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間話集
第二十八問 (如月グランドパーク編 エピローグ)
「お疲れサマでシタ。どうでシタカ? 結婚したくなりまシタか?」
「あれと結婚を結びつけて考える事が出来るのは、お前と明久ぐらいだろうな……」

明久考案の、秀吉による雄二の声真似で“姫路の方が翔子よりも好みだな。胸も大きいし”というセリフをアナウンス。
そこで釘バットが飛び出る仕掛けという、絶叫アトラクション(雄二限定)。

「オカしいデスね? 危機的状況に陥っタ2人の男女ハ、強い絆デ結ばれルという話なのデスが……」
「まぁ、襲い来る危機が結ばれるべき相手自身でなければそうなるかもしれないが……」
「……そろそろお昼」

翔子が噴水の上の方に見える多時計を見て、そう呟いた。
ふと、スタッフに鞄を返してもらおうと声をかけようとしたところで……

「デハ、豪華なランチを用意してありマスので、こちらへいらして下サイ」
「では、私がご案内させていただきますので、チーフは例の企画の準備を」
「ちょっと待て、何だ例の企画とは?」
「? どうかされましたか? 坂本翔子さん?」

ふと、スタッフが翔子の様子がおかしい事に気付き、声をかける。
雄二もその様子を見て、疑問に思った。

「翔子、どうした?」
「……なんでも、ない」

スタッフの誘導に従い、しばらく歩くとこじゃれたレストランが見えてくる。
そこからさらに中に入り、あるパーティー会場の様な広間に出る。

「此方でございます」

そこはレストランというより……。

「……クイズ会場?」

そう、そこはクイズ会場の様な雰囲気だった。
一応テーブルには、豪華な料理が並べられている。

「いらっしゃいませ、坂本雄二様、翔子さま」
「では、こちらへどうぞ」

そこにボーイとウエイトレスが、それぞれの案内をスタッフから任される。

「秀吉、島田、ボーイとウエイトレスの真似事か?」
「秀吉? 何のことでしょうか?」
「そっそうですよ。別に、これから本格ムぐっ!」

秀吉は顔色一つ変えず、丁寧に切り返す。
逆に隠し事がヘタクソな美波の口を滑らせようとしたのを、ギリギリでスタッフ改め光一がそれを塞ぐ。

「しっ失礼しました(バラしてどうすんだよ?)」
「むぐむぐっ!(ごっごめん……)」
「それでは、こちらへどうぞ」
「あ、ああ……」

後は秀吉と美波が2人を連れて、会場へと移動。
そして光一は、着替えをする為にその場を後にした。


<皆様、本日は如月グランドパークのプレオープンイベントにご参加頂き、誠にありがとうございます!>

司会服に着替え、髪もオールバックにした光一がアナウンスを告げる。

<何と本日ですが、この会場に結婚を前提としてお付き合いを始めようとしている高校生のカップルが、いらっしゃるのです!>

その言葉に、雄二は水を吹き出す。

<そこで、当如月グループとしてはそんなお二人を応援する為の催しを企画させていただきました! 題して、【如月グランドパークウエディング体験】プレゼントクイズ~!>

そこで、出入り口を封鎖する音が響く。
この辺りは、行動パターンを熟知している明久の手回しである。

<本企画の内容は至ってシンプル。こちらの出題するクイズに答えて頂き、見事5問正解したら弊社が提供する最高級のウエディングプランを体験していただけるというものです! もちろん、ご本人の希望によってはそのまま入籍という事でも問題ありませんが>

大ありである。
……が、ここでは割愛という事で。

<それでは坂本雄二さん&霧島翔子さん! 前方のステージへとお進みください!>

司会が2人の席を示し、観客の視線が一斉にそっちに向いた。

「……ウエディング体験……頑張る……!」
「落ち着け翔子。そう言った物はだな、きちんと双方の合意の元に痛だだだだっ! 耳が千切れるっ! 行く! 行くから離してくれっ!!」
「では、こちらです」
「テメ、明久か!? 痛だだだだだ!!」

やる気満々の翔子と、それに耳を引っ張られる雄二がスタッフ(明久)に誘導される。
2人が壇上に上がり、クイズの回答席へと案内された。

<それでは【如月グランドパークウエディング体験】プレゼントクイズを始めます!>

そう言いながら、司会は問題を受け取る。
それを見るともう良い笑顔で、問題を読み上げた。

<では第一問! 坂本雄二さんと霧島翔子さんの結婚記念日はいつでしょうか?>

……ピンポーン!

