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月野
作:白理


 ええ、はい。私がそうです。貴方は?
 ……。
 ああ、お待ちしておりました。まさか本当に来ていただけるなんて……。
 ありがとうございます。
 いえ、恐縮し過ぎだなんて、そんな事はありません。実際来ていただけるかどうか不安だったもので。昨日からずっと頭から離れなかったんですよ。ぼうっとしちゃって。
 あ、私の話しなんてどうでもいいですよね。では本題に入らせてもらいます。
 大体の話しはもう伺っていますよね?……ええ、ではその辺りから話を進めたいと思います。
 ……はい。
 …はい。
 ええ、食い違いがあるかも知れないので最初からお話しを?……わかりました。
 既にご存知の通り、私の姉はある血筋について長年調査を続けておりました。
 その血筋の一族、仮に月野とします。月野の一族の人間は代々特殊な力を持って生まれてきました。
 ……はい、はい。
 そうです。 一人一人異なる能力を持って生まれて来るんです。ある者は火を自在に操り、ある者は空を駆けました。まるで物語りに出てくる超人のように。
 聞いただけではとても信じられませんよね?
 姉がその一族に目を付けたのは十三年前、同じ大学に通う同級生の中に月野の人間を見つけたのがきっかけでした。
 偶然、力を使うところを目撃したそうで、とても興奮した様子で私に話を聞かせました。でも現場を見たわけでもない私がそんな話、信じられるはずがないでしょう?姉の頭がおかしくなったんじゃないかと疑いましたよ。
 ……すみません、話しが逸れましたね。
 月野の存在に気付いた姉は、それからというもの月野にのめり込んでいきました。
 何度も接触を試み、犯罪すれすれのところまで手を汚し、月野の実態を探りました。
 しかし相手だってそう一筋縄ではいきません。何十年、何百年もその姿を隠し続けてきた一族です。いままでだって姉のように一族の存在を嗅ぎつけた人間もたくさんいたでしょう。
 姉もなかなか尻尾を出さない月野の一族にかなり焦燥していたようでした。
 あんな世間から白い目を向けられるような行為に及んでまでも、なんの情報も得られなかったわけですからね。
 当然と言えば当然です。
 そんな時でした。
 ひどい焦りにより衰弱さえしてきた姉に、月野の方から接触してきたのは。
 月野は痩せ細り、目の下に濃い隈をこしらえた姉に言いました。
 そんなに私達の事を知りたいのか?と、……。
 姉は迷わずに頷きました。
 そして問いました。貴方がたは何者なのか。化け物か?それとも世で言う超能力者か。
 月野はどちらも間違いであり、そして正しいのだと答えました。
 私達は遥か昔から存在した。いや、昔は私達しか存在しなかった。しかし時が経つにつれ力を失う者が増え、いつしか私達のような力を持つ者が少数派になっていき、異端者になっていった。
 そして多数派になった力を失くした者達は、私達力のある者を化け物と呼び、超能力者と呼ぶようになった。
 ……よく覚えてますねって?実は私も大雑把にしか覚えていないんです。いま大体の意味で話してるんです。はい。すみません。ご迷惑お掛けします。
 なぜ力を失う者が増えたのか?姉が尋ねると、私達にも詳しくはわかっていないのだと月野は首を横に振ります。
 たぶん、力が必要じゃなくなったからではないかと、月野の一族では憶測していたようです。
 生活が豊かになってゆく過程で、使わなくなった器官が退化していくように、また人々の力も退化していった。
 それが月野の考えでした。
 ……ええ。
 私達も力を失った側という事になりますが、ちゃんと潜在的に力はあるんです。力を失うというより使い方を忘れてしまったと表現したほうが近いですね。
 ほら、時々テレビに出るでしょう?不思議な力を持った超能力者が。
 あの人達もそうなんです。
 死者の意思を理解する人。動物と会話する人。予知夢を見る人。
 力の使い方を忘れてしまった私達の中からも、月野と同じ人間は生まれてくるんですよ。
 …どうしました?
 いえ、顔色が冴えないようでしたから心配になって。
 ……はい、余計でしたね。はい。でも本当にどこか悪くないんですか?私の杞憂ならいいですけど。
 そして、最後に姉は何故私にそんな話を聞かせる気になったのかと尋ねました。
 いままで追い掛けても追い掛けても自分の手をすり抜けていたものが、突然自分の手にすんなり収まったわけですから疑問を抱くのも当たり前です。
 すると、月野は言ったんです。
 いまから貴方の記憶を抹消すると。だから話を聞かせたのだと。私がこっそり聞き耳を立てていたとも知らずにね。
 姉は叫び、月野の記憶を消そうとする手を拒みました。
 部屋で何かが壁にぶつかる音や物が壊れる音。怒声や罵声といった騒音が響き、私は息を殺しました。
 私の存在が月野にばれたら間違いなく姉と同じように記憶を消されてしまうと思っていましたから。
 しばらくして音が止みました。私は姉の記憶が消されてしまったのだと思い、素知らぬふりしていかにもただ事ではない物音を聞き付け様子を見に来たのだと見せかける演技をして姉の部屋に向かいました。
 ええ。
 あんなに激しい音がして様子を見に行かない方が不自然だと思いましたし、逃げても能力者である彼等から逃げ延びるのは不可能だと感じましたからそうしたんです。
 いま思えばあの時部屋を覗かずに一目散に家から離れていれば良かったのかも知れませんね。
 ……。
 私、見てしまったんです。
 姉を頭から飲み込む月野の姿を。だらりとぶら下がる姉の腕は青く変色してて、とても生きているようには思えませんでした。
 恐らく抵抗している内に月野の一族、その時四人ほど来ていたのですがその中の一人に殺されてしまったんですよ。
 姉の部屋は散乱していましたし、それから急いで逃げ出してから家に戻ってなくて、月野達がどういう手段で姉を殺したのかわからないんですけど…。
 あの、今更なんですが信じられますか。こんな事……。
 もしかしたら貴方は私の言うことを疑ってるんじゃないですか?正気じゃないと思ってませんか?力を持つ人間だの姉を飲み込む月野の姿だの真面目くさって話す私がおかしな人間だと…!
 …すみません。
 私もまだ混乱してるんです。
 ……、あれ?
 どうしたんですか?場所を移そう?ここを指定したのは貴方じゃないですか。
 え?
 ここでは都合が悪い?
 一体なんの話をしているんです?あの、やっぱりどうかされたんですか?
 あのう……。あっ!ちょっと待って下さい!
 …………。
 ……………。






 ××年××月××日(×)。
 今日未明、××県警察署は数日前から行方不明である××家の長女(32)、次女(27)の捜査に身を乗り出した。二人は何らかの事件に巻き込まれたと見て、二人が行方をくらます当日、二人の住むアパートで目撃された男女4名が事件に関わりあいのある人物として…………



      新聞の一覧より。


最後までありがとうございました!m(__)m         正しいハムスターの弔い方に続いてまたもや息抜きです。  こうやって息抜きばかりしてると息抜き(現実逃避)が好きな人間なんだなぁと、自分で思ったりしますね。        好きなだけで上手くはないんですけどね…(溜息)













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