21.僕と彼女のレクリエーション《各クラスの現状と色々:後編》
case6.Fチームの場合〜無気力少年、ヤル気を出して空回る〜
やほ〜、言語科の無気力エース・日比谷暁喬だよ。ハハッ、何だってオレがリーダーなのかね〜?
ま、普段全くヤル気の無い俺だけどよ、流石に『海外旅行に匹敵する賞品』は気になるじゃん。だからヤル気満々なんだけど……
「なぁ、美園ちゃん何か手伝う事無いか?」
委員長の倉武美園ちゃんはそう聞いたオレを何か冷めた目で見て、
「無いけど?」
あれ? 何でこんな冷たいんだ?
「そ、そっかぁ、残念」
よし、諦めて今度はあっちの佐東に……
「なぁ、なんか仕事ないか?」
「ねぇよ」
……なんだかにべもない。
あっれ〜? やっぱりなんか冷たい……。うーん、取りあえず、
「ねぇ、慧子ちゃ」
「無いよ?」
うーん、素敵な笑顔でサラリと……ってかまだ全部言って無いんだけど……。
「そ、そっかぁ、ありがと」
何故だ? 見てるとオレに手伝える事がかなりある様に見えるだけどな。 ……うーん分らん。オレってそんなに嫌われてたっけ? いやいや、しょっちゅうサボってヤル気の無いオレだけどコミュニケーションだけは自信あるんだけどなぁ……。
ん? ガラリと戸が開き、我が悪友・三嶋京滋が工具やら材料やらが入った袋を持って立っていた。
「お疲れさん〜♪ 頼まれたモンと差し入れ買って来たぜ」
? 差し入れってアイツ何にも……。
すると京滋の後ろから同じく悪友の貴水楽賢が段ボールを二箱持って立っていた。
二人はオレの側まで来て荷物を下ろし、ラクタが差し入れのジュースを配っていく。
あ、そうだ。
「なぁ、京滋」
京滋に尋ねてみる。
「んー、どうしたんよ?」
「なんで誰もオレに仕事くれないんだ? リーダーで女装までするのに……」
そう言うと京滋は心底呆れた顔で、
「昨日お前がやった事を思い出せ、スーパーぶきっちょ男」
…………あ。
昨日、オレは皆の仕事を手伝った。手伝って、資材を壊し、武器を壊し、罠を壊し、工具を壊した。
そりゃ手伝わせて貰えないよな……ってか忘れてんなよオレ。
そして、ジュースを配り終えたラクタが、
「自業自得」
一言でオレを斬って捨てた。
……泣きたい。
case7.Gチームの場合〜人は見掛けによらぬもの。ネガティブなヒロイン願望者の杞憂〜
み、皆さんこんにちは。甘太いのり(あまたいのり)って言います。
気分は鬱です。
どうしてワタシがリーダーでメイド服を着なければいけないのでしょうか? 大体ワタシなんかがリーダーをしたら開始五秒で負けてしまいますよ。他のクラスの皆さんがこぞってワタシに襲いかかって来るに決まってます。
そして、ポイントが無くなっても攻撃し続けるに違いありません。
そんなワタシを助けてくれる人はいるのでしょうか? いや、いないに違いありません。 ……あぁ、反語表現なんて使ってしまった。ごめんなさい、怒らないで下さい。でも、でも、もしワタシを助けてくれる人がいるならそれはきっと逞しく凛々しい人に違いありません。きっと白馬に乗ってワタシをお姫様抱っこなんてしてくれるのです。でもこんなのは有り得ません。
はぁ……明後日なんて来なければい……
「いのりさん」
「はい、なんでしょうか?」
「補給地点のバリケードについてなんだけどさ、こんな感じでいいかな?」
そう言ってバリケードの設計図をワタシに渡したのは阿部沙莉さん。
設計図には穴の開いた板が描かれていました。
「こういうのに使うバリケードってどんなのにすればいいのか良く分からなくて」
「これで問題無いと思いますよ。そうだ、上手い事跳弾を相手に返せる様に出来ませんか?」
沙莉さんはなるほどと呟いて、
「それは面白いかも! 流石いのりさんね!」
とワタシなんかを褒めて行ってしまいした。
…………どうしよう? ワタシがあんな提案をしたせいでサバイバル大会に間に合わなかったり、何か勝負中にそれのせいで問題なんて起こったら……。
あぁ、王子様どうかワタシを殺して下さい……。明後日を永遠に亡き者にして下さい。
case8.Hチームの場合〜貧乏苦学生の困惑〜
……えーと、これはどういう事なんだろう?
