイドさんが後ろを振り向くと歌澄ちゃんが切ないそうな顔でメイドさんを見つめていた。
「…彼方ちゃん、話を聞いて下さい…」
「ぅわぁ…あぁっ!お嬢様っ!ごめんっ!」
「…彼方ちゃんはもっと人の話を聞くようにっていつも…」
 なんか説教を始め出した歌澄ちゃんと説教受けてションボリしているメイドさん。
 うーん…このメイドさんの場合、人の話を聞かないというよりも熱くなり過ぎて周りが見えなくなってるって感じだよな…。
 っと、そういえば義兄さんズは…。
「…なんで兄貴がいる…」
「それはここがぼくの家だからだよ要」
 拮抗する義兄二人。なんとなく要義兄さんは顔が青ざめている様に見える。
「……………」
「……………」
 一陣の風が吹いた瞬間要義兄さんが逃げ出した。
「逃すかっ!」
 あっと言う間に楓義兄さんに掴まった要義兄さん。
 …情けな〜。
「嫌だーっ!いーやーっ!」
 情けない悲鳴を上げて必死に楓義兄さんから逃げようとする要義兄さん。
「情けねぇ〜。あんなのが身内だと思うと恥ずかしくなって来るな…」
 歌澄ちゃんとメイドさんが隣りに来た。話し掛けて来たのはメイドさん。
「同感です。あんな義兄は勘弁して欲しいですよ。ところでメイドさん、説教は終わったんですか?」
「あぁ終わったよ。それよりも、俺の名前は彼方。唐本彼方だ。メイドって呼ぶな。さっきは悪かったな、座留。話は全部聞いたよ」
「そうですか、それは良かった」
 なんだか好感が持てる人だなぁ。
「…奏さん、要ちゃんと楓さんは仲良しですね」
「「…歌澄ちゃん(お嬢様)本気で言ってる(いってるのか)?」」
「…はい?何がですか?」
 エエェ〜。
「…ところでどうして彼方ちゃんと要ちゃんが奏さんの家に?」
「あぁそれは僕も気になってたんですよ」
 何せ窓突き破って来たんだからね。
「あぁそれはな…」
「ちょい待ちっ!」
 突然誰かが彼方さんの説明を遮った。
「陽子ちゃん?」
「…陽子ちゃん」
「ついて来てたのか?」
「んっふふふ♪こんな面白そうなこと無いからねっ」
 ほんとに楽しそうだなぁ。
「でもなんで陽子ちゃんが僕の家知ってるの?それに話からすると彼方さん達は陽子ちゃんに僕の家教えて貰ってたみたいだし…」
「うん、ここ楓先輩と日由先輩の家だからねっ」
「先輩?」
「あれ?知らないの?」
「うん」
「柳泉学園で明刀楓と座留日由を知らない人はいないくらい有名なんだよっ!」
 そうだったのか…知らなかった。
「まぁ取りあえず話を元に戻すけど、彼方さんと要義兄さんの襲撃になんで陽子ちゃんが関わってるの?」
 聞こうとしたら『きゅ〜』という音がなった。見ると歌澄ちゃんが恥ずかしそうに俯いていた。
 歌澄ちゃんのお腹が鳴ったらしい。
 可愛いなぁ…。と思った矢先、彼方さんが歌澄ちゃんに抱き付いて頬ずりをしだした。
「あぁっもう!お嬢様は可愛いなぁちくしょーっ!」
「…お腹空いた」
 彼方さんは歌澄ちゃんが大好きなんだなぁ。まぁ確かに腹も減ったしなぁ…。
「そうだね。そろそろ義兄さん達を止めさせないとね」
「そうだよ奏君っ、私もカリスマ主夫・座留楓の料理をたかりにきたんだからさっ、あはは」
 今僕は陽子ちゃんと水波音ちゃんがダブって見えたよ。
「そ、そうなんだ…じゃあ義兄さんを正気に…」
 僕が二人を止めようとした時、
「ただいま…って何これ?」
 我が家の女帝が帰って来た。
 義兄さん達は…
「離せ〜っ!俺は屋敷に帰るぅ〜っ!」
「窓をこのままにしてか?屑野郎だな、要」
 まだやってるよ…。何にしても要義兄さんにとって事態は完全に破滅に向かっているな…。
「奏、この子達は?」
「えーと、この娘は期間限定で僕のアシスタントをしてくれてる日永歌澄ちゃん。こちらが歌澄ちゃん家のメイドの唐本彼方さん。こっちが歌澄ちゃんの友達の…」
「あぁ、陽子じゃない」
 なんだ知ってたのか…。
「はいっ♪楓先輩の料理を食べに来ましたっ♪」
「そう、ゆっくりしてってちょうだい。…それで奏この窓は一体何?」
 リビングに散らばる硝子片を指差して僕に聞いて来た。なんだか怒気が含まれている気がする。
「それは…」
 答えようとしたところに要義兄さんを引き摺る楓義兄さんがやってきた。
「おかえり、日由ちゃん」
「ただいま楓さん」
 微笑み合って挨拶を交わす二人。状況が違っていたら微笑ましい家庭の一コマだったろうに…。
「ひっ!ひっ日由さん」
 姉さんを見て滅茶苦茶怯える要義兄さん。ちょっと可哀相になってきたよ。
「あら、要じゃない」
「日由ちゃん、聞いてよ。要が家の窓突き破って突入してきてさ、リビングがメチャメチャだよ。僕はまだ夕食の準備の途中だから、要をよろしく」
「わかったわ、任せて」
「そんなっ!いっ!ぃやめろっ!やめてくれっ!俺はまだ死にたくないやめろっやめてぇーっ!!」
 優しい笑みを浮かべて要義兄さんを受け取る姉さんといそいそと夕飯の準備を再開する楓義兄さん。
「……………」
「……………」
「〜♪」
「…お腹空いた…」
「くーくー」
 上から順に遠い目でその光景を見守る僕、呆れている彼方さん、楽しそうにしている陽子ちゃん、お腹を空かせた歌澄ちゃん、まだ寝てる水波音ちゃん。
 その後、要義兄さんは姉さんにボコボコにされた挙句一人で泣きながらリビングの掃除をさせられた。水波音ちゃんはこの時になってやっと起きた。



