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試験召喚戦争編
第二問
問題
以下の意味を持つことわざを答えなさい
(1)得意な事でも失敗してしまう事
(2)悪い事があったうえに、更に悪い事が起きる喩え

姫路瑞希の答え
(1)弘法も筆の誤り
(2)泣きっ面に蜂

教師のコメント
正解です。他にも(1)なら“河童の川流れ”、“猿も木から落ちる”、(2)なら“踏んだり蹴ったり”や“弱り目に祟り目”などがありますね。


久遠光一の答え
(1)サルを木から撃ち落とす
(2)泣きっ面にマシンガン

吉井明久の答え
(2)泣きっ面蹴ったり

教師のコメント
君たちは鬼ですか


土屋康太の答え
(1)弘法の川流れ

教師のコメント
シュールな光景ですね











「Fクラスは、Aクラスに“試験召喚戦争”を仕掛けようと思う」

壇上に自己紹介の為立った筈の雄二の、いきなりの提案。
それに対し、クラスメイト達は当然非難轟々の嵐を巻き起こした

「勝てるわけがない!」
「これ以上設備が落とされるなんて嫌だ!」
「姫路さんが居たら何もいらない!」

選りすぐりのバカだからこそのFクラスが、逆の意味での選りすぐりのAに戦争を仕掛ける。
試召戦争は負ければ設備を1ランク落とされるのだから、更に最低になる事を考えれば自殺行為に当たるそれに、非難の嵐が吹き荒れるのは当然だった。

だが雄二は、その非難の嵐に怯む事もなく、代表らしい堂々とした姿を崩す姿勢が見られない。
ある程度治まった処で、不敵な笑みを浮かべ口を開く。

「皆がそう思うのも無理もない。だがこのクラスには、勝てる要素が揃っているからこその発案だ。今からそれを説明してやる」

自信に満ちたその発言に、クラスはしんと静まった。
不敵な笑みを崩さないまま、雄二はある個所に視線を向けた。

「おい、康太。いつまでも姫路のスカートの中をのぞいてないで、前に出てこい」
「…………!!(ブンブン)」
「は、はわっ!」

恥も外聞もなく、低姿勢からの覗きこみの体勢を指摘され、必死に顔と手を振って否定し始める少年。
顔に付いた明らかな覗きの証拠を隠しつつ、前に出ていく。

「紹介しよう。こいつがあの有名なムッツリーニだ」
「…………!!(ブンブン)

ムッツリーニと言う名に、クラスがざわめいた。
その名は男子から畏怖と畏敬を、女子からは軽蔑を持ってあげられており、その正体は謎。
……とされていた人物が、今目の前にいる。

「バカな、奴がそうだと言うのか?」
「だが見ろ、いまだ必死に手で押さえて隠そうとしてるぞ?」
「ああ、ムッツリの名に恥じない姿だ」

ただ1人、瑞希だけは頭に疑問符を浮かべていた。

「姫路の事は説明するまでもないだろう。皆だってその力は知ってるはずだ」
「えっ? わっ、私ですかっ!?」
「ああ、主戦力だ。期待している」

その容姿と共に知られている彼女の成績を考えれば、もっともな話である。

「そうだ、俺達には姫路さんが居るんだった!」
「彼女なら、Aクラスにも引けを取らない」
「ああ。彼女が居れば何もいらない」
「木下秀吉だっているし、俺も当然全力を尽くす。」

次に、学力ではあまり聞かない物の、優等生である双子の姉と演劇部のホープという要素で有名な人物。
そして自身もまた、代表として名乗りを上げた。

「坂本って、確か小学生のころは神童とか呼ばれてなかったか?」
「それじゃあ、実力はAクラスレベルが2人も居るってことかよ? もしかしたら、やれるんじゃないか?」
「ああ、なんかやれそうな気がしてきた!」

士気は確実に上がっていき、ほぼ全員やる気が出始めて来た。
そこへ雄二の一言

「それに、久遠光一と吉井明久、このコンビが居るんだ」

悲鳴が木霊した。

「久遠って……あの学園の過激派筆頭って話の!?」
「ああ。マフィアからスカウトが来てるって話だろ?」
「けど、吉井明久って誰だ? 久遠とコンビってことは、相当な悪人ってことじゃないか?」

