僕と彼女のなんとかかんとか(2/23)PDFで表示縦書き表示RDF


色々ありましてタイトル変更しました。
拙い文章ですが読んで戴けるとうれしいです。
僕と彼女のなんとかかんとか
作:雨永祭



2.僕と彼女の夕食の風景


 あぁどうする?どうする僕っ!…まぁどうするもこうするもやるしかないんだよな…
「はぁ…水波音ちゃんに連絡しないとな…」
 なんとか気を取り直して行動に移そうとした瞬間
 ドガンッ!!
という凄まじい音と共に部屋の戸が開け放たれた。
「奏、お腹が空いたわ。今すぐ夕飯作りなさい」
「ね、姉さん、なんだよいきなり今ちょっと原稿が燃えて大変なんだ。水波音ちゃんに連絡したりしないといけないから無理だよ」
「…なんですって?」
 途端に背筋の凍る様な殺気を放ち始めた姉さん。
「私の言う事が聞けないのかしらぁ?」
 そんなことを言いながらジリジリと詰め寄って来る姉さん。
 僕は段々と部屋の隅に追い詰められてる。
「聞けないのかしらぁ?」
 姉さんの殺気が更に禍々しいものになっていく。
 やばいっ!殺されるっ!誰か!助けて!
「やっほーい!おっ邪魔っしまーすっ!かっなでくぅーん!素敵で無敵であなたの愛しの担当者っ!水波音ちゃんがやって来ましたよ〜っ♪」
 やった!救世主だっ!
「ね、姉さん!ほら、水波音ちゃんが来たから僕は出迎えないとっ!」
 僕は姉さんから逃げる様に部屋を飛び出した。
 それにしても良いタイミングで家に来たもんだ…
「水波音ちゃん!今行くからちょっと待ってて〜」





 あの後、私は壊れたガフをなんとか小屋に戻したりしてから帰路に着いた。
 その帰り道。
 さっきの人のあの笑顔がなんだか忘れられない。それになんだか胸の奥が暖かくなる。そういえばあの人の名前聞いてなかったな…また会えるかな?会いたいな。
 この気持ちはなんなんだろう?





「まったく私が作れって言ったらすぐ作れば良いものを…」
「いっただっきま〜すっ♪」
 あの後結局なんだかんだで姉さんと僕に夕飯を作らせると聞いて目を輝かせた水波音ちゃんに脅され…もとい頼まれて僕が夕飯を作る事になった。ちなみに、メニューはホカホカのご飯、大根の味噌汁、チンジャオロース、鯖の塩焼き、茄子の糠漬けとなってます。
「…はぁ。ちゃんと作ったんだからいいじゃないか」
「…はぁ、まったくなんだって奏の料理なんか食べないといけないんだか」
「自分で僕に作れって言ったんだろっ?」 なんて無茶を言うんだ、この姉は。
「大っ丈夫だって〜、奏君の料理は良くも悪くも無いからさっ!食べられるんだから問題ないよ〜!まぁ、楓君の料理の方が百万倍美味しいけどね〜!あはははははははは〜♪」
 …まったくフォローになって無いよ水波音ちゃん。
「大体楓義兄さんはどうしたのさ?」
「楓さんはジジイに呼び出されたのよ」
「爺さんのとこに…早く言ってよ、そういう事はさ」 まったくなんて事してくれんだ、うちの爺さんは。
「奏君っ、原稿の方はどうかなっ?」
 ナイスな質問です、水波音ちゃん!
「丁度言おうと思ってたところだったんですよ。実は原稿が…」





「…いただきます」
 テーブルの上には山の様な太巻きとそれを囲む様に皿と玉葱の味噌が置かれてる。今日は別に節分でもないのにどうして太巻きなんだろ…?
「はむ、んぐんぐんぐん…」
 やっぱり彼方ちゃんが作る料理は美味しい。
「んぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐ…」
「………か」
「んぐんぐんぐんぐんぐんぐ…」
「……か」
「んぐんぐんぐんぐんぐんぐ…」
「…か」
「んぐんぐんぐんぐんぐんぐ…」
「可愛い過ぎるぞ!こんちくしょ〜っ!」
 そう叫んでガバッと抱き付いて来るのはメイド兼料理長の唐本彼方(からもとかなた)ちゃん。
料理がすごい上手でとても良い人なんだけど急に抱き付いて来るのはどうにかならないかな…。 すると何処からか手が伸びて来て彼方ちゃんの襟首を掴んだ。