「いただきます」
「…いただきます」
「いっただっきますっ♪」
「いただきます」
「いただきま〜す♪」
「…いただかせていただきますぅぅ〜」
「おうっ!ジャンジャン食えっ!」
「まだまだ一杯あるからみんな遠慮せず食べてね!但し、要お前はだめだ」
 上から僕、目の前の料理に目を輝かせている歌澄ちゃんと陽子ちゃん、いつもと変わらず酒を片手に持っている姉さんと水波音ちゃん、泣いている要義兄さん、そして料理を作ってくれてる彼方さんと楓義兄さん。
 今日はいつもと違い大人数の食卓――まぁ要義兄さんは一人段ボールだけど――を囲みまるでパーティーの様だった。料理も和洋中仏伊と滅茶苦茶なラインナップだった。
量も半端ないし――まぁそれはきっと歌澄ちゃんの大食いスキル故のこの量なんだろうけど。
 こっちに戻って来てからこんなの始めてかも…こんなのも悪くないな。
 楽しい夕食の時間は過ぎて行く…。



 楓義兄さんと彼方さんが席に着いて少したった頃。
「それにしても食べて喋ってだけじゃ退屈ねぇ…」
 いきなり何嫌な提案してんだよ姉さん。要義兄さんは恐怖のあまり有り得ないくらいの白い顔をしていた。
「そうだね〜どうしよっかね」
 楓義兄さんと姉さんが何か言う度にガタガタと震える要義兄さん。その姿はもはや可哀相を通り越して笑えてくる。
「そうだっ!楓先輩っちょっと…」
 陽子ちゃんが何か思い付いたらしい。楓義兄さんにゴニョゴニョと耳打ちしている。
「…うん…うんうん…それはいいねぇ、ふふふふふふっ」
「お手伝いしまっすっ!」
 とても楽しそうにしている二人。
「ちょっと待っててね、日由ちゃん。今準備するから。行くよ、陽子ちゃん」
「はいっす〜♪」

