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第二学期試験召喚戦争Cクラス戦 後篇
第二百五十九問
明久は走っていた。
校舎に向かい、玄関めがけてグラウンドを駆け抜け、ただひたすらに。

「……昨日の事が、まさかこんな結果に繋がってるだなんて」
「明久が気に病む必要はない。こんな事……俺にだって予想は出来なかった」
「だからって、こんなになった分を背負わせちゃった、僕の所為である事に変わりはないよ!」

瑞希の頑張りと努力、必死さと真剣さ。
そして瑞希の“明久君が大神先輩に傷をつけたのなら、私は大神先輩の策を壊して見せます!”という決意。

そうなる様に促され、それを良い様に利用されて、望まない結果を招く事になる

「理不尽すぎるよ、こんなの……何が弱さは罪だ。弱かったら努力も無駄になる? 冗談じゃない!!」
「冗談じゃないなら……どうする?」
「決まってる!」

別に向こうはルール違反をしている訳ではない。
増して自分達は、散々やってきている以上文句を言う権利も責める権利もない。

「潰してやる……何としてでも、大神先輩の策略を潰すんだ!」
「しかし、向かうべき新校舎側の階段にも、守備部隊は配置されてる筈だ。更に言えば、姫路のいるだろう空き教室付近には、かなりの戦力が配備されてる筈」
「関係ない! やると言ったらやるんだ!」
「上等……走れない身で言う事じゃねえが、駆け抜けるぞ明久!」
「うん!」

玄関から新校舎へと走り、階段を駆け上がって2階、3階へ
そして……

「来たぞ、切り込み隊長コンビだ!」

階段の踊り場で、見張りのCクラスに見つかった。

「まさか、こっちの考えに気付いたのか?」
「久遠が居るなら間違いないだろうが、他に目的があるのかもしれないだろ」
「でも、どっちにしろ通す訳にはいかないわよね」

Cクラス生が3人、2人の前に立ちはだかる。

「……3人か」
「……どうする?」
「……何とか隙を見て援護する」

近くに居る教師は、現代国語の竹内。
2人にとって得意でも苦手でもない科目であり、Cクラス相手なら何とかなる。

……いつもなら。

「しかし、久遠は満身創痍、吉井は昨日の騒動で熱出したって話だけど」
「どうやら無理してきたみたいだな。これなら楽勝じゃね?」
「そうね。今なら私たちだけでもやれそうじゃない?」

光一がおんぶされ、明久の顔色も悪い。
見破るなという方が無理なほど、2人の身体はガタがきている。

「よし、それじゃ……」

コツっ……。

「「っ!」」
「ん……っ!!?」

光一と明久が、3人の後ろに現れた人物を見て、目を見開いた。
それにつられ、Cクラス生の1人が振り向き……顔を青ざめさせた。

「おっ、おい、どうし……っ!!?」
「え……っ!?」

その様子をおかしいと思ったのか、残り二人も振り向いて……同様に顔が真っ青に。

「…………」

5人の視線をその身に受ける人物……大神白夜。
冷血さを漂わせる鉄仮面の表情のままで……

「…………」

Cクラスの生徒に、無言の圧力をかけた。

「「「ひぃっ! せっ、先生! 召喚許可を!!」」」

何を言いたいのかがよくわかった3人は、すぐさま召喚許可の申請。

「……嗅ぎつけられたか」
「でも、こんな事まで予想なんて……」
「リンネの案内してた奴は何年の何クラスだと思ってる?」
「……そっか。校門のやりとり見られたんだね」

相手を必死になるよう炊きつけられた以上、小細工は通用しない。
となれば……

「やっぱ正面突破しかないか」
「そうだね」

『Cクラス 大野徹&藤原圭二&天原優 現代国語109点&121点&115点』
  VS
『Fクラス 吉井明久&久遠光一 現代国語63点&71点』

相手の召喚獣が、武器を構える動作と一緒に突撃。
光一と明久は落ちついて3体をいなし、背後にそれぞれ一撃ずつ叩きこむ。

「もらった!」

『Cクラス 天原優 現代国語115点』
  VS
『Fクラス 久遠光一 現代国語71点』

のこった1体が、光一の召喚獣めがけて武器を振り上げる。
それを明久がカバーし……

「かかった! クロス!」
「あっ!」

『Cクラス 天原優(+吉井明久) 現代国語115点+63点』

光一の融合媒介を使い、敵召喚獣と明久の召喚獣を融合。
日本刀を持ち、編み傘をかぶった流浪の武士風スタイルの融合召喚獣が姿を現す

「はっ? バカかコイツ、戦力をプレゼントし……」
「アウェイクン!」
「あっ!」

光一が腕輪を起動し、フィールドに干渉。
明久はすぐに駆けだし……

「…………」

白夜をキッと睨みつけ、駆けだした。

「あっ、しまった!」
「皆! 切り込み隊長コンビがそっちに行ったぞ!!」
「先生、早く来てください!!」

3人が必死になって、2人を追い始める。


『ん……おいっ! 切り込み隊長コンビだ!』
『げっ! 大神先輩!?
『絶対通すな!』

階段を上り、渡り廊下が見えた所で待ち構えていた相手が、召喚を開始。
更にはこちらも白夜の姿を見るなり、必死の形相で立ちはだかる。

「サモン!」

フィールドに入るなり、明久が召喚獣を召喚。

『Cクラス 高田光彦 物理123点』
  VS
『Fクラス 吉井明久(+天原優) 物理165点+122点』

点数を上回った事で、主導権を得た明久が召喚獣を操作。
フィールドは物理で、ここでAクラスに協力してもらった策が活きてくる。

「え? なんで……」
「天原の召喚獣が取られたのか?」
「だったらすまん天原!」

融合召喚獣は、やられれば両方がアウト。
増してや、観察処分者の場合、フィードバックも両方に来る。

「通すか! サモン!」
「サモン!」
「おっと、サモン!

