問題 以下の問いに答えなさい
『観測者Aが速度Aで走っていると、正面から周波数Fの音を発し速度v’で走行してくる救急車がやってきた。音速をVとした時、観測者にどのような事が起きるのかを書きなさい。また、その現象の名称も併せて答えなさい』
姫路瑞希の答え
『観測者Aには、車が発する音の周波数がfV+v/V-v’となって聞こえる。
現象の名称……ドップラー効果』
教師のコメント
F1マシンが通過する時もコレと同様の現象が起こっていますね。物理現象は一見難しい様に思われますが、意外と身近に存在するものです。
久遠光一の答え
『観測者Aには、車が発する音の周波数がfV+v/V-v’となって聞こえる。
現象の名称……ドップラー効果』
『観測者Aが速度v’+vで撥ねられる。
現象の名称……交通事故』
教師のコメント
きちんと相対速度を補正してまで余計な事は書かなくて良いです。
吉井明久の答え
『観測者Aが速度v’+vで撥ねられる。
現象の名称……交通事故』
教師のコメント
久遠君との勉強を変な方向に活かさないように。
「さてムッツリーニ。作戦開始時刻と集合場所は、両クラスに通達して来たか?」
「…………問題ない」
作戦開始は2010時、集合場所は一階の大食堂。
脱衣を終え、大体のころ合いを見計らって攻撃を仕掛ける予定である。
「……で、光一はどう見てるの?」
「今回も失敗する」
「生憎だが、今回はそうはいかない。そろそろ向こうも隠密行動に出るだろうと考える筈だから……」
バンッ!
「坂本っ! 大変だ!」
突然ドアが開かれ、血相を変えた須川が飛び込んできた。
「須川、どうした?」
「やられた! 大食堂で敵が待ち伏せをしていたんだ! 今は戦力が分断されて各階に散り散りになってる!」
「何だと!? まさか……」
「…………情報が漏れる事はない」
雄二の疑問を払拭する様に断言するムッツリーニ。
ソレを見て、光一は予想通りという風に頷いた。
「光一、どういう事?」
「向こうには霧島が居るんだ。召喚大会の時と同様に、雄二の作戦を読まれてもおかしくはない」
「ぐっ……」
男子勢にとって、雄二の考える常識はずれな作戦が頼みの綱だった。
それだけに、作戦が筒抜けである現状の打破は厳しい。
「で、どうする気だ? 総指揮官どの」
「どうするもこうするも、こうなっては作戦なんて殆どない様なものだ! 一旦分断された戦力を編成し直すしかない! ムッツリーニ、須川、出るぞ!!」
雄二は2人を伴い、扉を開く。
「このスケベ共! 大人しくお縄につきなさい!」
「覗きなんてさせないからね!」
「くそぉっ! どうしてこんなところに女子が!?」
「知るか! とにかく応戦しろ!」
外は既に戦場となっていて、所々で男子対女子の戦いが起こっている。
しかし戦力を分断された揚句、不意打ちもあってか状況は不利で、一方的な展開が繰り広げられていた。
「なんか、とことん状況は不利になる一方だね」
「当然だろ。作戦が読まれる上に戦力に差があるなら、明らかに雄二達が不利だ」
「光一と明久が居れば、話は別なのじゃろうが……」
そこへ女子の1人が召喚獣を伴い、部屋に乱入して来た。
それも、光一と明久にとって見たくもない顔が。
「げっ! 清水美春!?」
「ふふふっ、美春の獲物が2人大人しくしてくれるなんて、好都合です」
「好都合? ……そうか。この乱戦なら、幾らでも事実をでっち上げられるな」
「ええ。ブタ共の覗きなんて嫌悪しますが、この騒動だけは感謝します。お姉さまを誑かす吉井明久を抹殺し、私の望みを叶える腕輪を奪うには絶好のチャンスです!」
明久と光一に対し殺気を含んだ睨みを利かせ、目は光一の右手につけられている腕輪を見据える。
ソレを見てトリップし始めたのか、よだれを垂らして何かを妄想し始めた。
「ああっ……その腕輪さえあれば、美春の召喚獣はお姉さまとの愛の結晶に生まれ変わる……」
「本人が了承しないと無理だけどな」
「お姉さまでしたら、美春の愛を拒む事はありません!」
「どうかな? 俺には心の底から“嫌われてる”ようにしか見えないが」
空間にひびが入った。
「ちょっ、ちょっと光一! 何でそんな事言うの!?」