〜回想終了〜

 その後楓義兄さんと陽子ちゃんが桶と大量のすり下ろし玉葱を持ってきて決死の抵抗を見せる要義兄さんを難なく捕まえ冒頭の様に余興という名の拷問をし始めた。といった感じで冒頭の状況が出来た訳です。


 こうして我が家の楽しい時間は過ぎて行った。


 騒がしい夕食が終わり、すっかり頓挫していたなぜ彼方さんと要義兄さんが我が家に窓割って突入してきたのかを彼方さんに聞いてみた。
「どうして彼方さんと要義兄さんは我が家の窓を突き破って入って来たんです?」
「…私も気になります」
 僕と歌澄ちゃんが聞いてみると彼方さんは深刻そうな顔をして話始めた。
「実は夕方頃屋敷に『日永歌澄はいただいた』って内容の手紙が届いたんだ。それで、こいつは大事だってことで岸和田陽子の家に行ってみたら…ん?そういえばどうしてお嬢様は座留の家にいるんだ?」
「……え、えーと、」
「どうしてもこうしても歌澄ちゃんは始めから僕の家に来ましたよ?」
「はぁ?何言ってんだ、陽子の家に泊まるってお嬢様から連絡が来たって若魚が…」
「…ご、ごめんなさい!」
「お嬢様?」
「歌澄ちゃん?」
 突然謝り出した歌澄ちゃん。謝る事は何も無い筈なのに…。
「どうしたんだよ、お嬢様」
「彼方ちゃん…実は嘘ついちゃったの」
「なっなんだって!!」
 物凄くビックリしてる彼方さん。そんなに驚く事なんだろうか。
「…そんな…お嬢様が…俺達に嘘を…」
「…あう彼方ちゃん」
 ショックのあまりブツブツ独り言を言い始めた彼方さんを見て辟易している歌澄ちゃん。
「えーと、彼方さん。落ち着いて下さい。これじゃあ話が進みません」
「…ブツブツ…っは!あ、あぁそうだな」
 なんとかといった感じで立ち直る彼方さん。
「よし、それじゃあ歌澄ちゃん。理由をどうぞ」
「…はい、えーとあれです。男の子の家に止まるのは初めてで、彼方ちゃん達に心配掛けたくなくて…」
 なんだか
「えーとあれです」
ってのがすごい引っ掛かるんだけど…。
「……お嬢様…俺達を思って…」
 歌澄ちゃんの言葉で感涙に震える彼方さん。
「…ごめんね?」
「っあっ!お嬢様っ、もう謝らなく大丈夫だからさ!」
 彼方さんって想像以上に単純だなぁ。
「っじゃあ、歌澄ちゃんが嘘付いた理由がわかったところで話を戻しましょうよ」
「ぉ?あぁそうだったなっ。まぁそういう訳で陽子の家に行ったんだ。そこで座留、お前の家にいるって言うじゃないかっ!んで、陽子からこの家の場所を聞いてよ、急ぐあまり窓突き破って突入しちゃった訳だよ」
  なんかしっくり来ないな。
「…私を誘拐したって内容の手紙は何なんでしょうね?」
「なんだよな〜。お嬢様はずっとこの家にいた訳だし」
 ……犯人は多分あの人だろうな、理由もきっとアレなんだろな。
 歌澄ちゃんと彼方さんはうんうん唸って頭を捻っている。
「…ねぇ、奏さん。手紙、誰がやったのかな?」
「座留、お前なんかないか?」
 行き詰まったらしい二人が僕に意見を聞いてきた。
「多分犯人は楓義兄さんかと…」
「「えっ?」」
 僕の答えはかなり予想外だったらしい、二人して口をポカンと開けている。
「そんなに驚かなくても…」
「…っあ、ごめん」
「ぉおっ、悪い悪い。で、なんでわかったんだ?」
「考えてもみて下さいよ。彼方さん達はまるで、案内されたかの様にこの家迄辿り着いたじゃないですか」
「…ん、確かにそうだな」
 やっぱり彼方さんに思うところがあったらしい。
「まぁ、どうやって歌澄ちゃんの陽子ちゃんの家に泊まるという嘘を知ったのかはわからない…というか知りたくもないですけどね」
 そう言い終わると歌澄ちゃんが少しばかり思案してから質問してきた。
「…こんな事した理由は何なんでしょうね?」
「だよなぁ〜」
「えーとそれは多分アレだよ」
「…アレって?」
 訝しそうにする歌澄ちゃん。
 自覚はあるんだろうか?
「彼方さんなら何となく分かるんじゃないですか?いつも料理を作るのは貴女だそうですけど…」
「はぁなんで俺が……あぁっ!なるほどな!確かに経費も労力も半端無いからなぁ…」
 少し遠い目をしている。
「…え?何なんですか?」
 頭を捻る歌澄ちゃん。
「歌澄ちゃん、気を悪くしないで聞いてね」
「…はい」
 真剣な顔をする僕につられて歌澄ちゃんも真剣な面持ちになる。
「歌澄ちゃん、君の食べる異常なまで食事量を考えると、食費も労力も尋常じゃなくなるからだよ。多分ね」
「…あぅ、すいません」
 あー…物凄く申し訳なさそうな顔してるし、またいわれの無い罪悪感が…。
「あぁ、そんな謝らないでいいからさ」
「そうだぞ、お嬢様。気にしても仕方ないだろ?」
 慌てて取り繕う僕と歌澄ちゃんのフォローをする彼方さんに歌澄ちゃんは嬉しそうにした。
「…ありがとう」
 そんな歌澄ちゃんの表情を見てなんだか和やかな雰囲気になる僕達三人。それはまるで蝶々が舞い飛ぶ花畑で戯れる純真無垢な子…
「なぁ〜にして〜んのっ!」
「ぅわっ!」
「ひゃぁっ!」
「ぅわぃっ!」
 傍からみたらきっとドン引きだったろう空気をぶち壊してくれたのは陽子ちゃんだった。
「びっくりしたよ、ほんと」
「あぁまったくだ」
「…びっくり…どうしたの陽子ちゃん」
「いやぁーね〜三人して惚けてるからさっ、何してんのかなぁ〜って」
 そういえば陽子ちゃんも何か知ってるっぽいんだよな。
「いやね、なんで彼方さん達が我が家に突入してきたのか三人で考えてたんだ」
「それでそれで?」
「きっと楓義兄さんが裏で何かしたんだろうなって」
「へぇ〜」
 陽子ちゃんは何やら値踏みするような目で僕を見た後楽しげな顔をする。
「な、なに?」
「…やっぱり面白い人だなぁと思ってね〜」
「なにそれ?」
 歌澄ちゃんも彼方さんも首を捻っている。大体面白いってなんだよ。
「奏君が考えた通り暗躍してたのは楓さんだよっ」
 やっぱりか…
「…それにしたって事がうまく運び過ぎじゃないか?』
 彼方さんの問いに陽子ちゃんはなぜか自慢げに答えた。
「ふふ〜ん♪何たって、楓先輩ですからねっ!」
「なんで陽子ちゃんが義兄さんの自慢すんのさ」
「当然だよ!楓先輩は我が文化部の偉大なる歴代の部長なんだからねっ!ちなみに先輩の情報網は尋常じゃ無いから私が歌澄の友達っていうのも把握済みだよっ」
 …楓義兄さん、あんた何者だよ。





