19.僕と彼女のレクリエーション《序章の終わりは勇者の王のマイソロジー》
なんというか文学部部長・峯河幡明凜栖先輩はなんてタイミングで訪れてくれるんだと思う。よりにもよって女装してる時に来なくても……。
峯河幡先輩はキョロキョロと教室を見回す。
「おや、座留奏くんは何処かな?」
当然、クラス中の視線が僕に集まる。
うぅっ、居ずらい……。
「ん? 君は?」
皆の視線が僕に突き刺さっているのに気付いて峯河幡先輩が僕に話し掛けてきた。
そういえばノリがこの人に会ったら逃げろって言ってたけど……ムリ、だよね〜。
「あの、私が座留奏……何ですけど」
僕の言葉に峯河幡先輩は目を見開く。
そりゃ驚くよね〜、というか驚かない方がおかしいしね。
というかもしかして僕今ドン引きされてるんじゃ……。
「座留奏くんは男だと思ったけど……」
マジマジと舐め回す様に僕を見る峯河幡先輩。
あれ? なんかこの人近寄って来てない?
そう、なんだかジワジワジワジワと距離が詰まってる気がする。そして、僕が心持ち後ろに下がるよな体勢になった瞬間――
「――――っ?!」
峯河幡先輩に飛び掛かられてモミモミと胸をまさぐられた。
「なっ、何やってっ」
「ふーむ、これは……なんと! どんなプロでも本物と間違えてしまう偽乳業界の風雲児っ! 『デラックスウルトラリアリティーウォーターボインちゃんΣ』! 余りの人気に製造が追いつかず、今ではどこを探しても見つからないというのに……」
ツッコミ所が盛り沢山な峯河幡先輩の話を聞きながら離れようともがくけど全然、まったく、これっぽっちも先輩から逃れられない。
おかしい、なんだこれ。
ひとしきり超レア(?)らしい偽乳を揉んだところで僕はようやく開放された。(ちなみに文句を言おうとした時、耳を甘噛みされたのだけれど、それが思いの外気持ち良くて、癖になりそうなのは僕と君との秘密だよ!)
満足げな先輩はうんうんと頷いて僕の肩に手を乗せた。
「座留奏くん。君はなかなか面白い。長い付き合いになりそうな予感がするよ」
そう言って峯河幡先輩は離れようとしたのか、肩から手を退け一歩下がった。
「っ!?」
下がったところでどうしたんだろ、一瞬驚いたような……? それに、傲岸不遜、唯我独尊、そんな感じの峯河幡先輩の雰囲気が揺らめいた気がした。
それから峯河幡先輩はよく分からない動揺をしたままそれじゃまた会おう、と 教室から出て行った。
……なんなんだろ?
…どうも、歌澄です。私視点はちょっぴり久し振りですね。ちょっと緊張する。
今の時間はLHR。
黒板には『大サバイバル大会』って書かれてる。面白そうとは思うけど題に捻りが無いなぁって思う。 そんなことを思ってると友人の有寺夏夏子、愛称・なっちゃんが話し掛けてきた。
「ねぇねぇ、歌澄。腕が鳴るわね!」
そう言って腕をブンブン鳴らして回すなっちゃん。
「…そうだね。私も楽しみ」
「流石っ、話が分かるね! ところでさっ、あたしはそういう武器とかは全然詳しくないからあれなんだけどさ、歌澄はどんな武器作ってみたい?」
武器……武器かぁ……えーと、えーと……武器はロマン、ロマンはロボット、ロボットはつまり――
「…そう! ビューンって飛んでく鉄人!」
「……へ?」
私のセリフにキョトンとするなっちゃん。
あれ、私、変な事言ったかな? うーん……あ、もしかして――
「…無敵のドでかい守護神の方が分かりやすかった?」
「歌澄、"武器"についての話なんだけど……」
………………あ。
「…ごめん。武器ならやっぱりドリルかハンマーだよ」
「……なんで?」
なっちゃんはなんだか呆れたように私を見る。
む〜、私そんなにおかしい事言ったかな?
