ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
間話集
第二十九問 (プール編 プロローグ)
「…………土屋と」
「工藤の」
「「性活小噺っ!」」

ドンドンパフパフ~♪

「今字が違わなかったか?」
「違わないよ。だってこの二人だもん」
「はい、アシスタントの吉井君と久遠君、ちょっと黙っててね? このコーナーでは日々の生活に根差したちょっとエッチな小噺をボクこと工藤愛子とムッツ……」
「…………土屋康太」
「ムッツリーニ君が、吉井君と久遠君のアシスタントの元で紹介していくという物です」
「…………最近、本名を呼ばれない……」
「だってお前目立たないし、ムッツリーニだって事が存在の証明だろ」
「…………光一は最初、本名で呼んでた筈」
「では、今日のテーマですが……」
「…………本名……」
「……“シャワーの正しい使い方”です」
「…………っっ!!(ドバッ!)」
「えぇっ!? もう鼻血!? ムッツリーニ君、想像力豊かすぎない?」
「…………構わず続けろ」
「う、うん。えっと、ちょっとエッチなおはなしという事なので、ボクの体験談をお話します」

ドンドンパフパフ~♪

「……明久、録音の準備は?」
「……万全に決まってるじゃないか」
「流石に行動が早いね? ……まあいいや。実は先日、学校帰りに雨が降ってきて」
「…………っ!(だらだら)」
「運の悪い事に、その日はふざけていたらプールに着替えを落としちゃって、下着がビショビショになっちゃったんだ」
「…………っっ!!(ダバダバ)」
「下は流石に我慢して吐いていたんだケド、上は……ってムッツリーニ君!? もう2リッター位血が出ているみたいだけど、本当に大丈夫なの!?」
「…………構わずに、続けるんだ……っ!!」
「そ、それで、雨でシャツが透けてきちゃって」
「…………っっっっ!!!(ブシャァァァアア)」
「おっ、おいおい、大丈夫かよ!?」
「救急車手配しないと!」
「…………大丈夫」
「やっぱりこの企画無理があるよ! まだシャワーの話に入っていないのに、相方がグロッキーになってるんだもん!」
「…………死しても尚、魂で聞き続ける……っ!」
「そんなの無理に決まってるでしょ!? とにかく今回はこれで終わり! それではまた次回お会いしましょう! お元気でー!」
「…………続きが気になる」
「それより先に保健室!」

ピーポーピーポー!

「あれ? 救急車呼んだの?」
「いや、その出血量だったらな……それより、話の続きを聞かせてくれない?」
「そうそう。雨でシャツが透けた先を是非……」

ガシッ! × 3

「ひっ姫路さんに美波!? ……あの、僕をどこへ連れていくの? まさかあの先にある拷問器具を使うんじゃないよね!? まっ、待って!!」
「あの、優子? その、せめて話を……まっ待て! その関節はそっちには曲がらな……」
























“雄二&翔子結婚大作戦”から一週間後。
いつも通りに平穏な週末の夜、光一と雄二は明久の家に泊まりで遊びに来ていた。

「あれ? 雄二、何か買って来たの?」
「食いものだ。お前の家にはろくなものがないからな」
「まあ確かに、あっても良くてパンの耳や白米、最低で砂糖と油だからな」
「少しずつだけど、生活は改善してるよ? いつまでも光一に迷惑かけるわけにもいかないし」

雄二は買って来た物をテーブルに置き、光一も自分で用意した物を準備し始める。
ちなみに光一のメニューは……。

・サイダー
・冷やし中華
・つけ麺

「へぇ~っ。差し入れなんて、随分気がきくね」

続いて雄二が取り出したのは、以下のメニュー

・コーラ
・サイダー
・カップラーメン
・カップ焼きそば

それを見て、明久は摂取できるカロリーに喜ぶ。
ちなみに明久の勘では、雄二はやきそばとコーラを選ぶと当たりを付けていた。

「それで、雄二はどっちにするの?」
「俺か? 俺はコーラとサイダーとラーメンとやきそばだ」
「全部じゃねーか」
「雄二キサマ! 僕に割り箸しか食べさせない気だな!?」