その場を守っていた他の人も、召喚を開始。
相手が出そろうのを待つことなく、明久は武器を構えて一気に飛び込む

「くら――えぇっ!」

勢い任せに、思い切り刀を叩きつける。
それを盾で受けた相手は、盾が壊れ身体にもダメージ。

『Cクラス 吉岡創路&野々村充 物理109点&99点』
  VS
『Fクラス 久遠光一 物理702点』

「うっ……久遠相手かよ」
「びびんな! 相手は1人で立てないケガ人だぞ!?」
「こっち手伝ってくれ! 吉井が居なけりゃ、こいつは走れねえ!」

見れば、明久の召喚獣が相手の召喚獣の頭に、一撃を叩きこもうと振りかぶっていた。
盾を持った召喚獣が足止めに立ち、一体が明久の召喚獣に向けてトンファーを振り抜く。

「腕の一本がなんだぁっ!」

繰り出されるトンファーの前に左腕を突き出し、相手の攻撃を受け止めた。
痛みのフィードバックを食いしばりつつ耐え、相手の召喚獣を打ち倒す。

「高田!? よくもやりがっ……うぉおっ!」

間髪いれず、トンファーの召喚獣めがけて振り下ろす。
その避けた隙を狙い、光一の召喚獣がその召喚獣の頭を撃ち抜いた。

「調子に乗るなよテメェ! サモン!」
「融合解除!」
「ダブル!」
「なっ!?」

突如現れた伏兵の後ろからの攻撃に、光一は即座に融合を解除し明久が同時召喚を展開。
融合から解放された召喚獣は、召喚者の不在と同時に消え去った。

「待ちなさい吉井に久遠!」
「逃がすもんですか!」

踊り場の2人が追いついてきた。
光一が腕輪を起動しようとして……やめた。

「明久」
「任せて!」

光一の意図を読み取った明久が、相手の攻撃を受けつつ後ろに向かって跳ばせる

「っと、とと、と……」

飛んだ先に居たのは、フィールドを展開していた教師。
そのフィールドが……

「野郎っ! フィールドを消しやがった!」
「竹内先生! 現国はもういいです! 物理で勝負します!」

干渉を起こし、消滅した。

「走れ」
「うん!」

その一瞬を狙い、廊下を駆け抜ける
これで渡り廊下を突破し、目的地まで後もう少し。

「「「サモン!」」」

前方の階段の方から、複数人の召喚の声。

「よし、降ろせ! ここからは俺がやる!」
「え? でも……」
「良いから!」
「……任せた!」

フィールドに入ると同時に、光一を降ろし駆けだす明久。

「バカが、通れると……」
「どこ見てやがる? 爆発」

そう言うや否や、召喚獣が撃ち抜かれた。
それと同時に高意義の召喚獣が腕輪を起動し、撃ち出された弾丸を起点に大爆発が起こり、現れたCクラスの殆どを薙ぎ払う。

『Fクラス 久遠光一 物理608点』

「さあて、来いよCクラス……」

痛み止めも切れ、体中が悲鳴の大合唱を始めるが、光一はそれを表情にも出さない。
その上凶王の威圧感もハッタリで発揮し、ほぼ全員が攻めあぐねていた。

「……ガラクタに手を加えても、所詮はガラクタか。結果は見えたか」

通り廊下で見ていた白夜は、つまらなさげにそう呟いた。


階下の戦争の件そうに混じり、明久の耳にはある会話が聞こえてきた。
それも、空き教室の出入り口辺りから。

「Fクラスの姫路瑞希さんだよね。悪いけど、ちょっとこの教室で大人しくしていてくれないかな?」
「そこをどいてください。私は今から行かなくちゃいけないところがあるんです」
「そうはいかない。こっちだって負けられないんだ。先生もいる事だし、通りたければ実力で通るんだね」
「……わかりました。そうさせてもらいます。先生、Fクラス姫路瑞希が――」

「間にあったぁああーーっっ!!

それを遮る様に、明久は叫び声をあげた。

「あっ、明久君!?」
「っっ!?」

逆側の扉を開けて教室に入ってきた明久を、2人は驚いたように見ていた。
片方は姫路瑞希、片方はBクラスの井出。

「あの、明久君。どうして学校に? 無茶しちゃだめですよ、今にも倒れそうじゃないですか」
「そんな事より……さあ、やろうか」

瑞希と井出の間に、明久は足取りもおぼつかないままに立ち入った。

「そんな状態でやる気かよ? さっさとどいて姫路と代わったらどうだ?」
「そうですよ明久君。ここは私が……」
「姫路さんには重要な役目があるんだから。これが終わったらちゃんと休むから、早く」
「……絶対ですよ」

そう言って、瑞希は去って行く。
それを追おうとした井出を、明久が遮った。

「邪魔だ吉井!」
「ならそっちから仕掛けろって言ってるんだ」
「…………くっ……そぉっ!」

忌々しげに吐き捨て、空き教室から走り去って行った。
作戦失敗を、Bクラスに伝えに行くのだろう。

「……よか……た」

役目は完了。
安心で緊張の糸が切れたのか、明久はその場に倒れ込んだ。

「……上手く、いったか……」

そこへ、Cクラスを撃退し、ゆっくりとだが急いできた光一が。
Bクラスらしき人物が去って行くのも見えたし、明久の安著の表情から成功した事も理解できる。

「……神の策、崩してやったぞ」

そう呟くや否や、空き教室の中でよろよろと壁に寄りかかり……。
座り込み、光一は意識を手放した。

「……よくやった2人とも」

そんな、聞きなれた悪友の言葉を最後に。


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