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僕と彼女のなんとかかんとか
作:雨永祭



4.僕と彼女のお手伝い(お仕事編)


 帰り道。
 僕は陽子ちゃんに気になっていた事を失礼極まりないだろうと思いつつも聞いてみた。
「陽子ちゃん」
「んにゃ?何かなっ?」
「すごく失礼極まりない質問なんだろうと思うけど…一体謙治の何処が良かったの?」
 陽子ちゃんは少し驚いていた。
「ありゃりゃ、知ってたんだ。いやぁー何処がいいかってかいっ?そこばっかりは教えらんないなっ!」
「そっか、まぁ無理に知ろうとも思わないけどね。でも、謙治はシスコン…いや、シスコンの域を逸脱して来ている変態野郎だよ?」
「それでもいいのさっ!フラれたって私の気持ちは変わんないのさ!」
 滅茶苦茶良い娘じゃないか。明日謙治を殴ってやらないといけないな。
 可愛い娘二人に囲まれての帰り道はやはりいいものだと思う。





「じゃーにぃ〜」
「それじゃ、また明日」
「…ばいばい」
 陽子ちゃんの家の前。
 陽子ちゃんの家は岸和田本屋だったのか…知らなかった。
「じゃあ歌澄ちゃん僕の仕事場に行こうか」
「…うん」



「………」
「………」
「………」
「………」
 黙って歩き続ける僕達。
 うーん、なんとかこの状況を打破したいな…。
「…えーと、歌澄ちゃんに聞きたいことがあるんだけど…いいかな?」
「…なんでしょう?」
「歌澄ちゃんの趣味って何なの?」
「…機械弄りとプラモデル作りと漫画にアニメにゲーム」
「へぇ〜結構良い趣味してるね。ロボットが大好きなんだね」
「…うん」
と頷く歌澄ちゃんは何と無く嬉しそうに見えた。
「…私は勇者シリーズとガンダムが大好きです…最近のロボットアニメには勇者の熱さが足りてません」
「確かにね。僕は最近のロボットアニメはCGに頼り過ぎだとおもうんだよね」
「…確かにそうですね。私、何となくそれが許せないんです。まぁそれでも見るんだけれど…」
 こんな感じにロボットアニメについて語り合いながらの帰り道。
 …普通女の子とする話じゃないな。



「ただいま〜」
「…お邪魔します」
 そんなこんなで僕の家に着いた。
「奏、おかえ…」
 と途中で言うの止めた義兄さん。すると、突然悍ましいオーラ発し始めた。
「に、義兄さん?どうした?」
「…その女の子を家に連れ込んで何をするのかな…?」
 おっ怒ってらっしゃる…なんで?言ってることもよく理解が…。
「に、義兄さん。この子は…いっ!?」
 ユラユラと揺れながらこちらに向かってくる聞く耳持たずの義兄さん。
「…その娘連れ込んで何をするのかな〜?」
 見ると歌澄ちゃんは義兄さんに対する恐怖から玄関に蹲って震えている。
「義兄さん!彼女は僕の原稿を手伝ってくれるんだっ!」
 僕はこれはまずい!と思い、一気に捲し立てると我に返ったのか発散していたオーラが消えていった。
「なんだ、早く言ってくれないと。危うく奏を血祭りに上げちゃうところだったよ。あははは」
 あ、危なかった〜。
 歌澄ちゃんはまだ震えてる。なんか小動物みたいだな。…と、いけないいけない安全になったことを教えないと。
「歌澄ちゃん、もう大丈夫だよ」
「……………」
 潤んだ瞳で僕を見上げる姿にいわれの無い罪悪感が込み上げて来る。
「もう大丈夫だから、ねっ?」
「いや〜怖がらせてごめんね」
「…もう大丈夫…です」
 なんとかといった感じで答えている歌澄ちゃん。本当に悪い事しちゃったな。
「えーと歌澄ちゃん紹介するよ。こっちが楓義兄さん。義兄さん、こちら日永歌澄ちゃん」
「よろしく、日永さん」
「…よ、よろしくお願いします…」
 あーあ、すっかり義兄さんに怯え切ってるよ…。
「…日永?どっかで聞いたような…」
 義兄さん、急に黙るんじゃない歌澄ちゃんが怯えてる。
「歌澄ちゃん取りあえず上がって」
「…う、うん」
「義兄さん、」
「うん?なんだい?」
「僕達部屋で原稿描いてるから」
「わかったよ」
「後、姉さんが帰って来ても部屋に入って来ない様にしてくれよ」
「はいはい。じゃあ原稿頑張ってね。歌澄ちゃんもね」
「…ありがとうございます」
 まだ怖がる歌澄ちゃんを促して部屋に向かった。