そのセリフに、流石に雄二も光一も若干引いた。

「待て! 割り箸だけでも食おうとするお前の思考に一瞬引いたぞ!?」
「確かにビニール袋よりは、食べ物に近いのは事実だが……」
「というか、割り箸がないと俺は素手でラーメン食うはめになるだろうが。心配せんでも、お前の分もちゃんと買って来てある」

と、1つ目の下敷きになっている、2つめのビニール袋に明久は気がついた。

「なんだ、やっぱり僕の分も買って来てくれてたんじゃないか」
「まぁな。先週末は世話になったからな、感謝の気持ちだ」
「うんうん。そう言ってもらえると、僕も苦労した甲斐があるよ」

下敷きになっていた袋を受け取り、その中にある物を喜々として取り出す明久。

・こんにゃくゼリー
・ダイエットコーラ
・ところてん

「僕の貴重な栄養源がぁぁーっ!」

全てカロリー0のダイエットメニューであった。

「気にするな。俺の感謝の気持ちだ」
「くそっ! 全然感謝していないな!? あの計画を実行するのに、僕がどれだけ苦労したと思っているんだ!」

明久がダイエットコーラを取り出し、構える。

「うるせぇ! お前こそ、あれ以来俺がどれだけ苦労しているのか知っているのか!」
「ううん、全然」
「お前が言うな光一! 丁度良い、テメエとも一戦交えてやる!」

対する雄二は、普通のコーラとサイダーを構える。
光一はそれを見て不敵に笑い、持ってきていたサイダーを取り出す。

「……やる気かい、雄二?」
「ああ。お前達とは決着を付ける必要があると思っていた所だ。
「上等だ。早撃ちでこの俺に挑むなんて、無謀もいい所だ」
「ハッ! 口だけは達者だな!」

互いに相手を睨みつけ、牽制し合っている。
ここで下手な動きを見せれば命取りになる、まさに一色即発の空気。

……ピチョン

「「「……っ!!」」」

その音をきっかけに、3人は一斉に動き出す。
静から動へ、にらみ合いから闘いへと動く。
先手は光一がとり、それに続くようにほぼ同時に明久と雄二が動く。

シャカシャカシャカシャカ(3人がペットボトルを振る音)

ブシャアアアアアアアアア(お互いに向けて炭酸飲料を射出する音)

バたバタバタバタバタ(3人が目を抑えてのた打ち回る音)

「「「目が、目がぁぁぁああっ!」」」

3人して、炭酸が目にしみるのか、苦しみにのたうちまわり始めた。

「やってくれるじゃねぇか、明久に光一!」
「雄二こそ、流石は僕がライバルと認めた男……!」
「ああ……だが、ここからが本当の勝負だ!」

そして雄二はやきそば、明久はところてん、光一はつけ麺を武器にして闘いへと身をゆだねていく。


――しばらくお待ちください――


「……雄二、一時休戦にしない?」
「……そうだな。この戦いはあまりにも不毛だ」
「……というか、やる意味あったのかな? 食い物を粗末にしただけな気が」

3人とも、互いの食べ物でべたべたになっていた。

「明久、シャワー借りるぞ?」
「うん。タオルは適当なの使っていいよ」
「言われなくてもそうする」

そう言うと、気持ち悪そうに来ているシャツをつまみながら雄二が脱衣所へと消えていく。
続いて、バサバサと景気良く衣服が脱ぎ捨てる音が聞こえてきた。

「ところで明久、ガスは大丈夫だろうな?」
「え? ……あっ、払うの忘れてた」

『ほわぁぁーっ!!』

ガチャッ! ズカズカズカ

「……もっと早く思い出せやコラ」

腰にタオルを巻いた雄二は、寒さで全身に鳥肌を立てていた。

「ごめんごめん。えっとね、心臓に近い位置にいきなり冷水を当てると体に悪いから、まずは手や足の先にかけてから徐々に心臓へと……」
「誰が冷水シャワーの浴び方を説明しろって言った!?」
「何熱くなってるのさ雄二。そうだ、冷たいシャワーでも浴びて冷静に」
「浴びたから熱くなってるんだボケ! ……くそっ、このままじゃ風邪ひいちまう」
「けど、湯が出ない事実は変わらないだろ?」