私の目の前ではHチームの皆が物凄い勢いで働いている。それはもう私の入る余地が無いくらいに猛烈な勢いで。
うーん、幾ら考えても分かんないや。
あ、自己紹介してなかった。
私、前園湖松って言います。年齢は16歳で身長は158くらい。体重とかスリーサイズは……えと、秘密、ということでお願いします。
私の肉親は兄しかいないんですけどその兄が困った人なんですよ。
その理由は――
タァーーーンッ!!
「まつぅっ!!」
戸が盛大に開いて、そこには長身の男の人――お兄ちゃんの前園利家。
「お兄ちゃんっ!」
お兄ちゃんは泣きそうな顔で私に駆け寄って来た。
「まつぅっ! 大変だ!」
「大変だじゃないよ! あれだけ私の所には来ないようにって言ったのに!」
「だ、だって……」
お兄ちゃんは困った様に言い淀んで私を見てくる。その姿が余りにも情けなくて思わず私は叫んだ。
「だってじゃないの!」
お兄ちゃんの格好は寝癖は直して無いし、ヨレヨレのジャージ姿でサンダルを履いてるという有様。
「大体その格好は何? いつもあれほどちゃんとした格好で来る様に言ってるでしょ?」
そこまで言って、
「コマちゃん、ちょっと落ち着きなよ」
私の幼馴染みでよき理解者の佐々木音祢ちゃんに止められた。
「だって音祢ちゃん、お兄ちゃんが……」
そんな私に音祢ちゃんは苦笑いして私を諭すように言った。
「それは分かるけど、クラスの皆が置いてきぼりくらってるから」
「えっ……」
言われて見るとクラスのほとんどが呆気に取られてる。
…………。
「音祢ちゃん、ありがとー。助かったよ〜」
「いやいや、別に私は犬千代さんを助けた訳では……」
そんなお兄ちゃんと音祢ちゃんの会話。
なんか……どっと疲れた様な気がする。取りあえず説教は家に帰ってからにしよう。うん。
溜め息を一つ吐き、私はお兄ちゃんに尋ねた。
「それで、お兄ちゃんは一体何しに来たの?」
「大変なことが起こったんだ」
物凄い深刻そうな表情に思わず息を飲む。周りもつられて息を飲む。
「た、大変なことって?」
「吉英兄さんから連絡が来た」
「う……そ……」
信じられなかった。
どうして?
その疑問が思考をどんどん埋めていく。
そして、思い出す。
家族五人、幸せに暮らしていたあの頃。
「とにかく来て!」
驚きに硬直する私の手を掴んでお兄ちゃんは走り出す。
連れて来られたのは職員室にあるお兄ちゃんの席。
お兄ちゃんは机の上のパソコンを操ってメールの受信ボックスを開くとそこには、
『明後日、帰る。
P.S鏡に《甲糸》を準備するように言っといてくれ』
……どういう事?
疑問ばかりが湧いて出る。
どうして今まで連絡が無かったの?
鏡って?
甲糸って?
なんだか、家族が戻って来るっていうのに不安で溜まらない。
この不安は何なんだろう?
case9.Iチームの場合〜女男は独り寂しく〜
つまんない。
ほんと、つまんない。
どうも、守戸千央です。
もうこのつまんなさ、どうしたらいいんだろうね?
このチームはなんていうかつまんない。他のチーム同様に作戦会議に武装やトラップの準備に大わらわ。そして、リーダーは――
「守戸くん! 君には相芽くんと共に他クラスの偵察をするように言ったじゃないか! ちゃんとしたまえ!」
仕切り屋のクソブチメガネ。まったくもってつまんない。
ってか僕に指図するなっ、バーカバーカ!