雄二はおかしいと言った具合に呆けており、その間に翔子がボタンを押す。

「……毎日が記念日」
「やめてくれ翔子! 恥ずかしさのあまり死んでしまいそうだ!」

<お見事! 正解です!>

当然これは出来レースである
睨みつける雄二に対し、司会は観客に見えない角度で片目を瞑って返した。

<では第二問! お二人の結婚式はどちらで挙げられるのでしょうかっ?>

……ピンポーン!

今度は雄二が先手を取り、ボタンを押した。
彼の真意は、必ずや間違える事である。

<はいっ! 答えをどうぞっ!>

「鯖の味噌煮!」

<正解ですっ!>

「何ィッ!?」

<お2人の挙式は当園にある如月グランドホテル・鳳凰の間、別名【鯖の味噌煮】で行われる予定です!>

「待ていっ! 絶対その別名はこの場で命名しただろ! 強引にも程があるぞ!」

<では第三問! お二人の出会いはどこでしょうかっ!>

雄二の言葉を無視し、司会は強引に進める。
ボタンを押そうとする雄二……だが

「……させない」
「ふぉおおおっ!? 目が、目がぁっ!」

目を潰して阻止したうえで、ゆっくりとボタンを押す翔子。

<はい、解答をどうぞ!>

「……小学校」

<正解です! お2人は小学校からの長い付き合いで今日の結婚にまで至ると言う、何とも仲睦まじい幼馴染なのです!>

完全に雄二の目潰しは気にしない方向だった。

<では第四問まいります!>

……ピンポーン!

問題を読む前に、雄二が先手を打ってきた。
問題を読む前に間違える腹積もりである……が。

「……わかり」

<正解です! それでは、最終問題です!>

目には目を、無視には無視をという方針で強引に正解に。
そしていよいよ最終問題に入ろうとしたとその時。

「ちょっとおかしくな~い? アタシらも結婚する予定なのに、どうしてそんなコーコーセーだけがトクベツ扱いなワケ~?」

そこへ、不愉快な声が会場に響いた。
先程雄二達に絡んできた、チンピラカップルである。

「あの、お客様。イベントの最中ですので、どうか……」
「ああっ!? グダグダとうるせーんだよ! オレたちゃオキャクサマだぞコルァ!!」
「アタシらもウエディング体験ってヤツ、やってみたいんだけど~?」
「でっですから、これは……」

今すぐスタンガンをブチ込みたい気持ちを抑えつつ、司会者は宥めようとするも聞く耳持たず。
そばに控えていたスタッフ(明久)も、司会者の手伝いで宥めるも同様。

「ゴチャゴチャ抜かすなってんだコルァ! オレたちもクイズに参加してやるって言ってんだボケがっ!」
「うんうんっ! じゃあ、こうしよーよ! アタシらがあの2人に問題出すから、答えられたら2人の勝ち! 間違えたらアタシらの勝ちってコトで!
「そんな勝手な! ですからこれは……」