週末で、しかも時間は遅い。
だからガス会社はもうやっておらず、どんなに急いでも明日以降になる。

「やれやれ……仕方ない、2人とも外へ出るぞ」
「外? 俺か雄二の家にでも行くのか?」
「それでもいいけどな。どうせならシャワーだけじゃなくて、プールもある所に行こうぜ」

近くにスパリゾートなんてあったかどうか、2人は脳内を検索し始める。
が、ヒットはなく余計に疑問符が浮かび上がった。

「ああ。シャワーもプールもあって、ここから近くて、尚且つ金もかからないところがあるだろうが」
「ええ? おいおい、そんな好条件が……ああっ、あそこか」
「オッケー、すぐに用意するよ。水着はどうするの? 光一は僕のサイズが合うから貸すけど?」
「ボクサーパンツで泳ぐさ。水着と大して変わらないだろ」
「じゃあ貸してくれ」

手早くすまして、3人は戸締りをした後に外へ。
そして目的地へと駈けだして行った。


その2時間後

「……で、何か言い訳はあるか?」

場所は文月学園の宿直室にて。
3人は揃いもそろって、鉄人こと西村教諭の説教を受けていた。

「「こいつが悪いんです!」」

綺麗にハモる明久と雄二の声。
お互いを指差す姿勢まで、全く同じだった。

「雄二がまともな差し入れを持ってこないからだろ!」
「ガス代を払い忘れていたお前が悪い!」
「水が出るだけマシだろ!」
「水すら出ない事もあるのか!?」
「おい落ち着けよお前ら! ちょっ、マジで!」

目の前でボルテージが上がっている鉄人を見て、光一は焦って2人を止めようとする。

「…………もういい。よくわかった」

と、その様子に呆れ果てた鉄人は、額に手を当てため息をついた。
2人は特に気にはしなかったが、光一にはそれが嵐の前兆のように思えてならなかった。

「わかってもらえました? それは良かったです」
「んじゃ、わかって貰えたところでそろそろ帰るか。いい加減時間も遅いしな」
「そっそうだな? それじゃ、失礼しま……ぐえっ!」

頭を下げて出て行こうとした3人の首を、その太い腕で抱え込む鉄人。
ぐいぐいとすごい力で締め付けられ、3人は下手な抵抗をすれば首の骨を折られかねない。
自己防衛本能が弾きだした答えに、大人しくなる。

「そう急ぐ事もないだろう3人とも。帰るのは恒例のヤツをやってからでも遅くはないよな?」
「あっ……やっぱり……」
「そっそうですね……是非、そうさせてもらいます……」
「お、俺も、そうさせてもらおう……」

こうして、3人は朝まで鉄拳付きの補習を受ける羽目になった。



「てな事があって、おかげで散々な週末だったよ」

週明けの教室、朝のHRが始まるまでの時間。
いつものメンバーで卓袱台を囲い、降りかかった不幸についての説明。

「そうじゃったか。それは災難じゃったのぅ……」

気遣うように柔らかな表情を浮かべる秀吉。

「おまけに今週末はプールの罰掃除とくれば、気が滅入るな」
「…………重労働」

ムッツリーニが明久の隣で、ボソリと呟いた。

「だよね。あんな広い所を掃除なんて、何か褒美が欲しい位だよ」
「褒美という程じゃないが、“掃除をするのならプールを自由に使っても良い”と鉄人に言われたぞ?」
「え? そうなの?」
「ああ。だから秀吉とムッツリーニも、今週末にプールに来ないか?」