「何か問題あるのか? “本当の事”を言った位で」
「……殺します」
と、何やらどす黒いオーラを纏い始めた美春。
3人もそれを見て、流石に顔を青ざめた。
「お姉さま、オネエサマ……ミハルはオネエサマとのアイのタメ、このブタをチマツリにアゲテミセマス。ウデワ……ウデワ……オネエサマトユウゴウ……ケタケタケタケタ」
「……ねえ光一」
「すまん……正直、思いっきり後悔してる」
「……人の領域を超越する等、鉄人以外にありえんと思っておったのじゃが」
秀吉の台詞に、2人は心から頷いた。
「……とりあえず、召喚獣だけでも使えなくするか。後は本人を明久の召喚獣で動けなくすれば良い」
「うっ、うむ……光一よ、助太刀するぞ」
「そっそうだね……」
光一と秀吉は召喚獣を呼び出し、融合体勢に入る。
キーワードが告げられ、光一の召喚獣は道着の様な着こなしのジャケット、自動拳銃2丁を両手にという装備に。
『Fクラス 久遠光一(+木下秀吉) 化学4点+61点』
VS
『Dクラス 清水美春(だった何か) 化学99点
「腕輪……ウデワ……美春ト……オネエサマとの……アイのケッショウ……ウデワ……ウバ……ウ……ウバウウバウウバウウバウウバウウバウウバウウバウ」
召喚獣が融合していく光景を見て、美春だった者は殺気を増大させ更に異形に変貌していく。
「融合召喚獣初陣だけど……こんなに戦いたくないなんて思ったの、初めてだ」
「光一、それは無理からぬことじゃ。ワシも正直、やりたくないぞい」
「コロ……す……ウバ……ウ……」
融合召喚獣が銃を構え、美春の召喚獣に撃ち出そうと……
「なっ!?」
「コロします……オネエサマとのカガヤカシイミライをハバムノデアレバ、コロシマス!」
した所で、美春本人が光一めがけて襲いかかった。
「危ない光一! サモン!」
そこで明久が、召喚獣を駆使してそれを弾く。
『Fクラス 吉井明久 化学59点』
「ヨシイアキヒサ……オネエサマをタブラカスガイチュウ……クジョスル。クジョクジョクジョクジョ」
「なっなんか、さっきよりまずい事になってるよ!?」
「ええい、こうなれば!!」
と、スタンガンを取り出し投擲。
だが、美春だったものは難なく回避し、光一に襲いかかった。
「ケケケケケケ!」
「あっ、島田が男に襲いかかられてる」
「オネエサマ!?」
「隙あり」
手に40万ボルトを構え、そのまま最大出力で押し付ける光一。
秀吉に明久もそれに便乗し、光一から投げ渡されたスタンガンを最大出力で押し付け、その数分後何とか鎮圧。
「……ふぅっ、やっと一安心だね」
「ああ……ある意味鉄人より性質が悪い」
手足を縛り、トイレに放り込んだところで一息つく明久と光一。
「うむっ、頼むぞい」
と、光一の携帯で連絡を取っていた秀吉はソレを終えた。
「誰に電話してたんだ?」
「姉上と姫路と島田じゃ。清水を引き取って貰わねばの。それに、確認すべき事があるじゃろ?」
「確認? あっ!」
「そうか、お尻に火傷!」
自分達で調べてもいいのだが、もし間違ってた上にそんな事が知られたら、確実に言い逃れは出来ない。
そもそも雄二達のやり方もイチバチであり、その辺りを考慮して数を増やす方法をとったのである。
「……悪いけど俺、席外すわ」
「じゃったら、もう寝ると良かろう」
「ああ。そうだな」
一方、自習室にて。
「何故吉井と久遠が一向に現れない!?」
DEFクラスの全員の反省文を監督する鉄人の、全員を確認し終えて。
懸念していた2人の人物が、またもや居ない事が火に油を注いでいた。
「おっ、落ち着いてください西村先生。騒ぎを起こさないならそれに越した事は……」
「いいえ、あいつらに限ってそんな事はありません! 坂本、奴等はどこだ!? 一体何を企んでいる!?」
「知るか! こっちだってあいつらの不参加の所為で大変な目にあってんだよ!」
ソレを筆頭に、所々で抗議が上がった。
「そうだ! 何であいつらが不参加なんだよ!?」
「過激派筆頭の久遠と観察処分者の吉井が、何で奮い立たないんだ!?」
「少なくともあいつらが居れば、少しはマシだったかもしれないのに!」
と、半ば暴動でも起きそうな勢いだが、鉄人の一喝で黙らされた。