明久をはじめとするスタッフを余所に、そのバカップルはズカズカと壇上に上がる。
設置してあるマイクを1つひったくり、いざ問題を出す。

雄二にしてみれば、チャンスでもある為その2人に感謝していた。

「……どうしよう光一?」
「……こうなれば、霧島に賭けるか……って、ダメか」

ふと、司会者の視界に、翔子の腕を握る雄二の姿が。
2人の脳裏には、万事休すという言葉が。

「じゃあ問題だ!」

仕方ないという感じで、明久と光一をはじめ、その場全員が問題を待つ

「ヨーロッパの首都はどこだか答えろっ!」

「……………………」

全員が言葉を失った。

「オラ、答えろよ! わかんねぇのか?」

「(ねえ、ヨーロッパって国だった? 確か違うと思うんだけど?)」
「(ああ。確かヨーロッパは国ってカテゴリじゃないから、その首都なんて答えられる訳がない)」
「(だよね。まさか僕より酷いバカがこの世に存在するとは思わなかったよ)」

明久と光一は、一応アイコンタクトでそう話し合った。

<……坂本雄二さん、翔子さん。おめでとうございます、【如月グランドパークウエディング体験】をプレゼントいたします>

「おい待てよ! こいつら答えられなかっただろ!? オレたちの勝ちじゃねぇかコルァ!」
「マジありえなくない!? この司会、バカなんじゃないの!?」

そのバカップルがぎゃあぎゃあ騒ぎ立てる中、ステージに幕が下りて来る。
光一は“バカはお前らだ”と言いたい衝動を抑えつつその騒ぎを聞き流し、明久達スタッフに指示を飛ばす

「世界って広いわね。まさかアキより酷いバカが存在するなんて」
「全くじゃ。まだまだ明久も捨てたものではないらしいの」
「…………(コクコク)」
「あっ、あはは……」



「おメデとうございマス。ウエディング体験が当たるなんテ、ラッキーでスね」
「……すごく嬉しい」
「喜んでいただけて光栄です。お2人にとって忘れられない、そんな1日にさせて頂きます」

先程の係員と共に、再度光一が扮したスタッフがそれぞれを案内。
光一が先程預かったかばんを、翔子に手渡す。

「そう言えば翔子、お前の持ってきたカバンは何が入っているんだ? 随分と大きいが」
「……別に、何も」
「ではウエディング体験の準備がありますので、こちらのスタッフについて行ってもらえますか?」

スタッフの後ろから、30前後の女性スタッフが歩み出て頭を下げる。
如何にも業界人と言った風貌の人で、如月グループが用意した人員である。

「はじめまして、あなたのドレスのコーディネートを担当させていただきます。一生の思い出になる様なイベントにする為、お手伝いをさせてください」
「おいおい、随分と本格的だな? まさかスタイリストまで付けて来るなんて」
「当グランドパーク初の式ですし、お2人の記憶に残す為にも相応の物にしなければ申し訳ありません」

グランドパークとしては、アトラクションよりもウエディング体験こそが真の狙いだったりする。
だからこそ、文月学園をターゲットにジンクスを作ろうとしたわけだが……。

「ってことは、俺は長い時間待たされるのか?」
「ご安心くだサイ。坂本雄二サンについての対応はワタシどもが考えてありマース」
「お前たちが?」
「ハイ。坂本雄二サンにはコレを使おう、ト」

そう言って、係員とスタッフ(光一)が取り出したのはスタンガン(20万ボルト)

「絶対逃亡を考えるでしょうから、これで気絶させてから着替えさせます」
「こっ光一! テメーっ!!」
「少しガマンして下サーイ」

バチバチと大きな音が響き、雄二が気絶したのを確認した後2人で雄二の着替えを開始した。


そして、会場にて。

<それではいよいよ本日のメインイベント、ウエディング体験です! 皆様、まずは新郎の入場を拍手でお迎えください!>

再度司会に移行した光一のアナウンスにより、園内全てに響くかという位拍手が響き渡った。

「坂本雄二サン、お願いしマス」

今すぐぶちのめそうと言わんばかりに、その係員を睨みつける雄二。

「抵抗すれバ、海胆とタワシの活け造りをアナタノ実家に送りマース」
「やれやれ……まぁ、あくまでもタダの体験だしな。適当に付き合って、さっさと終わらせるか」

雄二がやけに大きく返事をする。

その内心では、いかに逃げ出すかの計算が既に始まっている。
相手が企業ともあり、自身の知識ではその狙いに至る手段云々は全て把握はしきれない。
世間的に結婚させるのが向こうの狙いである以上は、指輪の交換からキスまでの一連の行事に至るまでが勝負の分かれ目。