折角の貸し切りなら、と早速2人を誘い始める。
まず最初にムッツリーニが頷こうとして……

「ただし、ムッツリーニにも掃除を手伝ってもらうけどな」
「…………」
「なあ雄二、折角だし姫路と島田にも声をかけておこうか?」
「…………ブラシと洗剤を用意しておけ」

雄二の言葉に動きを止めたが、光一のフォローにあっさりと頷いた。

「うむ、そうじゃな。貸し切りのプールなぞ、こんな時でなければ中々体験できんじゃろうし、相伴させてもらうかの。無論、ワシも掃除を手伝おう」
「え? 結構大変だと思うけど、いいの?」
「うむ、お安いご用じゃ」

と、快諾する秀吉。
明久にしてみれば、水着姿を見せてくれるのだから来てくれるだけでも感謝の代物。
なのに掃除を手伝ってくれるのだから、なんていい奴なんだろうと心の底から思った。

「んじゃ、後は……おーい姫路に島田。ちょっといいか?」
「どうしたの久遠? 何か用?」
「呼びましたか、久遠君?」

まずは美波が、それに続いて瑞希もやってくる。

「2人とも今週末は暇か? 学校のプールを貸し切りで使えるんだけど、良かったらどうかな?」
「「え……?」」

プール、という単語で2人が一瞬ビクンと反応する。

「あ、さては2人とも予定があったりする?」
「い、いや、別に予定はないんだけど。その、どうしようかな……? プールって言うと、やっぱり水着だし……」
「そ、そうですよね。水着ですよね……その、えっと……」

美波は自らの胸部へ、瑞希は腹部へとそれぞれ視線を送った。
水着となれば、色々と見られる訳なので自身の悩みの個所が晒されるのに、少々躊躇いを感じていた。

「女には女の悩みがあるって所か? ……ついでに言うと秀吉も来るぞ? 明久に水着を見せに」

からかうような光一の言葉で、2人は急に目つきを変えて秀吉に鋭い視線を送った。

「ひ、卑怯よ木下! 自分は自信があるからって!」
「そ、そうですっ! 木下君はズルいです!」
「??? お主らは何を言っておるのじゃ?」

突然非難される事に困惑する秀吉。
渦中の明久も、当然ながら疑問符を浮かべていた。

「で、どうするんだ2人とも?」
「い、行くわ! その、イロイロと準備をして……」
「そ、そうですね。準備は大事ですよね」

複雑そうな顔をしつつ、2人は一応肯定の意を示した。

「光一よ、姉上を誘わんのかの?」

姉上とは、秀吉の姉であり光一の想い人である木下優子。
最も、光一はとっくにフラれてる訳だが……。

「別に誘う理由ないだろ。そもそも優子は、明久や雄二達と殆ど面識ないんだし」
「あれ? 吹っ切れたの?」
「あの清水とか言う暴走ドリルの領域に入りたくないだけだ」

余談だが、美春は美波と融合がしたい一心で、光一の持つ融合用の腕輪を狙う様になっていた。
自分以外に使えないと言っても聞こうともしない為、殆ど力尽くで追い返しているのだが……。

「……光一なら、きっといい人が見つかるよ」
「そうね……ウチに出来る事があったら何でも言って? 協力は惜しまないから」
「ありがとう……あと島田、そう言うなら明久を力尽くでデートに連れていくのはやめような?」
「……そうね」

流石に美春がとはいえ、自分絡みで散々迷惑をかけてる以上はと、素直にそう言った美波だった。

「さて、重い話はここまでだ。雄二、霧島にも声をかけておけよ?」
「……言われなくてもそのつもりだ」
「あれ? 随分と素直な返事だな?」
「うんうん。雄二も大人になったね」

憮然とした態度で、雄二が意外な返事をしたことに光一は疑問を感じ、明久はうんうんと頷く。

「いや、そういう問題じゃない」
「ん? そういう問題じゃなかったら、どういう問題だ?」
「いいか、想像してみろお前ら。俺の立ち場で、後々になってからこの事が翔子に知られるという状況を。