先ほどとは違う意味でざわめき始めた。

「ちょっと雄二! どうしてそこで全く関係ない僕の名前を呼ぶのさ!? しかもなんか、変な設定までつけられてるよ!!?」
「久遠の事は知っているみたいだから良いとして、明久を知らないなら教えてやる。こいつは“観察処分者”だ」
「……それって、バカの代名詞じゃなかったっけ?」

誰かのその発言は、明久の心に深く突き刺さった。

「ちっ違うよっ! ちょっとお茶目な16歳につけられる愛称で……」
「そうだ、バカの代名詞であり、久遠の腰巾着同然の雑魚だ。ハンデにはちょうどいい」
「肯定するな! それに自分から降っておいて、そのセリフはないよね!?」
「まあ落ち着け明久。これから挽回してけば良いだろ?」

光一になだめられ、一先ずはと席に着く明久。
それに構う事なく、政治家の演説を思わせるような堂々たる態度で言い放った。

「とにかくだ! 俺達の力の証明として、まずはDクラスを征服したい。皆、この境遇は大いに不満だろう!?」
『当然だ!』
「ならば全員筆を執れ! 出陣の準備だ!」
『おおーーーっ!!』
「俺たちに必要なのは、卓袱台ではない! Aクラスのシステムデスクだ!」
『うおおーーーっ!!
「お、おー……」

雰囲気に押され、瑞希も懸命さが見て取れるように小さく拳をふりあげる。
その姿に明久が和んでる所に、雄二の一言。

「明久には、Dクラスへの宣戦布告の為の死者になって貰う。無事大役を果たせ!」
「……下位勢力の宣戦布告の使者って、大抵酷い目に遭うよね? しかも今字が違わなかった?」
「大丈夫だ、だまされたと思って行ってみろ。俺は友人を騙す事はしない」
「わかったよ、それなら使者は僕がやる」

下位勢力との試召戦争など、面倒でしかない。
だからこそ、そんな面倒事を持ってくる奴に危害を加えない訳がないだろう。

結局雰囲気に流され、明久は意気揚々と出ていった。
ある程度時間がたったところで、雄二が一言。

「とまあ、ああいうバカだ。皆も危なくなったら、あいつを囮にしてさっさと逃げるように」
「やっぱりか……仕方ない、俺も行ってくる」
「お前も物好きだな」
「お前が酷過ぎるだけだ」


数分後


「騙されたぁっ!!」

そのしばらくの後、明久が教室に転がり込んできた。
Dクラスにつかみかかられ、ぼろぼろになった姿を見た雄二は一言。

「やはりそう来たか」
「やはりって何だよ、使者への暴行は予想通りだったんじゃないか! 光一が来てくれなかったら、今頃どうなってたと思ってるんだ!?」
「それ位予想できないで、代表が務まる訳ないだろ」
「少しは悪びれろよ!!」
「まあ落ち着けよ。こいつが酷いのは今に始まった事じゃないだろ?」

そこへボストンバッグを持った光一が戻ってきて、明久を宥めた。
明久と違い無傷のその姿に、雄二は一言。

「撃ってないだろうな?」
「問題ない。コレクション見せれば、大抵の奴は怯える」
「これは思わぬ収穫だな。生贄ではなく、お前を行かせるべきだったか?」
「生贄って言った!? 今生贄って言ったな!!?」

内容を考えたら、当然の表現である。

「吉井君、大丈夫ですか?」
「大丈夫、吉井?」

制服までぼろぼろにされた明久に、瑞希と美波が駆け寄った。

「あ、うん。平気だよ、心配してくれてありがとう」
「そう、良かった……ウチが殴る余地は、まだあるんだ」
「ああっ! もうダメ、死にそう!!」

冗談と分かっていても、光一はその言葉に戦慄を覚えた。
そしてうめき声を上げ始めた明久に、手を差し伸べる。

「……ほら、立てるか明久?」
「え? うん、ありがとう」
「そんな事より、今からミーティング行うぞ?」

と言う雄二の言葉に従い、主要メンバーは屋上へ。


そして、屋上にて。

「で、明久。時間は伝えたのか?」
「うん、今日の午後からって伝えといた。だから先にお昼ご飯だね?」
「じゃあ明久、今日くらいはまともな飯食えよ?」
「そう思うなら、パンでもおごってくれると嬉しいな?」