「ぅわぅ!何しやがる!要っ!」
「ったく、お嬢様が食べ辛いだろうがっ!いつもいつも抱き付くんじゃないっ!」
 私から彼方ちゃんを剥したのは明刀要(あとうかなめ)ちゃん。私の執事をしているこの屋敷でたった一人の男の人。目付きはすごい悪いけど物凄く優しい人。
「なんだと?はんっ、お嬢様に抱き付いてる俺に嫉妬してんのか?糞乙女執事がっ!」
「な、なな何言ってやがる!そ、そんな訳ないだろっ!」
「はっ!顔が赤いぜ乙女君」
「なっテメェッ!」
「んぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐ…」
 いつも彼方ちゃんと要ちゃんは仲良しで嬉しいな。
「んぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐ…」
「お嬢様、」
「んぐんぐ…んぐ?」
「ほっぺにご飯粒が付いてますよ」
 そう言って私の頬に付いたご飯粒を取ってそのご飯粒をパクッと食べた。
「「あぁあぁぁあっ!」」
「クスクス、ちょろいですね」
 私の頬に付いたご飯粒を食べたのはメイド長の那波若魚(なばわかな)さん。小さい頃から私を世話してくれてお母さんみたいな人。
「なんて羨ましいことしてやがる!若魚っ!」
「そうだぞ!那波さんっ!俺だってそんなことお嬢様にしてみたいんだっ!」
「…………」
「…………」
「んぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐ…」
「………はっ!」
「っあははははははははははははははっ!墓穴掘りやがったっ!」
「…っぷふっ!」
「あぁあぁああ…彼方も那波さんも笑うんじゃないっ!」
 いつもいつも楽しそうだなぁ。
「んぐぐ、ご馳走さま。みんな早く食べてデザート食べようよ」
「あぁ、そうす……」
「そうで…………」
「よし、さっさとく…」
 みんなテーブルを見て急に黙り込む。
「みんなどうしたの?」
 なんで『えーと…』みたいな顔してるんだろ?
「…お嬢様よぉ」
「はい」
「俺の料理をいっぱい食ってくれんのはスゲェ嬉しいんだ。嬉しいんだけどよ…」
「「「残しておいてくれてもいんじゃない?」」」
 …テーブルの上には…五枚のまっさらな皿と五つの空のお椀。
「…あっ、ごっごめんなさいっ!つ、つい…」
 またやっちゃった…。
「……………」
「……………」
「……………」
 みんなまた急に黙り込んでどうしたのかな?
 すると、突然
「「カァワイィッ!」」
「…っく」
 急に抱き付いて来たのは彼方ちゃんと若魚さん。要ちゃんは向こうを向いて身体を震わせてる。
「可愛いなぁ〜もう〜」
「可愛い過ぎですよ〜お嬢様〜」
 そう言って彼方ちゃんと若魚さんは頬ずりをしてきて、要ちゃんはまだ何かを堪える様に身体を震わせてる。
 なんか変な状況だなぁ…。





「…という訳なんですよ」
「嘘くさ〜い」
 訝しそうな目をする水波音ちゃん。
「そんなこと言われても困りますよ!事実なんですから」

「ぶーっ、まったく仕方ないな〜。ネームとかも消し炭になったのね?Gペンのスペアはあるんでしょ?」
「ええ、どうしたら…」 このままじゃ掲載できなくなってしまうっ!
「この水波音ちゃんにまっかせなさ〜いっ!こんなこともあろうかと!ネームのコピーを取ってあるのさっ!」
「ほんとに?!流石水波音ちゃん!」
「じゃあ今から電話するね〜ん」
 やった!これでなんとか…。
「ご馳走さま。奏、アイス持って来て」
「え、嫌だよ。水波音ちゃんの電話を見届けないと」
「アイス持って来て」
「だから嫌だ…」
「持って来て」
「嫌だっ…」
「アイス、持って来て」
「嫌…」
「持って来なさい」
「い…」
「持って来い」
 凄まじい殺気を放つ姉さん。
「…はい」
 はぁ、なんで姉さんはこんなんなんだろ?水波音ちゃんの方はどうなってんのかな。
「もっしも〜し!季秋君かな?…うん…うん奏君の原稿が……あっ奏くーん!私もアイスたっべる〜☆…あっごめんごめんそれでね…」
 …僕はパシりじゃないんだ。



「はい、アイス持って来たよ」
「遅い!」
「さ〜んく〜す♪」
 遅い!って無茶苦茶だよ、姉さん。
「…はぁ、ところで水波音ちゃん」
 ふと気になったことを聞いてみた。
「なぁ〜にぃ〜」
「ネームのコピーって誰が持って来るの?」
「編集長。あっ、このアイスおいし〜♪」
「編集長が持って来るんだ…」
 …ん?編集長?編集長だって?!
「水波音ちゃん!あなた一体何編集長を小間使に使ってんの!?」
「季秋君だからいいのよ〜ん♪」
「幾ら長年の友達だからって一応上司でしょう?」
「奏五月蠅い。黙れ」
「そうそう。細かいことは気にしな〜い♪」
 …なんだかなぁ。