雄二の真剣な顔につられ、2人は真剣に想像をしてみた。
雄二の立場で、水着の女子とプールで遊んだという事実が、翔子に知られた場合。

「樹海の奥……いや、湖の底……」
「深海魚の餌……いや、溶岩の不純物……」
「俺の死体の処理方法とその末路まで想像する必要はないが、まぁそんなところだ」

と、2人して納得した事情だった。
明久にしてみれば、翔子の水着姿を見る事が出来るのだから、願ったりかなったりだが。

「とにかく、全員オッケーなようだな。んじゃ、土曜の朝10時に校門前で待ち合わせだ、水着とタオルを忘れるなよ」

雄二のシメの台詞と同時に、鉄人が教室のドアを開ける音が響いた。


そしてその週末。

「おはよー。絶好のプール日和だね」

雲1つない快晴の青空の下、明久は校門に立つ秀吉と光一に瑞樹、そして……。

「よう明久。今日は目いっぱい楽しもうな?」
「おはようじゃ明久、良い天気じゃな」
「おはようございます明久君、今日は良い1日になりそうですね」
「おはよう吉井君」
「あれ? なんで秀吉のお姉さんが?」

ふと、女子制服を纏った秀吉かと思いきや、彼の姉の優子がそこにいた。

「光一と秀吉が話してるのを聞いたから、飛び入りで悪いけど折角だから連れて来て貰ったのよ」
「そうなんだ。じゃあ折角だし、目いっぱい楽しまないとね」

そして、或る人影に気がつく。

「ムッツリーニ、おは……」
「…………!!(カチャカチャカチャ)」

鬼気迫る表情で、カメラの手入れをしているムッツリーニ。
彼にしてみれば、ここは絶好の撮影チャンスでもある。
明久に構う暇などないと言わんばかりに、カメラに集中していた。

「ムッツリーニ、準備は良いけど無駄になるだろ?」
「…………なぜ?」
「いや。だってムッツリーニはどうせ鼻血で倒れるだろうし」
「そうだよね。チャイナドレスどころか、葉月ちゃんの着替えですら鼻血の海に沈む位だもん」

という明久の言葉に、ムッツリーニは肩をすくめて見せた。
そして大きなスポーツバッグを手に取り、2人の前に突きつける。

「…………甘く見て貰っちゃ困る」

と言いながら、そのスポーツバッグを開けて2人に見せる。

「…………輸血の準備は万全」
「どこで手に入れたかは聞かないが、ある意味準備が良いな?」
「うん、最初から鼻血の予防を諦めてる当たりが男らしいよね」

鞄いっぱいに入っていた携行用の血液パックをみて、とりあえず救急車は必要ないなと思う2人だった。

「……つくづく、異常なメンバーね」
「まあまあ。趣味は異様かもしれませんが、良い人たちですよ?」
「……姫路さんも、すっかりなじんでるわね?」

“朱に交われば紅くなる” 

その言葉を実感した優子だった。

「準備と言えば、秀吉は新品の水着を買うとか言ってたよね? 忘れずに買って来た?」
「うむ。無論じゃ」
「ちなみに買って来た水着じゃが……」
「…………!!(くわっ!)」

秀吉の言葉にムッツリーニが目をむく。
当然明久も表にこそ出さないが、興味津々。

「……トランクスタイプじゃ」
「「バカなぁぁぁああっ!!」」
「……何してるのかしら?」
「Fクラスは女子が2人しかいないんだから、ある意味飢えてる状態なんだよ。増して秀吉は優子と瓜二つの童顔の女顔で、しかもスリムと来てるんだから」

状況についていけない優子に、光一が呆れながら事情説明。

……タタタタタッ!

