第二学期試験召喚戦争Cクラス戦 後篇
第二百四十九問 第二学期試召戦争Cクラス戦 後編 プロローグ
「おはようじゃ、雄二」
「おう秀吉か。おはよう……ん? 光一はどうした?」
「今日は病院に行ってから来るとの事じゃ」
「……そうか」
Fクラスの同志討ち騒動が収束し、対Cクラス戦2日目
代表の坂本雄二は、途中秀吉と合流して馴染みあるボロ教室へ。
……その眼に、絶対に負けてたまるかと言う闘争心を灯して。
「それにしても雄二よ。昨日は災難じゃったな」
「ま、災難と言えば災難だが、追い回されるのには慣れているからな」
「それもどうかと思うのじゃが……」
昨日の事で秀吉がいたわりの言葉を向けるが、雄二は苦笑しながらそう返した。
それも一瞬の事で、すぐ雄二の表情が引き締まる。
「そんな事より、今日の試召戦争の事だ。同士討ちで随分と戦力が削られた上に、Cクラスの背後にあの超人野郎が居るとわかった以上、気を抜けば確実にやられる」
「……そうじゃの。それで、どうするのじゃ?」
秀吉が心配そうに問いかける。
ただでさえ戦力に開きがあり、尚且つ策においてもこちらを上回る頭脳が向こう側に。
しかし雄二の眼は死んではおらず、寧ろ活路を見出していた。
「どちらにしても、戦力が整わなければ話にならない。今日の勝負は我慢の状況が続く事になる」
「我慢の状況と言うと?」
「昨日のうちに光一と話しておいたんだが、前半はずっと守りを固める予定だ。補充と勝負を繰り返す、きつい展開になるな」
「補充と勝負の繰り返し……それは気合を入れねばならんな」
テストと勝負の繰り返しとなれば、心身ともにかなりの消耗が予想される。
モチベーションの維持がカギを握る展開に……
「……さて、いかにしてモチベーションをあげるか」
窮地においてこそ、その真価を問われる時。
特に人を纏める立場がそれを問われる事は、代表として雄二も理解していた。
何より、この状況は自分の浅はかさを利用されての物。
……雄二も敵の手の上で踊ったまま終わる、と言う気はさらさらない。
「終わって、たまるか……このまま無様に利用されるだけのままで、誰が終わるか」
「……雄二」
ギリっと歯を食いしばり、きっと表情を再度引き締め……
雄二は決意を新たに歩を進め、秀吉もそれに続いた。
所変わって、Fクラス教室
畳に卓袱台とボロボロの教室で、HRの始まりも近いその時分。
ふと雄二は周囲を見回し……
「……明久はまだか?」
「…………光一も」
「光一なら病院で、痛み止めをうってから来るそうじゃ」
「痛み止めって……そんなにひどいの?」
「無理もありませんよ。久遠君、杖をつかないとろくに立てない状態でしたから」
何だかんだ言っても、光一はFクラスのストッパーであり、副将であり、主力である。
それがまともに立つ事が出来ない事は、大きな痛手だった。
自分の不甲斐なさの所為でもあるが故に、雄二もギリっと拳を握りしめ無力を噛み締め……
「……いや、昨日はそれでも策を崩したんだ。後は俺が何とかしないで、何が代表だ!」
「坂本、いつになく気合入ってるわね」
「利用された揚句、その尻拭いを光一にやらせてしまったのじゃからな。雄二にとっては屈辱この上なかろう」
「…………何より、敵の背後に光一の兄が居る事も大きい」
Cクラスの背後に、3-A代表大神白夜が居る。
Fクラスメンバーには知らされていない、この場5人だけの秘密となっていた。
「それで姫路、明久はどうしたんだ?」
「えっと……あの後熱を出しちゃって、今日はお休みなんです」
「そうよね。アキってば、ずっと瑞希を抱きかかえて……なんか腹立ってきたわ」
「落ちつくのじゃ。明日光一に明久と融合召喚するよう頼むのじゃ」
「……別に興味ないけど、まあ終わった事をとやかく言うのもあれよね?」
「…………明久の事だから、姫路を守ろうと躍起になっていた筈。負担も当然普段以上」
「……だろうな」
明久がらみの事で、珍しく雄二が自嘲気味にそう呟いた。
だが……
「……だが考えようによっては、むしろ好都合だ」
「え?」
「恐らくだが、あの超人野郎がこの戦争に介入している理由……それは明久だと思う」
「アキが?」
全員が、雄二の言葉に驚き一斉に視線を向けた。
「姫路を追い出すことが目的にしては、腑に落ちない部分がある。地盤の確立、Fクラス瓦解、仲間割れを確実に起こせるスキャンダル……それらに関して姫路を利用する事は効果的だが、なら徹底的にそれらに明久を絡めようとした理由が見えない」