 時刻は9時。なんだかんだで真相(?)も分かり、楓義兄さんの謎が深まった頃。僕は風呂に入っていた。
「ふぅ〜、和む〜」
 それにしても今日は色々と楽しかったな。歌澄ちゃんも可愛いかったし…。
「……歌澄ちゃん、か。やっぱ一目惚れ…なのかなぁ…?」
 呟いた瞬間浴室の戸が勢い良く開いた。
「なんだとお前!」
「ぅわぁっ!…っと脅かさないでよ、要義兄さん」
 そこにいたのは全裸の要義兄さんだった。
「お前、まさかお嬢様に惚れたのか?」
 物凄い形相で睨まれる僕。相変わらず目付き悪いなぁ。しかしまぁ…
「…臭い、義兄さん酷く臭い。取りあえず、玉葱塗れの身体とか顔とか頭とかと、サンリオ大好き脳味噌をきれいに洗い流したら?」
「む、確かにそうだな…って誰がサンリオ大好き脳味噌だっ!」
 見事なノリツッコミをしてから僕に言われた通り身体を洗い始めた要義兄さん。
「災難だったね」
「うるさい、黙れ。それよりお前、お嬢様に惚れたのか?」
 うぅ、相変わらず嫌われてんな、僕。
「…さぁ、どうなんだろう?」
「ふんっ。そんなことはどうでもいい。お前、」
「要義兄さん、いい加減僕の事名前で読んでくれてもいんじゃない?」
「お嬢様に近付くな」
 僕の願いを無視した挙句それですか…。
「嫌ですよ」
「なんだと?」
「当たり前だよ。まず、今日から少なくとも三日は歌澄ちゃんにアシスタントとして泊まり掛けでやって貰う事になってるし、歌澄ちゃん自身とても楽しくやっている様に見える。例え楽しくやっていないとしても、少なくとも嫌がってはいないよ。大体、歌澄ちゃんに何をするわけじゃないんだし、何をしたわけじゃない」
「減らず口をっ!」
「要は僕が嫌いだからでしょ?」
「……ふん、言ってろ」
 要義兄さんはそれだけ言うと洗い終わったのか立ち上がって浴室の戸に手を掛けた。
「あれ?入らないの?」
「なんで野郎となんざ入らないといけないんだよ糞が、一緒に入るならお嬢様とだろうが」
「…………ぷっ、変態ロリ乙女男」
「………あっ、だっ黙れ!糞っ!」
 自爆男・明刀要は顔を真っ赤にして悪態をつきながら荒々しく浴室を出て行った。