「バカなお兄ちゃん、おはようですっ!」
「わわっ!?」
「もう葉月ってば、アキがビックリしてるでしょ?」

明久の背中に、葉月が飛び付いた。

「あれ? 葉月ちゃんか、久しぶりだな」
「あっ、鉄砲のお兄ちゃん。エへへー、2週間ぶりですっ」
「鉄砲のお兄ちゃん、だって」

天真爛漫を体現してるように笑う少女、島田葉月。
明久を好いており、婚約者を自称する少女。

「バカなお兄ちゃんは冷たいですっ。酷いですっ。どうして葉月は呼んでくれないんですか?」
「あ、うん。ごめんね葉月ちゃん」

「……呼んだら呼んだで、明久がどこぞのある人物に八つ裂きにされるだろうがな」
「……どうしてFクラスはこうも常識を足蹴にする人達ばかりなのかしら?」

ボソリと呟いた光一の台詞に、正直自分の常識を疑い始める優子だった。

「家を出る準備をしていたら葉月に見つかっちゃって。どうしてもついてくるって駄々こねて聞かないもんだから……」

と、美波がため息交じりに呟く。

「別にいいと思うけどな? 飛び入りがあって困る理由もないし」
「それもそうだけど……あれ? 坂本はまだ来てないの? ウチが最後だと思ったのに」
「いえ、もう来てますよ? 今職員室にかぎを借りに行って……あ、丁度戻ってきたみたいです」

瑞樹の説明の最中に、校舎の方から雄二と翔子が歩いてきた。

「おはよう雄二、霧島さん」
「おう。きちんと遅れずに来たようだな」
「……おはよう。あれ、優子?」
「あっ、代表」
「お兄さん、おはようです」

雄二の粗野な外見に物怖じもせず、元気よく挨拶をする葉月。

「ん? ちびっ子に木下優子も来たのか?」
「ちびっ子じゃないですっ、葉月ですっ!」
「ええ。折角だからね」
「んじゃ、早速着替えるとするか。女子更衣室のカギは翔子に預けてあるからついて行ってくれ。着替えたらプールサイドに集合だ」

雄二の言葉に従い、一旦メンバーは男女に分かれる。
瑞希と美波、優子は翔子に。
明久と光一とムッツリーニと秀吉と葉月は雄二に。

「……ん? こらこら、葉月ちゃんと秀吉は向こうでしょ? 霧島さんについて行かないとダメだよ」
「えへへ。冗談ですっ」
「ワシは冗談じゃないのじゃが……?」

完全に女として認識されてる事に、改めて実感した秀吉だった。

「ほら、遊んでないで行くわよ葉月、木下」
「し、島田!? ついにお主までそんな目でワシを見るように!?」
「ちょっと島田さん! 秀吉は……」
「あの……それなら、木下君は1人でどこか別の場所で着替えるっていうのはどうですか?」

と、おずおずと手を挙げて提案する瑞希。
というより、自分の常識がことごとく無視されてる事に、頭を抱える優子。

「……秀吉、あんた女って認識されてるって言う話、本当なのね?」
「いや、前からだろ? ガキの頃から男からのラブレターは全部秀吉宛てに行ってたし、優子には一通も……」
「代表、カギ貸して?」

翔子からカギを借りて、女子更衣室のカギを開け始める優子。
そして光一の腕を掴んで、そのまま女子更衣室へと連れ込む。

「あの、どうして俺を女子更衣室に? それに俺の腕を掴んで……まっ待て! その関節はそれ以上……」

断末魔が響き渡った。

「……ねえ、何で光一って秀吉じゃなくてお姉さんの方を、あそこまでショック受ける位好きになったのかな?」

葉月の耳を抑えながら、ふと思う疑問をつぶやいた明久。

「すまんが、俺にも全然わからん」
「…………(コクコク)」
「その前に、ワシが比較される事を疑問に思わんかの?」

その数秒後、光一が気を失った状態で放り出され、その中で優子が返り血を拭っていた。

「さ、早く着替えましょ? 時間がもったいないし」
「あっ、ああ、そう……だな。明久、外された関節を入れてから運んでやれ」
「そっそうだね。待ってて光一、今治してあげるからね?」


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。