……はぁ、虚しい。
あーあ、なんでノリと違うチームなんだよぉ……。
そんな鬱屈とした気分で追い出される様に教室を出ると凛々しい顔の相芽くんが腕を組んで壁に寄り掛かって立ってた。
「遅いぞ、千央」
うーん、相変わらずニヒルな感じだなぁ。
「ごめんごめん、じゃあ行こっか」
「ああ」
偵察に来たのはBチーム、つまりはノリがいるチーム。
『ストレートのロングヘアーのカツラと巫女服。あと、鍬を用意しろ!』
聞こえてくるノリの美声。でも姿は見れない。 僕らがいるのは教室の前で、目の前にいるのは多賀太郎と佐々木慶太。
「太郎邪魔だから今すぐ消えて無くなれ」
「随分だなおい!」
太郎が怒るけどそんなの知ったこっちゃない。
僕は太郎の襟首を掴んで全力で揺する。
「うるさいうるさい! なんでお前がノリと一緒のチームなんだよぉっ!!」
「うおっ、馬鹿っ、やべっ!!」
「「あ」」
ゴチッという鈍い音とあ、という佐々木と相芽くん。それから白目向いて気絶した太郎。
やった!
「ノリ、今行くよ!」
僕は意気揚々と一歩踏み出し――
「ふぎゅっ」
相芽くんに襟首を引っ張られて変な声が出た。
い、息が……。
相芽くんは何の感慨も無く僕の襟首を引っ張り続ける。
「ちょ……相……芽、くん……ぐるじ……」
僕のお願いをまったく意に介さずに相芽くんはフッとニヒルに笑った。
「ウチのマスコットがすまなかったな、慶太」
「お? あ、いや、別にいいけど……」
と、佐々木は突然の詫びに戸惑いながら頷いた。
ってか僕はマスコットじゃなくてアイドルだ!
「ところで、お前達のリーダーの座留に伝言頼めるか?」
「伝言?」
「ダメか?」
「いや、いいけどよ」
ちょっと! 何勝手に話進めて――〜〜〜〜っ!?
思わず暴れたらぎゅっと更に襟首を引っ張られてますます息が苦しくなる。そんな僕を尻目にして相芽くんは佐々木に伝言を伝える。
「『WJ』が出回っているという噂があるから注意すること、例のぶつが用意出来たこと。この二つを伝えてくれ」
「あ、あぁ」
じゃあなって言って僕を引きずって歩き出す……ってぇ!
「相芽くんっ! ちょっ、何してんの?!」
「帰るんだが、どうかしたか?」
「どうしたもこうしたも偵察するんでしょ?!」
「長谷川に会いたいだけだろう? 我慢しろ」
僕の主張を完膚なきまでにバッサリ斬り捨てて相芽くんは歩き続ける。
どんどんどんどん遠ざかる1年B組。
あぁ、あぁ……っ!
「ノリ〜〜っ、ノリィ〜〜っ!!」
case10.Jチームの場合〜いじめられっ子の存在意義〜
明後日なんて来なければいいのに……。
大体、どうして俺がチームのリーダーをしないといけないんだ。何をしたって全然ダメで、やることなすこと全部笑われる様な俺が……。
今だってこうしてアイツらに仕事押しつけられて……。
「はぁ……」
とにかく押しつけた買い出しは終わったしあとは帰るだけ。
「ん?」
一瞬、視界の端に白い何かが横切った。いつもなら別に何か横切ったな、程度にしか思わないのに何故かどうしても気になった。
後ろを振り返ると白いモノが路地裏の入口に消えていった。
慌ててそこに向かうとそこには真っ白なローブに身を包み、顔をフードで隠した奴が立ってた。
その異様な姿に尻込みしながらなんとか尋ねる。
「お、お前なんだ?」
「君こそなんだい?」
予想外の切り返しに思わず、
「あ、いや、その……」
と言い淀んだ。
すると、突然白ローブは茶色い瓶を取り出して俺に差し出した。
「あなた、色々と疲れていませんか?」
「は?」
「これを一度服用するだけで疲れが取れるし、色々と良い事もありますよ」
そう言って白ローブは無理矢理茶色い瓶を手渡す。
「えっ、いや、ちょっ……え?」
目を疑った。一瞬目を離しただけなのに白ローブが跡形も無く消えていた。
なんだったんだ……?
疑問に思いながら茶色い瓶を見る。
そして――。
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