「この連中の雰囲気からして、本当に不参加なのか……? いや、まさかそんな筈は」
「ですから西村先生、幾らなんでも来てないのにその扱いは……」
「大島先生。あの切り込み隊長コンビに油断は命取りです! あいつらが参加しない等、必ずや何かがあるに違いないのですから!」
「(鉄人の集中力が乱れてるのは、ある意味好都合だな……だが鉄人と高橋女史を打倒するには、やはり光一と明久が必要だ)」
「(…………でも、光一が首を縦に振らない事には)」
「(全く、いらん手間をかけさせやがって……まあ良い、A~Cもどうせ必要だから、手間は同じ)」
「よし、全員書き終えたら帰ってシャワーを浴びて眠ってよし」
一方、明久達の部屋にて。
「確認できました。清水さんのお尻には火傷の痕があります」
「ええ。さっき清水さんの荷物確認したけど、カメラやマイクも見つけたわ。間違いないわね」
「そうじゃったか。脅迫犯も分かった事じゃし、これで問題は解決じゃな」
「全く、この子ったら……二度とやらないように念は入れとくからね」
確認し終えた3人は、美春を抱えて入口に立っている。
美波も流石に美春のしでかした事に呆れており、頭を抱えていた。
「ごめんね、手間をかけて」
「ううん……あのねアキ」
「明久君……あの」
2人が何か言いそうになっているのを、明久は謝ろうとしていると見当を付けた。
「気にしなくて良いよ。僕じゃ疑われても仕方ない事普段からやってるし、謝る事じゃないよ」
「明久君……」
「それじゃ、態々ありがとう。3人ともお休み」
と、戸を閉めると同時に、瑞希と美波は俯いた。
明久は予想通りにあっさりと許した物の、光一から言われた事がずっと重くのしかかっている為に。
「……ねえ瑞希」
「……美波ちゃんも、ですか?」
「光一……もう、戻れないのかな?」
「あれ? 優子に姫路さん達じゃない。そんなところで何してるの? 夜這の下見?」
そこへ通りかかった工藤愛子が、3人を茶化した。
「え!? なっ何言ってるのよ愛……そうね。このままじゃどうせ話なんて聞いてくれそうにないし」
「そうですね……私、やっぱりちゃんと明久君に謝りたいです」
「そうね。ウチも釈然としないし、いっそここで一気に行かないと」
そして、明久達の部屋にて。
「さて、これで問題は解決したのう」
「そうでもないよ。今の騒動が雄二達が抜けた位で治まるかな?」
「……そうじゃったの」
明久の懸念は、覗き騒動の方である。
雄二の問題は解決したものの、それ以外の全ての男子は純粋に覗こうとしている者たち。
それ故に“今更やめます”なんて言われても、特にFクラスの連中が黙ってはしないだろう。
「どうしようか? 雄二がもう何かの策を使った可能性だってあるかもしれないし」
「策略では、光一に頼るしかないのう。ワシ等だけではどうにも……」
ガチャッ!
そこで雄二たちが戻ってきた。
明久と秀吉は、すぐさま事情説明に。
「そうか。清水がか……しかし、どうやって?」
「さっきの騒動のどさくさにまぎれて、清水さんが押し掛けて来たんだよ」
「その時にか? お前随分……」
「ちっ違うよ! 姫路さん達を呼んでたしかめて貰ったんだよ!」
雄二は目的が達成された事に喜びを見せる……が。
「となると、まずいな……」
「やはりすでに何かしたのじゃな?」
「ああ。ムッツリーニの隠し撮り厳選を男子生徒に配って回ったところだ」
ムッツリーニの技術をもってすれば、劣情を煽る写真を撮るなど造作もない。
ソレをいましがた、配り終えたばかりである。
「……それ、確実に不味くない?」
「どうするのじゃ? そんなものが出回れば、おそらくABCクラスからも参加者は出る筈じゃ!」
「こんな裏道で目的が達成されるとは思わなかったからな……もう止めようもないだろ」
結局、雄二達の必死の思考もむなしく、解決策は特におもいつくことはなかった。
「で、光一はもう寝てるのか?」
「木下さん達が来るって聞いてからすぐね。何とかしてあげたいけど……」
「仕方ない、問題解決もしたし、光一も明日には機嫌を直すだろうから相談してみるか」
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