20.僕と彼女のレクリエーション《各クラスの現状と色々:前編》
case1.Bチームの場合〜ワッショイ! 今日から君は『りか』ちゃんだ!〜
あれから数日、いよいよ『大サバイバル大会』は目前となった訳だけど……。
「奏くん、今度はこの服なんか良いんじゃないかな♪」
「あ、こっちのカツラなんてどう?」
「え〜、こっちの方がいいよ〜」
……誰か助けて。
僕は今、クラスどころかサバイバル大会のチームの女子達に玩具にされてる。
ノリはそれはそれは楽しそうに僕を見てる。いや、助けてよ。
「ハハハ、奏。すっかり我がBチーム(チーム名募集中)の着せ替え人形だな。『り〇』ちゃんと呼んでやろうか?」
「なんでここでひぐ〇しが出て来るんだよ」
「いや、人形の方だったが……よし!」
「あ」
ヤバイ、墓穴掘ったかも……。
ノリは心底楽しそうに僕の周りにいた女子に指示を出した。
「ストレートのロングヘアーのカツラと巫女服。あと、鍬を用意しろ!」
あっと言う間に用意されたカツラと巫女服と鍬。
不気味な笑みを浮かべながら迫る秋元さん。
ま、マジで怖い。
「ちょっ、これ以上は……いや、やめ――」
こうして僕の強制コスプレショーはいつまでも続いた。
case2.Aチームの場合〜ドS王子は今日も行く!〜
「進捗状況は?」
「戦闘部隊は七割程の仕上がりです。武装はほぼ完了しましたが、簡易トラップの作製に手間取っていて商業科の皆さんが買い出しに行っています」
皆さん、初めまして。岡本玲夜です。このクラスの委員長をやっています。
僕の隣りで我がクラスの近況報告をしているのが副委員長であり幼馴染みであり秘書でもある恋人の橘川麻夜。
僕達は今、教室で二人きり。他の人達は訓練やら何やらで出張っています。
「ねえ、あーや」
「なんでしょうか?」
厳しそうな女性といった面持ちのあーや。そんなあーやを見ているとどうしようもなくいじめたくなります。
「超愛しているよ。だから、今ここであーやを食べてもいいかい?」
言いながら腰に手を回して顎をクイッと持ち上げる。
「!!!?」
顔をトマトより真っ赤にして心底慌てて僕の手から逃れるあーやはドガッガラガッシャッバタンドテッ!! っと机を盛大に蹴散らし転ぶ。
「な、なななっ! 何をするのよっ! 何考えてるのよっ! こ、ここは学校なのよ!? そ、そんな破廉恥なっ!」
ク、ククッ、クックックッ、超可愛い。超萌える♪
僕は内心で口角を思いっきり吊り上げて笑い、残念そうな表情をあーやに向ける。
「あーやは、僕の事、嫌いなのかい?」
「うっ……そ、そんなこと無い……けど……」
「なら――」
僕はすぐさまあーやを抱き上げてやる。あーやは軽く身体を強張らせたけど、顎を上げた途端に力を抜き潤んだ瞳を僕に向ける。
「……や、優しくして……ね?」
その圧倒的で規格外で全てを超越する艶やかで美しくて可愛らしい表情に僕の理性はミクロ単位の塵と化し、欲望の権化となる。
そして、いざ、禁断の楽園へ突き進もうとあーやの制服に手を掛け――
タァーーーンッ!!
「玲夜殿っ、敵情視察の報告に来た……で、あり、ます……」
入って来たのは僕の友人であり、生粋のミリタリーオタクである安部森三。愛称・モリゾー。
クッ、フフ、クフフッ、どうしてモリゾーは引きつった笑み浮かべてるんだろうね?
僕の腕の中にいるあーやはどうしたの? と訝しげな表情を浮かべてる。フフ、流石は僕のあーやだね。あーやは一回のめり込むとしばらくそこから抜け出せないんだ。だから、モリゾーなんて見えちゃいない。
「あーや、ちょっと待っててね」
「早く……戻って来ないと嫌だよ?」
それは目眩がするくらいの甘えた声。
「うん、すぐ戻って来るよ」
僕はそっとあーやを座らせてモリゾーに近付く。
「れ、玲夜殿っ、お、落ち着いて下され!」
僕はそれを無視して近寄る。
僕の名前は岡本玲夜。このクラスの委員長であり、モリゾーの友人であり、愛しのあーやの幼馴染みで恋人で御主人様。そして、一年の頂点に立つものだ。
「貴様は、許さん……」
「れ、玲夜ど――」
case3.Cチームの場合〜突っ走れ熱血単純王! 君ならきっとなんとか出来る!〜
オイッス! 俺の名前は朱刃炎斗。柳泉学園高等部普通科一年C組の委員長をやってんだ! 好きなモノはバスケとカレーとハンバーグ、嫌いなモノはウジウジした奴。
身長は179で体重は76、成績は下の下なんだ! よろしくな!