「日永…日永……あぁ要が執事やってるって家か…」





「ようこそ、僕の仕事場へ」
 奏さんの部屋はすごかった。まず、目を奪うのは部屋の壁を全面を覆う本棚。本棚にはジャンルを問わず、漫画を含めた様々な本が敷き詰められている。机の上には山積みの資料、パソコン、漫画を描く為の画材なんかが置かれていた。そんな部屋に明らかに異様な空気を出している物があった。
 それは薄汚れた布に包まれた棒の様な物体。
「…奏さん、あれは?」
 その物体を指差すと
「えーと…ごめんね。ちょっと教えられないんだ」
と言葉を濁した。
 かなり言い難いことらしい。
「それで、具体的にやって貰うことだけど、ベタ塗りと消しゴムをかけるのをやってくれないかな?」
「…分かりました」
 失敗しない様に頑張らないと…やっぱりその前に家に電話しないといけないな。
「…あの、」
「どうしたの?」
「電話借りてもいい?」
「どうぞ、机の横にあるから」


「…もしもし」
『はい、日永です』
 若魚さんが出た。
「…若魚さん、私です、歌澄です」
『お嬢様、どうしました?』
「…えと…今日は友達の家に泊まりますので家のことよろしくお願いします」
『お友達…陽子ちゃんですか?』
「…えーと、うん、陽子ちゃんの家」
 …あれ?私、若魚さんに嘘ついちゃった…
『分かりました、それでは夜になったら着替えを…』「…あっ、着替えは持って来なくて大丈夫だからっ」
『?そうですか』
 ちょっと変に思ってるかな…?
「…じゃあ、彼方さんと要さんによろしく言っておいて下さい」
『分かりました、では楽しんで来て下さいね』
「…う、うん」
 電話の後に残ったのは罪悪感。でも、やっぱり奏さんの家に泊まるなんて言えない…。
「…電話ありがとうございました」
「うん、じゃあ始めようか」
「…うん」





「…………」
「…………」
 沈黙の中聞こえてくるのは紙にペンを走らせる音ばかり。
 僕は筆があまり早い方じゃないから一人でやるよりは少しペースが上がっている程度だけど、順調と言えば順調と言える。
 原稿を描き始めて一、二時間たった頃扉をノックが沈黙を破った。
「義兄さん、どした〜」
「一息つかないかい?」
「いいね、そうしようか。いいよね、歌澄ちゃん」
「…うん」





「…………」
「…………」「むぐむぐむぐ…」
 和やかであるべき休息の時間。しかし、その時間は修羅場というか戦場というかむしろヘ〇・アンド・へ〇ンを食らったゾン〇ーの残骸と言った方がいいのか…という惨状となっている。
「むぐむぐむぐ…」
「奏、この子は一体なんなんだい?」
「…えーと…」
 あまりの事に戦慄している義兄さんの質問に僕は答えに窮するしかない。目の前には芋羊羹を食べ続ける歌澄ちゃんと山積みの芋羊羹の空き箱が広がっていた。
 なぜこんなことになったのか…それは25分くらい前に溯る。


〜回想開始〜

 一息入れる為にリビングに向かった僕達。リビングに入るとテーブルの上には湯呑みが三つと山盛りの芋羊羹。
「…義兄さん、あの山は一体何?」
「ほら、昨日お爺さんの家に行ってたでしょ?帰り際に『土産だ、日由と奏によろしく言っておいてくれ』って大量の芋羊羹渡されちゃってね。悪くなる前に食べないといけないからさ」
「そ、そうなんだ…で、どれ位貰ったの?」
「大きめの段ボール八箱」
「え゛………」
 何、考えてるんだ、あの、糞ジジイィィッ!!!
「まぁ、早く食べちゃおう」
「…はぁ、そだね。歌澄ちゃん羊羹とか大丈夫?」
「…うん、大丈夫」