彼、吉井明久は生活破綻者である。
彼は1人暮らしであり、親からの仕送りを元手に生活しているが……仕送りを後先考えず趣味に費やす為、本人いわく“清貧生活”を送っていた。

「あれ、吉井君ってお昼食べない人なんですか?」
「いや、一応食べてるよ?」
「水と塩、もしくは砂糖じゃ食べるとは言わん。全く……ほれ」

光一は取り出したカロリーメイトを、明久に投げ渡した。
それを見て、明久は表情を輝かせる。

「賞味期限切れだけど、良いか?」
「あっ、うん。食べられるなら」
「お前、明久の奥さんみたいだな? 何かと世話焼いてる事と言い」
「それは身近にズボラが……」
「光一よ、その先はならん!!」

光一が口を滑らせようとしたところで、秀吉の制止が入った。
その事に気づいて、ホッと胸をなでおろした。

「……そっそうだったな。すまん秀吉、助かった」
「ズボラが、どうかしたのか?」
「いや、何でもない。それよりさっさと食っちまおう」
「そっそうじゃ。戦争に向けて、力をつけねば!」

多少不自然そうに、光一と秀吉は話をそらした。
その姿に疑問符を浮かべるも、皆は食事に。

明久は光一からもらったカロリーメイトを、少しずつ味わい噛みしめていた。

「久しぶりに固形物を食べるって、幸せだね……」
「全く……彼女でも作って、生活全般を管理してもらった方が良いんじゃないか?」
「光一が管理してやれよ。明久みたいなバカに彼女なんて無理だろ」
「雄二、せめて即答で言わないで!! ……ううっ、何だか変わったチョコレート味だね?」
「いや、それチーズ味だ」

色がドス黒いのは、明久が血の涙を流しているからである。
ふと光一が瑞樹に視線を向け、瑞希が何か決心した様な表情をするのを見て、ほほ笑む。

「……あの、良かったら私が、お弁当を作ってきましょうか?」
「ゑ? ……ほっ、本当に良いの!?」
「はい。明日の昼でよければ」
「へぇっ、良かったじゃないか明久。女子の手作り弁当なんて、撃ち殺したい位羨ましいぞ」
「うん! ……でも、後半が全然笑えないよ?」

冗談だとは分かっていても、光一だからこそ笑えない明久だった。

「ふーん。瑞希って、随分優しいんだね。吉井だけに作ってくるなんて」
「あ、いえ! その、皆さんにも……」
「え? 俺達にも? いいのか?」
「はい、嫌じゃなかったら」

女の子の手料理を断る外道など居る訳もなく、全員が喜んだ。
作る当人は、7人分となると大変なのに、嫌な顔一つしない。

その様子に明久は、再度彼女に再度関心の視線を向けていた。

「それじゃ雑談はそこまでにして、そろそろ本題に入らないか雄二」
「ん? ああ、そうだな」
「気になっておったのじゃが、なぜDクラスなのじゃ?」

まず真っ先に、秀吉が疑念をぶつけた。
それもそのはず、段階を踏んでいくならEクラスが妥当であり、目的はA。

「簡単だ。姫路に問題がない今、Eなら正攻法でも勝てるが、Dクラスは難しい。それに初陣だから派手にやって景気つけたいし、Aクラス攻略の為に必要な要素がDクラスにはある」
「成程。つまりこれは、最初のステップってわけだな?」
「ああ。ここにいるメンバーは最強だ、お前達が俺を信じて協力してくれるなら勝てる!」

雄二の確信した表情による言葉に、全員が頷いた。
そして光一と明久は、拳を打ち合う。

「それじゃやるか、明久」
「うん! 僕達コンビの力、見せてやろう!」
「代表として、頼りにさせてもらうぞ。光一だけ!」
「ひどい!!」

Dクラス VS Fクラス
今年度初の試験召喚戦争が、幕を開ける





「ほぉ~っ、今年の2年は1学期初日から試召戦争やろうってのかい? 面白いじゃないか、承認してやりな」
「承知いたしました」
「さて、どうなるかね? 見せて貰おうじゃ……ん? Fクラスと言えば、例のガキどもが居るクラスかい?」
「はい。吉井明久、久遠光一……“観察処分者”と、その候補です」
「そうかい、それはますます面白そうじゃないか……見せてもらうよ、ガキども」


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