「雄二よ。それは姫路が明久に対して……」
「それを掴んだにしても、一度は俺の愛人扱いだった頃があるんだぞ? ウチのクラスの奴らを炊きつけるのだって、ここまでやれる以上造作もない筈」
「…………言われてみれば」
「それに加えて、前回の学年試召戦争でも何かを狙っている素振りがあった……寧ろこの先で何かする可能性が見えた以上、明久はいない方が良い」
とはいえ、明久が居ない事には現状かなり痛かった。
点数が低い物の、操作技術に駆けては学年1の技術があり、光一と共に幾多も戦いを駆け抜けたおかげで、多人数相手を手玉に取るだけの経験も積んである。
だがだからと言って、何を企んでいるのかがわからない以上迂闊な事は出来ない。
「……よしお前ら! 作戦説明を始めるぞ!」
それでも現状が変わる訳でもなければ、待ってくれるわけでもない。
雄二は壇上に立ち、作戦説明を始めた。
「今日の試召戦争の肝は補充試験だ。可及的速やかに昨日の騒ぎで失った点数を補充するぞ」
「して、具体的にはどう言った作戦になるのかの?」
「恐らく敵は開幕と同時に、こっちへと押し寄せてくる。そこに消耗しているこっちが対抗した所で勝ち目はない。そこでだ、こちらはひとまずFクラスに籠城する。戦闘区域を狭い教室出入り口に絞ることで消耗を抑えつつ、教室内で補充を済ませるって訳だ」
狙いは短期決戦、つまり点数補充が終わる前に決着をつけたい。
それが無理なら、身動きが取れない様封じ込めようとするはずだと言うのが、雄二の見解。
向こうの思惑に乗る事になるが、時間稼ぎには籠城戦が的確である。
「こっちは点数もそうだが、人数も減っている。無効と同じように“消耗したから下がって補充”何てやっていたら勝ち目はない。だから、こっちは持っている点数をギリギリまで使いきる」
「使いきるって、戦闘不能になる寸前まで戦うと言う事かの?」
「それもある。が、それだけじゃ足りない。だから戦闘不能寸前になってもすぐに補充に移ったりはせず、勝負の科目を切り替えるようにする。そうしたら同じ人間がまた戦う事が出来るからな」
「科目の切り替えって、どうやって?」
勝負科目を変えるには、その場の戦闘に決着をつけて完結しなければならない。
それ以外で召喚フィールドから出れば、敵前逃亡として強制的に戦死扱いとなる。
「それに関しては、俺と秀吉の腕輪で“干渉”を起こす他に、姫路の攻撃力を使う。全科目においてまんべんなく高い点数を保持しているから、その高い点数でフィールド内の敵を一掃して、即座に教師に科目の変更を要請するつもりだ。姫路、やれるか?」
「はいっ! 任せてください!」
気合の入った瑞希の返事に、雄二は満足そうに頷く。
安定した高い攻撃力を持つと同時に、エースでもある彼女の活躍は士気向上にもってこいなのだ。
「切り替えの時にワシや姫路が出ると言う事は、防衛の主体は別の者かの?」
「ああ、俺の腕輪は秀吉のと違って、点数を消費するからそう何度も使えない以上、そうなる。だから開幕直後はムッツリーニと島田を中心に組み立てる予定だ。前方出入り口を保健体育でムッツリーニに、後方出入り口を数学で島田に防衛してもらう」
「相手次第だけど、ウチは精々2、30分位ね」
「…………俺も光一じゃあるまいし、長期戦に自信がない」
それもまた、雄二には予想出来ていた事。
幾らムッツリーニといえど、金の腕輪を使えばその分点数を消費もすれば、多数相手なら被弾もする。
ここでも明久と光一の不在が響くが……ないものねだりしても仕方がない。
何せ相手が相手である以上、隙が致命傷となる事も十分あり得る。
「私、明久君の分まで頑張ります! 昨日足手まといどころか、お荷物にしかなれなかった分も……そう約束しましたから!」
雄二は瑞希の目をじっと見やる。
昨日明久に守られ続け、その挙句が明久を心身ともに戦闘不能に追いやった。
だからこそ、今この場で挽回したい……と言う意思を、雄二はしっかり汲み取った。
「よし、それじゃ、それぞれ持ち場についてくれ! Cクラスの連中に、目に物を見せてやるぞ!!」
「「「おーーーっ!!!」」
「見てやがれ、大神白夜……お前の思惑、絶対に崩してやる」
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