 そんな感じで食べ始めた。


「むぐむぐむぐむぐ…」
 次々と歌澄ちゃんの口に消えていく芋羊羹。 そしてあっと言う間にテーブル上の芋羊羹の山は消えた。
「………歌澄ちゃん、よく食べる娘なんだね…」
「……うん」
「…あのすいません、まだ有りますか?」
 …マジですか、歌澄さん…。思わずさん付してしまった…。
「…う、うん。まだ、有るよ。ちょっと待ってて」
 そう言って芋羊羹を保管している場所に行った義兄さんはすぐに戻って来た。段ボールを抱えて。
「どうぞ」
と義兄さんが歌澄ちゃんが座っている横に段ボールを置くと
「…ありがとうございます」
と歌澄ちゃんは嬉しいそうにしていた。
 あ、歌澄ちゃん可愛いなぁ…。
 ズズズッとお茶を飲みながらそんなことを思ってる内に義兄さんは僕の隣りに座り、歌澄ちゃんは羊羹を両手で持ってリスみたいに食べ始めた。

 五分後ーー
「むぐむぐむぐむぐむぐむぐ…」
「むぐむぐ…ズズズッ」
「むぐむぐ…ズズズッ」 食べ続ける歌澄ちゃんと普通にお茶を飲みながら食べる僕と義兄さん。

 さらに五分後ーー
「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ…」
「むぐ…ズズズッ、はぁ〜。ご馳走さま」
「……………」
 ひたすら芋羊羹を食べ続ける歌澄ちゃんと食べ終わった僕、そして既に食べ終えて何とも言えない表情で消えていく芋羊羹を見つめる義兄さん。

またさらに五分後ーー
 今に至る。

〜回想終了〜


「答えてくれ、奏、あの娘はなんなんだい?」
 段々と詰問口調になって来ている義兄さん。珍しく動揺しているのか?…いや、違うか、恐らく食費が心配なんだろうな…ちゃんと言わないと。
「えーとね、義兄さん。歌澄ちゃんの今日の昼食はかなり大きめの五段の重箱一杯のおにぎりだったよ。それと、今日から泊まり掛けで原稿を手伝って貰うから歌澄ちゃんの分の食事を用意しないといけないんだ」
 僕の言葉を聞き、目を見開く義兄さん。
「…それ、ほんと?」
「うん」
 ガックリと肩を落としてうなだれ全身が震え出す義兄さん。丁度その時歌澄ちゃんが芋羊羹を食べ終えたところだった。
「…ご馳走さまでした」
 何となくまだ食べたそうな目をしている気がする。気を遣ってくれたんだろうか?遅い気がする…。
「ねぇ、歌澄ちゃん」
 すると突然義兄さんが歌澄ちゃんに話掛けた。
「…はい、なんでしょう?」
「歌澄ちゃんの家に明刀要ってパッと見ヤクザの乙女野郎な執事はいるかい?」
 明刀要ってあの乙女義兄さんか?!
「…はい、いますけど…知ってるんですか?」
「くっくはははは」
「…ひっ」
「にっ義兄さん?」
 突然笑い出した義兄さんに怯える僕と歌澄ちゃん。
「おっと、ごめんね。要は、ぼくの弟なんだよ」
 それを聞いて驚く歌澄ちゃん。
「…そうなんですか…奏さんのお兄さんだったんですか…あれ?でも苗字が違う…」
 義兄さんは何やら考え込んでいるから、歌澄ちゃんの疑問に僕が答えた。
「あぁ、義兄さんは座留家に婿入りしたんだ」
「…そうなんだ…世の中って意外と狭いんだね」
「うん、そうだね」
 世の中の狭さに二人で感慨に耽っていると今まで考え込んでいた義兄さんが歌澄ちゃんに顔を向けた。
「ねぇ歌澄ちゃん、家にはもう電話した?」
「…はい、しました」
「それじゃあ、この家に泊まるって連絡したんだね?」
 急に歌澄ちゃんに質問を浴びせ掛けはじめる義兄さん。その表情は何かを企んでいる様に見える。
「…えーと…は、はいそうです」
 なぜか歯切れが悪くなる歌澄ちゃん。
「…そう、歌澄ちゃんの家ってあの丘の上の屋敷だよね?」
「…はい」
「ありがとうね、じゃあ原稿頑張ってね二人共。ぼくは片付けたら買い物に行って来るからね」
 そう言って義兄さん台所に消えて入った。
 …なんだったんだ?
「…なんだったんでしょう?」
「…さぁ?まぁ取りあえず再開しようか」
「…うん」
 取りあえず良い予感はしないなぁ…。