 浴室に流れる沈黙。
「………はぁ〜、まったく厄介だよなぁ、仲の良い義兄弟になりたいよ、いい加減に」



 風呂から上がると歌澄ちゃんと陽子ちゃんが入浴の準備をしていた。
「歌澄ちゃん、風呂いいよ。ところでなんでまた陽子ちゃんも風呂入る準備を?」
「駄目かなっ?」
「いや、駄目じゃないけど」
「サンキュ〜♪そんじゃお風呂にゴー!」
「…え?ひゃぁっ」
 陽子ちゃんは嬉しそうに歌澄ちゃんを小脇に抱えて風呂場に消えて行った。


 風呂場から陽子ちゃんの楽しそうな声と歌澄ちゃんの恥ずかしそうな切ない悲鳴が聞こえてくる。
 ……何やってんだろなぁ…。
「座留、今風呂に行きたいか?」
「いきなりなんですか、彼方さん」
「風呂が楽しそうだなって思わないか?」
「まぁ、とても楽しそうには聞こえますね」
「だろ?ちなみに、乙女な執事はそこでお嬢様の切なそうな悲鳴を聞いて悶えてるよ」
 見ると要義兄さんは床に突っ伏して拳で叩いて悶えてた。
「…っく、どうするっ!どうするっ、俺っ!」
「邪魔よ」
「あぐぅっ!」
「「……………」」
 姉さんに蹴られた要義兄さん。僕と彼方さんにはそんな彼に話し掛ける言葉は何もなかった。
「彼方さんは、あの花園と化した風呂に入らないんですか?」
「入らないよ。これから愛しのお嬢様のあられもない姿をこれに収めるのさっ。行って来るぜ!」
 ハンディカムを手に颯爽と風呂場へと向かう彼方さん。
 きっと誰もが思うだろう。彼方さん、『それは犯罪だよ』と…。