「サバイバルゲームだよ? 普通は銃とかじゃないの?」
「……それはそうかもしれない」
でもなぁ、そこはやっぱり譲れない。だってロマンだもの。
なっちゃんとそんな風に武器談義に花を咲かせてると先生が私を呼んだ。
「日永!」
「…なんですか、先生?」
先生は何故か申し訳なさそうな表情。その後に言われた言葉に私は愕然とした。
「すまないが、お前は他の工業科の生徒達と一緒には活動出来ないんだ」
…………え?
「……………な、なんでですか?」
そ、そんな……。私だって皆と一緒にやりたいのに……。
そんな私の思いを察してくれてるのか先生は本当にすまなそう。
「悪いな。でも、主催側からの要請でな」
「……主催、側?」
その時、たーーんっ! というけたたましい音と共に教室の戸が開く。
「文学部副部長の生潟流生だ。日永歌澄はいるか?」
そこにいたのは美形の部類に入るのにどことなく関わりたくない雰囲気を持った男の人だった。
「…私です」
「そうか、では安部教諭、日永歌澄は借りて行きます」
え? じゃあこの人が主催者?
私は困惑するなっちゃんとすまなそうな先生に見送られて、生潟先輩に引きずられるように教室から出て行った。
……文学部部室?
ズルズルと生潟先輩に引っ張られた私は気がつくと文学部部室の前にいた。
「部長! 不肖この生潟流生、貴方の為に日永歌澄を連れて来ました!」
「うむ、ご苦労流生」
生潟先輩の妙に大袈裟なセリフに答えたのは威厳のある綺麗なアルト。
でも、なんだろ? その声には威厳の他に根拠の無い自信とかが含まれてる。
生潟先輩が戸を開けるとそこは――
「……すごい」
本当にすごい。壁には額縁に入ったカ〇ボーイビ〇ップの原画とえーとよく分からないけど向日葵の絵が、真正面には豪奢な机と椅子。私から見て左側の壁際にあるハンガーラックには多種多様な衣装――メイドとかサモ〇イ3の姫様とかス〇ロボの〇ナとかがかかってる。他にも冷蔵庫やソファなんかも置いてる。
とてもじゃないけど一部活動の部室とは思えない。
ちょっとSO〇団っぽい部屋を見回した後もう一度正面を見た。
正面の豪奢な机と椅子にはセミロングの色素の薄い髪の女の人が女王然と優雅に座ってた。
「やぁやぁ、君が日永歌澄だね。私は文学部部長の峯河幡明凜栖だ。以後よろしく」
「…どうも」
ありす先輩は私をシゲシゲと見つめてフフッと笑う。
「ふむ、聞いていた通りあまり感情を表に出さないみたいだね。そして、華奢で可愛いときた。桜満開のギャルゲーに出て来る私と同じ名前のキャラを彷彿させるね」
……変な人だなぁ。
「…あの、頼みたい事ってなんですか?」
この人のせいで私はサバイバル大会に出れないんだ……。ちょっと腹立つ。
そんなことを思った矢先予想外のありす先輩の言葉に私は驚いた。
「ロボットを、作らないかい?」
ロボット!
「い、いいんですかっ?」
「あぁ、これを」
ありす先輩から一枚の紙が渡される。
そこには三つの事が書かれてる。
「そこに書かれた事を前提としてやってもらいたい」
……フフ、フフフフフフ! ヤバイ、ちょっと興奮してきた!
「フフフフフフフフ! 任せて下さい! 期待以上の、最高のモノを作りますからっ!」
「ありがとう。材料や人員は君の言う通りのモノを用意させるから遠慮なく言ってくれていい。では期待してるよ」
私はありす先輩が言い切る前に文学部部室から飛び出す。
フフフフフ、どうしようかな? 茶〇丸みたいのがいいかな? それともジ〇ング? いやいや、ボル〇ォッグの方がいいかも……。
どんな素敵なロボットを作ろうかと心躍らせながら私は校庭の隅にある作業小屋へと駆けて行った。
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