 沈黙の中ひたすら作業し続ける僕と歌澄ちゃん。お互い一言も喋らないけれどそんなに悪い感じはせずに、むしろ良い雰囲気が漂っている気がする。それに歌澄ちゃんはとても楽しそうにしている様にも見えるし。 バーンッ!!!
「ヤッフォ〜ッ!かっなでくぅーん!愛しの水波音ちゃんがやってまいましたよ〜♪お仕事ははかどってるかな〜?!にゃははは♪」
 突然やって来て、僕と歌澄ちゃんのナイスな雰囲気をぶち壊したテンション超爆ショタ女。
 おのれ…。
「今は水波音ちゃんが居ない方がはかどるので今直ぐ帰れ」
「アレ?その娘は誰?誰なのっ奏君っ!?私と言う者が有りながらっ…この浮気者っ!」
 いきなり来たと思ったらなんて事を言うんだこの人は…。歌澄ちゃん物凄く困惑してるじゃないか。
「浮気者って何なんですか、水波音ちゃんは只の僕の担当じゃないですか。それと、この娘は期間限定で僕のアシスタントをしてくれる事になった日永歌澄ちゃんです。分かったらさっさと出てって下さい」
 水波音ちゃんの襟首を掴んで部屋から締め出した。
「あぁんっ!奏君のいけずぅ〜」
 ったくこの人は…。
「あぁもうっ!どうせ今日も家に夕飯たかりにきたんでしょ?」
「…てへ♪」
「『てへ♪』じゃないですよ。だったらリビングで大人しくしてて下さい。早く原稿でかして欲しいんでしょ?」
「…はぁ〜い」
 ションボリといった感じの声を上げてリビングに向かったらしい水波音ちゃん。
 「はぁ〜い」
って子供かあんたは。
「はぁ〜。ったくあの人は…」
 ほんと呆れるしかないよな。
「…あのさっきの人は?」
 やっとといった感じで歌澄ちゃんが質問してきた。
「あぁ、あの人は僕の担当さんで、姉さんと義兄さんの親友の小羽都水波音ちゃん」
「…そうなんだ。…愉快な人だね…」
「…まぁそうだね…続きやろっか」
「…うん」





「うーんっ、歌澄ちゃん」
「…はい?」
「そろそろ夕飯の時間だからさ、一旦終わろっか」
「…うん」


「あぁ二人共、もうすぐ出来るから水波音ちゃん起こしておいてくれる?」
 リビングに降りて来ると義兄さんが忙しそうにテーブルに料理を上げていた。
 なんか今日は豪勢で量が多いなぁ…
「うん、了解。今日は姉さん遅いね」
「なんか会社で何かごたごたがあったらしくて少し帰りが遅れるってさ。そろそろ帰って来るんじゃないかな?…で、歌澄ちゃん、つまみ食いしちゃ駄目だよ」
 いつの間にか食卓に着いて出来ての料理に手を伸ばしていた歌澄ちゃん。
「…あっ、すいません。つい…」
 恥ずかしそうに俯く歌澄ちゃんは抱き締めたくなる様な姿だった。
「…あはは…じゃあ水波音ちゃん起こして来るよ」
 水波音ちゃんはソファで
「くーくー」
と幸せそうに涎を垂らして寝ていた。
「まったくこの人は…」
 水波音ちゃんを起こそうとした時、凄まじい音と共に窓を突き破って何かがリビングに突入してきた。
「お嬢様っ!助けに来たぜっ!」
「お嬢様っ!御無事ですかっ!?」
 やって来たのはメイドと執事。よく見ると執事は要義兄さんだった。
「…人ん家の硝子窓突き破って入って来るのはどういう了見なのかな?糞乙女野郎」
「あ、ああぁあ兄貴っ!」
「おい、どうした?乙女執事」
 凄まじい負のオーラを放つ義兄さんと後退りをする義兄さん。そして、野性味溢れているメイドさん。水波音ちゃんはいまだ幸せそうな顔で寝ており、歌澄ちゃんは固まっている。
 …何んだこの状況?


ヘル・ア〇ド・へヴンで殺られたゾンダ〇は残骸になってたっけか?(笑
次回、乙女執事は苛められます。











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