「ちょっとえっちゃん、明後日の方向を向いて何元気な一人言言ってんの?」
「えっ!? 何が?」
「……いや、何でもないよ」
「?」
何だったんだべ? ま、いっか! そんなことより、さっき俺に話し掛けたのは俺の親友の浅井英開。皆からはナガマサって呼ばれてる。面白い事にナガマサの彼女は緒波市乃って言って周りからはお市ってよばれてるんだぜ!
おっと今そんなことよりも――
「皆ぁ、準備の方はどうなってるっ!?」
『バッチリダゼィ!!!』
皆楽しそうに声を上げる。
くぅ〜っ! ますます楽しみになって来たぜ!!
「皆ぁっ! 優勝したいかぁ!!」
『オオォォオォォッ!!』
「豪華賞品が欲しいかぁっ!!!」
『ゥオオォォオォォッ!!』
「絶対勝つぞぉっ!!!!」
『オオォォォォオォオオォォッ!!!』
「あ、つまりえっちゃんは女装する気満々なんだね。ファイト!」
………………あ。
「わ、忘れてたぁぁあぁあぁあぁああぁぁぁぁぁぁっ!!」
case4.Dチームの場合〜我こそは第六天魔王なり!! だから、泣き虫って言うなぁ!〜
俺の名前は緒波信乃。自分の事を俺なんて言ってるがこれでもれっきとした女だ。皆からはノブナガって呼ばれてる。理由は俺が不良(?)でちまたでは『第六天魔王』なんてけったいな呼ばれ方をしてるからだ。今回、大サバイバル大会のDチーム(名前募集中)のリーダーになったんだけど……
はぁ〜、どうしたもんかなぁ……。
俺の目の前で膨れっ面をしてるのは俺の可愛い可愛い双子の妹の緒波市乃。
「なぁ、市乃」
「フンッ!」
「う…………」
市乃は俺を徹底的に無視をする。これがもう昨日からずっと続いてるんだ。本当にどうしよう?
「なぁ、のう。俺、どうしたら良い?」
「もう行かせてやったら良いじゃない」
そう言ったのは俺の親友の『のう』こと西羽戸濃姫。余りにも姫様っぽいから濃姫とか姫さまとかって呼ばれてる。まんまだから本人は不服みたいだけど。
「それはダメだ! 俺はあんなチンチクリン認めて無いんだから!」
俺の言葉にのうは呆れた溜め息を吐いて俺を見る。
「あのね、どうしてアンタは妹の事となると即断即決の超頑固になるかね……。市ちゃんが男と付き合いたいとかそんなこと言えば『ダメだ。ダメダメ絶対許さん。男は皆獣なんだ。絶対絶対ダメなんだ。今からそいつを消して来る』って。どうなんだい、それは? 信乃の気持ちも分かるけど、もうちょっと市ちゃんを信じたらどうだい?」
説教じみたのうの言葉。そんなこと、言われなくったって分かってる。分かってるんだ。でも、でも――っ!
「それでも市乃をアイツに会わせる気は無い! 意地でも会わせない!」
教室に居た連中が俺を見るけど、そんなの知ったこっちゃ無い。
「俺はどんな男であろうとそいつが男で有る限り渡す気はねぇっ!!」
ドガンッ!!
突然、机が吹き飛んだ。そこには、完全無欠にキレた笑いを浮かべた市乃がいた。
「姉さん、何をふざけた事を言ってるの? 私は、姉さんのモノじゃないっ! だから、姉さんに私の恋愛に口出す権限だってない!!」
なんだかもう、止まらない。心無い言葉が口を吐いて出た。
「うるさいうるさいっ! 市乃はお姉ちゃんの言う事だけ聞いてれば良いんだよ! そしたら、そしたら――」
俺みたいな事にはならないんだ!!
「うるさいっ!!」
市乃は叫び、俺を睨み付けて――
「姉さんなんか大ッッッッッッッ嫌いっ!!」
そんな捨て台詞を残して市乃は出て行った。
ハハ、ハハハ、大ッ嫌い……か。
自分が言った事を思い出す。かなり酷い事を言ったと今更ながら思う。
「信乃」
のうの声。どこか咎める様な声で私の心に突き刺さる。
「言い過ぎだよ。あんな事言われたら誰だって怒る」
そんなの、分かってるさ。十分過ぎる位に分かってる。
視界がだんだんぼやけて来た。
さっきの市乃とのやり取りが頭の中をグチャグチャにしてだんだん訳が分からなくなって。
唯一つ、大嫌いという言葉だけが確かなモノとしてそこにあった。
「信乃も分かってるんでしょう? だったら今すぐ――」
「……ひっく、えぐ、あっ、うぅ、わぁぁあぁあぁあぁああぁぁぁぁぁぁっ!!」
私は恥も外聞なく泣いた。もう、大サバイバル大会なんて空の彼方だ。
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