「むぅ、この酒うんまいよ〜!」
「ふふっ、だろう?取り引き先から貰ったんだ」
 はぁ、晩酌…いやアル中なだけか。

ピンポーン

「奏、出て〜」
「嫌だ」
「出て」
「いや…」
「出なさい」
「い…」
「出ろ」
「…はーい。今行きまーす」
 あぁ僕って弱いな…。

「はいはい、今開けますよ」
 玄関を開けると誰かが倒れて来た。
「ぅわっと」
 玄関に横たわったのは男だった。
「大丈夫ですか?」
「はぁ、はぁ、や、やぁ…奏…君。災難…だっ…たね」
「へ、編集長っ!死にそうな顔色してますけど…大丈夫ですか?」
「大…丈夫…ではないよ。でも、ほら呼び出しが、かかったら、急いではぁ…こないと二人に、殺される…からね」
 きっと死力を尽くして家に来たんだろうな。
「えーと、取りあえずちょっと待ってて下さい。今、水を持って来ますんで」
「…あぁっ、あびばどうっ!ほんど、あびばぼぶっ!がなべぐゅんはぼんどにやざじいねズズッ」
 涙を流して感謝してくる編集長。
 うわぁ、なんかウザイ。
 とか思いながら僕は急いで台所へと向かった。



「ズビッズズッ。奏君はひっくなんて、良い子、なんだろうなぁ…ふぅ…日由ちゃんや水波音ちゃんにも見習って欲しいよ。あの二人はまるで悪鬼か羅刹の様だもんなぁ…ん?」
「誰が、」
「何だって言うのかなぁ〜♪」
「ひっひひひひ日由ちゃんにみみ水波音ちゃん、お、お待たせ」
「それで、誰が何だと言うんだ?季秋(ひであき)
「そ、そんな誰も日由ちゃんと水波音ちゃんが悪鬼か羅刹の様だなんて…はっ!」
「悪鬼か…」
「羅刹ねぇ〜ん…」
「あ、あはははははははははははははは」
「ふふふふふふふふふっ」
「にゃぁははははははははは〜」
 ゴスッ!バキャッ!グチャッ!
「ひぁあああぁあぁぁあっ!」



「編集長っ!水…って編集長っ!?」
 玄関に横たわっていたのは先程の五倍は酷い有様の編集長だった。その傍らには姉さんと水波音ちゃん。
 ……何があったのか考えるのは止めよう。きっと考えてもろくな事じゃないんだろう。というか絶対考えたく無い。
「とにかく、大丈夫ですか?水です。どうぞ」
「あぁ、ありが…あぁっ」
 編集長にコップを渡そうとした瞬間、コップを姉さんに奪われた。
「丁度喉乾いてたのよ…っごく」
 一息でコップの中身を飲み干す姉さん。
「…ぷはぁっ、何これ水じゃない最悪」
 そう言って僕にコップを押しつけてリビングに戻って行った。
 …何ていうか横暴だ。横暴過ぎる。
「うっうっうっ…」
 編集長マジ泣きしてるし。
 すると
「編集長」
驚く事に水波音ちゃんが編集長に手を差し延べた。
「…ひっく、水波音ちゃん…」
 僕は予想外事に動けなくなってしまった。そして、編集長は水波音ちゃんの差し出された手を取ろうとしている。
「…季秋君、この手何?」
「はへぇ?」
 なんちゅー不抜けた声を出すんだこの人は。
「ネームのコピーは?」
「…はい、これですぅぅ〜」
「ご苦労〜ご苦労〜。じゃあ後は帰ってね〜ん。はいっ奏君!ネームのコピー」
「ど、どうも」
 ネームのコピーを渡されたけどなんか素直に喜べない。
「…ぁうぅぅうぅっ」
「水波音!早く続きを飲むぞ!」
「はいはぁーい!いっまいっくよ〜ん♪じゃ季秋まった明日〜」
 バンバンと泣き崩れる編集長の肩を叩き姉さんのとこに去って行った水波音ちゃん。
 …悪魔かよ。
「うっうっうっうっ…」
「大丈夫ですか?傷は浅いですから…多分。ひとまず立って下さい」
 打ちのめされてる編集長に手を差し延べると余程嬉しかったのか僕に抱き付こうとした。
「…っ!」
 なんとか抱き付いて来た編集長を避ける僕。
 …思いの外速かった。ヤバかったなぁ。
「何すんですか、いきなり」
「あぁっ!ご、ごめん君の優しさがあんまり嬉しかったからつい…」
 …優しさに飢えてるのか。
「…えーと、上がって行きますか?」
「いや、その提案は嬉しいけど身体が持たないよ。水波音ちゃんと日由ちゃんが飲んでるんでしょ?」
「…あぁ確かに止めた方が賢明ですね」
 きっと地獄絵図だ。
「あはは、でしょう?それに仕事が終わった訳じゃないしね」
「そうですか、色々と頑張って下さい。水波音ちゃんに負けないで」
「そっちこそ負けないでね。それじゃこれで…あっ締切りは四日後迄だからさ、頑張って」
「はい」
 玄関から出て行く編集長。その背中はなんだか哀愁を帯びていた。
「……編集長。………よし!頑張るかぁ」


評価・感想お待ちしてます。











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