「さぁ、どうゾ」
「あいよ」

トントンと小さな階段を上り、雄二はそこから見える光景に少々面食らった。

「おいおい……なんだよ、このセット」

数え切れないほどのスポットライトに、ライブステージの様な観客席。
スモークやバルーン、花火に至るまで設備が整っているように見えており、そこから見える電飾に幾らかかっているかすらも雄二には想像できない。

<それでは、新郎である坂本雄二さんのプロフィールの紹介を……省略します>

「おい、手ぇ抜き過ぎだろ!」

思わず雄二は、ツッコんでしまった。

「ま、紹介なんていらねぇよな」
「興味ナシ~」
「ここがオレたちの結婚式に使えるかどうかが問題だからな」
「だよね~」

そこへ大声で会話する2人組が。
それは、何かと横柄な態度をとる、先程のバカップルである。

<……他のお客様のご迷惑になりますので、大声での私語はご遠慮頂けるようお願いします>

「これ、アタシらのこといってんの~?」
「違ぇだろ。俺らはなんたってオキャクサマだぜ?」
「だよね~っ」
「ま、俺達の事だとしても気にすんなよ。要は俺達の気分が良いか悪いかってのが問題だろ? な、コレ重要じゃない?」
「うんうん! リュータ、イイコト言うね!」

「……全然良くねえよ、スタッフに紛れてなきゃぶち殺してる所だ」

マイクを一旦切って、光一は心底呆れたようにそう呟いた。
調子に乗った下卑た笑い声が一層大きく響き渡り、ここまで騒がれている以上迂闊に手を出せない。

「やれやれ、マナーを守らない横柄な客というのは居る物じゃの」
「そうだね。式がブチ壊しにならなきゃいいけど」
「…………(コクコク)」
「全く、あれじゃ殆ど営業妨害じゃない」
「どうしてあんな迷惑な事をするんでしょう?」

それぞれ、バックに控える5人も、流石に計画がめちゃくちゃにされる事を懸念しつつも、何もできない事に若干腹を立てていた。

<……それでは、いよいよ新婦のご登場です>

気を取り直した光一のアナウンスが終わると同時に、会場の電気が消えBGMが流れ始める。
スモークが足元から放出され、雰囲気が高まってく。

<本イベントの主役、霧島翔子さんです!>

アナウンスと同時に行く筋ものスポットライトが、壇上の一点
つまり、純白のドレスに身を包んだ翔子がそこにいた。

「…………綺麗」

誰ともわからないセリフが漏れ、静かな会場に響き渡る。
ゆっくりと翔子が雄二のもとに歩み寄るのを、静かに会場中が注目する。

「……雄二」
「翔子、か?」
「……うん」

雄二の口から、言わずもがなな質問が出て来た
その姿に見惚れ、動揺しているのだから無理もない。

「……どう……? 私、お嫁さんに、見えるかな……?」
「……ああ、大丈夫だ。少なくとも、婿には見えない」

雄二としては、最初考えていた“似合わなきゃ興ざめだな”という言葉等、既に消し飛んでいた。
だからこそ、そのセリフが出ただけでも上出来だろう。

「……雄二」
「お、おい。翔子……?」
「……嬉しい……」

翔子はそれ以上言葉を発することなく、静かに震えだした。
その様子を見て、見惚れていた光一はハッと意識を取り戻す。

<ど、どうしたのでしょうか? 花嫁が泣いているように見えますが?>

「お、おい。どうした……?」

観客から静寂の代わりに、ざわめきが生まれ始める。
そんな中、彼女は小さな、しかしはっきりと聞き取れる声で呟いた。

「……ずっと……夢だったから……」

<夢、ですか?>

「……小さなころからずっと……夢だった……私と雄二、二人で結婚式を挙げる事……私が雄二のお嫁さんになること……私1人だけじゃ、絶対かなわない、小さなころからの私の夢……」