 しばらくすると風呂場にいた三人が三者三様の表情で戻って来た。
「……お風呂ありがとう」
 歌澄ちゃんは姉さんのパジャマを借りてるけど物凄くブカブカ。でもその姿がまた可愛らしい。
 それにしても、なんだか憔悴してるよ…。
「大丈夫?」
「…うん」
「あははっ♪歌澄はかっわいかったよ〜」
「…あぅ…」
 陽子ちゃんは元気過ぎるだろ?相変わらず楽しそうだな。着替えてないし。
 泊まってくって言わなくて良かった。
「にゃっはは♪」
 まぁこの二人がこうなってるのは分かるんだけど…。
「…はぁ〜、眼福♪眼福〜♪いいもん撮れたぁ〜。うふふふ」
 彼方さん壊れてるよ…ほっとこう。
「取りあえず僕はもう部屋で作業しに行くよ」
「…あ、じゃあもう少ししたら部屋の方に行きます」
「了解」





 コンコン
「どうぞ」
 歌澄ちゃんがやってきた。
「…すいません、ちょっと遅くなっちゃった」
「大丈夫だよ、別に」
「…よかった。陽子ちゃんと彼方ちゃんと要ちゃんはさっき帰ったよ」
「そっか〜、賑やかだったね」
「…そうだね」
「じゃあ始めよっか」
「…うん」



 僕と歌澄ちゃんが作業を再開してしばらく。
 部屋に響くのはペンを走らせる音と下の階から聞こえてくる酔っ払い達の笑い声。
「ねぇ、歌澄ちゃん」
「……………」
 返事が無い、ただの屍の様だ…じゃなくて、何考えてるんだ僕は。
「歌澄ちゃん?」
 歌澄ちゃんの方を見ると安らかな眠りについていた。この上無く幸せそうな無垢な寝顔には理性が崩壊するんじゃないかと思う程の破壊力があった。
 落ち着けっ!僕!
 僕は気を取り直して歌澄ちゃんに布団をかけた。
「あまり徹夜は馴れて無いんだろうな」
 よし、ジャンジャンやるとするか。





 ドシンッという何が落ちる音が部屋に響いた。
「………ぅ…あれ?私寝て…た…?」
 私が気が付くと布団がかけられていた。ぼんやりとした頭で多分奏さんがやってくれたんだろうと思った。そう思うとなんだかとても嬉しかった。
 周囲を見渡してみると奏さんが椅子から落ちて寝ていた。
「…奏さん起き……」
 私は奏さんがとても気持ち良さそうに寝ていたからおこすのを途中で止めた。その寝顔を見ると私の顔に笑みが零れて来るのがわかった。
 すごく可愛い寝顔だなぁ……添い寝したらあの笑顔みたいで暖かいのかな?
 寝起きでいい感じの頭になってた私は添い寝なんかしたらどうなるのか何も考えず、毛布を手に取り奏さんに抱き付く様に添い寝した。





 鳥達の囀りが聞こえる。
 ……寝ちゃったのか。
 ぼんやりとした頭でヤバいなと思っていると伸ばしていた腕に何やら違和感があった。
 …なんか重い。それになんだか服がテーブル側に引っ張られる気が…。
 そう思い隣りを見る。あったのは歌澄ちゃんの顔。
 ……なんで歌澄ちゃんね顔がこんな近くに?
 よく見ると歌澄ちゃんが頭を僕の腕に乗せ、服をギュッと掴み円くなって添い寝していた。
 眠気が一気に覚める。
「――――っ!」
 あまりの出来事に声にならない叫びを上げる僕。
 頭が腕に乗ってるから動けない。
 すると歌澄ちゃんが目を覚ました。
「……んんっ………あっ……」
「…あ"…」
 目が合う僕と歌澄ちゃん。すると歌澄ちゃんは顔を真っ赤にして俯く。
 ちょっと歌澄ちゃん!?可愛いよ?君のその姿はすごく可愛いよ?でもなんで動いてくれないのさ?!
 柄にもなく頭の中はパニックを起こしていた。
 そんな僕に追い討ちをかける様に天使の顔をした閻魔様がやって来た。
 コンコン。
「二人共、起きて〜。朝食出来たからさ」
 なんてタイミングで来るのさっ楓義兄さんっ!
「はいるよ?」

 僕の腕から退かない歌澄ちゃんと今まさに入ってこんとする楓義兄さん。


 どうするよっ、僕?


酷い文章を読んでいただきありがとうございます。評価や感想などをお待ちしてます。











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