口数の少ない女性が、ぽつぽつと懸命に紡ぐ言葉。
それに込められている強い感情は、誰よりも目の前の男性が良く理解はしている筈だった。

けれど、どういうきっかけで自分への気持ちに至ったかを知っているだけに、尚更に雄二の中では大きな疑問がわき上がる。
何故、そこまで強い気持ちを持つことができるのか、と。

「……だから……本当に嬉しい……他の誰でもなく、雄二と一緒にこうしていられることが……」

そこからは言葉にすることができずに、彼女はまた静かに泣き始める。
会場からはもらい泣きをしたような音が聞こえ始め、神聖な雰囲気に包まれていく。

「やって、良かったね」
「…………(コクコク)」
「うむっ。雄二もここは、ビシッと決めるべきじゃな」
「そうよね……もしあれが、アキとウチだったら……」
「そうですね……もし、私と明久君だったら……」

企画した全員が、おそらく私情抜きでこう思っていた。
そして司会をやる光一も、同様の気持ちである。

目を伏せて乱暴に拭うと、表情を引き締める。

<どうやら、嬉し泣きのようですね。花嫁は本当に一途な方のようです……さて、花婿である坂本雄二さん。お応えをどうぞ>

雄二の返答を待つために、会場が固唾をのんで見守り始める。
しかし雄二の中では……

「翔子、俺は……」

「あーあ、つまんなーい! マジつまんないこのイベントぉ~。人のノロケなんてどうでもいいからぁ、早く演出とか見せてくれな~い?」
「だよな~。お前らの事なんかどうでもいいっての!」

そこへ、場の空気を読まない罵倒が投げかけられた。

「ってか、お嫁さんが夢ですっ、って。オマエいくつだよ? なに? キャラ作り? ここのスタッフの脚本? バカみてぇ。ぶっちゃけキモいんだよ!」
「純愛ごっこでもやってんの? そんなもん観るために貴重な時間割いてるんじゃないんだケドぉ~。あのオンナ、マジでアタマおかしいんじゃない? ギャグにしか思えないんだケドぉ~!」

<お客様、イベントの途中ですのでお静かにお願いします!>

今にも殴りかかりたい気で満ちていた光一だったが、ステージが台無しになる以上は抑える事に。

「うっせえな! コントなら余所でやれ!!」
「え~っ!? コレってコントなのぉ? だとしたら、超ウケるんだケドぉ~!」
「ちげえねえな! ぎゃはははははは!!」

口々に文句を言い、翔子を指さして笑い始める2人組。
光一は我慢しきれず、懐に忍ばせたエアガンとスタンガンを取り出そうとするが……

<んだとテメェらっ! もういっぺん言って見やがれ!!>
<あ、明久君! 落ち着いてっ! ステージが台無しになっちゃいます!!>
<そうじゃ明久よ、ここで暴れればそれこそ大問題じゃぞ!>

そんな放送が入り、誰かが暴れるような音で光一は正気を取り戻す。

<っ! きっ霧島さん!?>

「えっ……?」

ふと見た先では、壇上から花嫁は姿を消しており、ブーケとヴェールだけがその場に残されていた。
それを雄二がゆっくりと拾い上げ、少し湿って重くなったヴェールの重みを感じて一言。

「……はぁっ、やれやれ」


「霧島さん!? 霧島翔子さーん! みなさん、花嫁を探してください!!」

スタッフがバタバタと駈けだし始める。
大がかりな準備等をしてきたのに、たかが2人の所為で中止にまで追い込まれた以上、お偉方は顔を青ざめるだろう。

「坂本雄二さん! 霧島さんを一緒に探してください!」

スタッフが1人、雄二に駆け寄って説得し始める。
が、興味なさそうに一言。

「悪いが、パスだ。面倒だし、便所にも行きたいしな」
「そうですか……便所でしたら、あちらですよ?」

「いや、マジでさっきのウケたな!」
「うんうん! 私……結婚が夢なんです……どう? 似てる? 可愛い?」
「ああ、似てる! けど……キモいに決まってんだろ!」
「だよね~!」

雄二の眼を見て、駆け寄ったスタッフ……光一は、何をするつもりなのかを悟った上での言葉。
それを聞いて、雄二は笑みを浮かべた。

「……わかった。ありがとう」
「それと、こちらを」

翔子が持っていた、大型の鞄を雄二に手渡す。

「これ……そうか。態々すまなかったな」
「では、失礼いたします。翔子さーん! 霧島翔子さーん!!」

と、スタッフは再度花嫁探し。
そして花婿は……

「さて……この衣装、ボロボロにしちまうな。弁償とかしなきゃいけないか? ……まあいいか」

と、駆け出す雄二を見て、笑みを浮かべる光一。

「光一、どうだった!?」
「いや、見つからない……雄二は他に用事があるっつって帰っちまった」
「そんな! 追い掛けて一緒に捜させないと!」
「まあ待て明久」


「ちょっとそこまでツラぁ貸せ!」

そこで、聞こえてくる雄二の怒声。

「ほらな」

それですべてを悟った明久。

「あっ……じゃあ、僕達の出る幕はもうなさそうだね」
「んじゃ、後は雄二と霧島の問題だし、ここからはあいつら次第って事で」
「そうだね。じゃあ皆にもう帰るって伝えないと」

こうして、彼らの長い一日は幕を下ろした。


そして、週明けの学校にて。

「おい、明久に……どうしたんだ光一?」
「なんか、如月……買い物から帰ったら、いきなり優子に関節技の実験台にされた」
「? よくわからんが、お前も災難だな。まあそれより如月グランドパークでは、随分と色々とやってくれたな?」
「あははっ、何を言ってるのさ? 僕は一日家でゲームをやっていたんだよ? 如月グランドパークになんて行ける訳がないじゃないか」
「そもそも何で俺達が、そんなところ行かなきゃいけないんだよ?」
「……そうか。お前らがシラを切ると言うならそれでもいいだろう」
「な、何を言ってるのさ。変な奴だなぁ~」
「だよな」
「ところで、お前たちにプレゼントがある」
「え? なになに?」
「? なんだよ、珍しいな」
「今話題の恋愛映画のチケットだ。気になる相手がいれば、一緒に行くと良い」
「ペアチケット? 俺達がそんなの貰っても、使い道に困って……」
「それじゃあな」

雄二は強引に2人の手にチケットを1枚ずつ握らせ、離れて行った。
手に握らされたチケットを見て、明久と光一は顔を向き合わせる。

「ねえ光一、どうするこれ?」
「誰か誘うか? まあ相手なら……」
「あ、アキっ! そう言えばウチ、週末に映画を見たいと思っていたんだけど!」
「あ、明久君! 私も調度見たい映画があったんですけど!」
「ほぇ? 何々? どうして2人してそんなに殺気立ってるの!?」
「良かったな明久、居るみたいだぞ? まあちょっと落ち着こうな2人とも、まずは明久の……」
「あ゛あ゛っ! もげちゃう! 人体の大事なパーツが色々と取れちゃうよ!!」
「っておーい!」

悲鳴を上げる親友を助け出そうと、一歩前に踏み出す光一。
……そこへ。

「へえっ、映画のペアチケットなんて面白い物もってるね? ボクと一緒に行ったら、映画終わった後で特別実習をしてあげるよ?」
「……その前と後で、ヨガを伝授してあげるわ」
「え!? なっ、何で工藤さんと優子がFクラスにいるんだ? それに優子、この前チケットをやってから偉く不機嫌だけど一体……」
「さあ、まずはタコのポーズをとって貰うわ」
「ちょっ、タコってなんだよ!? マジで待って、脊椎動物の枠から外れたくない!!」

文月学園旧校舎に、断末魔による大合唱が響き渡った。

「全く……余計な事企むからだ、大バカ野郎どもが」


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